197 / 497
ヴァラクという悪魔
ヴァラクの世界5
しおりを挟む
「本当に、お菓子につられましたね」
「スゲーなちびっ子。冗談みてぇだ」
「異界ではケルベロスの弱点が、お菓子と音楽なのは有名な話なんです」
俺がケルベロスを切り伏せると、部屋の隅に避難していたレン達は、防護結界の向こうで互いの手を叩き合い、俺の勝利を喜んでいる。
一方、自らが傑作だと評したケルベロスが、俺に傷一つ負わせる事もなく、あっさり倒されたのが信じられないのか、ヴァラクは玉座の前で仁王立ちとなり、怒りにブルブルと震えていた。
「これで終いか?」
「ふざけた真似を!!」
ヴァラクが叫び、同時に召喚陣から魔物が溢れ出して来た。
この召喚陣は、召喚者のヴァラクを倒さねば消す事は出来ない。
防護結界から出たマーク達も戦いに加わり、魔法が飛び交い、剣を振って魔物を薙ぎ倒す大混戦だ。
目の端でレンの安否を確認すると、結界に近づく魔物を、クレイオスが魔法で撃ち倒し、レンの浄化の光が金色に輝いている。
魔物を屠りながら、ジリジリとヴァラクに近づいて行く。
それに気付いたヴァラクが、ヨシタカと共にいるドラゴンへ、俺達を攻撃する様に命じたが、漆黒のドラゴンは、面倒くさそうに頭を擡げ、俺達を一瞥すると再び床に伏せてしまった。
ドラゴンの不服従に怒ったヴァラクはドラゴンを何度も足蹴にした。
しかし厚い鱗に覆われたドラゴンは、蹴られたくらいでは何も感じないのか、レンの方へ視線を向けたまま動こうとはせず、怒り狂ったヴァラクが、瘴気で作った鎖をドラゴンに巻き付かせ、締め上げた。
締め上げられたドラゴンもさすがに苦しいらしく、鋭い牙を覗かせて、苦鳴を上げ始めた。
「ヴァラク!!お前の相手は俺だ!!」
俺は別にドラゴン好きでは無いし、街を破壊したドラゴンを庇うつもりもない。
ただ自分の思い通りならないからと、暴力を振るう、見苦しい雄が気に入らないだけだ。
同じように、叫んだクレイオスには別の理由があった様だ。
『やめよ!! しれ者め、幼子に何をする!!』
クレイオスの叫びは、咆哮となって魔物を一掃し、同時にヴァラクをも吹き飛ばし、背後の壁に叩きつけた。
咆哮が起こした暴風が治ると、漆黒のドラゴンがヨタヨタと足を引き摺りながら、クレイオスとレンの方へ歩き始めた。
「なんだよ。出来んなら最初から助けてくれりゃ~いいじゃねぇか」
とロロシュはクレイオスにぼやいているが、彼らと我らは違うのだ
例え似た姿をしていようと、生きる時間も価値観も、何もかもが違う、まったく別の生物なのだ。
何を助け、何を切り捨てるのか。
そもそもの価値基準が、俺たちとは全く異なるのだから、文句を言ったところで、通じるものではないだろう。
これは、この一年近く、レンと共に過ごすことで骨身に沁みていることだ。
クレイオスのように、多少なりとも手を貸してくれるだけ、アウラよりもましだろう。
しかし、あのドラゴン、ヴァラクが飼っているのだろうに、壁の前で呻いている飼い主よりも、レンの事ばかり気にしているな。
それに愛し子だったヨシタカが、ヴァラクに虐げられるドラゴンを庇うどころか、目を向けようともしないとは・・・。
そもそも瘴気の詰まった目に、何が見えているのか・・・。
ヨシタカは死んだ。
これは紛れもない事実だ。
玉座の脇で、起こした上半身をゆらゆらさせているのは、器はヨシタカだが中身は全くの別物。
唯の傀儡だ。
だが・・・遠い先祖とは言え、ヨシタカは俺の身内だ。
魂のない抜け殻だが、身内の体を好き勝手に使われるのは面白くないし、600年以上傀儡とされてきたヨシタカを、伴侶のもとへ返してやりたい。
俺の私欲でレンに負担を掛けたくはないが、浄化をすればヨシタカの体を取り戻すことができるだろうか。
しかし俺は、すべての民の盾として生きてきた帝国の騎士であり、今は、愛し子の守護者であり、唯一の番だ。
騎士として、盾として。
なにより、愛し子の番として。
優先すべきは、ヴァラクの討伐。
あれは既に人ではない。
魔物以下の邪悪な存在だ。
一片の情けも必要ない。
その時俺の頭の中で声が響いた。
"邪魔者を排除しろ"
・・・・そうだ。
コイツは邪魔だ。
コイツが、ヴァラクさえ居なければ
俺達は・・・幸せになれる
俺の口から無意識に雄叫び上がり、獣化で増した筋肉が、さらに膨れ上がった。
床を蹴り、壁に縋り立ち上がるヴァラクの前に降り立った俺は、刃物のように鋭く尖った爪で、諸悪の根源に襲いかかった。
騎士ならば、剣を持って戦うべきだ。
だが、この時の俺は、こうする事が正しいのだ、と信じて疑わなかった。
いや、それ以外の選択肢を思いつかなかった。
獣の本能が命ずるがまま、うすら笑いを浮かべるヴァラクに襲いかかった俺は、拳を振い、床に叩きつけたヴァラクの襟を掴み、玉座から魔法陣の上へ投げ飛ばした。
『愚か者!!幻惑魔法に気付かんのか!?』
「アレク!!ダメッ!!」
遠くで誰かが俺を呼んでいる気がする。
しかし、今は眼前敵の完全排除に集中しなければ・・・・。
放り投げたヴァラクを追い、床一面に描かれた魔法陣の中央に降り立った。
「グッ?・・・グアアァーーーー!!」
視界が真紅に染まり、無理矢理魔力が引き出されていく。
逃れようにも、瘴気に絡め取られて指一本動かせない。
「はっ! ハハハ・・・・ッ!!」
赤く歪んだ視界で、ヴァラクが腹を抱えて笑っている。
「何が最強だ。 剣を振るしか脳のない、愚かなケダモノめ!!」
「グウゥ・・・」
俺が傷つけた体から、瘴気がモアモアと漏れ出し、嘲笑うかのように渦を巻いていた。
「皇族だ大公だと気取ったところで、獣は獣だ。これから起こる事を、そこで指を咥えて見ているがいい」
「アレクッ!!」
「閣下!!」
レンとマークが放った魔法が、ヴァラクを捉えたが、奴は片腕一本で全てを相殺してしまった。
「アレクを放しなさい!」
「ふう。今代の愛し子は誠に気が強い。もっと慎みを持つべきだとは思わないか?」
小馬鹿にして話す間も、レンの魔法は止まらない。
そして一際大きな火球をヴァラクが腕で弾いたと同時に、炎の中からクレイオスが飛び出し、ヴァラクの腕を掴んだ。
『もう止めんか。 其方が恨んでいるのは我等であろう。これ以上人の子らに手出しをするな』
数瞬の間睨み合った二人だが、ヴァラクは唇を歪め、太々しい笑いを浮かべた。
「嗚呼、神とは傲慢なものだ。愛も恨みも全てが自分達のものだと思っている」
『其方、何を・・・』
「私の心など、貴様らに分かるものか!!」
ゴウッ!!
唸りをあげ、瘴気がクレイオスに襲い掛かり、その姿を覆い尽くしてしまった。
瘴気がクレイオスを拘束すると、俺と同じ様に魔力を吸い取っているのか、足元の魔法陣の光がさらに強くなった。
「クレイオス様!!」
「ちびっ子! 下がれ!!」
ロロシュの静止も聞かず、刀の柄に手を置いたレンが、一直線に駆けてくる。
駄目だ。
レン逃げろ。
「二人を放せ!!」
レンの初撃はいつだったか、練武場でロロシュの剣を斬ったものだった。
その鋭い攻撃を、ヴァラクは躰を反らす事で、難なく躱してしまった。
その後に続くレンの舞うような連撃も、ヴァラクはユラユラと体を揺らして躱していく。
「剣筋はヨシタカに近いか? だがヨシタカに比べると、子供の児戯だ」
「黙れ、サイコパス!!」
気合い一閃、レンの繰り出した攻撃がヴァ ラクの肩を捉えた。
だが、本物の血肉を持たないヴァラクの体からは、赤い血潮の代わりに瘴気が流れ出しただけだった。
しかし、レンが握っていたのは、クレイオスの破邪の刀だ。
ヴァラクの肩は、俺の爪が付けた傷の様には塞がらず、流れ出た瘴気が浄化され、サラサラと立ち昇っていく。
「面倒な物を・・・」
そう言うとヴァラクは瘴気でレンの細い腕を絡め取り、ギリギリと締め上げていった。
「ううっ」
カラン
痛みに,顔を歪めたレンの手が、刀を放してしまった。
「レン様っ!!」
マークの悲痛な叫びが聞こえる。
マーク達3人は、ヨシタカによって足止めされていた。
ヴァラクの言った通り、ヨシタカの腕は達人の域に達しているようだ。
マークとシッチンの剣も、ロロシュの暗器も全く歯が立たない。
3人が放った魔法も、刀一本で切り裂いてしまっている。
焦る気持ちとは裏腹に、指一本動かせない俺は、ギリギリと奥歯を噛み締め、魔力を吸い取られ、霞む意識を保つのが精一杯だった。
「ヨシタカ」
瘴気でレンを絡め取ったヴァラクが呼ぶと、マークの剣を跳ね上げたヨシタカが、滑るようにこちらに向かってくる。
その背中に追い縋るマークの氷槍を、ヨシタカは振り向きざまに切り落とし、ヴァラクの元へ戻ってきた。
「では閣下、愛し子は私が頂いていきます。あなたは贄の役目を、しっかり果たしてくださいね」
「スゲーなちびっ子。冗談みてぇだ」
「異界ではケルベロスの弱点が、お菓子と音楽なのは有名な話なんです」
俺がケルベロスを切り伏せると、部屋の隅に避難していたレン達は、防護結界の向こうで互いの手を叩き合い、俺の勝利を喜んでいる。
一方、自らが傑作だと評したケルベロスが、俺に傷一つ負わせる事もなく、あっさり倒されたのが信じられないのか、ヴァラクは玉座の前で仁王立ちとなり、怒りにブルブルと震えていた。
「これで終いか?」
「ふざけた真似を!!」
ヴァラクが叫び、同時に召喚陣から魔物が溢れ出して来た。
この召喚陣は、召喚者のヴァラクを倒さねば消す事は出来ない。
防護結界から出たマーク達も戦いに加わり、魔法が飛び交い、剣を振って魔物を薙ぎ倒す大混戦だ。
目の端でレンの安否を確認すると、結界に近づく魔物を、クレイオスが魔法で撃ち倒し、レンの浄化の光が金色に輝いている。
魔物を屠りながら、ジリジリとヴァラクに近づいて行く。
それに気付いたヴァラクが、ヨシタカと共にいるドラゴンへ、俺達を攻撃する様に命じたが、漆黒のドラゴンは、面倒くさそうに頭を擡げ、俺達を一瞥すると再び床に伏せてしまった。
ドラゴンの不服従に怒ったヴァラクはドラゴンを何度も足蹴にした。
しかし厚い鱗に覆われたドラゴンは、蹴られたくらいでは何も感じないのか、レンの方へ視線を向けたまま動こうとはせず、怒り狂ったヴァラクが、瘴気で作った鎖をドラゴンに巻き付かせ、締め上げた。
締め上げられたドラゴンもさすがに苦しいらしく、鋭い牙を覗かせて、苦鳴を上げ始めた。
「ヴァラク!!お前の相手は俺だ!!」
俺は別にドラゴン好きでは無いし、街を破壊したドラゴンを庇うつもりもない。
ただ自分の思い通りならないからと、暴力を振るう、見苦しい雄が気に入らないだけだ。
同じように、叫んだクレイオスには別の理由があった様だ。
『やめよ!! しれ者め、幼子に何をする!!』
クレイオスの叫びは、咆哮となって魔物を一掃し、同時にヴァラクをも吹き飛ばし、背後の壁に叩きつけた。
咆哮が起こした暴風が治ると、漆黒のドラゴンがヨタヨタと足を引き摺りながら、クレイオスとレンの方へ歩き始めた。
「なんだよ。出来んなら最初から助けてくれりゃ~いいじゃねぇか」
とロロシュはクレイオスにぼやいているが、彼らと我らは違うのだ
例え似た姿をしていようと、生きる時間も価値観も、何もかもが違う、まったく別の生物なのだ。
何を助け、何を切り捨てるのか。
そもそもの価値基準が、俺たちとは全く異なるのだから、文句を言ったところで、通じるものではないだろう。
これは、この一年近く、レンと共に過ごすことで骨身に沁みていることだ。
クレイオスのように、多少なりとも手を貸してくれるだけ、アウラよりもましだろう。
しかし、あのドラゴン、ヴァラクが飼っているのだろうに、壁の前で呻いている飼い主よりも、レンの事ばかり気にしているな。
それに愛し子だったヨシタカが、ヴァラクに虐げられるドラゴンを庇うどころか、目を向けようともしないとは・・・。
そもそも瘴気の詰まった目に、何が見えているのか・・・。
ヨシタカは死んだ。
これは紛れもない事実だ。
玉座の脇で、起こした上半身をゆらゆらさせているのは、器はヨシタカだが中身は全くの別物。
唯の傀儡だ。
だが・・・遠い先祖とは言え、ヨシタカは俺の身内だ。
魂のない抜け殻だが、身内の体を好き勝手に使われるのは面白くないし、600年以上傀儡とされてきたヨシタカを、伴侶のもとへ返してやりたい。
俺の私欲でレンに負担を掛けたくはないが、浄化をすればヨシタカの体を取り戻すことができるだろうか。
しかし俺は、すべての民の盾として生きてきた帝国の騎士であり、今は、愛し子の守護者であり、唯一の番だ。
騎士として、盾として。
なにより、愛し子の番として。
優先すべきは、ヴァラクの討伐。
あれは既に人ではない。
魔物以下の邪悪な存在だ。
一片の情けも必要ない。
その時俺の頭の中で声が響いた。
"邪魔者を排除しろ"
・・・・そうだ。
コイツは邪魔だ。
コイツが、ヴァラクさえ居なければ
俺達は・・・幸せになれる
俺の口から無意識に雄叫び上がり、獣化で増した筋肉が、さらに膨れ上がった。
床を蹴り、壁に縋り立ち上がるヴァラクの前に降り立った俺は、刃物のように鋭く尖った爪で、諸悪の根源に襲いかかった。
騎士ならば、剣を持って戦うべきだ。
だが、この時の俺は、こうする事が正しいのだ、と信じて疑わなかった。
いや、それ以外の選択肢を思いつかなかった。
獣の本能が命ずるがまま、うすら笑いを浮かべるヴァラクに襲いかかった俺は、拳を振い、床に叩きつけたヴァラクの襟を掴み、玉座から魔法陣の上へ投げ飛ばした。
『愚か者!!幻惑魔法に気付かんのか!?』
「アレク!!ダメッ!!」
遠くで誰かが俺を呼んでいる気がする。
しかし、今は眼前敵の完全排除に集中しなければ・・・・。
放り投げたヴァラクを追い、床一面に描かれた魔法陣の中央に降り立った。
「グッ?・・・グアアァーーーー!!」
視界が真紅に染まり、無理矢理魔力が引き出されていく。
逃れようにも、瘴気に絡め取られて指一本動かせない。
「はっ! ハハハ・・・・ッ!!」
赤く歪んだ視界で、ヴァラクが腹を抱えて笑っている。
「何が最強だ。 剣を振るしか脳のない、愚かなケダモノめ!!」
「グウゥ・・・」
俺が傷つけた体から、瘴気がモアモアと漏れ出し、嘲笑うかのように渦を巻いていた。
「皇族だ大公だと気取ったところで、獣は獣だ。これから起こる事を、そこで指を咥えて見ているがいい」
「アレクッ!!」
「閣下!!」
レンとマークが放った魔法が、ヴァラクを捉えたが、奴は片腕一本で全てを相殺してしまった。
「アレクを放しなさい!」
「ふう。今代の愛し子は誠に気が強い。もっと慎みを持つべきだとは思わないか?」
小馬鹿にして話す間も、レンの魔法は止まらない。
そして一際大きな火球をヴァラクが腕で弾いたと同時に、炎の中からクレイオスが飛び出し、ヴァラクの腕を掴んだ。
『もう止めんか。 其方が恨んでいるのは我等であろう。これ以上人の子らに手出しをするな』
数瞬の間睨み合った二人だが、ヴァラクは唇を歪め、太々しい笑いを浮かべた。
「嗚呼、神とは傲慢なものだ。愛も恨みも全てが自分達のものだと思っている」
『其方、何を・・・』
「私の心など、貴様らに分かるものか!!」
ゴウッ!!
唸りをあげ、瘴気がクレイオスに襲い掛かり、その姿を覆い尽くしてしまった。
瘴気がクレイオスを拘束すると、俺と同じ様に魔力を吸い取っているのか、足元の魔法陣の光がさらに強くなった。
「クレイオス様!!」
「ちびっ子! 下がれ!!」
ロロシュの静止も聞かず、刀の柄に手を置いたレンが、一直線に駆けてくる。
駄目だ。
レン逃げろ。
「二人を放せ!!」
レンの初撃はいつだったか、練武場でロロシュの剣を斬ったものだった。
その鋭い攻撃を、ヴァラクは躰を反らす事で、難なく躱してしまった。
その後に続くレンの舞うような連撃も、ヴァラクはユラユラと体を揺らして躱していく。
「剣筋はヨシタカに近いか? だがヨシタカに比べると、子供の児戯だ」
「黙れ、サイコパス!!」
気合い一閃、レンの繰り出した攻撃がヴァ ラクの肩を捉えた。
だが、本物の血肉を持たないヴァラクの体からは、赤い血潮の代わりに瘴気が流れ出しただけだった。
しかし、レンが握っていたのは、クレイオスの破邪の刀だ。
ヴァラクの肩は、俺の爪が付けた傷の様には塞がらず、流れ出た瘴気が浄化され、サラサラと立ち昇っていく。
「面倒な物を・・・」
そう言うとヴァラクは瘴気でレンの細い腕を絡め取り、ギリギリと締め上げていった。
「ううっ」
カラン
痛みに,顔を歪めたレンの手が、刀を放してしまった。
「レン様っ!!」
マークの悲痛な叫びが聞こえる。
マーク達3人は、ヨシタカによって足止めされていた。
ヴァラクの言った通り、ヨシタカの腕は達人の域に達しているようだ。
マークとシッチンの剣も、ロロシュの暗器も全く歯が立たない。
3人が放った魔法も、刀一本で切り裂いてしまっている。
焦る気持ちとは裏腹に、指一本動かせない俺は、ギリギリと奥歯を噛み締め、魔力を吸い取られ、霞む意識を保つのが精一杯だった。
「ヨシタカ」
瘴気でレンを絡め取ったヴァラクが呼ぶと、マークの剣を跳ね上げたヨシタカが、滑るようにこちらに向かってくる。
その背中に追い縋るマークの氷槍を、ヨシタカは振り向きざまに切り落とし、ヴァラクの元へ戻ってきた。
「では閣下、愛し子は私が頂いていきます。あなたは贄の役目を、しっかり果たしてくださいね」
44
お気に入りに追加
1,297
あなたにおすすめの小説
5人の旦那様と365日の蜜日【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
気が付いたら、前と後に入ってる!
そんな夢を見た日、それが現実になってしまった、メリッサ。
ゲーデル国の田舎町の商人の娘として育てられたメリッサは12歳になった。しかし、ゲーデル国の軍人により、メリッサは夢を見た日連れ去られてしまった。連れて来られて入った部屋には、自分そっくりな少女の肖像画。そして、その肖像画の大人になった女性は、ゲーデル国の女王、メリベルその人だった。
対面して初めて気付くメリッサ。「この人は母だ」と………。
※♡が付く話はHシーンです
淫らなお姫様とイケメン騎士達のエロスな夜伽物語
瀬能なつ
恋愛
17才になった皇女サーシャは、国のしきたりに従い、6人の騎士たちを従えて、遥か彼方の霊峰へと旅立ちます。
長い道中、姫を警護する騎士たちの体力を回復する方法は、ズバリ、キスとH!
途中、魔物に襲われたり、姫の寵愛を競い合う騎士たちの様々な恋の駆け引きもあったりと、お姫様の旅はなかなか困難なのです?!
迷い込んだ先で獣人公爵の愛玩動物になりました(R18)
るーろ
恋愛
気がついたら知らない場所にた早川なつほ。異世界人として捕えられ愛玩動物として売られるところを公爵家のエレナ・メルストに買われた。
エレナは兄であるノアへのプレゼンとして_
発情/甘々?/若干無理矢理/
クソつよ性欲隠して結婚したら草食系旦那が巨根で絶倫だった
山吹花月
恋愛
『穢れを知らぬ清廉な乙女』と『王子系聖人君子』
色欲とは無縁と思われている夫婦は互いに欲望を隠していた。
◇ムーンライトノベルズ様へも掲載しております。
大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました
扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!?
*こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。
――
ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。
そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。
その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。
結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。
が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。
彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。
しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。
どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。
そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。
――もしかして、これは嫌がらせ?
メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。
「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」
どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……?
*WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。
【R18】転生したら異酒屋でイキ放題されるなんて聞いてません!
梅乃なごみ
恋愛
限界社畜・ヒマリは焼き鳥を喉に詰まらせ窒息し、異世界へ転生した。
13代目の聖女? 運命の王太子?
そんなことより生ビールが飲めず死んでしまったことのほうが重要だ。
王宮へ召喚?
いいえ、飲み屋街へ直行し早速居酒屋で生ビールを……え?
即求婚&クンニってどういうことですか?
えっちメイン。ふんわり設定。さくっと読めます。
🍺全5話 完結投稿予約済🍺
【R-18】喪女ですが、魔王の息子×2の花嫁になるため異世界に召喚されました
indi子/金色魚々子
恋愛
――優しげな王子と強引な王子、世継ぎを残すために、今宵も二人の王子に淫らに愛されます。
逢坂美咲(おうさか みさき)は、恋愛経験が一切ないもてない女=喪女。
一人で過ごす事が決定しているクリスマスの夜、バイト先の本屋で万引き犯を追いかけている時に階段で足を滑らせて落ちていってしまう。
しかし、気が付いた時……美咲がいたのは、なんと異世界の魔王城!?
そこで、魔王の息子である二人の王子の『花嫁』として召喚されたと告げられて……?
元の世界に帰るためには、その二人の王子、ミハイルとアレクセイどちらかの子どもを産むことが交換条件に!
もてない女ミサキの、甘くとろける淫らな魔王城ライフ、無事?開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる