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紫藤 蓮(シトウ レン)
ブネ3
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「モーガン、レンの言う通りにしてくれ」
「しかし。我々は、レン様の警護を依頼されたのですぞ?」
「分かっている。頼んだのは俺だからな。だがおれが頼んだのは、魔物が召喚された時の対策としてだ」
「仰る通りですが、警護対象の側を離れては対策にならないのでは?」
何が危険なのか知らなければ、納得はできないですよね?
「モーガンさん、アレクさんからアミュレットの話は聞きましたか?」
「えっ? ああ、レン様が能力を付与して作られたと言う、揃いのアミュレットですか?」
「ええ。ロロシュさん、予備の魔晶石はまだ有りますよね?」
「イマミアで結構使っちまったから、浄化の魔晶石はそんなに数はねぇぞ?」
戦闘で効果が切れたり破損したものは、交換したし、村の井戸と病人にも渡したから、手持ちが少ないのは仕方がないです。
今持ってきている魔晶石は、全てコピーした物です。
元の魔晶石を使ったコピーだと、100個前後までは劣化はしませんが、コピーからのコピーだと、どうしても効果が下がるし、20個程度で劣化してしまい、コピー元の石も破損してしまいます。
人の生死に関わってくる石です。
効果が低いと分かっている石は、渡したくありません。
「ねぇアレク。いくつかモーガンさんに渡してもいいでしょうか?」
「構わん。ロロシュ、揃いでいくつか渡してやってくれ」
「分かった。台座のアミュレット無しでもかまわねぇよな?」
「ああ」
ロロシュさんは腰に下げたアイテムバックの中を探って、魔晶石の入った革袋を取り出して、5組の魔晶石をモーガンさんに手渡してくれました。
「レン様・・・あれはなんですか?」
魔晶石を持ったモーガンさんは、これ迄見えて居なかった瘴気が突然現れて戸惑っている様子です。
「あの黒い靄が瘴気です。あのシブロの木より奥は、もっと瘴気が濃くなって行くのが見えますか?」
「これが瘴気・・・」と愕然とした表情で、モーガンさんは森の奥を見ています。
「第3騎士団の皆さんに警護をお願いするとは思って居なかったので、破損した時の交換用の魔晶石しか持って来てないんです。第2のみんなは、これを着けているので瘴気を確認出来ますが・・・」
「瘴気が見えないと浄化の際に危険だと?」
「・・・魔物の身体に内包されている瘴気は、今のところ魔晶石に付与出来た、浄化の力だけでも対処が可能ですが、呪具の瘴気は私が直接浄化しないと効果がないのです。それに呪具の瘴気は周りにいる人を拘ようとします。けど、瘴気が見えれば避けることは出来るので・・・」
「警備を増やした割に、調査が済むまで必要以上に池に近づくな、と指示を出したのもその為ですか?」
「そうだ。イマミアの洞窟も中に入ることを禁じていた」
「それならそうと、先に言ってくれれば」
「呪具が有るかどうかも判らないのにか?確証が無いことは、口にできん」
アレクさんが言い切ると、納得したのかどうかは別として、モーガンさんも漸く口を閉じてくれました。
アレクさんも口下手と言うか、言葉足らずな処があるんですよね。
そう言うことだから、と池に向かおうとするとモーガンさんに
「この魔晶石は長のつく者に与えます。説明をして来ますので少しお待ち頂けますか?」
と引き止められました。
待つのは構わないのですが、モーガンさんは付いてくる気満々ですね?
瘴気が見えれば・・と言った手前、断り辛いです。
説明を終えたモーガンさんは、部下の人を二人従えて戻って来ると、とてもいい笑顔で「お待たせいたしました。では行きましょうか」と、先頭を切ってズンズン進んでいきます。
「仕方のない奴だ」と呆れたように言うアレクさんですが、目元が笑っています。
アレクさんって、結構モーガンさんのこと好きですよね? 知ってますよ?
モーガンさんの先導で池に近づくにつれて、腐った水の生臭い臭いが漂って来ました。
けれど、この異臭は私しか感じて居ないようで、嗅覚が優れているはずの獣人のみんなが平然としています。
「う~~~」
「どうした? 涙目になっているぞ?」
「臭いが酷くて、下水道臭くないですか?」
「下水道?」とアレクさんは顔を上げ鼻をヒクヒクさせて居ます。
「森と君の匂いしかせんな」
私の匂い?
やだ!
洗浄魔法掛けて貰ったのに汗臭い?
慌てて腕の匂いを嗅いでみましたが、辺りに漂う異臭のせいで、鼻の奥が痛くなっただけでした。
「アレク、そろそろ下ろして?」
「まだ、距離があるぞ?」
「ん~。これ以上は近づいて欲しくないかな」
「・・・分かった」
「じゃあみんなも、ここで待っててね?」
池まであと200メートルくらいでしょうか。この距離でも池の水が瘴気で濁りきっているのが見えました。
タマスの泉も瘴気のせいで、ヘドロみたいになって居ましたが、この池の水も見るからにドロっとして居ます。
瘴気の影響なのか、池周りの下草は全て枯れてしまって茶色くなっています。
正直、この水には触りたくない。
日本でこんな池があったら、役所に苦情が殺到するレベルです。
報告にあった祭壇は、池の北東の岩場の上に置かれて居ました。
祭壇を設える時に刈り取ったのでしょう、名も知らぬ低木の枝が、岩場の横につみあげられていました。
無駄に几帳面なことを。
祭壇は、イマミアにあった物と同じく教机の上に厨子と小動物の死骸が置かれています。
ほんと趣味が悪いし、悪意しか感じない。
厨子から瘴気を引き剥がし、扉を開けて中の魔法陣を無力化して、次は呪具を探さないといけないのですが・・・・。
お庭の小さな池なら良かったけど、それなりに大きいし、よく見えないけど水深も有りそう。
泳げなくはないけど、潜って呪具を見つけるなんて不可能よね。
呪具があったら、池を浄化しても意味ないし・・・ここの水には触りたくないし。
イマミアでは、魔法陣の魔力を呪具が吸い取ったから置かれた場所がすぐに分かったけど、今回はそれも無し。
う~ん。どうしたものか・・・。
取り敢えず、呪具の場所の目星はつけたい。
一度池を浄化したら、呪具の場所だけ瘴気が濃く見えるかな?
思いついたら即実行。
池の水に触れるのは,ものすごく抵抗が有りますが、ここは我慢です。
私のスキル1は実践を重ねたお陰でランクアップして今の状態は
取得スキル1
浄 化 +5 四大元素魔法 +2
祝 福 +5 錬金術 +3
魔法付与 +4 絶 唱 +4
治 癒 +3 弔 舞 +3
使用頻度の高さでばらつきは有りますが、イマミアで経験値をずいぶん稼げた様で、全て一段階ランクアップしています。
これなら行けるはず。
そう自分に言い聞かせ、池の水に手を入れたのが間違いでした。
祝福と浄化を発動していたのに、池の中に満ちた瘴気から、これ迄感じたことのない悪意が、私の中に流れ込んできました。
生きとし生けるもの全てに向けられる、苦痛に満ちた怨嗟の声。
何故オレだけが苦しまねばならない。
何故お前は生きている?
何故、なぜ、何故?
苦しい、痛い、助けて!
お前もこの苦しみを味わえばいい!!
そんな憎悪に満ちた数え切れない人の声に、夢に出てきた人の乾いた笑い声が重なって、頭の中をぐちゃぐちゃにかき混ぜられているようです。
こんなに深い恨みを抱かせるなんて
クレイオス様に何をしたの?
「しっかりしろ!」
「・・・・・」
「俺がわかるか?」
「ア・・レク?」
私の様子がおかしいことに気付いたアレクさんが、池から引き剥がしてくれた様です。
「一度休んだ方が良い」
そう言うとアレクさんは私を抱き上げて、みんなを待たせて居た場所に連れて行ってくれたのでした。
「しかし。我々は、レン様の警護を依頼されたのですぞ?」
「分かっている。頼んだのは俺だからな。だがおれが頼んだのは、魔物が召喚された時の対策としてだ」
「仰る通りですが、警護対象の側を離れては対策にならないのでは?」
何が危険なのか知らなければ、納得はできないですよね?
「モーガンさん、アレクさんからアミュレットの話は聞きましたか?」
「えっ? ああ、レン様が能力を付与して作られたと言う、揃いのアミュレットですか?」
「ええ。ロロシュさん、予備の魔晶石はまだ有りますよね?」
「イマミアで結構使っちまったから、浄化の魔晶石はそんなに数はねぇぞ?」
戦闘で効果が切れたり破損したものは、交換したし、村の井戸と病人にも渡したから、手持ちが少ないのは仕方がないです。
今持ってきている魔晶石は、全てコピーした物です。
元の魔晶石を使ったコピーだと、100個前後までは劣化はしませんが、コピーからのコピーだと、どうしても効果が下がるし、20個程度で劣化してしまい、コピー元の石も破損してしまいます。
人の生死に関わってくる石です。
効果が低いと分かっている石は、渡したくありません。
「ねぇアレク。いくつかモーガンさんに渡してもいいでしょうか?」
「構わん。ロロシュ、揃いでいくつか渡してやってくれ」
「分かった。台座のアミュレット無しでもかまわねぇよな?」
「ああ」
ロロシュさんは腰に下げたアイテムバックの中を探って、魔晶石の入った革袋を取り出して、5組の魔晶石をモーガンさんに手渡してくれました。
「レン様・・・あれはなんですか?」
魔晶石を持ったモーガンさんは、これ迄見えて居なかった瘴気が突然現れて戸惑っている様子です。
「あの黒い靄が瘴気です。あのシブロの木より奥は、もっと瘴気が濃くなって行くのが見えますか?」
「これが瘴気・・・」と愕然とした表情で、モーガンさんは森の奥を見ています。
「第3騎士団の皆さんに警護をお願いするとは思って居なかったので、破損した時の交換用の魔晶石しか持って来てないんです。第2のみんなは、これを着けているので瘴気を確認出来ますが・・・」
「瘴気が見えないと浄化の際に危険だと?」
「・・・魔物の身体に内包されている瘴気は、今のところ魔晶石に付与出来た、浄化の力だけでも対処が可能ですが、呪具の瘴気は私が直接浄化しないと効果がないのです。それに呪具の瘴気は周りにいる人を拘ようとします。けど、瘴気が見えれば避けることは出来るので・・・」
「警備を増やした割に、調査が済むまで必要以上に池に近づくな、と指示を出したのもその為ですか?」
「そうだ。イマミアの洞窟も中に入ることを禁じていた」
「それならそうと、先に言ってくれれば」
「呪具が有るかどうかも判らないのにか?確証が無いことは、口にできん」
アレクさんが言い切ると、納得したのかどうかは別として、モーガンさんも漸く口を閉じてくれました。
アレクさんも口下手と言うか、言葉足らずな処があるんですよね。
そう言うことだから、と池に向かおうとするとモーガンさんに
「この魔晶石は長のつく者に与えます。説明をして来ますので少しお待ち頂けますか?」
と引き止められました。
待つのは構わないのですが、モーガンさんは付いてくる気満々ですね?
瘴気が見えれば・・と言った手前、断り辛いです。
説明を終えたモーガンさんは、部下の人を二人従えて戻って来ると、とてもいい笑顔で「お待たせいたしました。では行きましょうか」と、先頭を切ってズンズン進んでいきます。
「仕方のない奴だ」と呆れたように言うアレクさんですが、目元が笑っています。
アレクさんって、結構モーガンさんのこと好きですよね? 知ってますよ?
モーガンさんの先導で池に近づくにつれて、腐った水の生臭い臭いが漂って来ました。
けれど、この異臭は私しか感じて居ないようで、嗅覚が優れているはずの獣人のみんなが平然としています。
「う~~~」
「どうした? 涙目になっているぞ?」
「臭いが酷くて、下水道臭くないですか?」
「下水道?」とアレクさんは顔を上げ鼻をヒクヒクさせて居ます。
「森と君の匂いしかせんな」
私の匂い?
やだ!
洗浄魔法掛けて貰ったのに汗臭い?
慌てて腕の匂いを嗅いでみましたが、辺りに漂う異臭のせいで、鼻の奥が痛くなっただけでした。
「アレク、そろそろ下ろして?」
「まだ、距離があるぞ?」
「ん~。これ以上は近づいて欲しくないかな」
「・・・分かった」
「じゃあみんなも、ここで待っててね?」
池まであと200メートルくらいでしょうか。この距離でも池の水が瘴気で濁りきっているのが見えました。
タマスの泉も瘴気のせいで、ヘドロみたいになって居ましたが、この池の水も見るからにドロっとして居ます。
瘴気の影響なのか、池周りの下草は全て枯れてしまって茶色くなっています。
正直、この水には触りたくない。
日本でこんな池があったら、役所に苦情が殺到するレベルです。
報告にあった祭壇は、池の北東の岩場の上に置かれて居ました。
祭壇を設える時に刈り取ったのでしょう、名も知らぬ低木の枝が、岩場の横につみあげられていました。
無駄に几帳面なことを。
祭壇は、イマミアにあった物と同じく教机の上に厨子と小動物の死骸が置かれています。
ほんと趣味が悪いし、悪意しか感じない。
厨子から瘴気を引き剥がし、扉を開けて中の魔法陣を無力化して、次は呪具を探さないといけないのですが・・・・。
お庭の小さな池なら良かったけど、それなりに大きいし、よく見えないけど水深も有りそう。
泳げなくはないけど、潜って呪具を見つけるなんて不可能よね。
呪具があったら、池を浄化しても意味ないし・・・ここの水には触りたくないし。
イマミアでは、魔法陣の魔力を呪具が吸い取ったから置かれた場所がすぐに分かったけど、今回はそれも無し。
う~ん。どうしたものか・・・。
取り敢えず、呪具の場所の目星はつけたい。
一度池を浄化したら、呪具の場所だけ瘴気が濃く見えるかな?
思いついたら即実行。
池の水に触れるのは,ものすごく抵抗が有りますが、ここは我慢です。
私のスキル1は実践を重ねたお陰でランクアップして今の状態は
取得スキル1
浄 化 +5 四大元素魔法 +2
祝 福 +5 錬金術 +3
魔法付与 +4 絶 唱 +4
治 癒 +3 弔 舞 +3
使用頻度の高さでばらつきは有りますが、イマミアで経験値をずいぶん稼げた様で、全て一段階ランクアップしています。
これなら行けるはず。
そう自分に言い聞かせ、池の水に手を入れたのが間違いでした。
祝福と浄化を発動していたのに、池の中に満ちた瘴気から、これ迄感じたことのない悪意が、私の中に流れ込んできました。
生きとし生けるもの全てに向けられる、苦痛に満ちた怨嗟の声。
何故オレだけが苦しまねばならない。
何故お前は生きている?
何故、なぜ、何故?
苦しい、痛い、助けて!
お前もこの苦しみを味わえばいい!!
そんな憎悪に満ちた数え切れない人の声に、夢に出てきた人の乾いた笑い声が重なって、頭の中をぐちゃぐちゃにかき混ぜられているようです。
こんなに深い恨みを抱かせるなんて
クレイオス様に何をしたの?
「しっかりしろ!」
「・・・・・」
「俺がわかるか?」
「ア・・レク?」
私の様子がおかしいことに気付いたアレクさんが、池から引き剥がしてくれた様です。
「一度休んだ方が良い」
そう言うとアレクさんは私を抱き上げて、みんなを待たせて居た場所に連れて行ってくれたのでした。
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