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紫藤 蓮(シトウ レン)

sideアレク

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「ロロシュ、ミュラー少しいいか?」
「どしたんですか。改まって」

書類に向けていた目を、2人揃って不思議そうに俺に移し替えた。

「マークにも確認するが、魔薬やヴァラク教の事をレンに話たか?」

 二人ともポカンとしてるな。
 話してはいないようだ。

「オレは話してないけどよ。愛し子様になんかあったのか?」
「私も、レン様とは部下達と事務処理の方法を教えて頂くのが精一杯で、他の話はしていませんが」

「そうか・・・」
「なんだよ難しい顔して」
「それがな、昨夜レンが思い悩んでる様子でな?話を聞いてみたんだが」

昨夜聞いたギデオンと魔薬、ヴァラク教に対するレンの考察を二人に語って聞かせた。

「マジかよ!!なんの情報もないってのに、一人でそこ迄考えついたって?」

「マークが話してなければ」

「レン様第一のマークが、お心を乱すような話しをするでしょうか?」

「話さんだろうな」

「愛し子の頭の中ってどうなってんだ?オレ達が何ヶ月も掛けて、やっと手に入れた情報を、頭ん中で組み立てちまうってよ」

ロロシュの言うことは尤もだ。
俺もレンの話を聞いていて、余りにも正確に言い当てられ、どう反応すれば良いのか迷ったからな。

レンは、俺がギデオンの話しを聞いて、気分を害したと思った様だが、驚き過ぎて固まっていただけだ。

昨夜のレンは、アウラ神とクレイオスを思って恋歌を歌っていた。
切なく悲し気な歌を歌いながら、頭の中であんな事を考えていたとは。

いつも思うのだが、レンの洞察力は鋭すぎるのではないか?
普段のレンは、本質を見抜きながら、敢えて物事の裏側を見ない様にしている様な気がする。
それか、考えた事を口にしないか。

昨夜も穿ち過ぎだと思うと言っていたな。
可愛い頭を悩ませるより、全て話した方が良いのだろうか?

「ロロシュ、お前アルケリスが捜査対象になった理由を知っているか?」
「あ? あの馬鹿に喧嘩売られたアンタが、ブチ切れたからじゃねーの?」
「ふむ、影も知らん事があるのだな」
「なんだよ、別の理由があんのか?」
「あれはな、レンがモーガンにアルケリスを調べろと言ったからだ」

 驚いているな?
 二人とも初耳だった様だな。

「アルケリスとは、あの一件の時しか話してないんだよな?」
「レンはアルケリスと一言も話していないぞ? 観察していただけだ」
「それだけであいつの本性を見抜いたってか?」

 信じられない様だな。
 まぁ無理もない。
 
「レンは、ただの勘だと言っていたが、俺は違うと思っている」
「なんかこえーな」
「・・・お前と初めて会った時、レンは家名を名乗っただろ? あれは初見でお前を警戒対象と認識したからだ」
「マジかよ」
「間違ってはいなかったろう?」
「まぁ、そうだけどよ」

ロロシュは不満気だが、レンが初見から警戒する時は、それなりの理由がある。
コイツが名を呼ぶのを許されるのは、まだまだ先になりそうだ。

「神の啓示なのでしょうか」
「俺も初めはそう思っていたのだが、愛し子故ではなく、あれはレン本人の特性だろうな。レンが何かあると言えば、それがどれだけ突拍子もない話でも、 “そこには必ず何かが有る” 俺はそう考えている。お前達もレンと話す時には、そこに留意してくれ」

二人は、空恐ろしいものを見たような顔で頷いた。

「ロロシュ、今後はヴァラク教を中心に調べさせろ。どれもその方が早く押さえられそうだ」
「妓楼と大神殿はどうする?」
「第一と警備隊に任せる・・・妓楼の客の名前だけは押さえておけ」

十年前こんな事はやり尽くしたと思っていたんだがな。

全ての事がヴァラク教に結びついている。

あの時もっと徹底的に調べ上げ、ヴァラク教を叩き潰しておけば、今の苦労は無かったのだが。

それも今だから言えることか。
当時の俺は復讐に目が眩んだ、甘ったれのただの小僧だったからな。

それはそれだ、今はイマミアとブネに集中せねば、レンに無駄な負担をかけるわけにはいかんからな。

レンはアウラ神とクレイオスを見つけると約束をした。
神とドラゴンの鱗を祀り祈りを捧げ、彼らを思って恋歌を歌うほど心を砕いている。
イマミアとブネでクレイオスの手がかりを得られるだろうか。

レンの言う通り、クレイオスの失踪とヴァラク教は関係が有るのは間違いない。
そうでなければアガス如きが、エンシェントドラゴンの鱗を手に入れられる訳が無いからな。

分からないのは、奴らが “クレイオスを使い何をしたいのか” だ。

瘴気と魔物を産み被害を増やせば、新たな瘴気が増える。
魔薬を使い人身を惑わせ、教義を広めて足場を固める。

それで?
国が欲しいのか?
だったら、十年前でも良かっただろう?

奴らのやって居ることは、全ては手段で目的では無いだろう。
奴らは身の程知らずにも、俺の番を神殿を穢す為だけに、生贄にするとほざきやがった。

神との契約を破り、神の半身のドラゴンを捉え、愛し子を生贄にしてまで神殿を穢すことで、奴らは何を得ようと言うのか。
それで神の怒りを買い、全てを滅ぼされてしまったら、それで終いだろう?

奴らの本当の狙いがわからなくて、イライラするが、まぁいい。

俺の目的は、レンを幸せにする事だ。

そのためには、番を護り、邪魔な連中を叩き潰して、クレイオスを解放する。

単純に考えて、ことに当たった方がいい場合もあるからな。

「レン様は、今回の遠征も承諾されたのですか?」
「ん? ああ」
「ケブラーから戻られたばかりで、大丈夫でしょうか?」
「無理はさせられんが、本人は大丈夫だと言っていたな」

 俺と一緒にいられるのが嬉しいと言ってくれたしな。
 ああやって俺を喜ばせ、煽ってくるのは無自覚なんだろうな。
 そうでなければ、俺の理性の限界値を測って居るのかと思うとこだぞ?

 まぁ、ほとんど我慢していないのだが。

「チッ、ニヤケやがって。一番無理させてる閣下が何言ってんだか」
「む?」

 コイツ上官に向かって舌打ちしたのか?
 しかも何を呆れた顔をしてるんだ?

「ロロシュやめなさい」
「なぁミュラー。あのマーキングは無いよなぁ?」
「何が言いたい」
「俺は愛し子様にデリカシーを覚えろって言われたけどよー。閣下もデリカシーってぇもんを覚えるべきじゃねーか?」
「ロロシュッ!」
「ミュラーも分かってんだろ?あの凶悪なマーキングじゃあ、周りの連中は怯えまくりだし。昨日ヤリました!って言って回ってる様なもんじゃねぇか。あの愛し子様がそれを知ったら、嘸かしさぞかしショックだろうな、と思ってよ?」
「グッ!・・・それは」
 
 態度が悪すぎるのに
 正論すぎて言い返せない。

 クソッ!ロロシュのくせに。

「閣下の気持ちは、俺にだって分かるけどよ。遠征の間くらいは我慢してくれねぇと、色々支障が出んだよな」
「・・・善処する」
「おう。頼むぜ?」

 ロロシュめ!
 もう直ぐお前も、同じ思いをする事になるんだぞ!

 その時は覚えてろよ!!
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