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アレクサンドル・クロムウェル
タマス平原/ 奪還2
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「ふぁ・・・あっや・・」
「・・・はあ・・レン愛してる」
久々に味わう番との口付けに、場所も忘れて俺は夢中になった。
震える舌先も熱い吐息も、全てが蜜よりも甘く、呑み下す唾液が干からびた命を蘇らせるようだった。
しかし、熱に浮かされ襟から手を滑り込ませようとして、流石にレンに叱られてしまった。
細い指で俺の頬を抓りながら「めッ!」なんて言われても、煽っているとしか思えないのだが、朱に染まった頬を膨らませ、毛を逆立てた子猫のように威嚇する姿に、レンを取り戻した実感が湧いた。
少々バツの悪い思いをしながら、レンに回復薬を渡し休んでいるように言って、馬車を降りると、赤い顔をしたマークとシッチンに顔を背けられ、ロロシュはニヤニヤしながら「お熱いことで」と揶揄ってきた。
まぁ、全員獣人で耳が良いから、中のことも筒抜けだろうが、そこは知らぬふりをするのが礼儀ではないか?
「誰か口を割ったか?」
「・・・・」
「どうした?」
「いや、あまりの落差にどうしたもんかと 痛って!何すんだよ!」
俺が蹴りを入れると、脛を押さえてロロシュは蹲った。
マークが怒るのも無理はない。
コイツはデリカシーを覚えた方がいい。
「で?どうなんだ?」
「どなた様も卑しい獣とは、口をききたくねぇそうだ!」
ロロシュは脛を撫でながら、縛りあげた拉致犯に侮蔑の籠った目を向けた。
身元に繋がりそうな所持品は無くかったが、アガスが関与していた事で神殿を押さえ込む口実はできた。
更に拉致犯が持っていたという薬瓶には見覚えがあった。
「閣下はこれが何だか知ってるのか?」
「同じものとは断言できない。だがギデオン達を中毒にした薬に似ているな」
「あの魔薬か」
あの薬については、緘口令を敷いたのだが、影なら知っていても当然か。
「当時、販売組織を壊滅させ流通も禁止したが、甘かったようだな」
「金になるなら抜け道を探すもんだろ?」
「まぁそうだな。何か情報は?」
「それらしい話しはいくつかあるな。オレはそっちには関わってなかったから、詳しく聞きたいなら陛下の許可がいる」
「そうか」
この魔薬は、それなりに高価だった。
こんな金の無さそうな奴が手を出せるとは思えんが・・・ウィリアムも何処まで把握しているのか。
オレ一人で頭を抱えてもどうにもならん、
全ては帰ってからだ。
それに早く帰えって、思う存分レンを愛でなければ!
レンとマークの再会は、レンを護れなかった、と涙を浮かべて謝罪するマークにレンは、迎えに来てくれてありがとう、と互いの手を取り合っていた。
二人は相変わらず仲が良い。最初は二人に嫉妬したりもしたが、冷静になって二人を見ると、二人の関係は色恋よりも、主人に懐く大型犬のようだな。
さて、こんなところに長いは無用だ。
面倒だが拘束した拉致犯らも、連れて行かねばならない。
連行する為に拘束を掛け直して居ると、レンが馬車に積みっぱなしだったアルサク城下で買ったという調味料と、見たことのない文字の書かれた包みが詰め込まれた袋を、持って帰りたいと言ってきた。
可愛い番のおねだりならば、そんな事くらい朝飯前だ。
ただ、あまり量が多いと移動の邪魔になる為、一応荷物を確認してみた。
城下で買った物は、マークも覚えがあったようだが、袋に入った包みの中身がなんだか分からない。
これは何だ?と首を傾げていると、レンが耳打ちしてくれたのは「アウラ様からのお土産なんです」と予想の上を行く話しだった。
予想を超え過ぎて聞き直してしまったくらいだ。
レンはアルサクの城下で、アガスから瘴気の攻撃を受け意識を失い、穢れからレンを守る為にアウラ神に呼ばれたのだと語った。
袋の中身はその時に貰った物らしい。
「私も冗談かと思ってたのですが、本当に持たせてくれるとは思いませんでした。異界のお菓子なのですが、どれも美味しいので、後で皆さんと一緒に食べましょうね」と笑顔で言われても、やはり理解が追いつかず、取り敢えず考えることは放棄して、馬車からレンが持って行きたいと言った物は、全てロロシュのアイテムバックに詰め込ませた。
馬車のあった部屋から出た途端、巨大蜘蛛がみっしり詰まった氷塊を見たレンが、目を回してしまったこと。
床を埋め尽くストーンリザードが、レンが浄化を掛けながら歌を唄うと、その大半がヤモリに姿を変え、内心「嘘だろ?」と思ったこと。
それを見た拉致犯達が床に頭を擦り付けて、レンを神だと崇め許しを請う様が滑稽且つ身勝手で、胸が冷えたこと。
その他の魔獣は、レンが泉を浄化した影響か姿を消していたが、代わりにもう直ぐ出口、と言うところで今まで確認されていなかったレイスが現れ、討伐にレンが協力してくれた事等々、理解の範疇を越える出来事を経験しつつ、地上に戻る事ができた。
俺にとっては、腕の中に番を取り戻した事が最重要事項なので、その他は瑣末な事だ。
地上で待機していたモーガンとミュラー以下第2の部下達は、レンの無事な姿を見ると、大いに喜んでくれた。
それを見たレンは、こんなに大勢の人に迷惑をかけて申し訳ないと、恐縮していたが、瞳にうっすらと涙が浮かんでいたから、感動もしていたのだと思う。
モーガンから洞窟内の様子を聞かれ、すたんぴーどの危険が無くなったと伝えると「そこの処をもっと詳しく」と詰め寄られた。
何ヶ月も警戒を続けていたモーガンからすれば唐突すぎる話で、詳しい話を聞きたがるのは当然だ。
俺も報告の重要性は熟知している。
だが今は、最下層から地上まで浄化をし続けたレンを休ませることが先決だ。
それにはモーガンも同意してくれて、一旦用意された天幕に落ち着く事となった。
「俺はモーガンと話してくるから、君はゆっくり休んでいてくれ」
「アレクさんも疲れているのに、私ばかりいいのでしょうか?」
「なに、俺達ははこれが仕事だからな」
と言って柔らかな頬にキスを落とすと、レンは「早く帰ってきてね」とキスを返してくれた。
モジモジと恥ずかしそうにする姿が愛しくて、全ての責任を放棄してしまいたくなった。
今日くらい多めに見てくれても良くないか?
「・・・はあ・・レン愛してる」
久々に味わう番との口付けに、場所も忘れて俺は夢中になった。
震える舌先も熱い吐息も、全てが蜜よりも甘く、呑み下す唾液が干からびた命を蘇らせるようだった。
しかし、熱に浮かされ襟から手を滑り込ませようとして、流石にレンに叱られてしまった。
細い指で俺の頬を抓りながら「めッ!」なんて言われても、煽っているとしか思えないのだが、朱に染まった頬を膨らませ、毛を逆立てた子猫のように威嚇する姿に、レンを取り戻した実感が湧いた。
少々バツの悪い思いをしながら、レンに回復薬を渡し休んでいるように言って、馬車を降りると、赤い顔をしたマークとシッチンに顔を背けられ、ロロシュはニヤニヤしながら「お熱いことで」と揶揄ってきた。
まぁ、全員獣人で耳が良いから、中のことも筒抜けだろうが、そこは知らぬふりをするのが礼儀ではないか?
「誰か口を割ったか?」
「・・・・」
「どうした?」
「いや、あまりの落差にどうしたもんかと 痛って!何すんだよ!」
俺が蹴りを入れると、脛を押さえてロロシュは蹲った。
マークが怒るのも無理はない。
コイツはデリカシーを覚えた方がいい。
「で?どうなんだ?」
「どなた様も卑しい獣とは、口をききたくねぇそうだ!」
ロロシュは脛を撫でながら、縛りあげた拉致犯に侮蔑の籠った目を向けた。
身元に繋がりそうな所持品は無くかったが、アガスが関与していた事で神殿を押さえ込む口実はできた。
更に拉致犯が持っていたという薬瓶には見覚えがあった。
「閣下はこれが何だか知ってるのか?」
「同じものとは断言できない。だがギデオン達を中毒にした薬に似ているな」
「あの魔薬か」
あの薬については、緘口令を敷いたのだが、影なら知っていても当然か。
「当時、販売組織を壊滅させ流通も禁止したが、甘かったようだな」
「金になるなら抜け道を探すもんだろ?」
「まぁそうだな。何か情報は?」
「それらしい話しはいくつかあるな。オレはそっちには関わってなかったから、詳しく聞きたいなら陛下の許可がいる」
「そうか」
この魔薬は、それなりに高価だった。
こんな金の無さそうな奴が手を出せるとは思えんが・・・ウィリアムも何処まで把握しているのか。
オレ一人で頭を抱えてもどうにもならん、
全ては帰ってからだ。
それに早く帰えって、思う存分レンを愛でなければ!
レンとマークの再会は、レンを護れなかった、と涙を浮かべて謝罪するマークにレンは、迎えに来てくれてありがとう、と互いの手を取り合っていた。
二人は相変わらず仲が良い。最初は二人に嫉妬したりもしたが、冷静になって二人を見ると、二人の関係は色恋よりも、主人に懐く大型犬のようだな。
さて、こんなところに長いは無用だ。
面倒だが拘束した拉致犯らも、連れて行かねばならない。
連行する為に拘束を掛け直して居ると、レンが馬車に積みっぱなしだったアルサク城下で買ったという調味料と、見たことのない文字の書かれた包みが詰め込まれた袋を、持って帰りたいと言ってきた。
可愛い番のおねだりならば、そんな事くらい朝飯前だ。
ただ、あまり量が多いと移動の邪魔になる為、一応荷物を確認してみた。
城下で買った物は、マークも覚えがあったようだが、袋に入った包みの中身がなんだか分からない。
これは何だ?と首を傾げていると、レンが耳打ちしてくれたのは「アウラ様からのお土産なんです」と予想の上を行く話しだった。
予想を超え過ぎて聞き直してしまったくらいだ。
レンはアルサクの城下で、アガスから瘴気の攻撃を受け意識を失い、穢れからレンを守る為にアウラ神に呼ばれたのだと語った。
袋の中身はその時に貰った物らしい。
「私も冗談かと思ってたのですが、本当に持たせてくれるとは思いませんでした。異界のお菓子なのですが、どれも美味しいので、後で皆さんと一緒に食べましょうね」と笑顔で言われても、やはり理解が追いつかず、取り敢えず考えることは放棄して、馬車からレンが持って行きたいと言った物は、全てロロシュのアイテムバックに詰め込ませた。
馬車のあった部屋から出た途端、巨大蜘蛛がみっしり詰まった氷塊を見たレンが、目を回してしまったこと。
床を埋め尽くストーンリザードが、レンが浄化を掛けながら歌を唄うと、その大半がヤモリに姿を変え、内心「嘘だろ?」と思ったこと。
それを見た拉致犯達が床に頭を擦り付けて、レンを神だと崇め許しを請う様が滑稽且つ身勝手で、胸が冷えたこと。
その他の魔獣は、レンが泉を浄化した影響か姿を消していたが、代わりにもう直ぐ出口、と言うところで今まで確認されていなかったレイスが現れ、討伐にレンが協力してくれた事等々、理解の範疇を越える出来事を経験しつつ、地上に戻る事ができた。
俺にとっては、腕の中に番を取り戻した事が最重要事項なので、その他は瑣末な事だ。
地上で待機していたモーガンとミュラー以下第2の部下達は、レンの無事な姿を見ると、大いに喜んでくれた。
それを見たレンは、こんなに大勢の人に迷惑をかけて申し訳ないと、恐縮していたが、瞳にうっすらと涙が浮かんでいたから、感動もしていたのだと思う。
モーガンから洞窟内の様子を聞かれ、すたんぴーどの危険が無くなったと伝えると「そこの処をもっと詳しく」と詰め寄られた。
何ヶ月も警戒を続けていたモーガンからすれば唐突すぎる話で、詳しい話を聞きたがるのは当然だ。
俺も報告の重要性は熟知している。
だが今は、最下層から地上まで浄化をし続けたレンを休ませることが先決だ。
それにはモーガンも同意してくれて、一旦用意された天幕に落ち着く事となった。
「俺はモーガンと話してくるから、君はゆっくり休んでいてくれ」
「アレクさんも疲れているのに、私ばかりいいのでしょうか?」
「なに、俺達ははこれが仕事だからな」
と言って柔らかな頬にキスを落とすと、レンは「早く帰ってきてね」とキスを返してくれた。
モジモジと恥ずかしそうにする姿が愛しくて、全ての責任を放棄してしまいたくなった。
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