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アレクサンドル・クロムウェル
タマス平原/ 再会
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「どうすんだよこれ」
「たしかに、扉を塞いでしまっていますね」
蜘蛛の群れを始末はしたが、次に進む為の扉は氷の下だ。
氷を消すのは簡単だが、まだ息のある蜘蛛がいると始末が面倒だ。
それに蟲は寒さに弱く、今隠れている蜘蛛も、わざわざ氷塊に近付いたりしないだろう。
もう暫くは氷漬けのままでいいな。
「なんでもいいけど早くしてくれ。オレ寒いのダメなんだよ」
ぼやくロロシュは、両腕で抱えた身体を小刻みに震わせ、唇も真っ青だ。
そう言えば、水をかけた時も震えてたな。
「・・・お前・・・蛇だったのか?」
「知らなかったのかよ?」
「嗅いだ事のない匂いだとは思っていたのだが」
「オレはパールパイソンだ!」
「あぁ。それは悪かった」
パールパイソンの獣人は初めてだ。
寒さに弱いから南部にしか居ないと思っていたのだが、流石にこれは早くしてやらないと可哀想だな。
しかし、マークが得意なのは氷だぞ?
良いのか?
3人に下がっていろ合図をし、十分に距離を取ったところで、身体強化を掛けた右足で分厚い氷を踏み抜いた。
ゴッ!と音を立てた氷は、オレを中心に放射状にヒビが入りそのまま陥没した。
氷ごと砕いて仕舞えば、蜘蛛に息が有ろうと関係ない。あと数回繰り返し、砕いた分を消していけば扉への通路もできる。
氷を穿ち扉を塞いだ土砂の前にたどり着いた俺は、上で待っていた3人を呼び寄せた。
先頭を切って通路に飛び込んだは良いが、氷に足を取られたシッチンが、派手に転んだ体勢のまま、俺の前まで滑り落ちてきた。
「大丈夫か?」
「はい!すっげぇ楽しかったです!」
「・・・そうか、よかったな」
「はいっ!」
ニコニコしながら立ち上がったシッチンは、領地に帰ったら子供達を集めて、同じ様に遊ばせたいと話している。
普通の子供の遊びは知らんが、 "子供というものは、氷塊のてっぺんから滑り落として良いものなのか?" と思いもしたが、シッチンが本当に楽しそうにしているから、多分良いのだろう。
氷の扱いに慣れているマークは、危なげなく降りてきたが、ロロシュは自分で作った炎を抱え、おっかなびっくり降りてきた。
「う~さむ~、早く行こうぜ」
「そうですね、これは違う意味でもゾッとします」とマークは周囲を取り囲んだ氷漬けの巨大蜘蛛に目を向けている。
土砂のお陰で氷を砕いた音は扉の向こうに漏れていないはず。
「ここに来る迄、扉があったのは此処だけだ。この奥にレンか拉致犯がいる可能性が高いと思う。ロロシュ中の確認だ」
「了~解」
ロロシュは両手で抱えた炎を消すと、薄く開いた口から舌を覗かせ、白い息を吐きながら探知魔法を掛けた。
蛇は舌で獲物を探すのだったか?
舌を出すのは、蛇だからか?
氷で冷やされた頬が次第に白くなり、指先が震え出した所で、ロロシュは探知を終えたようだ。
「さむッ!つーか、もう肌が痛い」
「中はどうだ?」
「入って中央左寄り7ミーロに6人、なんだかよく分からねーのが一体一緒に居る。右寄り10ミーロの処にでかい箱が有って、その中に一人蹲ってる状態だ。形から言って馬車じゃねーかな」
ロロシュは両手に炎を作り直し、身体を温めながら報告している。
蛇だから仕方がないが、こう寒さに弱くては問題だな。
「レン様でしょうか?」
「馬車の中ならおそらくな、他は?」
「よく分からねぇな。6人の後ろに、何かが立ち上がったように見えたんだが、すぐに消えちまった。あと6人が立ってるとこの天井近くにでけえ蜘蛛がいる」
「そうか・・・中に向かって、この土砂を吹き飛ばしたら、馬車に当たるか?」
「・・・正面はやばいな」
「分かった。左に飛ばすことにしよう」
右手に剣を持ち左手を土砂に当てると、後ろの3人も集中したのが伝わってきた。
「一気に制圧する」
「「「了解」」」
練り上げた魔力を解放した。
ゴウッ!! 解放された魔力が唸り、土砂と扉壁の一部を部屋の中へと吹き飛ばした。
それと同時に壁の向こうへと走り込むと、右手の奥に結界に守られた馬車が見えた。
「レンッ!!」
爆風で揺れる馬車に駆け寄ると、窓に小さな手を張り付かせた、愛しい番の顔が見えた。
「アレクさん!!」
無事だった!!
よかった。本当によかった。
「俺が良いと言うまで、外に出るな!」
コクコクと頷く頬に涙の跡が光っている。
クソッ!!
俺の番を泣かせやがって!!
状況を確認するために、左右に視線を走らせた。
馬車の奥に二人、ドス黒い水を吐き出す溜池の近くにも二人が爆風で吹き飛ばされて倒れている。
残るは3人?
ロロシュは人間は6人と言わなかったか?
まぁいい。倒して仕舞えば人数など関係ない。
爆風で破れた巣をつたい、通常より二回りはでかいアラクネがこちらに近づいて来る。
「@%&$##!!」
馬車の中から、レンの言葉になっていない悲鳴が聞こえて来た。
やっぱり蜘蛛はダメか。
レンの心の平安の為にも
さっさと片付けてしまおう。
アラクネはさっきの爆風で警戒しているのか、離れた所で止まりパンパンに膨らんだ尻を向け糸の束を飛ばして来た。
飛んでくる糸の束を炎で撃ち落とし、反対にアラクネ目掛け雷撃を撃ち込んだ。
外れた何発かが、蜘蛛の糸を通り青白く発光しながら、天井に描かれたドラゴンを浮かび上がらせた。
感電したアラクネがビクビクと痙攣し、毛むくじゃらの脚を丸めると湿った音を立てて床に落下して来た。
すかさず、胸と腹の繋ぎ目に炎を纏わせた剣を突き立て、力任せに両断し命を刈り取った。
馬車に目を向けると、胸の前で両手を握り締めたレンが見えた。
そのままそこにいろと手で合図を送り、マーク達の方を振り向いた。
マークが氷の槍を飛ばし、ローブ姿の一人が結界で槍を弾いたが、死角から魔力を乗せた暗器を飛ばしたロロシュが、相手を仕留めるのが見えた。
シッチンの相手は同じ様なローブを着ているが、傭兵風な剣の使い手だ。
シッチンと互角の腕の様だがマークとロロシュが加勢に入った。
仕留めるのも時間の問題だ。
残った一人はアガスだった。
「アガスッ!!」
「閣下。ご機嫌麗しゅう」
追い詰められているはずのアガスが、余裕たっぷりだ。
「お前の目的はなんだ!?」
「樹界の王が、非才な私の望みに気を掛けて下さるとは、光栄ですな」
「舐めてるのか?」
「滅相もない」
ニタニタと笑いながら、アガスは一歩後ろに下がった。
「言いたくないなら構わない。後で幾らでも時間を掛けてやる」
「私を捕まえるおつもりで?」
アガスがまた一歩後ろに下がった。
「この場で首を落としてもいいぞ?」
「アレクさん!避けて!!」
アガスに向かい剣を振おうとした俺は、レンの叫びに反射的に横に飛んだ。
アガスと俺の間に、レンが滑り込むように割り込んで、アガスに向かって両腕を広げて立ちはだかった。
「レン!下がれ!!」
「ダメです!!みんな下がって!!」
両腕を広げるレンの体から、浄化の光が溢れ出した。
「おやおや。不意打ちが失敗いてしまいました」
ニタニタと笑うアガスの体から、渦を巻いて瘴気が立ち昇り、俺に向かってウネウネと伸びて来ていた。
触手のような動きをする瘴気が、レンの浄化の光に触れ消されては、新たな瘴気が伸びて来る。
それだけじゃ無い。溜池からも瘴気が湧き出し棚引いている。
「なんだこれは?」
「この人はもうアガスさんじゃありません」
「たしかに、扉を塞いでしまっていますね」
蜘蛛の群れを始末はしたが、次に進む為の扉は氷の下だ。
氷を消すのは簡単だが、まだ息のある蜘蛛がいると始末が面倒だ。
それに蟲は寒さに弱く、今隠れている蜘蛛も、わざわざ氷塊に近付いたりしないだろう。
もう暫くは氷漬けのままでいいな。
「なんでもいいけど早くしてくれ。オレ寒いのダメなんだよ」
ぼやくロロシュは、両腕で抱えた身体を小刻みに震わせ、唇も真っ青だ。
そう言えば、水をかけた時も震えてたな。
「・・・お前・・・蛇だったのか?」
「知らなかったのかよ?」
「嗅いだ事のない匂いだとは思っていたのだが」
「オレはパールパイソンだ!」
「あぁ。それは悪かった」
パールパイソンの獣人は初めてだ。
寒さに弱いから南部にしか居ないと思っていたのだが、流石にこれは早くしてやらないと可哀想だな。
しかし、マークが得意なのは氷だぞ?
良いのか?
3人に下がっていろ合図をし、十分に距離を取ったところで、身体強化を掛けた右足で分厚い氷を踏み抜いた。
ゴッ!と音を立てた氷は、オレを中心に放射状にヒビが入りそのまま陥没した。
氷ごと砕いて仕舞えば、蜘蛛に息が有ろうと関係ない。あと数回繰り返し、砕いた分を消していけば扉への通路もできる。
氷を穿ち扉を塞いだ土砂の前にたどり着いた俺は、上で待っていた3人を呼び寄せた。
先頭を切って通路に飛び込んだは良いが、氷に足を取られたシッチンが、派手に転んだ体勢のまま、俺の前まで滑り落ちてきた。
「大丈夫か?」
「はい!すっげぇ楽しかったです!」
「・・・そうか、よかったな」
「はいっ!」
ニコニコしながら立ち上がったシッチンは、領地に帰ったら子供達を集めて、同じ様に遊ばせたいと話している。
普通の子供の遊びは知らんが、 "子供というものは、氷塊のてっぺんから滑り落として良いものなのか?" と思いもしたが、シッチンが本当に楽しそうにしているから、多分良いのだろう。
氷の扱いに慣れているマークは、危なげなく降りてきたが、ロロシュは自分で作った炎を抱え、おっかなびっくり降りてきた。
「う~さむ~、早く行こうぜ」
「そうですね、これは違う意味でもゾッとします」とマークは周囲を取り囲んだ氷漬けの巨大蜘蛛に目を向けている。
土砂のお陰で氷を砕いた音は扉の向こうに漏れていないはず。
「ここに来る迄、扉があったのは此処だけだ。この奥にレンか拉致犯がいる可能性が高いと思う。ロロシュ中の確認だ」
「了~解」
ロロシュは両手で抱えた炎を消すと、薄く開いた口から舌を覗かせ、白い息を吐きながら探知魔法を掛けた。
蛇は舌で獲物を探すのだったか?
舌を出すのは、蛇だからか?
氷で冷やされた頬が次第に白くなり、指先が震え出した所で、ロロシュは探知を終えたようだ。
「さむッ!つーか、もう肌が痛い」
「中はどうだ?」
「入って中央左寄り7ミーロに6人、なんだかよく分からねーのが一体一緒に居る。右寄り10ミーロの処にでかい箱が有って、その中に一人蹲ってる状態だ。形から言って馬車じゃねーかな」
ロロシュは両手に炎を作り直し、身体を温めながら報告している。
蛇だから仕方がないが、こう寒さに弱くては問題だな。
「レン様でしょうか?」
「馬車の中ならおそらくな、他は?」
「よく分からねぇな。6人の後ろに、何かが立ち上がったように見えたんだが、すぐに消えちまった。あと6人が立ってるとこの天井近くにでけえ蜘蛛がいる」
「そうか・・・中に向かって、この土砂を吹き飛ばしたら、馬車に当たるか?」
「・・・正面はやばいな」
「分かった。左に飛ばすことにしよう」
右手に剣を持ち左手を土砂に当てると、後ろの3人も集中したのが伝わってきた。
「一気に制圧する」
「「「了解」」」
練り上げた魔力を解放した。
ゴウッ!! 解放された魔力が唸り、土砂と扉壁の一部を部屋の中へと吹き飛ばした。
それと同時に壁の向こうへと走り込むと、右手の奥に結界に守られた馬車が見えた。
「レンッ!!」
爆風で揺れる馬車に駆け寄ると、窓に小さな手を張り付かせた、愛しい番の顔が見えた。
「アレクさん!!」
無事だった!!
よかった。本当によかった。
「俺が良いと言うまで、外に出るな!」
コクコクと頷く頬に涙の跡が光っている。
クソッ!!
俺の番を泣かせやがって!!
状況を確認するために、左右に視線を走らせた。
馬車の奥に二人、ドス黒い水を吐き出す溜池の近くにも二人が爆風で吹き飛ばされて倒れている。
残るは3人?
ロロシュは人間は6人と言わなかったか?
まぁいい。倒して仕舞えば人数など関係ない。
爆風で破れた巣をつたい、通常より二回りはでかいアラクネがこちらに近づいて来る。
「@%&$##!!」
馬車の中から、レンの言葉になっていない悲鳴が聞こえて来た。
やっぱり蜘蛛はダメか。
レンの心の平安の為にも
さっさと片付けてしまおう。
アラクネはさっきの爆風で警戒しているのか、離れた所で止まりパンパンに膨らんだ尻を向け糸の束を飛ばして来た。
飛んでくる糸の束を炎で撃ち落とし、反対にアラクネ目掛け雷撃を撃ち込んだ。
外れた何発かが、蜘蛛の糸を通り青白く発光しながら、天井に描かれたドラゴンを浮かび上がらせた。
感電したアラクネがビクビクと痙攣し、毛むくじゃらの脚を丸めると湿った音を立てて床に落下して来た。
すかさず、胸と腹の繋ぎ目に炎を纏わせた剣を突き立て、力任せに両断し命を刈り取った。
馬車に目を向けると、胸の前で両手を握り締めたレンが見えた。
そのままそこにいろと手で合図を送り、マーク達の方を振り向いた。
マークが氷の槍を飛ばし、ローブ姿の一人が結界で槍を弾いたが、死角から魔力を乗せた暗器を飛ばしたロロシュが、相手を仕留めるのが見えた。
シッチンの相手は同じ様なローブを着ているが、傭兵風な剣の使い手だ。
シッチンと互角の腕の様だがマークとロロシュが加勢に入った。
仕留めるのも時間の問題だ。
残った一人はアガスだった。
「アガスッ!!」
「閣下。ご機嫌麗しゅう」
追い詰められているはずのアガスが、余裕たっぷりだ。
「お前の目的はなんだ!?」
「樹界の王が、非才な私の望みに気を掛けて下さるとは、光栄ですな」
「舐めてるのか?」
「滅相もない」
ニタニタと笑いながら、アガスは一歩後ろに下がった。
「言いたくないなら構わない。後で幾らでも時間を掛けてやる」
「私を捕まえるおつもりで?」
アガスがまた一歩後ろに下がった。
「この場で首を落としてもいいぞ?」
「アレクさん!避けて!!」
アガスに向かい剣を振おうとした俺は、レンの叫びに反射的に横に飛んだ。
アガスと俺の間に、レンが滑り込むように割り込んで、アガスに向かって両腕を広げて立ちはだかった。
「レン!下がれ!!」
「ダメです!!みんな下がって!!」
両腕を広げるレンの体から、浄化の光が溢れ出した。
「おやおや。不意打ちが失敗いてしまいました」
ニタニタと笑うアガスの体から、渦を巻いて瘴気が立ち昇り、俺に向かってウネウネと伸びて来ていた。
触手のような動きをする瘴気が、レンの浄化の光に触れ消されては、新たな瘴気が伸びて来る。
それだけじゃ無い。溜池からも瘴気が湧き出し棚引いている。
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