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アレクサンドル・クロムウェル

討伐とお留守番/羽ペン?

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 レンを連れて、逃げてしまおうか。

 ・・・・・それ、アリだな。

 アウラ神にレンが託された使命は
 “瘴気”を消すことだ。

 俺が居れば
 騎士団と行動を共にする必要は
 ないのではないか?

 レンと2人、国中を旅しながら
 瘴気を消して回る。

 いいな、それ!!
 ゼクトバの港町とか
 新婚旅行っぽくて、良くないか?

 よし。
 今回とタマスの件が片付いたら
 辞表を出そう。

 そしてレンと2人きりの
 楽しい新婚旅行だ!!

 などと考えながら、文殿の司書に選んだ本を渡して、貸し出しの手続きを取る。

 貸し出し名簿に記入する司書が、レンのために俺が選んだ、恋愛小説と俺の顔を見比べて、愕然としているが、どうでも良いから、早くして欲しい。

 俺は、本当に不本意だが、番との大切な時間が削られるのだ。1ミル・1セルが貴重だからな。

「「お帰りなさい」」
「戻った・・・」

 仕事帰りを誰かが迎えてくれる。
 それ自体嬉しいことで
 迎えてくれるのが、番であれば
 尚更嬉しいし、癒される。
 
 癒される筈なのだが。

「何故。お前がここに居る」
 そこには、レンと向かい合って座り、茶を啜るウィリアムが居た。

「何故?なぜって、アレクが討伐に出てる間の、相談に来たに決まってるじゃない」
「相談?」
「やだな。アレクはレンちゃんがお留守番してる間、独りぼっちにする気?お世話する侍従も選ばなくちゃ。アレクのところの使用人は、まだ来ないんでしょ?」

 言われてみればその通りだ。
 大公領は皇都からかなり離れている。途中ポータルを利用しても、あと何日も掛かるだろう。

「心配しなくても、2人の甘々な時間の邪魔はしないよ?用が済んだら、さっさと退散する」
「当たり前だ」

 ウィリアムをひと睨みしてから、レンの指先に口付けを落とし、膝の上に座らせると、干からびた心に、レンの成分が染み渡り生き返った気分だ。

「なんかもう・・・獣人ってあれだよね」

 何故、レンに気の毒そうな目を向ける?
 その前に、レンをジロジロ見るな!

「レンちゃん。がんばって!!」
「し・・・精進しております」
 レンは頬を染め、俯いたまま返事を返した。

「・・・・用件」
「あ~はいはい。怒んないでよ。取り敢えず、レンちゃんの警護は、今のままでいいよね?どうせアレクが、結界とかガンガン掛けていくもんね。っで侍従の人選なんだけど」
「誰か、候補がいるのか?」
「ラドクリフはどうかなって」

 ラドクリフ?
 名前は聞いた覚えがあるが、顔が思い出せない。

「分からない?羽ペンラドクリフだよ」
「ああ。あいつか」
「あの、羽ペンラドクリフって?」
 レンが不思議そうだ。

「えっと。レンちゃん羽ペンって分かる?」
 レンは知っていると頷いた。

「そしたらさ。羽ペンって使うの、字を書く羽柄の所と、握る羽軸の所だけで、羽弁は飾りっていうか、あっても邪魔じゃない?」
「まぁ、そうですね?」
「だから、あったら便利だけど、なくても良い部分が多くて。邪魔だけど、いらないとも言えない、微妙な人って事」
「はぁ」
 とレンは、あっけに取られたように、ポカンとしている。

「だが、あいつは今、侍従長の補佐じゃなかったか?」
「うん。だから息子の方ね。親に似て、言われた事しかしないけど、仕事は真面目だし、余計なことに、首を突っ込んだりしないから、丁度いいかなって」

「ふむ」

 ラドクリフは、あの粛清の嵐を、毒にも薬にもならない人柄が、功を奏して乗り切った人族だ。今の出世は、上級侍従の多くが排除された結果でもある。

「他に居ないのか?」
「そうだねぇ。い・ま・は・難しいかな?」

 あぁ。火消しがまだ、だからか。

「うちの者が到着するまでの間だけだ。寝室への立ち入りは認めない。やるのは部屋の掃除と洗濯、食事や茶の配膳のみだ」
 これにウィリアムが呆れ顔になった。

「幾ら何でも、心狭過ぎない?髪の手入れとか、着替えの手伝いとか、どうするの?」
「あの・・・それは問題ないです」
 レンがおずおずと手を上げた。

「あちらでは、元々全部自分でやってましたし、今は部屋でゴロゴロしているだけなので、逆に気が楽というか・・・」

 気が楽、と言うのには少し引っかかるが
 レンが俺の言い分を認めてくれた。
 これで一安心だ。

「そう言う事だ」
「・・・まぁ、2人が良いって言うなら良いけど、でもさ」
 と納得いかないのか、ウィリアムはブツブツと文句を言い続けた。
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