70 / 527
アレクサンドル・クロムウェル
討伐とお留守番 / 違和感
しおりを挟む
ダンプティーに、優しく話しかけるレンの姿に、ほのぼのした気分で、手紙に目を通した。
手紙は、やはりマークからの物で、帰還の連絡かと思ったら、逆に帰還が遅れるとある。
その理由は、ミーネの森で魔獣が暴れているから、らしい。
そういえば、とレンを連れて森を出るときに出会した、ライノとジャイアントボアの事を思い出した。
しつこかったジャイアントボアは、粉々にしてやったし、ライノも3頭丸焦げにしてやった。
残りのライノだけなら、マークがいて梃子摺る相手では無いはずだが・・・。
「ムースと・・・バーブ?」
ミーネの森近辺なら、目撃情報があったムースが出るのは分かる。だが、バーブはもっと南に生息する魔獣の筈だ・・・・何かおかしい。
“すたんぴーど”の影響か?
第4のアレナ砦にも、連絡はして有るそうだが・・・・。
モーガンとも話した方が、良いかもしれんな。
そう考えながら、レンを見ると、気持ちよさそうに羽を膨らませた、ダンプティーの首を指で掻いてやっている。
鳥の扱いが上手いな。
鳥・・・・・・
はと胸モーガン・・・。
「クックク」
昨日の事を思い出して、喉が鳴ってしまった。
「?・どうしました?」
コホッ・・・いや、何でも無い。朝食の後、モーガンと会って来ようと思うのだが、良いだろうか?」
「それは全然構いませんけど、何かありました?」
「今遠征に出ているマークが、気になることを言ってきた」
「気になること?」
「魔獣の動きがおかしいらしくてな?神託の件も有るから、話をしておこうかと」
「魔獣の動き?」
とレンは小首を傾げている。
「もっと南に居るはずの、バーブと言う魔獣が出たらしくてな?」
「渡りとかじゃなくて?」
「違うな」
「ふーん」
と言つつレンは、顔の前で手を振った。
あの加護で、確認しているようだ。
「バーブ・・・狒狒?」
「なんと書いてある?」
「えっと。バーブは帝国南部に主に棲息する、狒狒の魔獣。群れを持ち、雑食。縄張り意識が強く、求愛行動は糞を渡すこと?!」
「そっそうか」
「・・・この情報いります?」
と半眼で空を睨んでいる。
「いらんな」
「ですよね~」
とレンはテーブルに突っ伏した。
そのレンの髪を、ツンツンと嘴で啄くダンプティーを、鷲掴みにして窓から放り出した。
レンの髪に触れて良いのは
俺だけだ!
「あの・・・いいんですか?」
とレンは窓の外を指さしている。
「問題ない。団の鳩舎に戻って、餌を貰うはずだ」
「そうなんだ・・・ダンプティー・・鳥型の魔獣。卵から世話をすると人に懐きやすく。通信鳥として使役出来る。雑食。好物はタラント?」
「タラントは、このくらいの蜘蛛だな」
大きさを示して見せると、レンの顔が引き攣った。
「そんな・・・大きな蜘蛛が居るんですね?」
「タラントは小さい方だぞ?メイジアクネは俺よりデカいからな」
「ヒッ!」
目を見開いたレンが、両手で自分の口を隠した。
「だッ大丈夫か?」
「・・・・大丈夫です、お気遣いなく・・・お風呂入ってきます」
どうやらレンは、蜘蛛が苦手なようだ。
表情が抜けて、ヨロヨロしているが、本当に大丈夫だろうか?
ダンプティーの蜘蛛の食い方は・・・・
教えない方が良いな。
侍従を通じて、モーガンに面会を求めると、今日の午前中は執務室にいるとの事だった。
そこで朝食後、頃合いを見てモーガンの執務室を訪ねた。
「何故バーブが・・・」
「さあな。だが、あの森の魔獣は、どこかおかしい」
「おかしいとは?」
その問いに、森での様子を話して聞かせた。
「ジャイアントボアが、そこまで執拗に?」
「あぁ。神殿を探して歩き回った三日間は、ウロシュとコネリしか見なかった。それが神殿を出た途端、大型魔獣に続けて出会す、と言うのもな」
「たしかに、違和感があるな」
とモーガンも顎を摘んで考え込んでいる。
「何かある、と断言は出来んが、タマスの事もある、注意は必要かと思ってな」
「分かった」
「何か別の情報が入ったら、また連絡する」
ではこれで。と腰を上げようとして、モーガンに引き止められた。
「まだ何か?」
「・・・・昨日は、愛し子様の前で、声を荒げてしまい、大人気ないことをした。申し訳ない」と頭を下げてきた。
本当に真面目な奴だ。
「いや。お陰でレンとジルベールの話が出来た。手間を掛けたな」
それを聞いたモーガンが、気遣わし気な顔になった。
「愛し子様は、なんと?」
「特になにも・・・・」
俺の顔を見て、レンが受け入れてくれたと、分かったのだろう。モーガンの目元が微かに緩んだ。
「そうか・・・・思う所は有るだろうが、私からすれば、貴方は国を救ってくれた英雄だ。感謝している。それを忘れないで欲しい」
と頭を下げた。
「やめてくれ」
「・・・・クロムウェル殿、貴方は強い、強すぎるのだ。貴方の強さは災害級だ。だから弱い者達は、貴方を恐れ、忌避する。だが、それも彼の方と共に有れば、変わっていくだろう」
お節介だったな。と苦笑するモーガンにその通りだ、と返して部屋を出た。
はと胸モーガンは、良い奴だった。
手紙は、やはりマークからの物で、帰還の連絡かと思ったら、逆に帰還が遅れるとある。
その理由は、ミーネの森で魔獣が暴れているから、らしい。
そういえば、とレンを連れて森を出るときに出会した、ライノとジャイアントボアの事を思い出した。
しつこかったジャイアントボアは、粉々にしてやったし、ライノも3頭丸焦げにしてやった。
残りのライノだけなら、マークがいて梃子摺る相手では無いはずだが・・・。
「ムースと・・・バーブ?」
ミーネの森近辺なら、目撃情報があったムースが出るのは分かる。だが、バーブはもっと南に生息する魔獣の筈だ・・・・何かおかしい。
“すたんぴーど”の影響か?
第4のアレナ砦にも、連絡はして有るそうだが・・・・。
モーガンとも話した方が、良いかもしれんな。
そう考えながら、レンを見ると、気持ちよさそうに羽を膨らませた、ダンプティーの首を指で掻いてやっている。
鳥の扱いが上手いな。
鳥・・・・・・
はと胸モーガン・・・。
「クックク」
昨日の事を思い出して、喉が鳴ってしまった。
「?・どうしました?」
コホッ・・・いや、何でも無い。朝食の後、モーガンと会って来ようと思うのだが、良いだろうか?」
「それは全然構いませんけど、何かありました?」
「今遠征に出ているマークが、気になることを言ってきた」
「気になること?」
「魔獣の動きがおかしいらしくてな?神託の件も有るから、話をしておこうかと」
「魔獣の動き?」
とレンは小首を傾げている。
「もっと南に居るはずの、バーブと言う魔獣が出たらしくてな?」
「渡りとかじゃなくて?」
「違うな」
「ふーん」
と言つつレンは、顔の前で手を振った。
あの加護で、確認しているようだ。
「バーブ・・・狒狒?」
「なんと書いてある?」
「えっと。バーブは帝国南部に主に棲息する、狒狒の魔獣。群れを持ち、雑食。縄張り意識が強く、求愛行動は糞を渡すこと?!」
「そっそうか」
「・・・この情報いります?」
と半眼で空を睨んでいる。
「いらんな」
「ですよね~」
とレンはテーブルに突っ伏した。
そのレンの髪を、ツンツンと嘴で啄くダンプティーを、鷲掴みにして窓から放り出した。
レンの髪に触れて良いのは
俺だけだ!
「あの・・・いいんですか?」
とレンは窓の外を指さしている。
「問題ない。団の鳩舎に戻って、餌を貰うはずだ」
「そうなんだ・・・ダンプティー・・鳥型の魔獣。卵から世話をすると人に懐きやすく。通信鳥として使役出来る。雑食。好物はタラント?」
「タラントは、このくらいの蜘蛛だな」
大きさを示して見せると、レンの顔が引き攣った。
「そんな・・・大きな蜘蛛が居るんですね?」
「タラントは小さい方だぞ?メイジアクネは俺よりデカいからな」
「ヒッ!」
目を見開いたレンが、両手で自分の口を隠した。
「だッ大丈夫か?」
「・・・・大丈夫です、お気遣いなく・・・お風呂入ってきます」
どうやらレンは、蜘蛛が苦手なようだ。
表情が抜けて、ヨロヨロしているが、本当に大丈夫だろうか?
ダンプティーの蜘蛛の食い方は・・・・
教えない方が良いな。
侍従を通じて、モーガンに面会を求めると、今日の午前中は執務室にいるとの事だった。
そこで朝食後、頃合いを見てモーガンの執務室を訪ねた。
「何故バーブが・・・」
「さあな。だが、あの森の魔獣は、どこかおかしい」
「おかしいとは?」
その問いに、森での様子を話して聞かせた。
「ジャイアントボアが、そこまで執拗に?」
「あぁ。神殿を探して歩き回った三日間は、ウロシュとコネリしか見なかった。それが神殿を出た途端、大型魔獣に続けて出会す、と言うのもな」
「たしかに、違和感があるな」
とモーガンも顎を摘んで考え込んでいる。
「何かある、と断言は出来んが、タマスの事もある、注意は必要かと思ってな」
「分かった」
「何か別の情報が入ったら、また連絡する」
ではこれで。と腰を上げようとして、モーガンに引き止められた。
「まだ何か?」
「・・・・昨日は、愛し子様の前で、声を荒げてしまい、大人気ないことをした。申し訳ない」と頭を下げてきた。
本当に真面目な奴だ。
「いや。お陰でレンとジルベールの話が出来た。手間を掛けたな」
それを聞いたモーガンが、気遣わし気な顔になった。
「愛し子様は、なんと?」
「特になにも・・・・」
俺の顔を見て、レンが受け入れてくれたと、分かったのだろう。モーガンの目元が微かに緩んだ。
「そうか・・・・思う所は有るだろうが、私からすれば、貴方は国を救ってくれた英雄だ。感謝している。それを忘れないで欲しい」
と頭を下げた。
「やめてくれ」
「・・・・クロムウェル殿、貴方は強い、強すぎるのだ。貴方の強さは災害級だ。だから弱い者達は、貴方を恐れ、忌避する。だが、それも彼の方と共に有れば、変わっていくだろう」
お節介だったな。と苦笑するモーガンにその通りだ、と返して部屋を出た。
はと胸モーガンは、良い奴だった。
72
お気に入りに追加
1,318
あなたにおすすめの小説
獅子の最愛〜獣人団長の執着〜
水無月瑠璃
恋愛
獅子の獣人ライアンは領地の森で魔物に襲われそうになっている女を助ける。助けた女は気を失ってしまい、邸へと連れて帰ることに。
目を覚ました彼女…リリは人化した獣人の男を前にすると様子がおかしくなるも顔が獅子のライアンは平気なようで抱きついて来る。
女嫌いなライアンだが何故かリリには抱きつかれても平気。
素性を明かさないリリを保護することにしたライアン。
謎の多いリリと初めての感情に戸惑うライアン、2人の行く末は…
ヒーローはずっとライオンの姿で人化はしません。
地味女で喪女でもよく濡れる。~俺様海運王に開発されました~
あこや(亜胡夜カイ)
恋愛
新米学芸員の工藤貴奈(くどうあてな)は、自他ともに認める地味女で喪女だが、素敵な思い出がある。卒業旅行で訪れたギリシャで出会った美麗な男とのワンナイトラブだ。文字通り「ワンナイト」のつもりだったのに、なぜか貴奈に執着した男は日本へやってきた。貴奈が所属する博物館を含むグループ企業を丸ごと買収、CEOとして乗り込んできたのだ。「お前は俺が開発する」と宣言して、貴奈を学芸員兼秘書として側に置くという。彼氏いない歴=年齢、好きな相手は壁画の住人、「だったはず」の貴奈は、昼も夜も彼の執着に翻弄され、やがて体が応えるように……
【R18】人気AV嬢だった私は乙ゲーのヒロインに転生したので、攻略キャラを全員美味しくいただくことにしました♪
奏音 美都
恋愛
「レイラちゃん、おつかれさまぁ。今日もよかったよ」
「おつかれさまでーす。シャワー浴びますね」
AV女優の私は、仕事を終えてシャワーを浴びてたんだけど、石鹸に滑って転んで頭を打って失神し……なぜか、乙女ゲームの世界に転生してた。
そこで、可愛くて美味しそうなDKたちに出会うんだけど、この乙ゲーって全対象年齢なのよね。
でも、誘惑に抗えるわけないでしょっ!
全員美味しくいただいちゃいまーす。
抱かれたい騎士No.1と抱かれたく無い騎士No.1に溺愛されてます。どうすればいいでしょうか!?
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ヴァンクリーフ騎士団には見目麗しい抱かれたい男No.1と、絶対零度の鋭い視線を持つ抱かれたく無い男No.1いる。
そんな騎士団の寮の厨房で働くジュリアは何故かその2人のお世話係に任命されてしまう。どうして!?
貧乏男爵令嬢ですが、家の借金返済の為に、頑張って働きますっ!
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。
それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。
14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。
皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。
この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。
※Hシーンは終盤しかありません。
※この話は4部作で予定しています。
【私が欲しいのはこの皇子】
【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】
【放浪の花嫁】
本編は99話迄です。
番外編1話アリ。
※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。
転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
泡風呂を楽しんでいただけなのに、空中から落ちてきた異世界騎士が「離れられないし目も瞑りたくない」とガン見してきた時の私の対応。
待鳥園子
恋愛
半年に一度仕事を頑張ったご褒美に一人で高級ラグジョアリーホテルの泡風呂を楽しんでたら、いきなり異世界騎士が落ちてきてあれこれ言い訳しつつ泡に隠れた体をジロジロ見てくる話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる