獣人騎士団長の愛は、重くて甘い

こむぎダック

文字の大きさ
上 下
64 / 605
アレクサンドル・クロムウェル

神託の愛し子 / 罰ゲーム?

しおりを挟む
 モーガンが、笑いを押し込めたところで、冷めた茶を入れ直した。

 一口茶を口に含んだレンは、カップから、赤い唇を離し、キリリとした表情で、口を開いた。

「これは私の勘なのですが、アルケリスさんとそのお友達は、私の噂とは別に、念入りに調べた方が良いと思います」
「承りました。手配いたします」
「えッ?」
 レンは素っ頓狂な声を出した。

「どうした?」
「いや、だって、急に調べろとか言われたら、普通、理由とか聞きませんか?まぁ、聞かれても、ただの勘なんですけど・・・」
「普通ならな。だが、君は愛し子だろ?」
「神の御使であられる、愛し子様のお言葉であれば、例え勘でも、調べる価値は有ります」

「えぇ~?!なんですかそれ、もう下手なこと、言えないじゃ無いですか」

 自分の言葉の重みを教えられ、レンは困惑顔だ。

「気にするな。君は今のままでいい」
「そうです。御心のままに、過ごして良いのですよ」

 それを聞いても、レンは思案顔をして居たが、話がモーガンの子供や、伴侶の事に移ると、レンの顔に笑顔が戻った。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 後日譚として、レンの忠告を受けたモーガンは、アルケリスの一件を、第一の副団長、バルドに相談した。

 相談を受けたバルドは、元々、剣呑な噂の多い人物として、皇都の警備隊と協力して、アルケリスの捜査に乗り出した。

 結果、アルケリスとその仲間は、金に物を言わせた、小児に対する性的虐待と、人身売買に、加担していた事が発覚し、投獄される事となったのだが。

 元々、フラフラと遊ぶばかりで、領主としての才覚を見せない嫡男よりも、次子に後を継がせたがっていた、メリオネス侯爵は、あっさりアルケリスの籍を抜き、自身はアルケリスの悪行とは、無関係だと主張した。

 普通なら、嫡男の愚行を止められたなった、親として、非難の的になりそうだが、メリオネス侯爵の即断は、法を遵守する者の鏡であると、美談にすり替えられた。
 社交界を牛耳る人間の、空恐ろしさを感じる出来事だった。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 暫く穏やかに談笑を続け、モーガンの伴侶に会ってみたい、と言うレンに、機会があれば、2人で会いに来ると、モーガンが約束をして、今日の拝謁は終了となった。

 だが、去り際にモーガンから「ジルベール様の話も、早くされた方が良いですよ」と忠告され、胃の縮む思いをする事になった。

「ねえ、アレクさん。質問が有ります」
「ん?」
「モーガンさんって、なんの獣人なんですか?」
「モーガン?あぁ、鷲だな」
「鷲?やっぱり、鳥さんなんだ」
「それが、どうかしたのか?」
「いえ。モーガンさんを見ていて、とても気になってしまって」

 気になる?
 俺よりもか?

「ほら、モーガンさんって、結構な鳩胸じゃないですか」
「はとむね?」
「え~っと。鳥って、お胸がこう」

 とレンは両手で胸の前を、下から抱くような仕草をみせた。

「ぼッふぁ!って、してるでしょ?モーガンさんのお胸も、そんな感じだったので、鳥さんなのかなぁって」

 ぼッふぁ!?

 どうするんだよ?
 俺、結構モーガンと会うんだぞ?
 次あったら、絶対笑うぞ?
 
「・・・・そっそうか」

「後、もう一つ。いいですか?」
「おっおう、いいぞ」
「あの、こちらでの、両親の呼び分け方は、どうなっているんですか?」
「呼び分け?」
「はい。あちらでは、子供を産んだ女性を“母”一緒に・・・その、子供を作った男性を“父”と呼びます。基本的にこの2人は夫婦、えっと伴侶になるのですが、こちらでは、性の違いが無いので、何が基準なのかなって」
「あぁ、そう言うことか、簡単だ。精と魔力を与えた者が“父”それを受け取って、子を産んだ者が“母”だな」
「じゃあ、あちらとあまり変わらないんですね」

「因みに、異界での子作りの仕方はどうなってるんだ?」
 レンの瞳が揺れて、耳が赤くなった。

 少し、意地悪だったか?

「この歳で、男性に性教育とか・・・どんな罰ゲームですか」
 と言いながら、説明してくれた。

 こちらとの違いは、魔力を使うか、己の血肉を分け与えるか、になるようだ。

 だが、衝撃だったのは、情を交わす時に、俺のオレを挿入する場所が、俺達のとは別に有り、そこから赤子が、そのまま出てくることだ。
 レンのこの小さな体から、赤子が出て来るとか、想像出来ない

 いや、なんとなく想像は出来るが。
 かなり怖い絵面じゃないか?

 下手な怪談話よりも、怖いかもしれない。

 レンにもそう話すと
「ちょっと失礼ですよ?」
 と膨れられたが、レンはアウラが体を作った時に、こちらに合わせてあるから、出産はこちらのやり方になる筈だ、と教えてくれた。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

腹黒宰相との白い結婚

恋愛
大嫌いな腹黒宰相ロイドと結婚する羽目になったランメリアは、条件をつきつけた――これは白い結婚であること。代わりに側妻を娶るも愛人を作るも好きにすればいい。そう決めたはずだったのだが、なぜか、周囲が全力で溝を埋めてくる。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです

新条 カイ
恋愛
 ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。  それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?  将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!? 婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。  ■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…) ■■

最悪なお見合いと、執念の再会

当麻月菜
恋愛
伯爵令嬢のリシャーナ・エデュスは学生時代に、隣国の第七王子ガルドシア・フェ・エデュアーレから告白された。 しかし彼は留学期間限定の火遊び相手を求めていただけ。つまり、真剣に悩んだあの頃の自分は黒歴史。抹消したい過去だった。 それから一年後。リシャーナはお見合いをすることになった。 相手はエルディック・アラド。侯爵家の嫡男であり、かつてリシャーナに告白をしたクズ王子のお目付け役で、黒歴史を知るただ一人の人。 最低最悪なお見合い。でも、もう片方は執念の再会ーーの始まり始まり。

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。  それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。  14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。 皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。 この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。 ※Hシーンは終盤しかありません。 ※この話は4部作で予定しています。 【私が欲しいのはこの皇子】 【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】 【放浪の花嫁】 本編は99話迄です。 番外編1話アリ。 ※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。

櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。 夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。 ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。 あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ? 子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。 「わたくしが代表して修道院へ参ります!」 野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。 この娘、誰!? 王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。 主人公は猫を被っているだけでお転婆です。 完結しました。 小説家になろう様にも投稿しています。

離宮に隠されるお妃様

agapē【アガペー】
恋愛
私の妃にならないか? 侯爵令嬢であるローゼリアには、婚約者がいた。第一王子のライモンド。ある日、呼び出しを受け向かった先には、女性を膝に乗せ、仲睦まじい様子のライモンドがいた。 「何故呼ばれたか・・・わかるな?」 「何故・・・理由は存じませんが」 「毎日勉強ばかりしているのに頭が悪いのだな」 ローゼリアはライモンドから婚約破棄を言い渡される。 『私の妃にならないか?妻としての役割は求めない。少しばかり政務を手伝ってくれると助かるが、後は離宮でゆっくり過ごしてくれればいい』 愛し愛される関係。そんな幸せは夢物語と諦め、ローゼリアは離宮に隠されるお妃様となった。

【本編完結】副団長様に愛されすぎてヤンデレられるモブは私です。

白霧雪。
恋愛
 王国騎士団副団長直属秘書官――それが、サーシャの肩書きだった。上官で、幼馴染のラインハルトに淡い恋をするサーシャ。だが、ラインハルトに聖女からの釣書が届き、恋を諦めるために辞表を提出する。――が、辞表は目の前で破かれ、ラインハルトの凶悪なまでの愛を知る。

処理中です...