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アレクサンドル・クロムウェル

紫藤 蓮/シトウ・レン 世界中が薄い本

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「そう言えば、新しく身体を創ってくれる時に、アウラ様が、やけに別の身体を勧めて来たんです。私は元のままが良いって、言ったんですけどね?」
「そうなのか?」

 顔を覗き込むと、レンはウンウンと頷いた。

「なんでも、コチラとアチラでは、生き物の在り方が全く違うとかで・・・。確かにアチラでは、魔法は無かったし、アレクさんみたいな、獣人さんもいませんでしたが。ウィリアムさんもポフォスさんも、私とそんなに違いませんよね?」

 そう聞かれて、俺とウィリアムは顔を見合わせた。口下手な俺は、上手く説明する自信がない。

 お前が話せと、目で合図すると、ウィリアムが気まずげに話し始めた。

「あ~。その事なんだけどね。レンちゃんは“女”なんだよね?」

 これにレンは、少しムッとしたように「そうですけど?」と、ツンとして答えた。

「ごめんね。レンちゃんを馬鹿にしてるとか、そんなんじゃないんだ。ちょっと言いづらいんだけど・・・・」
「なんですか?」
「・・・・僕たちの世界に“女”はいない」
「へッ?」
 レンは驚きすぎて、言葉が続かないようだ。

 ウィリアムは、先代の愛し子のヨシタカの記録に、レンの世界では、“男と女”の2つの性がある。と記されているが、この世界ではレンの世界で言う、男しかいないことを説明した。

「嘘でしょ?まさかのBL。世界中が薄い本?」

 と分からない単語を連発した。

「大丈夫か?」
「大丈夫・・なのかな?ビックリし過ぎちゃって、よく分からないです」

 それはそうだろう、全く知らない世界に放り込まれて、男はお前1人だ。と言われたら、俺だって混乱する。

「あの、“”女性は私だけ?他の国とかにも、1人もいないんですか?」
「うん。レンちゃん1人だけだよ」
 ウィリアムが答えると、レンはガックリと肩を落とした。

「アウラ様の目がキョドッてたから、おかしいと思ったんですよ。なんで、ちゃんと説明してくれないかなぁ」
 と手で顔を覆って、俯いてしまった。

 どう声を掛ければいいか、分からなくなって、ウィリアムを見たが、同じ気持ちなのか、首を振るだけだった。

 気不味い空気がしばらく流れ、唐突にレンが顔を上げた。

「どうして私が、女だって分かったんですか?」
「それは・・・・」
 ウィリアムが助けを求める様に、俺を見た。
「アレクさん?」

 可愛いはずの、番の眼がちょっと怖い。

「それはだな・・・君の服が血で汚れていて、・・・それで着替えを・・・」

 だんだん声が小さくなったが、仕方がないと思う。

「見たんですか?」
「いや・・・・不可抗力と言うか」
「見たんですね?」

 何故だろう、魔物より強い圧を感じる。

「・・・・はい・・・・」
「・・・信じられない」
 レンはボソリと呟いた。

「レン?」
「アレクさん。私が女だって、みんなに知られたら、結構やばかったりしますか?」
「ヤバイ?・・・そうだな、あまり知られない方が良いと思う」

 レンの使う言葉は、偶に理解できないものもあるが、今、俺の番がおかんむりなのだけは分かる。

「わかりました」

 そう言うとレンは、俺の手をすり抜け、膝から飛び降りて、小走りで寝室に向かって行った。

 しっかり抱いていた筈なのに、どうやってすり抜けたんだ?

「レンどうしたんだ?」
「私、今から、アウラ様に文句を言うので、暫く1人にして下さい」
 そう言って閉めた扉から、鍵を閉める音が聞こえた。

「・・・・ねえ、アレク」
「・・・なんだ?」
「レンちゃんって、神様と直で話せるの?」
「さあ・・・」

 ウィリアムからの質問より、番に拒絶されたショックで、俺はその場から動けなくなった。

 

 ・・・・・・・sideレン・・・・・・・



「え~っと、取説・・・取説・・・あった」

 私はアウラ様に貰った、ステータス画面を指でスクロールして、取り扱いの画面を検索しました。

「チャット機能の呼び出しは・・・」

 エッ!・・・・ボイチャ?!

 さっきは、勝手に検索画面が出てきて、入力用のキーボードがないから、どうしようかって思ったら、画面のスクロール以外、考えただけで、検索できて便利だなぁ、って思ったけど。

 まさかのボイチャ。

 いくら憧れてるからって・・・。
アウラ様、あっちの世界の影響、受けすぎなんじゃ・・・・。

 そこは、一旦置いといて、呼び出しは
 ・・・・これか・・・・・。

「アウラ様~。レンで~す。お話ししたいことがありま~す。いませんか~?」

 う~ん。反応なし。
 お忙しいんでしょうか?

 取り敢えず、返事待ちですね。

 しかし・・・世界中がBLって。
 ついさっきまで、年齢=独り者、だった私には、ハードル高すぎです。

 私は祖父母に育てられたせいか、ヤベちゃん曰く、かなり“おくて”らしく、いい年をしてと言われますが、普通の恋愛小説やTL本も恥ずかしくて、あまり読むことができなのです。

 アレクさんみたいな、超絶イケメンに“番”っとか言われて、あんなことや、こんなことなっているだけでも、キャパオーバーなのに。

 プラスのBL、世界中が薄い本って・・・。

 恋愛に関して、初級にもなっていない私が、いきなり上級者向けのBLですよ?私に、どうしろっていうんでしょうか。

 女子同士でしか、話せないことって、沢山あります。女子にしか、理解出来ない事だって。


 アウラ様は、返事くれ無いし・・・・。
 呼び出し中には、なってるから、そのうち答えてくれるだろうけど・・・。

「はあ・・・・私、大丈夫かな」

 あっちの世界での最後は
 あんなだったし。
 こっちの世界は、男ばっか。

 だけど・・・アレクさんって本当、かっこいいのよね。

 あんなイケメンが、私の番なんて、アウラ様からのご褒美でしょうか?

 アレクさんは、私のこと番だって。
 愛してるって言うけれど。
 一目見ただけで、そんな簡単に人を、好きになったりするものでしょうか?

 そもそも、番への愛なんて、アウラ様が植え付けた、作られた感情だったりしないのかな?
 それって、本当に“愛”って、呼べるんでしょうか?

 疑っちゃいけないと思うけど、私の常識と違い過ぎて、やっぱり、ついていけないことの方が多い。

 “郷に入りては~”なんて偉そうに言っちゃったけど、本当の私は、こんなもんなんですよね。
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