41 / 605
アレクサンドル・クロムウェル
紫藤 蓮/シトウ・レン ハロウィン
しおりを挟む
「しっかし、結構な人出よねぇ」
「そうだねぇ。去年までは、例のウィルスのせいで自粛続きだったし」
そうなのです。昨年までの自粛の鬱憤晴しか、今年の市のイベント担当者と観光協会の方々の、お祭り関係への、熱の入れようは半端ではなく。
このハロウィンパーティと称されたイベントも、市の夏祭りや、クリスマスイベントと肩を並べる力の入れ様です。
その煽りで、イベントの参加を打診された我が社の社長が、私たちの直属の上司に丸投げした結果。
「うちの課に、コスプレ好きがいたな」
とヤベちゃんに白羽の矢が立ったのです。
それにしても、コスプレの事は、会社には内緒にしていたのでは?
「ああ。メイクのハウツー動画をUPしたら、身バレした」
笑っていますが、大丈夫なのでしょうか?
最近動画のコメント欄に剣呑な内容の書き込みがあったり、差出人不明の、嫌がらせの手紙が来るって言っていたのに。
「これも有名税ってヤツ?でも、あたしは芸能人じゃ無いから、誰も守ってくれないじゃん?だから、警察にも届けは出してあるし、暫くは、コミケ以外の大型イベントには行かないから心配ないよ」
「でも・・・」
心配する私と肩を組んで、ヤベちゃんは「あっち見て」と近くの郵便局を指差しました。
「あそこに立ってる、青いシャツのオジさんと隣のポロシャツの人ね、あれ警察の人」
「えっ?そうなの?」
「そうそう」
ヤベちゃんによると、嫌がらせの相手は、判明しているけれど、行方が分からなくなっているとのこと。
嫌がらせの理由は、奥さんから離婚を切り出され、その奥さんが残していったPCに、ヤベちゃんの動画がいくつか残っていて、ヤベちゃんのせいで、奥さんが離婚を言い出したのだと、誤解した挙句の逆恨みらしい。
奥さんの所にも、ヤベちゃんのことを責めるLINEが来ていたそうで、ヤベちゃんの動画は、偶々保存していただけで、離婚の理由ではない、頼むから人の話を聞いてくれ。と何度も説明したけれど、分かって貰えなかったのだそう。
迷惑千万な話ですが、そんな男だから離婚したくなるんでしょう。
けど、今もヤベちゃんに対する、嫌がらせは続いていて、彼女が目立つことをしたら、相手が現れるかもしれないので、そこを捕まえてしまおう、と言うことらしいのですが。
「そんな、囮捜査的なのって、ありなの?」
「まぁ、普通なら“なし”だよね。でもあたしの方からお願いしたんだ」
「なんで?危ないよ?」
「だって、一方的ににやられっぱなしで、こっちが我慢するのもねぇ、なんか癪に触らない?」
「それは分かるけど。でも・・・」
やっぱ、心配だよ?
「れんちゃんは、良い子だなあ」
とウィッグを乱さないように、そっと頭を撫でられました。
「お巡りさんもいっぱいいるし、大丈夫よ。だから心配しないで、今日はさ、やな事忘れて、目一杯楽しもうよ」
イケメンの顔で、ニカリとされれば、これ以上、何かを言うことは出来ません。
そうだね。と頷いた所で、パレード開始のアナウンスが流れました。
パレードは幼稚園児の行進から始まり、小学生のマーチングと続いて、総勢20組が参加する中で、私達の順番は真ん中辺り。
私達の一つ前が、高校生のマーチングなのですが、私が通った高校のマーチング部も演奏しながら隊形を変えたり、踊りの担当の子やガーズが居たりと、見て聞いて楽しいものでした。
でも、今の子達は、更なる進化を遂げて、楽器を演奏をしながら行進して、更に踊るのですね。
もちろん重い楽器を抱えているので、ステップがメインとなるのですが、楽器の重量だけでも大変でしょうに、それで踊るとか、本当に素晴らしいです!
ビバ青春!です。
ヤベちゃんに“ふるッ!”って突っ込まれてしまいました。
古すぎますか?
感動したうちのおばあちゃんが、よく使うのですが・・・。
ヤベちゃんは「若いっていいわあ」とこぼしていますが、ヤベちゃんだって充分お若いですよ?
「だって、あの肌見なよ。プルップルのつやっつやよ?」
そう言われてみると、確かにあのハリ感は羨ましい気がします。
「そうだね。なんかほっぺが、プンッ!て感じ」
すると、パレードに参加している、同僚の1人が話に割り込んできました。
「そんなババ臭いこと言ってから、2人とも行き遅れんだよ」
「はい?」
「今なんて言いました?」
セクハラ発言のこの男は、これでも一応先輩です。
「やっぱ女は、若くて可愛くないと、なあ?」
この先輩は、日頃からセクハラ、モラハラ発言が多く、女子社員からの苦情が殺到している人です。
上司からも、何度も注意を受けているにも関わらず、自分の何が悪いのか、まったく理解していませんね。
女子社員からの評判が悪すぎて、総スカンをくらい、閑職に回されたと聞きましたが、自分が崖っぷちだと、気付いていないのでしょうか?
「足立さん。それセクハラですよ」
ヤベちゃんの声が地を這う低さです。
今の姿だと、迫力も、イケメン度も200%UPです。
「そうだねぇ。去年までは、例のウィルスのせいで自粛続きだったし」
そうなのです。昨年までの自粛の鬱憤晴しか、今年の市のイベント担当者と観光協会の方々の、お祭り関係への、熱の入れようは半端ではなく。
このハロウィンパーティと称されたイベントも、市の夏祭りや、クリスマスイベントと肩を並べる力の入れ様です。
その煽りで、イベントの参加を打診された我が社の社長が、私たちの直属の上司に丸投げした結果。
「うちの課に、コスプレ好きがいたな」
とヤベちゃんに白羽の矢が立ったのです。
それにしても、コスプレの事は、会社には内緒にしていたのでは?
「ああ。メイクのハウツー動画をUPしたら、身バレした」
笑っていますが、大丈夫なのでしょうか?
最近動画のコメント欄に剣呑な内容の書き込みがあったり、差出人不明の、嫌がらせの手紙が来るって言っていたのに。
「これも有名税ってヤツ?でも、あたしは芸能人じゃ無いから、誰も守ってくれないじゃん?だから、警察にも届けは出してあるし、暫くは、コミケ以外の大型イベントには行かないから心配ないよ」
「でも・・・」
心配する私と肩を組んで、ヤベちゃんは「あっち見て」と近くの郵便局を指差しました。
「あそこに立ってる、青いシャツのオジさんと隣のポロシャツの人ね、あれ警察の人」
「えっ?そうなの?」
「そうそう」
ヤベちゃんによると、嫌がらせの相手は、判明しているけれど、行方が分からなくなっているとのこと。
嫌がらせの理由は、奥さんから離婚を切り出され、その奥さんが残していったPCに、ヤベちゃんの動画がいくつか残っていて、ヤベちゃんのせいで、奥さんが離婚を言い出したのだと、誤解した挙句の逆恨みらしい。
奥さんの所にも、ヤベちゃんのことを責めるLINEが来ていたそうで、ヤベちゃんの動画は、偶々保存していただけで、離婚の理由ではない、頼むから人の話を聞いてくれ。と何度も説明したけれど、分かって貰えなかったのだそう。
迷惑千万な話ですが、そんな男だから離婚したくなるんでしょう。
けど、今もヤベちゃんに対する、嫌がらせは続いていて、彼女が目立つことをしたら、相手が現れるかもしれないので、そこを捕まえてしまおう、と言うことらしいのですが。
「そんな、囮捜査的なのって、ありなの?」
「まぁ、普通なら“なし”だよね。でもあたしの方からお願いしたんだ」
「なんで?危ないよ?」
「だって、一方的ににやられっぱなしで、こっちが我慢するのもねぇ、なんか癪に触らない?」
「それは分かるけど。でも・・・」
やっぱ、心配だよ?
「れんちゃんは、良い子だなあ」
とウィッグを乱さないように、そっと頭を撫でられました。
「お巡りさんもいっぱいいるし、大丈夫よ。だから心配しないで、今日はさ、やな事忘れて、目一杯楽しもうよ」
イケメンの顔で、ニカリとされれば、これ以上、何かを言うことは出来ません。
そうだね。と頷いた所で、パレード開始のアナウンスが流れました。
パレードは幼稚園児の行進から始まり、小学生のマーチングと続いて、総勢20組が参加する中で、私達の順番は真ん中辺り。
私達の一つ前が、高校生のマーチングなのですが、私が通った高校のマーチング部も演奏しながら隊形を変えたり、踊りの担当の子やガーズが居たりと、見て聞いて楽しいものでした。
でも、今の子達は、更なる進化を遂げて、楽器を演奏をしながら行進して、更に踊るのですね。
もちろん重い楽器を抱えているので、ステップがメインとなるのですが、楽器の重量だけでも大変でしょうに、それで踊るとか、本当に素晴らしいです!
ビバ青春!です。
ヤベちゃんに“ふるッ!”って突っ込まれてしまいました。
古すぎますか?
感動したうちのおばあちゃんが、よく使うのですが・・・。
ヤベちゃんは「若いっていいわあ」とこぼしていますが、ヤベちゃんだって充分お若いですよ?
「だって、あの肌見なよ。プルップルのつやっつやよ?」
そう言われてみると、確かにあのハリ感は羨ましい気がします。
「そうだね。なんかほっぺが、プンッ!て感じ」
すると、パレードに参加している、同僚の1人が話に割り込んできました。
「そんなババ臭いこと言ってから、2人とも行き遅れんだよ」
「はい?」
「今なんて言いました?」
セクハラ発言のこの男は、これでも一応先輩です。
「やっぱ女は、若くて可愛くないと、なあ?」
この先輩は、日頃からセクハラ、モラハラ発言が多く、女子社員からの苦情が殺到している人です。
上司からも、何度も注意を受けているにも関わらず、自分の何が悪いのか、まったく理解していませんね。
女子社員からの評判が悪すぎて、総スカンをくらい、閑職に回されたと聞きましたが、自分が崖っぷちだと、気付いていないのでしょうか?
「足立さん。それセクハラですよ」
ヤベちゃんの声が地を這う低さです。
今の姿だと、迫力も、イケメン度も200%UPです。
77
お気に入りに追加
1,337
あなたにおすすめの小説
腹黒宰相との白い結婚
黎
恋愛
大嫌いな腹黒宰相ロイドと結婚する羽目になったランメリアは、条件をつきつけた――これは白い結婚であること。代わりに側妻を娶るも愛人を作るも好きにすればいい。そう決めたはずだったのだが、なぜか、周囲が全力で溝を埋めてくる。
嫌われ女騎士は塩対応だった堅物騎士様と蜜愛中! 愚者の花道
Canaan
恋愛
旧題:愚者の花道
周囲からの風当たりは強いが、逞しく生きている平民あがりの女騎士ヘザー。ある時、とんでもない痴態を高慢エリート男ヒューイに目撃されてしまう。しかも、新しい配属先には自分の上官としてそのヒューイがいた……。
女子力低い残念ヒロインが、超感じ悪い堅物男の調子をだんだん狂わせていくお話。
※シリーズ「愚者たちの物語 その2」※
婚約者の本性を暴こうとメイドになったら溺愛されました!
柿崎まつる
恋愛
世継ぎの王女アリスには完璧な婚約者がいる。侯爵家次男のグラシアンだ。容姿端麗・文武両道。名声を求めず、穏やかで他人に優しい。アリスにも紳士的に対応する。だが、完璧すぎる婚約者にかえって不信を覚えたアリスは、彼の本性を探るため侯爵家にメイドとして潜入する。2022eロマンスロイヤル大賞、コミック原作賞を受賞しました。

悪役令嬢ですが、ヒロインが大好きなので助けてあげてたら、その兄に溺愛されてます!?
柊 来飛
恋愛
ある日現実世界で車に撥ねられ死んでしまった主人公。
しかし、目が覚めるとそこは好きなゲームの世界で!?
しかもその悪役令嬢になっちゃった!?
困惑する主人公だが、大好きなヒロインのために頑張っていたら、なぜかヒロインの兄に溺愛されちゃって!?
不定期です。趣味で描いてます。
あくまでも創作として、なんでも許せる方のみ、ご覧ください。

誰でもイイけど、お前は無いわw
猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。
同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。
見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、
「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」
と言われてしまう。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

次期騎士団長の秘密を知ってしまったら、迫られ捕まってしまいました
Karamimi
恋愛
侯爵令嬢で貴族学院2年のルミナスは、元騎士団長だった父親を8歳の時に魔物討伐で亡くした。一家の大黒柱だった父を亡くしたことで、次期騎士団長と期待されていた兄は騎士団を辞め、12歳という若さで侯爵を継いだ。
そんな兄を支えていたルミナスは、ある日貴族学院3年、公爵令息カルロスの意外な姿を見てしまった。学院卒院後は騎士団長になる事も決まっているうえ、容姿端麗で勉学、武術も優れているまさに完璧公爵令息の彼とはあまりにも違う姿に、笑いが止まらない。
お兄様の夢だった騎士団長の座を奪ったと、一方的にカルロスを嫌っていたルミナスだが、さすがにこの秘密は墓場まで持って行こう。そう決めていたのだが、翌日カルロスに捕まり、鼻息荒く迫って来る姿にドン引きのルミナス。
挙句の果てに“ルミタン”だなんて呼ぶ始末。もうあの男に関わるのはやめよう、そう思っていたのに…
意地っ張りで素直になれない令嬢、ルミナスと、ちょっと気持ち悪いがルミナスを誰よりも愛している次期騎士団長、カルロスが幸せになるまでのお話しです。
よろしくお願いしますm(__)m

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて
アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。
二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる