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アレクサンドル・クロムウェル

皇宮入りと婚約と/ 婚約紋*

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 恐る恐る覗き込んだ濡れた瞳に、嫌悪の色が見えないことに勇気を貰い、言葉を重ねる。

「今はまだ、同じ気持ちを返してくれとは言わない。ただ俺の想いを受け入れてくれるか?」

 すると思考が止まったように、息を詰めていたレンは、“ボンッ!”と音が聞こえるほどの勢いで、耳や首まで赤くなった。

 なんて純情で、可愛らしい人なんだ。

 その純情に付け込む俺は、悪い大人なんだろうな。

「・・・口付けしても良いか?」
「へっ?・・・あの・・・・治療として?」
「いいや。レンに焦がれるオスとして」
「へぅっ!」

 レンは口の中でモゴモゴと何か言っているが、上手く聞き取れない。

 俺は何か間違えたのか?

「俺が・・・嫌いか?」

 嫌いと言われたら、生きていけないのに、聞かずにはいられなかった。

「そんなことない・・・けど、ずるいと思う」
 レンの言葉に、俺は思わずニヤリとした。

 そう、俺は狡い。
 その狡い大人に捕まった君は
 もう逃げられないんだよ?

「同意と受け取っても?」
 右手を赤く染まった頸に回し、レンの返事を待たずに、小さな唇に口付けを落とした。

「んッ!」

 行為に慣れていない、硬く閉じた唇にチュ、チュっとわざと音を立て、角度を変えて何度もバードキスを繰り返す。
 
 力が抜けてきたところで、赤い唇をペロリと舐めると、驚いて少し開いた唇に舌を捩じ込んだ。

 レンは身じろいだが、腕の中にすっぽりと収まった体に、逃げ場など無いし、逃がさない。

 舌先で歯列を一本々確かめて、口蓋を舐め回し、逃げ回る小さな舌を捕まえて絡め取ると、その甘さに背筋から腰にかけてビリビリと衝撃が走った。

「んッ・・・・ふぁ・・」
 時折漏れる、レンの吐息も甘く官能的だ。

 甘い・・・かわいい・・・・あまい

 以前、番持ちの誰かが、番の体は全てが甘いと言っていたが、本当だった。

 この世に、これ以上の甘露があるだろうか?

 俺の流しこんだ唾液を、コクリと飲み込む白い喉の動きにも、欲情の熱が溜まる。

 噛みたい。

 細く白い首筋に獣歯を立て、俺の印を刻みたい。

 レンの首元のボタンを片手で外し、襟元をくつろげた。
 飲み込みきれずに唇の端から溢れた唾液を、ベロリと舐め取り、細い首から肩へと唇を滑らせる。

「あッ・・・やぁ」
 可愛い声をもっと聞かせてくれ。

 顕になった鎖骨を舐め上げ、強く吸い上げて所有の印を残す。

 白い肌に咲いた、紅い花が美しい。

 嗚呼!
 噛みたい。

 我慢できない!!

「レン?婚約の印を刻んでも良いか?」
「・・・・・しるし?」
 快楽に溶けて、トロンとした瞳のレンが聞き返した。
「そう。ここに・・・」
 黒髪に隠れた頸を撫でると、レンは小さく身を震わせた。

「俺の印を刻ませて?」
「・・・・・いたい?」

 レンは今、まともに考えられる状態では無いだろう。だが、俺は狡いから、どんな手を使っても外堀を埋めてしまいたい。

「痛くない、ちょっとチクっとするくらい」
「・・・・いたくないなら、いいですよ?」
「いいのか?」

 自分で言うのもなんだが、余りにもあっさり受け入れられて、驚いてしまった。

「だって、番なんでしょ?」
 そう言って見上げられた俺の理性は、崩壊寸前だ。

「ありがとう!」
 喜びの余り、食いつくように唇を奪い、首筋から頸へと舌を這わせ、よく見えるように、長い髪をかき上げた。

 舌先に魔力を乗せ、頸から首筋を何度も舐め上げる。こうすると婚約紋を刻む時に、痛みを感じずに済むからだ。

 最初はくすぐったそうに、身をくねらせていたレンも、俺が押さえ込んでいるせいか、今は艶っぽい息を吐きながら、大人しく身を任せてる。

 頸に獣歯を立てようとして、ふと、ここではあまり見えないことに気付いた。

 俺のものだと見せびらかしたい。

 その欲求に負けた俺は、耳の下から肩にかけた、正面からでも見える位置に、ゆっくりと獣歯を埋めていった。

「あっ・・んん」
 痛みがあったのだろうか、獣歯を一旦止めて、レンの様子を見ながら、魔力を流していく。魔力核の詰まりは、口付けを楽しむ間に、全て溶かし流れも良くなっている。

このまま、婚約紋を刻んでも大丈夫そうだ。

 レンの首筋に、俺の印が浮かび上がってきた。
 少しづつ獣歯を深く沈めては、もっと大きく・もっと深く・もっと濃くと紋を刻み続けた。

 全ての紋を刻み終えた俺は、深く食い込んだ獣歯から、流し込んだ魔力が、レンの全身に行き渡るようにぐるりと回した。

「エッ?・・・なにこれ?ヤダ、やめて?!」
 逃げようとするレンの体を強く抱きしめ、押さえ付けて魔力を流し続けた。
「やだッ!・・だめだめだめ!!」
「あぁ!!・・・・やあぁ~~!!」

 腕の中で、レンの体がビクビクと跳ねて硬直し、やがてグッタリと沈み込んだ。

 もしかして、今ので達してしまったのか?

 達した時の顔が見れなかった。
 勿体無いことをしたな。

 などと考えながら、獣歯を抜いて傷になったところを舐めて治す。

「んん・・・もうやだあ」
 一度達して敏感になったレンは、俺の舌が肌を滑るたびに、涙声でビクビクと反応して・・。
 
それがまた良い。

 あ~!このまま押し倒したら駄目だろうか?
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