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アレクサンドル・クロムウェル
邂逅/邂逅1
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俺もマークも結婚適齢期はとっくに過ぎている。俺の爵位は一代爵位だし、マークは伯爵家の出だが、次子だから後継の心配はない。
だが、このまま番が見つからなければ、一生独身を貫くか、山積みになっている政略結婚狙いの、見合いの釣書の中から、誰かを選ぶ事になるだろう。
ウィリアムのように人族であったなら、政略結婚でも、それなりに幸せになれるのかもしれない。
だが俺達は獣人だ、適当な相手を選んだとしても番に出会えなければ、生涯この胸にポッカリと穴が空いたような、空虚さを抱えて生きて行かなければならない。
1人の孤独と、2人でいるから感じる孤独。
どちらかを選ぶなら、俺は被害者の少ない1人の孤独を選ぶだろう。
誰からも恐れられる俺とは違い、帝国一の婿がねと人気の高いマークだが、いまだに浮いた話一つ無いのは、同じ様な考えを持っているからなのかもしれない。
獣人の愛とは、祝福ともなれば、呪いともなる。本当に厄介なものだ。
そう考えると、幼い頃に番と出会えたミュラーが、羨ましくも妬ましい。
そんな益体も無いことを考えている間に、奥の院前に到着したが、マークとロロシュは、まだ下らないことで言い合いを続けている。
ロロシュの方がちょっかいを掛けている様だが、其れに一々反応しているマークが面白い。
本気で気に食わないのなら、いつものように極寒の笑みでニッコリと相手を黙らせるだろう。
言い合いというか、俺からは戯れている様にしか見えないから、意外に2人の相性は良いのかもしれない。
戯れ合う2人は放っておく事にして、奥の院の前にいた、数名の団員に歩み寄る。
団員の中にはシッチンが居り、扉の開け方を話し合っているようだ。
「まだ開かないか?」
「「「ハッ‼︎」」」
団員達が弾かれたように敬礼の姿勢をとった。
楽にする様に命じて、現状報告をさせた。
「鍵穴は無く、ポータルに似た様な紋があるので、試しに魔力を流してみましたが、反応が有りません」
コイツら、俺がポータルを起動させるときには散々反対したくせに、まったく無茶をする。
「ロロシュさんの御意見を窺いたく、迎えに行くところでした」
自分の名前が出たロロシュは、漸くマークに構うのを止め、扉の前にやって来た。
扉の表面に彫られた彫刻に顔を寄せ、考え込んでいる。
扉の隅々まで観察し終わったロロシュは「ふ~ん・・・そういう感じね」と1人で納得しているが、俺としては説明を求めたい。
それにしても、コイツは何者なんだろう?
ウィリアムの影なのは間違いないだろうが、俺の鼻でもコイツが何の獣人なのかわからない。古代の神殿に刻まれた紋様を理解し、隠しているが魔力値も高そうだ。
ウィリアムも面白いやつを拾ったものだ。
「1人で納得してないで、何か解ったのなら早く教えて下さい」
多分全員が思っていたであろうことを、マークが代弁してくれた。
「おいおい。短気は損気って言うだろ?まだ確認中。もう少しだから良い子で待ってろ」
「・・・この人にだけは、説教じみたことを言われたくないと思うのは、私が狭量だからでしょうか?」
聞かれたミュラーは困惑顔だ。
ロロシュのざっくばらんな物言いを、俺は気に入っているが、団員達は、憧れの貴公子への侮辱ととったのか、目付きが剣呑なものになって来ている。
こんなところで、くだらない揉め事は御免なんだがな。
「開くのか?」
「閣下もかよ。騎士様達は気が短いなぁ」
団員達との間に入ったつもりが、ロロシュには通じなかったようだ。
「何とでも言え。でっ?どうなんだ?」
重ねて問うとロロシュは「しょうがねぇなぁ」と溜息を吐いた。
「この扉は認識魔法が掛けられてるから、普通に魔力を流すだけじゃダメだ」
「それは、この神殿の関係者でなければ、開けられないって事ですか?」とミュラーが焦った声を出した。
「認識阻害を上掛けしてダメなら、そうなるな」
「なら扉を壊せばいいだろう?」
「はぁ?何言ってんだあんた?!此処は保存魔法が掛けられてんだよ。そう簡単に壊せるか!」
「そうか?やってみなければ分からんだろ?」
「イヤイヤ。いやいやいやいや。確かにあんたならぶっ壊しちまいそうだが、ここは歴史的にも貴重な遺跡だぞ?壊すなんて論外だ」
「俺は学者ではないのでな?」
学術的に見れば貴重かもしれないが、俺にとっては任務の妨げになるものは、全て排除の対象だ。
「試しもせずに、騒いでも仕方あるまい?」
そう言って俺は目の前の扉をポンと叩いた。
すると何処かでガコンっと何かが嵌った様な音が響き、続いて問題の扉がザリザリと音を立てて左右に開いていった。
「あっ開いた」
「はぁ??」
「えっ?」
「エェ~?!」
これには俺も驚いたが、皆も一様に驚愕に目を見開いている。
「なんだ、ノックで開く仕組みか?意外に簡単だったな」
1人納得する俺に
「そんな訳あるかっ!!」
とロロシュが突っ込んだ。
理屈は判らんが開いたなら、それで良いだろうと言うと「コレだから脳筋は嫌なんだ」と小声でボヤかれた。
ロロシュ、俺が獣人だと忘れたのか?
丸聞こえだぞ?
だが、このまま番が見つからなければ、一生独身を貫くか、山積みになっている政略結婚狙いの、見合いの釣書の中から、誰かを選ぶ事になるだろう。
ウィリアムのように人族であったなら、政略結婚でも、それなりに幸せになれるのかもしれない。
だが俺達は獣人だ、適当な相手を選んだとしても番に出会えなければ、生涯この胸にポッカリと穴が空いたような、空虚さを抱えて生きて行かなければならない。
1人の孤独と、2人でいるから感じる孤独。
どちらかを選ぶなら、俺は被害者の少ない1人の孤独を選ぶだろう。
誰からも恐れられる俺とは違い、帝国一の婿がねと人気の高いマークだが、いまだに浮いた話一つ無いのは、同じ様な考えを持っているからなのかもしれない。
獣人の愛とは、祝福ともなれば、呪いともなる。本当に厄介なものだ。
そう考えると、幼い頃に番と出会えたミュラーが、羨ましくも妬ましい。
そんな益体も無いことを考えている間に、奥の院前に到着したが、マークとロロシュは、まだ下らないことで言い合いを続けている。
ロロシュの方がちょっかいを掛けている様だが、其れに一々反応しているマークが面白い。
本気で気に食わないのなら、いつものように極寒の笑みでニッコリと相手を黙らせるだろう。
言い合いというか、俺からは戯れている様にしか見えないから、意外に2人の相性は良いのかもしれない。
戯れ合う2人は放っておく事にして、奥の院の前にいた、数名の団員に歩み寄る。
団員の中にはシッチンが居り、扉の開け方を話し合っているようだ。
「まだ開かないか?」
「「「ハッ‼︎」」」
団員達が弾かれたように敬礼の姿勢をとった。
楽にする様に命じて、現状報告をさせた。
「鍵穴は無く、ポータルに似た様な紋があるので、試しに魔力を流してみましたが、反応が有りません」
コイツら、俺がポータルを起動させるときには散々反対したくせに、まったく無茶をする。
「ロロシュさんの御意見を窺いたく、迎えに行くところでした」
自分の名前が出たロロシュは、漸くマークに構うのを止め、扉の前にやって来た。
扉の表面に彫られた彫刻に顔を寄せ、考え込んでいる。
扉の隅々まで観察し終わったロロシュは「ふ~ん・・・そういう感じね」と1人で納得しているが、俺としては説明を求めたい。
それにしても、コイツは何者なんだろう?
ウィリアムの影なのは間違いないだろうが、俺の鼻でもコイツが何の獣人なのかわからない。古代の神殿に刻まれた紋様を理解し、隠しているが魔力値も高そうだ。
ウィリアムも面白いやつを拾ったものだ。
「1人で納得してないで、何か解ったのなら早く教えて下さい」
多分全員が思っていたであろうことを、マークが代弁してくれた。
「おいおい。短気は損気って言うだろ?まだ確認中。もう少しだから良い子で待ってろ」
「・・・この人にだけは、説教じみたことを言われたくないと思うのは、私が狭量だからでしょうか?」
聞かれたミュラーは困惑顔だ。
ロロシュのざっくばらんな物言いを、俺は気に入っているが、団員達は、憧れの貴公子への侮辱ととったのか、目付きが剣呑なものになって来ている。
こんなところで、くだらない揉め事は御免なんだがな。
「開くのか?」
「閣下もかよ。騎士様達は気が短いなぁ」
団員達との間に入ったつもりが、ロロシュには通じなかったようだ。
「何とでも言え。でっ?どうなんだ?」
重ねて問うとロロシュは「しょうがねぇなぁ」と溜息を吐いた。
「この扉は認識魔法が掛けられてるから、普通に魔力を流すだけじゃダメだ」
「それは、この神殿の関係者でなければ、開けられないって事ですか?」とミュラーが焦った声を出した。
「認識阻害を上掛けしてダメなら、そうなるな」
「なら扉を壊せばいいだろう?」
「はぁ?何言ってんだあんた?!此処は保存魔法が掛けられてんだよ。そう簡単に壊せるか!」
「そうか?やってみなければ分からんだろ?」
「イヤイヤ。いやいやいやいや。確かにあんたならぶっ壊しちまいそうだが、ここは歴史的にも貴重な遺跡だぞ?壊すなんて論外だ」
「俺は学者ではないのでな?」
学術的に見れば貴重かもしれないが、俺にとっては任務の妨げになるものは、全て排除の対象だ。
「試しもせずに、騒いでも仕方あるまい?」
そう言って俺は目の前の扉をポンと叩いた。
すると何処かでガコンっと何かが嵌った様な音が響き、続いて問題の扉がザリザリと音を立てて左右に開いていった。
「あっ開いた」
「はぁ??」
「えっ?」
「エェ~?!」
これには俺も驚いたが、皆も一様に驚愕に目を見開いている。
「なんだ、ノックで開く仕組みか?意外に簡単だったな」
1人納得する俺に
「そんな訳あるかっ!!」
とロロシュが突っ込んだ。
理屈は判らんが開いたなら、それで良いだろうと言うと「コレだから脳筋は嫌なんだ」と小声でボヤかれた。
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丸聞こえだぞ?
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