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アレクサンドル・クロムウェル

神の庭にて2

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「それでは、私はアウラ様の世界で何をすればいいのでしょうか?」

 色々納得できたので、そろそろ本題に入ります。

「そうだね・・・今までは特に何もしなくてもよかったんだ。赤子からやり直すわけではないから、伝えられる技術があるなら、お願いしたいなあ、って程度だったんだけれど・・・」
「今回はそうじゃないと?」
「うん、あまり詳しく話すと、私が介入したことになってしまうから、詳しいことは話せないのだけれど、一番にやってもらいたいのは、魔物の殲滅かな?」
「殲滅・・・まさか剣と魔法で戦え!とか言います?」
「ううん。それは別にいいよ。適任な獣人が別にいるからね。心配しなくて大丈夫。君に頼みたいのは、魔物がこれ以上発生しない様に、根本的な原因への対処とその消滅かな?」

 簡単に言ってくれますけど、剣と魔法と獣人有りの世界なんですよね?
 それってかなり難易度高めなのでは?

「大丈夫。君ならできるよ」
 ほんと良い笑顔でサラッと面倒なことを。

「それで、原因はなんなんでしょうか?」
 ちょっと投げやりになってしまいましたが、仕方がないと思います。

「瘴気による穢れ。今までは自然に消えてしまう程薄かった瘴気が、突然濃くなってしまってね、それがどんどん溜まって瘴気溜まりができているんだよ」
「その原因は?」
「・・・・・」
 ダンマリですか。
「分かっているけど、言えないと?」
「話が早くて助かるよ」
 私の助けには全然ならないですけどね。

 ただ魔物関連の事以外は、好きにしていて良いとの事なので、異世界ライフも満喫できるかもしれません。

「さっき、赤ちゃんからのやり直しじゃないって仰いましたが、体はどうするんですか?私、もとの世界で死んでますよね?」
「君・・・そういう事をサラッと受け入れられるの凄いね」

 呆れたように言いますが、仕方がないと思いますよ?

「流石にあの状態で、助かるとは思えませんので」
 成る程ね。とアウラ様は頷いています。

 此処に来る前の最後の記憶は、私の身体から流れる血で、真っ赤に染まった光景でした。
 あれは、人体が無くしていい血液の量を、遥かに超えていたと思うので、あれで助かったらまさに奇跡。

 先立つことになってしまって、祖父母にはとても申し訳ないけれど、仲が悪いとはいえ、一応息子なのだから、後の事は父がなんとかするでしょう。

「体の事だけれど、君の世界と私の世界では、生物の在り方が違いすぎるんだ。だから新しい躰を用意してあげる」
 生物の在り方が違うって、どう言う事でしょう。
「基本的には、そう違わないけれど」
「けれど?」
 何故が神様なのに目が泳いでいます。

「なんか、誤魔化そうとしてませんか?」
 すると、アウラ様は慌てた様子で、そんな事はないと、私の肩を掴んできました。

「不安にさせたなら、申し訳ない。でも心配はいらないよ」
 これは、話したくないって事なんでしょうね。話したくないなら、深掘りしても仕方ないです。
どうせいけば分かるんですから。

「新しい体は、全くの別人って事ですか?」
「そうだね。君が望むなら傾国の美女でも筋骨隆々な男でも、可憐な美少年でも、マッチョな獣人でもいいし、お好みの躰を用意できるよ?」
 
 流石神様。そんなこともできちゃうんだ。

 でも・・・・。

「元のままで良いです」
「本当に、元の姿でいいの?」

 やけに違う姿にしたがってる気がしますが、気のせいでしょうか?
 でも、25年慣れ親しんだ姿を変えるのは、ちょと抵抗があります。

「あっ!流石にアウラ様の世界で、元の姿がとんでもなく醜いとかだと困りますが」

 そんな心配はいらないと、アウラ様は声を
 あげて笑いました。

「君を輪廻の輪から引き剥がして、私の勝手な願いを押し付けるのだから、君の世界で言う、チートってやつをフル装備で付けてあげる」
 チート転生?
 ラノベ好きな私にとっては願ってもないお話しです。ワクワクではあるのですが・・。

「チートも使い方が分からないと、宝の持ち腐れですよ?」   
 これには、アウラ様もレクチャーしている時間はないし。と頭を抱えてしまいました。

「それに私は、いたって平凡なOLですので、目新しい技術を伝導するには、知識が足りないと思うんです。スマホとかで、ネット検索でも出来れば、それなりに教えることが出来るかもしれませんけど」

 スマホでネット検索ねえ。としばし考え込んだアウラ様がポンと手を打って「じゃあこうしよう」と提案して来ました。

「ステータス画面ですか?ゲームの?」
「そう!スマホとかタブレットみたいなものは、技術が高度すぎて、今の私の世界にはちょっとね。君の頭に直接刻み込む方法もあるけど、それだと容量の限界があるから」

 脳みそちっちゃくてすみませんね。

 それに、そちらの世界の文化水準がどの程度かは知りませんが、確かに剣と魔法の世界にスマホは似合いませんよね?

「その点ステータス画面なら他の人には見えないし、取説とか検索機能をつければ完璧じゃないかな?」
 仰るとおりではあるのですが、神様なのに俗っぽいというか・・・・なんと言うか。

「だから君の世界は、憧れられてるって言ったでしょう?後学のために君の世界を観察しているのは、私だけでは無いんですよ?」
「なっなるほど?」

 それって所謂モニタリングってやつなんで
 しょうか?

「私は、君たちの世界のサブカルチャーが特に好きでね。そのお陰で君を見つけられたんだよ」
 そう言いながら、アウラ様は「そうだ、ついでにチャット機能も付けておけば、一々神託を下さなくても良いのかも。最近の神官達は、私の言うことを素直に受け取らないし、良い考えじゃない?」
 と神様らしからぬご様子で、ブツブツと呟いています。

 そうこうする内に、チートやら加護やらを何故か楽しそうなアウラ様に、てんこ盛りで付与されました。

 そして私は今「もう時間切れだ」と真面目な神様の顔に戻ったアウラ様の前に立っています。
「レン、私の愛し子よ。君の声はどこにいても私に届く。それを忘れないで」

 その声は、寂しそうでもあり、心配そうでもあり。

「チャットで、お話もできますよ?」
 しんみりするのが苦手な私が、茶化したように言うと、アウラ様もふふっと笑ってくれました。

「いつかまた会えますか?」
「ああ、いずれ」
 アウラ様が手を振ると、何処かで鈴がリンと鳴りました。
 私の体は暖かな光に包まれて、浮いているのか、沈んでいくのか、永遠とも刹那とも言える刻の中を、溶けて流れて揺蕩い続け。

 ふと鈴の音が聞こえた気がしました。
 その音に意識を向けると、鈴の音が聞こえた方へ、ゆっくりと引っ張られていくのがわかります。

 ゆっくり、ゆっくり落ちていき、私を包む光も次第に弱く小さくなっていきます。

 そして最後の光が点となって消えたとき、私の意識も暗闇の中で途絶えたのでした。
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