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アレクサンドル・クロムウェル
神の庭にて1
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これは夢なのでしょうか。
今私がいるのは、超有名、某鬼狩りアニメ映画の神作画のように美しいところです。
強いて言うなら、昔修学旅行で行った、奥入瀬渓流に似ているでしょうか。
苔むした森と、遠くから聞こえる流れる川のせせらぎ。静謐な空気に包まれた、とても美しい場所。
此処が天国なら、私はあのまま死んでしまったのでしょうか?
「此処は天国ではないよ」
教えてくれたのは、姿も声も中性的な、それはそれは、綺麗な人でした。
天国でないなら何処なのかと質問すると。
「夢に近いかな」
「夢・・・ですか?それじゃあ私の精神世界と言う事でしょうか?」
「君じゃなくて、私のね」
「それは、勝手にお邪魔して申し訳ありません」
頭を下げると、綺麗な人は口の端に手を当ててコロコロと笑った。
綺麗な人は、笑い方も綺麗です。
「私が君を招いたんだ。謝る必要はないよ?」
夢の中に他人を招くなんて、普通できないですよね?
「貴方は誰ですか?」
「私はアウラ。君たちが言うところの神様。但し、君がいた世界のではないけれど」
「神様でしたか。どおりで後光が差しているというか、お姿が輝いていると思いました」
するとアウラ様は「君は面白いね」と笑います。
「そうでしょうか?」
「うん、とても面白い。だから君を選んだのだけれどね」
「選んだ?」
「そう、わたしが創った世界は色々と問題が多くてね。それを正す手伝いを、君に頼みたいんだ」
ため息を吐くアウラ様は大変お疲れのご様子です。
「問題の無い世界なんてあります?」
「いや、無いね」
アウラ様は苦笑を漏らしました。
「私の世界の魂は、まだまだ未熟なものが多いのだけれど、神である私が介入できる事象には限りがある。過保護は良く無いだろ?」
「ええ、まあ何となくわかります」
三者面談の親御さんみたいになってますけど、其れと私に何の関係が?
「君達の世界の神は、私達若い神の憧れなんだよ」
「はい?」
話が飛びましたよ?
「何百億年もの永い刻をかけて宇宙を創り、多くの命を生み出した。その中でも君の星に生きるもの達の、特に君のいた国の魂は、多様性があり、柔軟で創造的だ。何よりも、その魂の持つ力がとても強い。神を必要としないほどにね」
「はぁ・・・」
「ピンとこないかい?」
とアウラ様は苦笑いを浮かべています。
「仰りたいことはなんとなく分かりますけど、私は、そんなご大層な人間ではありませんよ?」
「そうかな?私はそうは思わない」
「何故です?」
「さっき君の世界の神は憧れの的だといったけど、その分君たちの魂は人気がある」
「人気って…ブランド物のバックじゃ無いんですけど」
「近いものはあるよ?未熟な世界の魂は、成熟した強い魂の影響を受けやすい。だから私のような若輩者は、高位の神から定期的に魂を譲渡してもらい、自分の創った世界の進歩の手助けをしてもらうんだ」
「成る程?それでより強い魂に人気が出ると?」
「そういうこと」
とアウラ様はにっこりされました。
「私も今まで何度か、色々な世界の神に、魂の譲渡をお願いして来たけれど、こんな話を聞いても狼狽えないのは、君の世界の人間だけだよ?」
「まぁ、輪廻転生の思想は古くからありますし、最近ではこの手の創作物が巷に溢れていますから、受け入れやすい話ではありますね」
「そうなんだ!そういう後進が困らないような、細かな気配りができるところが、君の世界の神が憧れられる理由の一つなんだ!」
それは、どういう?
小首を傾げる私に、アウラ様が熱く語ります。
「神からの啓示や、インスピレーションという形を借りて、他の世界の存在や、異世界への魂の譲渡が起こり得ることを、人々に知らしめておくって、結構重要だと思う。君たちの言う広報活動みたいなものだよ」
広報って・・・。
「そういうものですか?」
「そういうものだよ」
アウラ様は、新入社員の滝川くんにちょっと似てるかも。
「紫藤先輩!まじリスペクトっす!!」とかよく言ってたなぁ。
まぁ、あの子の場合、みんなに言ってたからあんまり信用できないけど。
神様の世界が、会社組織みたいな縦社会なら、然もありなんですが・・・。
「転生とか転移って、神様の間での魂の譲渡以外で起こったりするんですか?」
「転移ならあるね」
「あるんだ」
簡単に断言されてしまいました。
「次元の歪みって言ったら分かり易いかな?偶々そういう歪みに落ちてしまった人が、別の世界に行く事は、稀にだけどよく有るんだ」
稀だけどよく有るって、どっちなんでしょうか。
「後は世界が終わる時に、大規模な魂の移行がある」
「えッ?!」
世界の終わりって、物凄いパワーワードを、和かにぶち込んできましたよ?
「悲しいことに、神であっても罪を犯すものはいる。その罪が重い場合、全能の神によって、全ての力が剥奪されてしまう。その時が世界の終わり。その場合、残された魂を回収して、全ての世界に割り振るんだ」
「それって、よっぽど酷い事をしたらですよね?」
「怖がらせちゃったかな?滅多に有る事じゃないから、心配しなくていいよ」
滅多に無いからって、安心できる話しでも無いのですが。神様の世界も大変なんだと、思っておきましょう。
「あの、もう一つ質問いいですか?」
「質問?どうぞ」
「さっきから、うちの神様のこと、君の世界の神って長々呼んでますけど、うちの神様に名前はないんですか?」
「あぁ、それね。彼の方は信仰の多様性を望んでおられる。名を付けると信仰の自由が減ると仰られて、ご自分の名を明かさないんだよ」
へえー、なんか妙に納得できてしまいます。
今私がいるのは、超有名、某鬼狩りアニメ映画の神作画のように美しいところです。
強いて言うなら、昔修学旅行で行った、奥入瀬渓流に似ているでしょうか。
苔むした森と、遠くから聞こえる流れる川のせせらぎ。静謐な空気に包まれた、とても美しい場所。
此処が天国なら、私はあのまま死んでしまったのでしょうか?
「此処は天国ではないよ」
教えてくれたのは、姿も声も中性的な、それはそれは、綺麗な人でした。
天国でないなら何処なのかと質問すると。
「夢に近いかな」
「夢・・・ですか?それじゃあ私の精神世界と言う事でしょうか?」
「君じゃなくて、私のね」
「それは、勝手にお邪魔して申し訳ありません」
頭を下げると、綺麗な人は口の端に手を当ててコロコロと笑った。
綺麗な人は、笑い方も綺麗です。
「私が君を招いたんだ。謝る必要はないよ?」
夢の中に他人を招くなんて、普通できないですよね?
「貴方は誰ですか?」
「私はアウラ。君たちが言うところの神様。但し、君がいた世界のではないけれど」
「神様でしたか。どおりで後光が差しているというか、お姿が輝いていると思いました」
するとアウラ様は「君は面白いね」と笑います。
「そうでしょうか?」
「うん、とても面白い。だから君を選んだのだけれどね」
「選んだ?」
「そう、わたしが創った世界は色々と問題が多くてね。それを正す手伝いを、君に頼みたいんだ」
ため息を吐くアウラ様は大変お疲れのご様子です。
「問題の無い世界なんてあります?」
「いや、無いね」
アウラ様は苦笑を漏らしました。
「私の世界の魂は、まだまだ未熟なものが多いのだけれど、神である私が介入できる事象には限りがある。過保護は良く無いだろ?」
「ええ、まあ何となくわかります」
三者面談の親御さんみたいになってますけど、其れと私に何の関係が?
「君達の世界の神は、私達若い神の憧れなんだよ」
「はい?」
話が飛びましたよ?
「何百億年もの永い刻をかけて宇宙を創り、多くの命を生み出した。その中でも君の星に生きるもの達の、特に君のいた国の魂は、多様性があり、柔軟で創造的だ。何よりも、その魂の持つ力がとても強い。神を必要としないほどにね」
「はぁ・・・」
「ピンとこないかい?」
とアウラ様は苦笑いを浮かべています。
「仰りたいことはなんとなく分かりますけど、私は、そんなご大層な人間ではありませんよ?」
「そうかな?私はそうは思わない」
「何故です?」
「さっき君の世界の神は憧れの的だといったけど、その分君たちの魂は人気がある」
「人気って…ブランド物のバックじゃ無いんですけど」
「近いものはあるよ?未熟な世界の魂は、成熟した強い魂の影響を受けやすい。だから私のような若輩者は、高位の神から定期的に魂を譲渡してもらい、自分の創った世界の進歩の手助けをしてもらうんだ」
「成る程?それでより強い魂に人気が出ると?」
「そういうこと」
とアウラ様はにっこりされました。
「私も今まで何度か、色々な世界の神に、魂の譲渡をお願いして来たけれど、こんな話を聞いても狼狽えないのは、君の世界の人間だけだよ?」
「まぁ、輪廻転生の思想は古くからありますし、最近ではこの手の創作物が巷に溢れていますから、受け入れやすい話ではありますね」
「そうなんだ!そういう後進が困らないような、細かな気配りができるところが、君の世界の神が憧れられる理由の一つなんだ!」
それは、どういう?
小首を傾げる私に、アウラ様が熱く語ります。
「神からの啓示や、インスピレーションという形を借りて、他の世界の存在や、異世界への魂の譲渡が起こり得ることを、人々に知らしめておくって、結構重要だと思う。君たちの言う広報活動みたいなものだよ」
広報って・・・。
「そういうものですか?」
「そういうものだよ」
アウラ様は、新入社員の滝川くんにちょっと似てるかも。
「紫藤先輩!まじリスペクトっす!!」とかよく言ってたなぁ。
まぁ、あの子の場合、みんなに言ってたからあんまり信用できないけど。
神様の世界が、会社組織みたいな縦社会なら、然もありなんですが・・・。
「転生とか転移って、神様の間での魂の譲渡以外で起こったりするんですか?」
「転移ならあるね」
「あるんだ」
簡単に断言されてしまいました。
「次元の歪みって言ったら分かり易いかな?偶々そういう歪みに落ちてしまった人が、別の世界に行く事は、稀にだけどよく有るんだ」
稀だけどよく有るって、どっちなんでしょうか。
「後は世界が終わる時に、大規模な魂の移行がある」
「えッ?!」
世界の終わりって、物凄いパワーワードを、和かにぶち込んできましたよ?
「悲しいことに、神であっても罪を犯すものはいる。その罪が重い場合、全能の神によって、全ての力が剥奪されてしまう。その時が世界の終わり。その場合、残された魂を回収して、全ての世界に割り振るんだ」
「それって、よっぽど酷い事をしたらですよね?」
「怖がらせちゃったかな?滅多に有る事じゃないから、心配しなくていいよ」
滅多に無いからって、安心できる話しでも無いのですが。神様の世界も大変なんだと、思っておきましょう。
「あの、もう一つ質問いいですか?」
「質問?どうぞ」
「さっきから、うちの神様のこと、君の世界の神って長々呼んでますけど、うちの神様に名前はないんですか?」
「あぁ、それね。彼の方は信仰の多様性を望んでおられる。名を付けると信仰の自由が減ると仰られて、ご自分の名を明かさないんだよ」
へえー、なんか妙に納得できてしまいます。
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