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プロローグ

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「ふぁあああ……あ…。いつ寝ても気持ちが良いな。この木陰は。ほんの5分10分寝るつもりが、ついつい3時間ほど寝てしまったよ。」


どこか抜けてそうな顔をしたこの男。年は26歳。気がついたら20代後半に入ってしまっていた残念な奴である。ちなみに無職……いわゆるニートだ。


生まれてこのかた働いたことが無く。かと言って、家事などもしない。

日が昇ってから日が暮れるまで、ずーーーっと何もせず、ただ家でゴロゴロするか、外へ出て適当な木陰で昼寝をするか。身体を動かす事と言えば、トイレへ行く時ぐらいだろう。


……少し待て!と言いたい方がおられるはずです。


そうです。何を言うこの男、飯も風呂もたまにしか頂かないのです。


別に、家に風呂がない訳でもございません。『働かざる者食うべからず』を徹底しているお宅でもございません。


戸建ての一般的な家に住み、中には一般的な風呂が備わっています。

それに、時間になれば三食飯は用意されています。


それなのに…………それなのに!!!


この男は、気分が乗らない……だとか、今日はそういう気分じゃない……だとか、数々ふざけた事を口にしては何もしない。


飯を食べないのは個人の勝手。死ぬも生きるも手前で決めろという話だ。


ーーーしかし、風呂だけは違う!

これだけは手前の勝手ではない。風呂に入る行為は、社会で生きていく上で必要最低限度のマナーである。

それをコイツは、飯と同様の理由で頂こうとしない!もはや人であるかどうかすら疑いたくなる。


これはつい先日、この男が道を歩いていると、向こうの方からご近所さんが歩いてきた。


「おうっ!与太じゃねーか。今日も木陰で昼寝でも決めるのか?あんまり寝すぎると根が張ってしまうずっ……ヴゥっ!!!!く、臭い。お、おおお前さん、前に風呂入ったのはいつだ!?」

「んん~…………き……」

「えっ、昨日っ!?」

「去年。」

「どうりで臭い訳だ!良いか、風呂ってのはなぁ、毎日入るものなんだぞ!それを1年間も入ってないなんて………だから、お前は与太なんだよ!!!」



なんて話がございましてーーー



普通に生活しているのなら、こんな会話なんて起きない。

そんなアブノーマルな男は、先ほどの会話にもあった通り、巷では『与太よた』と呼ばれている。



この話は、ある日ダメ男である通称『与太』が、木陰でうたた寝をしている最中、気がついたら異世界へ行って俺TUEEEをするものである。


今でこそ、中肉中背の将来 高血圧 確定路線を行く20代後半のダメ男『与太』。


しかし、彼は知らない世界で、身に覚えのない身体で、知る由もなかった術によって、人を助け、生き物を助け、そして身体を動かす喜びを感じていく。

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