銀河の外れで生きる僕と彼女とプラス1匹の冒険

第２章〜少年と惑星〜

ep44. 少年と手作り料理 IV

あぁ～いい湯だったなぁ～

あっ…………なんかオヤジ臭いこと言っちゃった

若く若く！もっと年相応のこと言わないとダメだよね

それにしても、あれか。これから例のブツを調理したやつを食べるのか……

気が乗らない。全く気が乗らない。なんで食べなきゃいけないのさ！あんなグロテスクなやつを


ハァ…………やだなぁ～。食べたくないな～


気分が乗らないせいか、足取りが今まで以上に重い感じがする


食堂に向かいたくない。まぁ、食堂に来なくてもエミリーのことなら、料理をお膳に乗せて僕の部屋まで持ってきちゃうんだろうなぁ

彼女、すっごく良い子だからね。気がきく子だからねー

世間一般的には、ありがた迷惑って言うやつだよ。きっと……


怖いなぁ～怖いなぁ～

どんな感じになってるか想像できないよぉ

とんでもない見た目だったらどうしよう……

もしさ、そんな見た目だったら口に入れなくて良いよね？許してくれるよね？

も、もちろん冗談だよ？冗談！！

ホントは食べたくないけど、出された以上は食べなきゃ失礼だもんね。やっぱ……ムリ。食べたくない。全く食欲湧かないんだもん……誰か助けて



あぁ～あ……着いちゃった。食堂まで来ちゃった。戻る？来た道引き返す！？

この扉を潜ったらイケナイ気がするんだよね

戻るなら今だ！！今しかないぞ！どうする！？


やっぱり…………行くしかないよね。覚悟を決めて突入するしかないんだよね。知ってるよ。エミリーは絶対に逃がしてくれないってことを


「……よし。覚悟は決めたぞ。男児ジェム、命を失ったアイツの為に行って参ります！お父さん、お母さん、今までお世話になりました」


ジェム10歳、いざ行かん逃げ場のない死地へ！


僕は、恐怖のあまりに震える手で食堂の扉を開いた。すると、厨房の方からーーー


「た、頼もぉーー！！！！って……ちょ、何だこの良い匂いは！食欲を唆そそるハーブの効いた香ばしい香りは！」


待て待て待て。想像していたものと違う！

180度違うパターンですよ。てっきり獣臭い匂いが充満してるかと思ったけど、スパイシーかつスイートで、来た人を香りで満腹にさせるような、これ以上にないぐらい最高の香りが食堂内を満たしておりますわ


ここで１つ確認させて頂きたい

今居る所は無人惑星で、なおかつ墜落した宇宙船内ですよね？

この認識で間違いないですよね！？



エミリーさん、貴方は天才だよ。超絶優秀なAIですよ！


よし。もう、この香りだけで満腹だから自室に戻ろうかな

エミリー、ご馳走さまでした。美味しかったです


「あ、ジェム君！お待ちしておりました。どうぞ、こちらへお掛けになってください。今ちょうど完成するところですので、すぐにでもお持ちいたします」


……あっ、やべ。クソッ！見つかった。

まぁ、良いか。見つかってしまっては仕方がない。匂いは確実に美味しい料理のやつだったし、食べたところで死にはしないはず……


ーーーそれから待つこと3分。エミリーが、手作り料理が入った皿をトレーに乗せてウエイトレスのように運んできた


僕の腰掛けるテーブルの中央にロウソクが、手前の両端には何種類ものフォークやスプーン等の食器類、さらにはオシャレに折り畳まれた布ナプキンが立てられてあった

テーブル自体にもテーブルクロスが敷かれて、さながらレストランにいるような雰囲気が醸し出されている

ここだけ見れば、誰がどう見たって一流レストランだよ。ここだけ見ればね？


その次だよ。その次が問題なの！

香りはOK。でも、見た目がダメなら評価がマイナスになりますよ。大幅にね

さて、どんな見た目の料理が出てくるのかなぁ～

楽しみだな～……ハハハッ…………ハァ……