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第37話 ひとときの休息
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改札でマリア=エリー=レラを拾った後、ハイヤーでアレキの家まで帰ることに。
「パパめちゃくちゃ怒ってるだろうなー……!」
アズが申し訳なさそうに頭を下げる。
「ごめんね、私たちのために……、私たちも一緒に謝らせて」
「キュン! アズにゃん大好き! でも余計こじれそうだから来ない方がよさそげ……!」
「だよなあ……」
単純なハリが納得することは、単純な理由なので大体正しい。
「学校サボったからしばらく外出禁止とか言われそう!」
「抜け出す方法は考えてある?」
ゾイスが尋ねるとアレキは少し唸った。
「考えておく! アズにゃんのためだもの!」
まるでサウナ帰りのように汗でしっとりしているマリア=エリー=レラが聞いた。
「そういうゾイスは平気なの? 貴方も無断で出てきたんでしょう?」
「母さんは大丈夫。僕のやることに意味があるのを理解してくれてるから、絶対怒らないし、きちんと説明すれば協力してくれると思ってる」
「羨ましい! ウチのパパと取り替えて!」
そのアレキの発言に苦笑いするゾイスはアズに向き直る。
「取り敢えず今日、アズたちはウチに泊まっていって。そこで星読みをしよう」
「共通の品物が何か聞くんだね?」
「うん。それで今日は休んで、明日かかろう。僕は母さんに言って、明日学校を休ませてもらうから、一緒に行動するよ」
「うえん! アタシも一緒に泊まりたい!」
「今日はこれといった行動にはならないよ。アレキは外出禁止をうまく切り抜けないと」
そこでアブラアムの道具屋の前に到着した。
「じゃあまた連絡する。夜に星読みするから、その時電話するよ」
「ラジャ! また後でね!」
ドアを開けた瞬間こっぴどく叱られるだろうアレキを思い、一同の気は重い。
ゾイスの家に戻ると、エカテリナは怒るどころか心配そうな顔で息子の頬に手を当てた。
「母さんごめん、心配かけてしまった」
「大丈夫よ。学校に電話かけた時から、アズちゃんたちに何かあったら追いかけて行くだろうと思ってたから」
「マダム……」
「先生にはうまく言っておいたわ。仮病使っちゃったから、体調悪いフリしてないと」
三人にウインクして見せるエカテリナは素敵なレディすぎる。
「明日も休みたいんだ。アズたちを手伝ってやらないと」
「じゃあ、せっかくだから今日の設定使わなきゃね。お母さんは今、体調を崩して寝込んでますって、明日の朝先生に電話かけてね」
「分かった。ありがとう」
エカテリナは三人に向き直る。
「疲れたでしょう。みんな汗だくじゃない。ほら、洋服も泥だらけ。ご飯作ってあげるから、シャワー浴びてらっしゃい。ゾイスは洗濯してあげて」
アズがマリア=エリー=レラを先に行かす。
「一番酷い目にあったのはマリア=エリー=レラだから、先に入ってきて」
「シャワーを浴びるより、ホースから出てくる水全部飲んでしまいたい気分よ……」
「待ってて、今冷たいお水持ってくるから」
エカテリナがキッチンに行くと、ゾイスは階段に向かった。
「洋服取ってくる。居間でゆっくりしてて」
ハリが床にしゃがみ込む。
「ハー……腰が痛え。重いもの運びすぎたわ……」
「お疲れ様。後でマッサージするよ」
「いーって、お前もクタクタだろ。ずっと星屑の気配探ってたんだから」
その場でゴロゴロ横になるハリを爪先で突き、マリア=エリー=レラが嫌な顔をする。
「ちょっと、こんなとこで寝ないでよ」
「腰を伸ばしたいのー」
「急いで浴びてくるから、ちょっとだけ我慢してなさいよ」
「あらあら大丈夫?」
ピッチャーに氷を入れてエカテリナが戻ってきた。水の入ったグラスをマリア=エリー=レラに渡してから、ハリの様子を窺う。
「大変なことがあったのね……。ソファに横になる?」
「汚れちゃうよ。マリア=エリー=レラが十分で出てくるって言ってたから大丈夫」
水を飲み干したマリア=エリー=レラが少しむせった。
「十五分!」
慌てて風呂場に消えていく彼女の残像を見送り、エカテリナは微笑んだ。
「ご飯作りに行くわね。アズちゃん、ハリちゃんにお水くんであげてね」
「はい、ありがとうございます」
この疲労感は何だろう。そんな不安がアズの中にはあった。おそらく、ハリもマリア=エリー=レラも同じ気持ちを隠してる。
自分たちには時間がない。
すでに魔法が薄れてきた影響が体感的に分かるようになってきている。オデッセフスと接点の薄い村の人たちは、もう誰も残っていないかもしれない。
早く星を読まなくては。
「パパめちゃくちゃ怒ってるだろうなー……!」
アズが申し訳なさそうに頭を下げる。
「ごめんね、私たちのために……、私たちも一緒に謝らせて」
「キュン! アズにゃん大好き! でも余計こじれそうだから来ない方がよさそげ……!」
「だよなあ……」
単純なハリが納得することは、単純な理由なので大体正しい。
「学校サボったからしばらく外出禁止とか言われそう!」
「抜け出す方法は考えてある?」
ゾイスが尋ねるとアレキは少し唸った。
「考えておく! アズにゃんのためだもの!」
まるでサウナ帰りのように汗でしっとりしているマリア=エリー=レラが聞いた。
「そういうゾイスは平気なの? 貴方も無断で出てきたんでしょう?」
「母さんは大丈夫。僕のやることに意味があるのを理解してくれてるから、絶対怒らないし、きちんと説明すれば協力してくれると思ってる」
「羨ましい! ウチのパパと取り替えて!」
そのアレキの発言に苦笑いするゾイスはアズに向き直る。
「取り敢えず今日、アズたちはウチに泊まっていって。そこで星読みをしよう」
「共通の品物が何か聞くんだね?」
「うん。それで今日は休んで、明日かかろう。僕は母さんに言って、明日学校を休ませてもらうから、一緒に行動するよ」
「うえん! アタシも一緒に泊まりたい!」
「今日はこれといった行動にはならないよ。アレキは外出禁止をうまく切り抜けないと」
そこでアブラアムの道具屋の前に到着した。
「じゃあまた連絡する。夜に星読みするから、その時電話するよ」
「ラジャ! また後でね!」
ドアを開けた瞬間こっぴどく叱られるだろうアレキを思い、一同の気は重い。
ゾイスの家に戻ると、エカテリナは怒るどころか心配そうな顔で息子の頬に手を当てた。
「母さんごめん、心配かけてしまった」
「大丈夫よ。学校に電話かけた時から、アズちゃんたちに何かあったら追いかけて行くだろうと思ってたから」
「マダム……」
「先生にはうまく言っておいたわ。仮病使っちゃったから、体調悪いフリしてないと」
三人にウインクして見せるエカテリナは素敵なレディすぎる。
「明日も休みたいんだ。アズたちを手伝ってやらないと」
「じゃあ、せっかくだから今日の設定使わなきゃね。お母さんは今、体調を崩して寝込んでますって、明日の朝先生に電話かけてね」
「分かった。ありがとう」
エカテリナは三人に向き直る。
「疲れたでしょう。みんな汗だくじゃない。ほら、洋服も泥だらけ。ご飯作ってあげるから、シャワー浴びてらっしゃい。ゾイスは洗濯してあげて」
アズがマリア=エリー=レラを先に行かす。
「一番酷い目にあったのはマリア=エリー=レラだから、先に入ってきて」
「シャワーを浴びるより、ホースから出てくる水全部飲んでしまいたい気分よ……」
「待ってて、今冷たいお水持ってくるから」
エカテリナがキッチンに行くと、ゾイスは階段に向かった。
「洋服取ってくる。居間でゆっくりしてて」
ハリが床にしゃがみ込む。
「ハー……腰が痛え。重いもの運びすぎたわ……」
「お疲れ様。後でマッサージするよ」
「いーって、お前もクタクタだろ。ずっと星屑の気配探ってたんだから」
その場でゴロゴロ横になるハリを爪先で突き、マリア=エリー=レラが嫌な顔をする。
「ちょっと、こんなとこで寝ないでよ」
「腰を伸ばしたいのー」
「急いで浴びてくるから、ちょっとだけ我慢してなさいよ」
「あらあら大丈夫?」
ピッチャーに氷を入れてエカテリナが戻ってきた。水の入ったグラスをマリア=エリー=レラに渡してから、ハリの様子を窺う。
「大変なことがあったのね……。ソファに横になる?」
「汚れちゃうよ。マリア=エリー=レラが十分で出てくるって言ってたから大丈夫」
水を飲み干したマリア=エリー=レラが少しむせった。
「十五分!」
慌てて風呂場に消えていく彼女の残像を見送り、エカテリナは微笑んだ。
「ご飯作りに行くわね。アズちゃん、ハリちゃんにお水くんであげてね」
「はい、ありがとうございます」
この疲労感は何だろう。そんな不安がアズの中にはあった。おそらく、ハリもマリア=エリー=レラも同じ気持ちを隠してる。
自分たちには時間がない。
すでに魔法が薄れてきた影響が体感的に分かるようになってきている。オデッセフスと接点の薄い村の人たちは、もう誰も残っていないかもしれない。
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