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第32話 集合!
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学校を抜け出すなんて初めてのことだ。
電車に乗るにも補導されないか冷や冷やしたが、繁華街に出なければそんな心配も必要ないらしい。
時計台駅を降り、人の流れに合わせて地下鉄の階段を上がっていくと改札が見えてくる。
そこに人一倍機械化されたコーディネイトをしている人物を見つけ、足早に近寄ると声をかけた。
「アレキ」
「あ、きたー! ヤッホー!」
「あまり目立つ行動は避けないと。大通りだから警官も出てるだろうし、補導されたら学校に戻されてしまう」
「アズたちとはどこで待ち合わせ?」
「いや、探すところから」
化学繊維ではない、ナチュラルな素材の洋服を着ているバブロニアンはこの街にはいない。おそらく敬遠されて場違いな空気が漂う場所があるはず。それを探せばいい。
アレキと大通りを前に目を凝らす。
「時計台に何しに来るのか聞いた?」
「ううん。母さんからここに来てほしいっていう伝言を聞いただけだから何も知らない。でもとても慌ててたらしい」
「なんだろー? てっきり土日に来るのかと思ってたから油断したわー!」
不確定要素の話はアレキにしないでおこうと思い、ゾイスはそれ以上を伝えない。アズたちと合流できれば、そのあたりの事情は分かるはずだ。今はよく分からぬ問題でアレキをヤキモキさせたくないと思っていた。
「慣れない街だからなあー? 迷ってるのかなあ……?」
アレキが遠くに視線を投げていると、ハイヤーの降車口で浮いている少年少女が三人もたもたしているのに目が行った。
「いた! アズにゃんとその仲間たち発見ーっ!!」
走り出すアレキの後を追い、ゾイスも三人の元へ駆け寄る。
「みんな!」
こちらに気づいた三人が振り返った。
「ゾイス! アレキ! 学校じゃなかったの!?」
「サボってきた! アズにゃんの頼みだものー!」
「ああっ、ありがとう……! 今大変なことになってて……!!」
ゾイスは周囲を見回し、三人を先導する。
「こっちに。ここじゃ目立ちすぎる。警官が来たら厄介だから、見つからないようにしないと」
一同はハイヤーの待合所に続く細い通りの角に入り、時計台が見える場所で身を隠すように集まった。所々からスチームが吹き出し、マリア=エリー=レラは嫌な顔をしている。
「うええん……髪に変な匂いがついちゃう……」
ゾイスは角から乗り出すように周囲を確認し、身体を戻す。
「ここなら平気だろう。母さんから概要は聞いたけど、詳しいことを初めから説明してくれないか」
アズが頷く。
「昨日、もう夜になるかくらいの時間に村に戻ったんだ。何だか様子がおかしかったんだけど、その時の私たちはあまりピンと来てなくて……。とりあえずおばあちゃんに報告しに行こうって話になって、みんな私の家に来たんだ。そしたらおじいちゃんだけしかいなくて、おじいちゃんがこう言った。みんな消えちゃった……って」
アレキとゾイスの顔色が変わる。
「消えたってどういうこと?」
アレキの疑問に答えたのはゾイスだ。
「魔法の力が薄れているということだね?」
「多分……」
「世界が地動説に変わろうとしているんだ。天道説が嘘になり、魔法の世界が否定されるなら、それを使う人々も一緒になかったことにされてしまう……おそらくこういうことだろう」
「えーっ!? それってもしかして……アズたちも消えちゃうってこと……!?」
アズは辛そうに目を瞑る。
「父さんも母さんもいなくなっていた。おばあちゃんも。街の人たちも半数近くの人が消えている。おじいちゃんはいたけど、魔法が使えなくなっていた。みんないつ消えるか分からない……」
ゾイスが少し考えるように聞いた。
「他の家族と同じ場所にいたのに、アズのおじいさんは消えてなかった……」
「多分、魔法で私たちの様子をずっと追いかけて見てたから……。この街を知ってるからだと思う」
「彼の中でオデッセフスが認知されたということか。その現実が残り、魔法だけが消された……」
アレキが問う。
「アズたちは魔法を消されてないの?」
「うん。マリア=エリー=レラはインビジブルが使えるし、ハリはホッパーが使える。私は確認してないけど、今もアストロラーベから力を感じるし、この場所に停滞している星屑たちが分かるから使えるはず」
「星屑たち?」
「昨日星を読んだの。そうしたら、この時計台に導かれた」
ゾイスの視線が時計台に逸れる。
「あそこに何かあるんだね?」
「でも中に入れないのよ。多分管理してる人が中に入る扉があるはずなんだけど、私たちが行けない場所からみたい」
マリア=エリー=レラの話にハリが続く。
「だから土日にまたここにきて、夜にオレが上から中に入れないか様子を見てこようって話になってたんだ。だけど……」
「村に戻ったら人が消えていて、そんな悠長なことを言ってられなくなったと……」
ハリは頷く。
「オレたちの魔法もいつまで持つか分かんねえ。オレやマリア=エリー=レラの魔法が消えても大したことはないけど、星読みができるアズの占星術が使えなくなったらもうお終いだ」
電車に乗るにも補導されないか冷や冷やしたが、繁華街に出なければそんな心配も必要ないらしい。
時計台駅を降り、人の流れに合わせて地下鉄の階段を上がっていくと改札が見えてくる。
そこに人一倍機械化されたコーディネイトをしている人物を見つけ、足早に近寄ると声をかけた。
「アレキ」
「あ、きたー! ヤッホー!」
「あまり目立つ行動は避けないと。大通りだから警官も出てるだろうし、補導されたら学校に戻されてしまう」
「アズたちとはどこで待ち合わせ?」
「いや、探すところから」
化学繊維ではない、ナチュラルな素材の洋服を着ているバブロニアンはこの街にはいない。おそらく敬遠されて場違いな空気が漂う場所があるはず。それを探せばいい。
アレキと大通りを前に目を凝らす。
「時計台に何しに来るのか聞いた?」
「ううん。母さんからここに来てほしいっていう伝言を聞いただけだから何も知らない。でもとても慌ててたらしい」
「なんだろー? てっきり土日に来るのかと思ってたから油断したわー!」
不確定要素の話はアレキにしないでおこうと思い、ゾイスはそれ以上を伝えない。アズたちと合流できれば、そのあたりの事情は分かるはずだ。今はよく分からぬ問題でアレキをヤキモキさせたくないと思っていた。
「慣れない街だからなあー? 迷ってるのかなあ……?」
アレキが遠くに視線を投げていると、ハイヤーの降車口で浮いている少年少女が三人もたもたしているのに目が行った。
「いた! アズにゃんとその仲間たち発見ーっ!!」
走り出すアレキの後を追い、ゾイスも三人の元へ駆け寄る。
「みんな!」
こちらに気づいた三人が振り返った。
「ゾイス! アレキ! 学校じゃなかったの!?」
「サボってきた! アズにゃんの頼みだものー!」
「ああっ、ありがとう……! 今大変なことになってて……!!」
ゾイスは周囲を見回し、三人を先導する。
「こっちに。ここじゃ目立ちすぎる。警官が来たら厄介だから、見つからないようにしないと」
一同はハイヤーの待合所に続く細い通りの角に入り、時計台が見える場所で身を隠すように集まった。所々からスチームが吹き出し、マリア=エリー=レラは嫌な顔をしている。
「うええん……髪に変な匂いがついちゃう……」
ゾイスは角から乗り出すように周囲を確認し、身体を戻す。
「ここなら平気だろう。母さんから概要は聞いたけど、詳しいことを初めから説明してくれないか」
アズが頷く。
「昨日、もう夜になるかくらいの時間に村に戻ったんだ。何だか様子がおかしかったんだけど、その時の私たちはあまりピンと来てなくて……。とりあえずおばあちゃんに報告しに行こうって話になって、みんな私の家に来たんだ。そしたらおじいちゃんだけしかいなくて、おじいちゃんがこう言った。みんな消えちゃった……って」
アレキとゾイスの顔色が変わる。
「消えたってどういうこと?」
アレキの疑問に答えたのはゾイスだ。
「魔法の力が薄れているということだね?」
「多分……」
「世界が地動説に変わろうとしているんだ。天道説が嘘になり、魔法の世界が否定されるなら、それを使う人々も一緒になかったことにされてしまう……おそらくこういうことだろう」
「えーっ!? それってもしかして……アズたちも消えちゃうってこと……!?」
アズは辛そうに目を瞑る。
「父さんも母さんもいなくなっていた。おばあちゃんも。街の人たちも半数近くの人が消えている。おじいちゃんはいたけど、魔法が使えなくなっていた。みんないつ消えるか分からない……」
ゾイスが少し考えるように聞いた。
「他の家族と同じ場所にいたのに、アズのおじいさんは消えてなかった……」
「多分、魔法で私たちの様子をずっと追いかけて見てたから……。この街を知ってるからだと思う」
「彼の中でオデッセフスが認知されたということか。その現実が残り、魔法だけが消された……」
アレキが問う。
「アズたちは魔法を消されてないの?」
「うん。マリア=エリー=レラはインビジブルが使えるし、ハリはホッパーが使える。私は確認してないけど、今もアストロラーベから力を感じるし、この場所に停滞している星屑たちが分かるから使えるはず」
「星屑たち?」
「昨日星を読んだの。そうしたら、この時計台に導かれた」
ゾイスの視線が時計台に逸れる。
「あそこに何かあるんだね?」
「でも中に入れないのよ。多分管理してる人が中に入る扉があるはずなんだけど、私たちが行けない場所からみたい」
マリア=エリー=レラの話にハリが続く。
「だから土日にまたここにきて、夜にオレが上から中に入れないか様子を見てこようって話になってたんだ。だけど……」
「村に戻ったら人が消えていて、そんな悠長なことを言ってられなくなったと……」
ハリは頷く。
「オレたちの魔法もいつまで持つか分かんねえ。オレやマリア=エリー=レラの魔法が消えても大したことはないけど、星読みができるアズの占星術が使えなくなったらもうお終いだ」
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