アンチエイジャー「この世界、人材不足にて!元勇者様、禁忌を破って若返るご様子」

荒雲ニンザ

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第53話 鷲獅子の羽根

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 一通り流れを決めて行動開始となる。
 町外れの本部で、一時待機となるイライジャとミアが皆を見送った。

「ルーカス、2人を頼みましたよ。無茶しないようにストッパーをかけて下さいね」
「うえぇ……? ぜ、善処します……」
「何で私も入ってるの!?」

 不服そうなアメリアを横に置き、ルーカスが苦笑いをして返す。
 ミアが胸で手を組み、一人一人に視線を投げて言った。

「お気をつけて」

 郊外から大門まで歩いて40分程度。鍛えている人間ならば駆け足で10分の距離だ。
 大門の前まで来て二手に分かれる。
 城下町に入ると、ケヴィンとマレン、サムエレが王宮へ向かった。
 ここで更に二手に分かれる。
 ルチアとアメリア、イーサンとルーカスが城下町の主要道路に向かう。
 ルーカスがいささか心配してイーサンに言った。

「ちゃんと城下町の中、覚えてる?」
「100年前と景色が変わりすぎててサッパリだ」
「うああー……」

 嘆くルーカスをイーサンは肘で小突く。

「でかい通りは何となく分かんだ、オレたちは何かあった時の保険だから、そうカチカチになんじゃねぇよ」

 反対側の路地に進んだルチアとアメリアは、中央にある城を仰ぎ見ながら左手の大通りに進んで行く。
 城外の雑多な賑やかさとは別に、塀の中にある城下町はいかにもな王都で、都会に初めて来たアメリアは口を開けてそれを見ていた。
 黒光りする石畳、大理石の像に大きな広場の噴水、黄金色の葉をつけた木々に、城までゆるやかに続く大階段。店や住宅街に陽気さはないが、厳格な中にも落ち着いた良さが存在する。

「何て綺麗な町……こんなことがなければ、きっと愉しかったのに……」

 前を先導していたルチアの視線が少し揺れる。

「昔は今より遙かに優雅で美しかった。その頃に戻るかは分かりませんが……全てが落ち着いた暁月には、皆様と共に滞在していって頂きたく思います」

 田舎育ちのアメリアからして見れば、今でも十分に美しい。

「これ以上綺麗だったんだ……想像できないや」

 その純朴で素直な言葉が、荒れてしまった城下を憂いていたルチアの心に小さな灯火を焚いてくれた。


 一方、王宮に到着したケヴィンとマレン、サムエレは、いつも通り正門から中へ入った。
 ここでケヴィンとマレンがサムエレと別れ、サムエレは一人別の場所を確認することに。
 別れたケヴィンとマレンはサマナールームへ向かい、そのまま両端の階段を上がって、上の階にある鷲獅子の飼育部屋へやって来た。
 入り口には受付があり、係の者が二人を見て頭を下げる。

「これはケヴィン様とマレン様。グライフをご利用ですか?」

 ケヴィンが頷き、マレンがその後ろで周囲を確認している。

「賢人をお迎えに行く用事ができました。すぐ近くまでいらしているようなので、さほど時間はかからないかと思いますが、勝手がいいので空から行こうかと思いまして」
「はあ……近場なのですか」
「召喚研究の方々で、お年を召した方なのですよ」
「ああ! なるほど。すぐ下ですもんね、王宮は広いから、その方がいい」

 受付がカウンターの上にある小さな槌をコンコンと叩くと、横の扉が開いて中から鷲獅子の飼育人が顔を出した。

「やあケヴィン様、マレン様。どの子にしますか? みんな元気ですよ」
「乗り合いがおります。大きい子にして下さい」
「ラジャー」

 扉の中に案内されて進めば、周囲は高台にある馬宿のような空間が広がっていた。天井はあるが側面の壁は抜けていて、外から風がダイレクトに入ってくる。そこに細かい木々や藁が硬く敷き詰められている巨大な桶が複数置いてあり、上に鷲の顔と羽根をつけたライオンのような生き物が座っていた。これが鷲獅子グライフである。

「この子とこの子を借りていきます」

 身体の大きい雄を2頭選び、ケヴィンとマレンはそれに跨がった。手綱で合図を送れば、よく訓練された鷲獅子は羽根を広げて羽ばたき、側面の間から外へ飛び出していく。
 空を見上げていた他の仲間達はその影を見て、まずは第一段階がうまくいったことを悟る。
 鷲獅子2頭は郊外まで数分で到着し、そこで待機していた騎士たちの前に舞い降りる。上に乗っているケヴィンとマレンはすぐ様イライジャとミアの手を引き、後ろに跨がらせてから命綱を繋いでかけ声をかけた。

「しっかりつかまって!」
「行きますよ!」

 何メートルもある羽根が巻き起こす風圧が周辺にいた騎士達をよろめかせたが、彼らが次に目を開けた時はもう、鷲獅子は遙か上空に飛び去っていた。
 ものの10分足らずで往復して戻ってきた鷲獅子を迎え入れ、飼育人が数人がかりで手綱を取る。

「風が強いのでお気をつけてー」

 ケヴィンとマレンはイライジャとミアの身体を支え、ゆっくりと床の上へ下ろしてやった。ケープが風ではためいて身体を持って行かれそうになるので、そのまま騎士たちに支えられて受付の扉を開けて中に入った。

「お帰りなさいませ。お早いおつきで」

 受付の者が会釈し、紙とペンを取り出す。

「お名前を教えて頂けますでしょうか。利用者は書き記すのが習わしなので」

 イライジャとミアは一瞬固まったが、ミアが前に出た。

「わたくしはアメリア、こちらの殿方がルーカスです」

 本人達が聞いたらどう思うだろう。

「ありがとうございます。お帰りの際にまた確認させて頂きますので、受付にお申し出下さい」

 城内への進入はすんなり行きそうだ。4人は階下のサマナーズルームへと下りて行く。
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