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第33話 いざ加工屋へ
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魔物から追われることもなく、無事イーサン一行は商業の町コメツィエラアンボスへと戻ってきた。
宿屋に大足を止め、用意が調うまでの間滞在することになる。
到着するなりイーサンがエルヴァルドコラレを加工屋に持っていけと言い始め、延々と二輪を漕いでいた若い二人は休む暇もなく足を棒にしながら出発するはめに。
「届けたら後はこの町でやることがねぇ。しばらくのんびりできるんだ、好きなだけ休めんだろ。いざって時はもう一踏ん張りしろ。それが冒険者の鉄則だ」
「ひぃぃ……」
てっきり2人だけで追い出されるのかと思えばそんなこともなく、年寄りチームも一緒に行くと言い始めたので、アメリアとルーカスはそれを一度制した。
「ちょっとちょっと? 3人は宿屋で休んでた方がいいんじゃない?」
「疲れてないの?」
ミアが微笑みながらそれに答える。
「武器は使い手の生命線なの。自らが立ち会ってしっかり依頼するのが良い冒険者の心得なのよ」
「信用できねぇ獲物掴まされて戦ってケガすんのはこっちだかんな。三流ほど見もしねぇで金額が高ぇだけの武器握らされて喜ぶもんだ」
イーサンの発言はどこかで聞いたことがある。
「イーサンとビョルグ、気が合いそう」
「ね」
アメリアの台詞にルーカスは笑った。
ビョルゴルグルの店はメインストリートから大分奥に入った場所にある。イライジャがその周辺を見ながら少し微笑んだ。
「目立たない場所に店を構えるところがドヴェルグらしい」
「そうね、やっぱり日陰で冷え冷えした場所が好きなのかしら。でも人間の町に住んでるくらいだから、かなりの変わり者よ、そのドヴェルグ」
ミアもアメリアの言うビョルグとやらを想像して楽しんでいる。
イーサンが珍しく不敵な笑いを浮かべていた。
「お前ぇら、マジで最っ高の店みつけたんだぞ」
「まあ、そうなのかな。ドワーフはワールドレフトから出歩かないみたいだし」
そう言うルーカスの肩に腕をかけ、イーサンがご機嫌で言った。
「すでにそれがラッキーなのに、ドヴェルグの鍛冶でエルフの素材を使えるんだ。とんでもねぇことなんだぞこれ」
「そうなの?」
先導していたアメリアが振り返ると、最後尾からニコニコ笑顔でついてくるイライジャが教えてくれた。
「太古の時代から、エルフとドヴェルグはあまり仲がよくありませんからね。お互いの製法で装備品を作るなんて、大戦の時でもそうなかったのですよ」
「へえーっ! そんなすごい物作ってもらえるとか、全然知らなかったから私……どうしよう、ビョルグにお礼しないと失礼になっちゃうよね!?」
そこで何故かイーサンが笑った。
「ははっ! どうかな、受け取んねぇと思うぞ」
「え? どうして……?」
道の袋小路に突き当たると、壁に打ち付けてある扉の前でルーカスが足を止める。
「ついたよ」
白壁にドアをつけ直した跡を見つけ、そのいかにもドワーフらしい几帳面さにミアが思わず吹き出してしまう。
「どうしたの?」
「何でもない。行きましょう」
思った通り、滑るように蝶番が扉を運び、音もなく開いて彼らを店内へ招き入れた。
例の如くニッチな店構え。イーサンは嬉しそうに周囲を見回している。
「いいねえー、渋いぜ……!」
それから横に置いてあった依頼品を眺め、細部に指を滑らせる。
「この盾見て見ろよ、圧された時のことまで考えて叩いてありやがる。こっちのツインソードも流し込んだだけじゃねえ、見事な対称に打ってある。さすがドヴェルグ……」
感嘆のため息が出そうになったところで、カウンターの奥から響くような咳払いが聞こえた。
宿屋に大足を止め、用意が調うまでの間滞在することになる。
到着するなりイーサンがエルヴァルドコラレを加工屋に持っていけと言い始め、延々と二輪を漕いでいた若い二人は休む暇もなく足を棒にしながら出発するはめに。
「届けたら後はこの町でやることがねぇ。しばらくのんびりできるんだ、好きなだけ休めんだろ。いざって時はもう一踏ん張りしろ。それが冒険者の鉄則だ」
「ひぃぃ……」
てっきり2人だけで追い出されるのかと思えばそんなこともなく、年寄りチームも一緒に行くと言い始めたので、アメリアとルーカスはそれを一度制した。
「ちょっとちょっと? 3人は宿屋で休んでた方がいいんじゃない?」
「疲れてないの?」
ミアが微笑みながらそれに答える。
「武器は使い手の生命線なの。自らが立ち会ってしっかり依頼するのが良い冒険者の心得なのよ」
「信用できねぇ獲物掴まされて戦ってケガすんのはこっちだかんな。三流ほど見もしねぇで金額が高ぇだけの武器握らされて喜ぶもんだ」
イーサンの発言はどこかで聞いたことがある。
「イーサンとビョルグ、気が合いそう」
「ね」
アメリアの台詞にルーカスは笑った。
ビョルゴルグルの店はメインストリートから大分奥に入った場所にある。イライジャがその周辺を見ながら少し微笑んだ。
「目立たない場所に店を構えるところがドヴェルグらしい」
「そうね、やっぱり日陰で冷え冷えした場所が好きなのかしら。でも人間の町に住んでるくらいだから、かなりの変わり者よ、そのドヴェルグ」
ミアもアメリアの言うビョルグとやらを想像して楽しんでいる。
イーサンが珍しく不敵な笑いを浮かべていた。
「お前ぇら、マジで最っ高の店みつけたんだぞ」
「まあ、そうなのかな。ドワーフはワールドレフトから出歩かないみたいだし」
そう言うルーカスの肩に腕をかけ、イーサンがご機嫌で言った。
「すでにそれがラッキーなのに、ドヴェルグの鍛冶でエルフの素材を使えるんだ。とんでもねぇことなんだぞこれ」
「そうなの?」
先導していたアメリアが振り返ると、最後尾からニコニコ笑顔でついてくるイライジャが教えてくれた。
「太古の時代から、エルフとドヴェルグはあまり仲がよくありませんからね。お互いの製法で装備品を作るなんて、大戦の時でもそうなかったのですよ」
「へえーっ! そんなすごい物作ってもらえるとか、全然知らなかったから私……どうしよう、ビョルグにお礼しないと失礼になっちゃうよね!?」
そこで何故かイーサンが笑った。
「ははっ! どうかな、受け取んねぇと思うぞ」
「え? どうして……?」
道の袋小路に突き当たると、壁に打ち付けてある扉の前でルーカスが足を止める。
「ついたよ」
白壁にドアをつけ直した跡を見つけ、そのいかにもドワーフらしい几帳面さにミアが思わず吹き出してしまう。
「どうしたの?」
「何でもない。行きましょう」
思った通り、滑るように蝶番が扉を運び、音もなく開いて彼らを店内へ招き入れた。
例の如くニッチな店構え。イーサンは嬉しそうに周囲を見回している。
「いいねえー、渋いぜ……!」
それから横に置いてあった依頼品を眺め、細部に指を滑らせる。
「この盾見て見ろよ、圧された時のことまで考えて叩いてありやがる。こっちのツインソードも流し込んだだけじゃねえ、見事な対称に打ってある。さすがドヴェルグ……」
感嘆のため息が出そうになったところで、カウンターの奥から響くような咳払いが聞こえた。
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