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91 少しずつ確定申告の練習
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遅れて起動音からの、つくも神召喚。
「おはようございます。よく眠れたようですね」
「もうお昼過ぎてるじゃん」
「2時回ってますからね、よっぽどお疲れだったのでしょう」
スマホを見ても慧から連絡はない様子。
「サトちゃんまだ寝てるっぽいなー。私より運動苦手だから、今頃死んでるかも」
「今回筋肉痛は?」
「あるある。だから動きたくなくてベッドでごろごろしてる」
だが、動いた方がほぐれるのは早い。
「昨日湿布貼ってから寝ればよかったなー、そんな余裕なかったから気づかなかったけど」
「そうですね、前回のイベントで筋肉痛になったところに張っておけば、翌日楽だったかも知れません。次回に活かしましょう」
「でも湿布高いからな」
「福利厚生費で落ちます」
「なんそれ?」
「勘定科目です。税金を払うため、仕分けするのに必要な知識ですね」
「税金!? なんで急にそんな話してんの!?」
「本が売れて部数が増えれば、こういった話はついてくるので、今から少しずつ慣れておくのが大切かと思いまして」
「マジ? 払わないとダメなん?」
「今回は大丈夫です。バイトも含めて48万円以上収入が出たら申告が必要になってきますが」
「出るわけねえだろ」
「分かりませんよ。クランケモーテルは人気ジャンルですし、二次創作は敷居が低く、手にとって読んでもらう数が違いますから。活動次第では黒字になってくるかと」
「今大赤字じゃん」
「通常、活動費は黒字を回転させていくものです。今回のように特大のマイナスを出していたら、続けるのも苦しくなってしまいますからね。今後も同人活動を続けていくのであれば、必要な資金は上乗せしていかないと」
「ふうん……」
長く続けているうち、地方遠征とかの話も出てくるだろう。関西辺りまでは行けるだろうから、新幹線代や宿泊代なんかもかかってくる。そういったものも見越して、黒字を経費に充てていくのだ。
「杏花梨さんほどの大手さんなら、申告をしているはずです。その時がきたら、相談してみましょう」
「こねえってー」
鈴はまだ、自分たちの本が売れるイメージができないのだろう。同人活動を始めたばかりだ、無理もないが。憶えていて損はない知識なので、将来的に楽に確定申告ができるよう、つくも神は少しずつ教えていってやろうと思った。
そんな会話をしていると、スマホに着信がシュポッ。
「慧だ」
起き上がるのが面倒なのでそのまま電話をかけると、慧の衰弱した声が聞こえてきた。
「鈴ちゃ……」
「おおう、やられてるな。筋肉死んだか」
「死んだ」
「ベッドの上か」
「無論」
「ナ・カーマ」
どういう光景なのか想像はつく。今目の前で見てるのと同じ光景だろう。
「昨日ロクな物食べないで寝たから、今めっちゃお腹減ってる」
「分かる。身体にいいもの食べたいねぃ」
「杏花梨さんにコスプレの代金返すがてら、藤原にご飯食べに行くとかどうよ」
「えっ、ちゃんこ料理、結構な金額するじゃん……?」
「一番安いやつの2,398円くらいなら、わしらでもイケるのでは」
「でもシメで雑炊はいきたくない……?」
「ぐああ! じゃあプラス429円」
横で聞いていたつくも神が感心している。この2人、ちゃんと税込みでバイト先のメニューを記憶しているのだから。
「昨日の売上、4万円あるけど……つくもさん何て言うかな」
慧の言葉を受けて、鈴の視線がチラリとパソコンの上で正座するつくも神にむいた。
「つくもー、藤原でちゃんこ料理食べちゃ……ダメ?」
スッとデジタル計算力。
「お一人様、お会計2,827円になります。2人前で5,654円」
「うっ……やっぱちゃんとしたお店は高いな……」
「翌日は1月1日ですよ、何かお忘れなのでは?」
そこで一瞬間が空き。
「あっ!! お年玉!?」
電話口で慧も思い出した様子で奇声を発している。
「1月のお小遣いも出るのでは? サークル売上から前借りして、1月の個人資金で返済をすればいいのですよ」
「ソレダー!!」
「ちなみに、個人的な食事は経費で落とせませんが、同人関係者と打ち合わせなどで使った経費は、必要と見なして会議費として落とせます。今回はコスプレ代金の受け渡しとして行きますので、内容次第では落としても良いかと思いますよ」
「また税金の話か」
「ふふふ」
こうやって少しずつ、必要なシーンで教えてくれる人がいれば確定申告も楽なのだが。大体のオタクはその時が来て、必死になって勉強して申告するものだ。相変わらずつくも神はオタクの便利ツールと化している。
「じゃあ杏花梨さんにお伺いの連絡を入れよう」
「藤原クンも呼ぶ?」
「来てくれるかなあ? あいつ交換条件ないと動きそうにないんだけど」
「つくもさんも来るって言えば来るんでない?」
「ああ、来そう」
「おはようございます。よく眠れたようですね」
「もうお昼過ぎてるじゃん」
「2時回ってますからね、よっぽどお疲れだったのでしょう」
スマホを見ても慧から連絡はない様子。
「サトちゃんまだ寝てるっぽいなー。私より運動苦手だから、今頃死んでるかも」
「今回筋肉痛は?」
「あるある。だから動きたくなくてベッドでごろごろしてる」
だが、動いた方がほぐれるのは早い。
「昨日湿布貼ってから寝ればよかったなー、そんな余裕なかったから気づかなかったけど」
「そうですね、前回のイベントで筋肉痛になったところに張っておけば、翌日楽だったかも知れません。次回に活かしましょう」
「でも湿布高いからな」
「福利厚生費で落ちます」
「なんそれ?」
「勘定科目です。税金を払うため、仕分けするのに必要な知識ですね」
「税金!? なんで急にそんな話してんの!?」
「本が売れて部数が増えれば、こういった話はついてくるので、今から少しずつ慣れておくのが大切かと思いまして」
「マジ? 払わないとダメなん?」
「今回は大丈夫です。バイトも含めて48万円以上収入が出たら申告が必要になってきますが」
「出るわけねえだろ」
「分かりませんよ。クランケモーテルは人気ジャンルですし、二次創作は敷居が低く、手にとって読んでもらう数が違いますから。活動次第では黒字になってくるかと」
「今大赤字じゃん」
「通常、活動費は黒字を回転させていくものです。今回のように特大のマイナスを出していたら、続けるのも苦しくなってしまいますからね。今後も同人活動を続けていくのであれば、必要な資金は上乗せしていかないと」
「ふうん……」
長く続けているうち、地方遠征とかの話も出てくるだろう。関西辺りまでは行けるだろうから、新幹線代や宿泊代なんかもかかってくる。そういったものも見越して、黒字を経費に充てていくのだ。
「杏花梨さんほどの大手さんなら、申告をしているはずです。その時がきたら、相談してみましょう」
「こねえってー」
鈴はまだ、自分たちの本が売れるイメージができないのだろう。同人活動を始めたばかりだ、無理もないが。憶えていて損はない知識なので、将来的に楽に確定申告ができるよう、つくも神は少しずつ教えていってやろうと思った。
そんな会話をしていると、スマホに着信がシュポッ。
「慧だ」
起き上がるのが面倒なのでそのまま電話をかけると、慧の衰弱した声が聞こえてきた。
「鈴ちゃ……」
「おおう、やられてるな。筋肉死んだか」
「死んだ」
「ベッドの上か」
「無論」
「ナ・カーマ」
どういう光景なのか想像はつく。今目の前で見てるのと同じ光景だろう。
「昨日ロクな物食べないで寝たから、今めっちゃお腹減ってる」
「分かる。身体にいいもの食べたいねぃ」
「杏花梨さんにコスプレの代金返すがてら、藤原にご飯食べに行くとかどうよ」
「えっ、ちゃんこ料理、結構な金額するじゃん……?」
「一番安いやつの2,398円くらいなら、わしらでもイケるのでは」
「でもシメで雑炊はいきたくない……?」
「ぐああ! じゃあプラス429円」
横で聞いていたつくも神が感心している。この2人、ちゃんと税込みでバイト先のメニューを記憶しているのだから。
「昨日の売上、4万円あるけど……つくもさん何て言うかな」
慧の言葉を受けて、鈴の視線がチラリとパソコンの上で正座するつくも神にむいた。
「つくもー、藤原でちゃんこ料理食べちゃ……ダメ?」
スッとデジタル計算力。
「お一人様、お会計2,827円になります。2人前で5,654円」
「うっ……やっぱちゃんとしたお店は高いな……」
「翌日は1月1日ですよ、何かお忘れなのでは?」
そこで一瞬間が空き。
「あっ!! お年玉!?」
電話口で慧も思い出した様子で奇声を発している。
「1月のお小遣いも出るのでは? サークル売上から前借りして、1月の個人資金で返済をすればいいのですよ」
「ソレダー!!」
「ちなみに、個人的な食事は経費で落とせませんが、同人関係者と打ち合わせなどで使った経費は、必要と見なして会議費として落とせます。今回はコスプレ代金の受け渡しとして行きますので、内容次第では落としても良いかと思いますよ」
「また税金の話か」
「ふふふ」
こうやって少しずつ、必要なシーンで教えてくれる人がいれば確定申告も楽なのだが。大体のオタクはその時が来て、必死になって勉強して申告するものだ。相変わらずつくも神はオタクの便利ツールと化している。
「じゃあ杏花梨さんにお伺いの連絡を入れよう」
「藤原クンも呼ぶ?」
「来てくれるかなあ? あいつ交換条件ないと動きそうにないんだけど」
「つくもさんも来るって言えば来るんでない?」
「ああ、来そう」
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