つくも神と腐れオタク

荒雲ニンザ

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47 原作設定の解釈

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 シュポッ。

『ありがとうございます!! じゃあさっそく概要をお送りしますね!』


【公式解除ダンディアンソロジー原稿依頼書】

[概要]
公式でダンディがアラステアと判明し、性別が女性と分かりましたが、『オレの考えた最強のダンディ』を集めたアンソロジーを出すため、皆様にお力を貸していただくことになりました。
以下よくお読みになり、締め切り日までに提出をお願いいたします。

[タイトル]
公式解除アルティメットダンディ

[装丁]
右とじ/A5フルカラー/100ページ↑

[規定]
デジタル
原寸
見開き始まり

[募集枚数]
2枚~
※10枚以上寄稿頂ける場合は事前にご連絡ください。

[締め切り]
12月11日
※間に合わない場合はご相談ください。

[レイティング]
全年齢対象


 鈴が緊張を逃がすように大きく息を吐く。

「アンソロの依頼書、初めて見た……」
「しゅごい……ちゃんとしてる……」

 つくも神がそれに目を通し、うーんと唸った。

「締め切り日が12月11日ですね。こちらは11月の10日の早割あわせですが、9月の残りがあと6日。最低2ページ書くとして一週間を確保と考え、残りの時間は1ヶ月と9日」
「余裕じゃん?」
「まあ、普通にやれば。でも今、お二人とも停滞中ですよ?」
「何か! 今、杏花梨さんの話を聞いてたら、パアッと開けた気がするの!」
「私も!」

 どんな心境になったのかを慧が説明し始める。

「アンソロのこと考えたら、原作から出てる矢印が一度自分に向いたのねぃ。『原作→原稿』だったものが、『原作→自分→原稿』になったというか」
「分かる」
「ふむ……自分の中でどう原作設定を解釈して表現するかに至ったということですかね?」
「ぶっちゃけ公式が女体化しただけの話だよねぃこれ!」

 飛んだ。
 鈴は性格が豪快に見えて意外に大人しい内容を好むが、慧は逆だ。性格が大人しく見えて、好む物が突き抜けている。だからこの二人、友達でいられるのだろうが。

「今これを突き詰めて考えていったら、書けそうな気がしてきた!」
「私も!」
「ちょっと自分の部屋戻って原稿するねぃ!」
「うん! がんばってね!」

 慧が部屋から出て行くと、鈴もモニター前に座ってタブレットのペンを持つ。
 つくも神は察して小さく息を吐いて笑った。

「では、小生はまた箱の中で大人しく作業を見ています」
「うん、ごめんね」

 そう謝罪され、首を傾げた。

「や、退屈かなとか思って」
「まさか。絵を描いている貴女を見守っているのは、とても有意義な時間ですよ」

 鈴が一瞬妙な表情をする。

「それって……ぱしょこんだから……ってコト?」
「どうでしょう? 創作している人を見ているのは、とても楽しいです」

 ふうん、と鈴は言い、モニターに視線を戻した。


 3週間目、水曜日。
 玄関前。

「おはよおー。どう? 書けてる?」
「おはよぉ~。あれからずっと悶々と考えてたら、めっちゃ開けてきたの! でも寝たら全部忘れちった……」
「ダメじゃん! ネタメモは!? してないの?」
「や、メモで思考を手放したらそこで止まっちゃいそうだったから、延々と考えるだけになってしまった……」
「それで寝落ちか」
「鈴ちゃはどうしたの?」
「んん。ダンディの体格変えようか迷ったけど、やめた」
「潔し」
「もう俺の中のダンディは変えられねぇ。このままいく」


 飛んで4週目の月曜日。

「何だよ! 9月って30日までしかないの!?」
「1日損してる!」

 ダンディショックの翌週だ、緊張しながらコンビニでダッシュを買う2人。

「今日もSNSは大荒れなんじゃろうか……」
「早く帰って読もう」

 当然だが内容は先週の延長で、ダンディショック以上の波乱な展開にはなっていない。半ばホッと胸をなで下ろし、2人とも引き続き原稿に向かう。


 10月に入った。
 夏休みの宿題が一斉に戻ってくる。

「そいや、藤原クンがこっちの自由研究読みたいとか言ってたよねぃ」
「ああ、そんなこと言ってたね」
「何組か知ってる?」
「わからん。SNSで呼びだそう」

 お昼休みになり、屋上に集合。顔を合わせるなり大地の眉間にあるシワが深くなる。

「露骨にイヤな顔すな」
「お久しぶりぃ~」

 大地はいつものように中指で眼鏡のブリッジを上げ、自由研究のノートを受け取ると踵を返す。

「手間をかけたな。読み終わったら連絡する」
「オイオイオイオイ」
「せっかく屋上来たんだから、一緒にお昼食べていこうよぉ」
「なんで僕がお前らと」
「家で大ちゃんって呼ばれるのを知っているのは私たちだけだぞ」
「貴様ら……!」
「いーじゃんよ、聞きたい話もあるし」

 つくも神を見ても動じなかっただけあり、あの大地にここまで慣れたのはさすがの適応力。大地もこの2人と2週間やりとりしたので、言い出したら聞かないのを知っていることもあり、諦めてコンクリートの上へ胡座をかいた。

「お前らまだ杏花梨に付き合ってるのか?」
「かなりお世話になっておりますがなにか」
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