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35 オタクの聖地・秋葉原
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打ち上げが終わり、満腹になったところで解散である。
藤原姉弟とは近所なので同じ方向に帰るのだが、鈴と慧は用事があるのでここでお別れとなった。
後ろ髪引かれる思いだが、どうせイベントがあればまた会えるのだ。お互いそんな思いでさよならを言い合い、二手に分かれる。
「さあ! ペンタブを買いに行くぞ!」
この2週間を総集する重要任務だ、失敗は許されない。
「よし、つくもにショートメッセを送ろう」
「ラジャ。何て打つ?」
「今終わった。これからペンタブを買いに行きたいんだけど、モバイルバッテリーも欲しい」
慧が光の速さでフリック入力した後、すぐに返事が来る。
『お疲れ様です。秋葉原に移動して下さい』
「ヒィ! オタクの聖地で買い物なのぉ!?」
「つくものことだ、何か考えがあるんだろう……」
「やばいよぉー! わしらオタクだよぉ!? あんな所に行ったらどうなるか……!」
「つくもに任せておけば大丈夫だ……! つくもの言う店以外見るな!」
「マズイってえ……! 私たち今、杏花梨さんからもらったお小遣いがあるのに……」
「忘れろぉ!! アレは交通費であって、おつりなどなかったのだ!!」
「おつりにしては額が大きくて頭から離れません軍曹!!」
半泣きになりながら、山の手ラインに乗ること30分。
駅を出るなり、薄着のかわゆいコスプレ少女がティッシュを配布している光景が目に入る。ああ~アキバ来たなという実感が一気に襲いかかり、警戒心が強まった。
「匍匐前進で進みたい……」
「上を見るな二等兵! 狙撃されるぞ!」
大きなパネルには今期始まったばかりのアニメキャラが。横のパネルにはゲームの宣伝、俯いた視線に入りこむ位置にガチャ、下を見ればマンホールにすら楽しげなプリントが。
「逃げ場がありません軍曹ぅぅ!!」
「早くつくもに連絡するんだ!!」
誘惑が目に入らないように駅の柱の隙間に入り込み、そこで慧がスマホでメッセージを投げる。いつもの如く喋る速さで来た返事を読んだ。
『電気街口を出て、アニメイトの方角に歩いて下さい』
「激戦地に呼び込んでるぞコイツ!!」
「つ、つくもを信じろ……!! 前進!」
「うわああん」
ザッザッと音を出しながら、俯く2人は猛スピードで人の波を掻き分けて進んで行く。もう何も見ない。気配だけでオタクを察知し、隙間をすり抜ける。
大通りに出ると、四方八方から誘惑の響きが耳を引っ張ってきた。
「クランケモーテルの海外逆輸入商品って聞こえたよ今!?」
「聞くな!! 耳を塞げ!! 洗脳作戦にハマるぞ!!」
「クラモの商品を海外仕様で作って売ってるってどいうことなの!? ど……どんなグッズになるのそれ!?」
「見るな慧ぃぃぃ!!」
一般向けとはちょっと趣向の違うラインナップの情報で、身体を半ば持って行かれそうになる慧の腕を引き、アニメイトのすぐ近くで足を止めた。
「はあはあ……つ、つくもに連絡だ!」
「は、早くこの場から逃げなくては……」
慧のフリックからのつくも神の返事。
『横断歩道を渡って、まんだらけを左手に道を直進、更に横断歩道を渡ったところでもう一度連絡下さい』
「ぐあああ……!! もっと無難な道を選んで案内しろよおお!!」
確かに、この2人が迷いそうにない案内だ。つくも神は優秀ではあるが、現代オタクの物欲をまだ把握し切れていない。
「もう無理です軍曹……!! 一歩も進めませんんん!!」
横断歩道は青。
「突撃ぃぃ!!」
「イヤアアァァ!!」
見ない見ない見ないと念仏のように唱え、ひたすら早足でゴーウエスト。
あらゆる苦難を乗り越えた先で身を隠すように壁にもたれかかり、憔悴しきった2人はつくも神に連絡を入れる。
「もうこれ以上の進軍はむりです軍曹……」
『その辺りに中古ショップが見えませんか?』
その辺りというくらいだから、遠目は見ない。近くのビルを怖々見回すと、2つ向こうのビルに中古と書かれた黄色い紙が目に飛び込んだ。
「あった! ここじゃあ!」
大急ぎでそこへ避難すると、何やら独特の匂いが出迎えた。プラスチックというか、金属というか、埃というか、湿気というか……。1時間前はシャレオツなスペイン料理店でハーブの香りに包まれながらお食事していたので、そのギャップに脳が驚いたのか素に戻る。
「スン」
「何ここ?」
藤原姉弟とは近所なので同じ方向に帰るのだが、鈴と慧は用事があるのでここでお別れとなった。
後ろ髪引かれる思いだが、どうせイベントがあればまた会えるのだ。お互いそんな思いでさよならを言い合い、二手に分かれる。
「さあ! ペンタブを買いに行くぞ!」
この2週間を総集する重要任務だ、失敗は許されない。
「よし、つくもにショートメッセを送ろう」
「ラジャ。何て打つ?」
「今終わった。これからペンタブを買いに行きたいんだけど、モバイルバッテリーも欲しい」
慧が光の速さでフリック入力した後、すぐに返事が来る。
『お疲れ様です。秋葉原に移動して下さい』
「ヒィ! オタクの聖地で買い物なのぉ!?」
「つくものことだ、何か考えがあるんだろう……」
「やばいよぉー! わしらオタクだよぉ!? あんな所に行ったらどうなるか……!」
「つくもに任せておけば大丈夫だ……! つくもの言う店以外見るな!」
「マズイってえ……! 私たち今、杏花梨さんからもらったお小遣いがあるのに……」
「忘れろぉ!! アレは交通費であって、おつりなどなかったのだ!!」
「おつりにしては額が大きくて頭から離れません軍曹!!」
半泣きになりながら、山の手ラインに乗ること30分。
駅を出るなり、薄着のかわゆいコスプレ少女がティッシュを配布している光景が目に入る。ああ~アキバ来たなという実感が一気に襲いかかり、警戒心が強まった。
「匍匐前進で進みたい……」
「上を見るな二等兵! 狙撃されるぞ!」
大きなパネルには今期始まったばかりのアニメキャラが。横のパネルにはゲームの宣伝、俯いた視線に入りこむ位置にガチャ、下を見ればマンホールにすら楽しげなプリントが。
「逃げ場がありません軍曹ぅぅ!!」
「早くつくもに連絡するんだ!!」
誘惑が目に入らないように駅の柱の隙間に入り込み、そこで慧がスマホでメッセージを投げる。いつもの如く喋る速さで来た返事を読んだ。
『電気街口を出て、アニメイトの方角に歩いて下さい』
「激戦地に呼び込んでるぞコイツ!!」
「つ、つくもを信じろ……!! 前進!」
「うわああん」
ザッザッと音を出しながら、俯く2人は猛スピードで人の波を掻き分けて進んで行く。もう何も見ない。気配だけでオタクを察知し、隙間をすり抜ける。
大通りに出ると、四方八方から誘惑の響きが耳を引っ張ってきた。
「クランケモーテルの海外逆輸入商品って聞こえたよ今!?」
「聞くな!! 耳を塞げ!! 洗脳作戦にハマるぞ!!」
「クラモの商品を海外仕様で作って売ってるってどいうことなの!? ど……どんなグッズになるのそれ!?」
「見るな慧ぃぃぃ!!」
一般向けとはちょっと趣向の違うラインナップの情報で、身体を半ば持って行かれそうになる慧の腕を引き、アニメイトのすぐ近くで足を止めた。
「はあはあ……つ、つくもに連絡だ!」
「は、早くこの場から逃げなくては……」
慧のフリックからのつくも神の返事。
『横断歩道を渡って、まんだらけを左手に道を直進、更に横断歩道を渡ったところでもう一度連絡下さい』
「ぐあああ……!! もっと無難な道を選んで案内しろよおお!!」
確かに、この2人が迷いそうにない案内だ。つくも神は優秀ではあるが、現代オタクの物欲をまだ把握し切れていない。
「もう無理です軍曹……!! 一歩も進めませんんん!!」
横断歩道は青。
「突撃ぃぃ!!」
「イヤアアァァ!!」
見ない見ない見ないと念仏のように唱え、ひたすら早足でゴーウエスト。
あらゆる苦難を乗り越えた先で身を隠すように壁にもたれかかり、憔悴しきった2人はつくも神に連絡を入れる。
「もうこれ以上の進軍はむりです軍曹……」
『その辺りに中古ショップが見えませんか?』
その辺りというくらいだから、遠目は見ない。近くのビルを怖々見回すと、2つ向こうのビルに中古と書かれた黄色い紙が目に飛び込んだ。
「あった! ここじゃあ!」
大急ぎでそこへ避難すると、何やら独特の匂いが出迎えた。プラスチックというか、金属というか、埃というか、湿気というか……。1時間前はシャレオツなスペイン料理店でハーブの香りに包まれながらお食事していたので、そのギャップに脳が驚いたのか素に戻る。
「スン」
「何ここ?」
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