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16 オタクマッチング
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1日6時間のバイト。昼にまかないと休憩が入って7時間拘束。5時終了。そこから勉強会のスタートだ。
今朝話していたつくも神とのやりとりは、すでに慧に伝えてある。話の内容自体は賛成だが、知らない人とどうやってマッチングしていいのかが分からないオタクとしては、序盤からかなり高いハードルだ。
「ギガ不足により、つくもをスマホに召喚できません」
「リアルタイムの助言はないのですねぃ……」
「まああいつ、いつもあんま役に立たねーしな。自分たちだけでやりきるしかない……!」
今日も今日とて藤原大地の部屋へ案内されてやってきた後、珍しい洋菓子を頂戴しながら紅茶を飲んで休憩している最中、大地から切り出してきた。
彼は昨日渡された鈴と慧の問題集を前に出す。
「正解率が低い。方程式を勘違いしすぎだ」
「ぴえん……」
「1科目終わったら、僕の問題集と共に2人に渡す。それを書き写しながら、何を間違えていたのか見直してミスを修正していけばいい」
「おお……何か勉強くさい」
「先生の無駄な仕事を省いてやってるだけだ」
問題集のやりとりはスマートに行きそうだ。この流れで鈴が口を開く。
「あのさ、昨日言ってた自由研究のことなんだけど……」
勉強の話ならば、話かけても大地は気にしない。彼は眼鏡の奥から視線をこちらに傾けた。
「女将さんに……藤原クンのお姉さんがサークル活動してるって聞いたのね」
「サークル活動?」
「同人誌を作って、即売会で販売したりする、ああいう活動のこと」
慧の説明を聞くと、大地は興味なさそうに『ああ』とだけ言い、軽く溜め息を吐く。
「それが?」
「どういう活動をしているのかとか、お姉さんに話を聞くことって……できないかなーとか」
当然これは藤原家のプライベートに触れているわけで、鈴と慧は冷や冷やしている。大地は感情を表に出さないので何を考えているのか分かりにくく、その冷ややかな視線がより恐ろしい。
「いいだろう。待っていろ」
まず第一関門は突破だ。もうすでに2人は内心でガッツポーズをつけたい気持ちでいた。
大地はスマホで姉にショートメールを送信している。厳密に何を書いているのかは定かでないが、おそらく小難しいことを並べているのは想像できる。しばらくすると彼はスマホをポケットに戻した。
「協力してくれるそうだ。ノルマが終わったら部屋に行くと伝えた」
「ヒュィィィ……!!」
思わず妙な声が漏れた2人に、大地は嫌な顔を向ける。
「僕は行かないからな」
「なななんでよ!? 一緒に来てよお!!」
「断る」
「初対面同士なのに放置とか、ご無体すぎる!!」
「姉の感覚にはついていけない。必要以上に接触したくないんだ」
慧が察して怖々問いかける。
「……仲悪いってこと……?」
「そういう訳ではない。まあ……会えば分かる」
「怖いよぉ」
このまま退いては、見知らぬ人の前に放り出されてしまう。つくも神の一言を思い出し、鈴が強気に出た。
「そ……創作活動がどういうものなのか把握してないのに、文芸の論文なんて書けんの?」
一瞬大地はムッとした表情を浮かべたが、視線を外し、しばらく考え込んでから少し首を傾げた。
「ううむ……作者の心の動きは、文芸において重要なポイントだな……」
軽く舌打ちが聞こえた後。
「いいだろう。その代わり、姉とやりとりするのはお前達だけだ。僕は後ろで見ている」
「やったあ! 鈴ちゃつおい! 鈴ちゃえらい!」
「ふひ」
慧が鈴に飛びつくのを見て、大地が不満そうに言った。
「もう休憩は終わりだ。この後姉の所に行くんだ、さっさと今日のノルマにかかれ。もたもたしていると時間が足りないぞ」
「ひぃ」
今朝話していたつくも神とのやりとりは、すでに慧に伝えてある。話の内容自体は賛成だが、知らない人とどうやってマッチングしていいのかが分からないオタクとしては、序盤からかなり高いハードルだ。
「ギガ不足により、つくもをスマホに召喚できません」
「リアルタイムの助言はないのですねぃ……」
「まああいつ、いつもあんま役に立たねーしな。自分たちだけでやりきるしかない……!」
今日も今日とて藤原大地の部屋へ案内されてやってきた後、珍しい洋菓子を頂戴しながら紅茶を飲んで休憩している最中、大地から切り出してきた。
彼は昨日渡された鈴と慧の問題集を前に出す。
「正解率が低い。方程式を勘違いしすぎだ」
「ぴえん……」
「1科目終わったら、僕の問題集と共に2人に渡す。それを書き写しながら、何を間違えていたのか見直してミスを修正していけばいい」
「おお……何か勉強くさい」
「先生の無駄な仕事を省いてやってるだけだ」
問題集のやりとりはスマートに行きそうだ。この流れで鈴が口を開く。
「あのさ、昨日言ってた自由研究のことなんだけど……」
勉強の話ならば、話かけても大地は気にしない。彼は眼鏡の奥から視線をこちらに傾けた。
「女将さんに……藤原クンのお姉さんがサークル活動してるって聞いたのね」
「サークル活動?」
「同人誌を作って、即売会で販売したりする、ああいう活動のこと」
慧の説明を聞くと、大地は興味なさそうに『ああ』とだけ言い、軽く溜め息を吐く。
「それが?」
「どういう活動をしているのかとか、お姉さんに話を聞くことって……できないかなーとか」
当然これは藤原家のプライベートに触れているわけで、鈴と慧は冷や冷やしている。大地は感情を表に出さないので何を考えているのか分かりにくく、その冷ややかな視線がより恐ろしい。
「いいだろう。待っていろ」
まず第一関門は突破だ。もうすでに2人は内心でガッツポーズをつけたい気持ちでいた。
大地はスマホで姉にショートメールを送信している。厳密に何を書いているのかは定かでないが、おそらく小難しいことを並べているのは想像できる。しばらくすると彼はスマホをポケットに戻した。
「協力してくれるそうだ。ノルマが終わったら部屋に行くと伝えた」
「ヒュィィィ……!!」
思わず妙な声が漏れた2人に、大地は嫌な顔を向ける。
「僕は行かないからな」
「なななんでよ!? 一緒に来てよお!!」
「断る」
「初対面同士なのに放置とか、ご無体すぎる!!」
「姉の感覚にはついていけない。必要以上に接触したくないんだ」
慧が察して怖々問いかける。
「……仲悪いってこと……?」
「そういう訳ではない。まあ……会えば分かる」
「怖いよぉ」
このまま退いては、見知らぬ人の前に放り出されてしまう。つくも神の一言を思い出し、鈴が強気に出た。
「そ……創作活動がどういうものなのか把握してないのに、文芸の論文なんて書けんの?」
一瞬大地はムッとした表情を浮かべたが、視線を外し、しばらく考え込んでから少し首を傾げた。
「ううむ……作者の心の動きは、文芸において重要なポイントだな……」
軽く舌打ちが聞こえた後。
「いいだろう。その代わり、姉とやりとりするのはお前達だけだ。僕は後ろで見ている」
「やったあ! 鈴ちゃつおい! 鈴ちゃえらい!」
「ふひ」
慧が鈴に飛びつくのを見て、大地が不満そうに言った。
「もう休憩は終わりだ。この後姉の所に行くんだ、さっさと今日のノルマにかかれ。もたもたしていると時間が足りないぞ」
「ひぃ」
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