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11 否二次元男子との遭遇
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バイトから普通に帰宅をすれば午後5時に上がれて、家に5時半頃つく。
しかし本日からバイト終了と同時に宿題がスタート。1時間で終わりたい。
終わった後のことを考えると、仕事が何も頭に入ってこなかった。バイトの先輩に色々教わったが、右の耳から左の耳直通で抜け出し、鈴も慧もお互いがいなければカバーできなかった有様。
「ひい……明日の任務はこれにプラスしてやることが追加されていくわけですよね……」
「今日も増えてるのに、全然覚えてないよお……」
そうこうしているうちに時は過ぎ、バイトは終了。2人ともすでに気疲れでクタクタになりながら控え室で私服に着替えていると、オーナーの藤原女将が声をかけてきた。
「疲れたでしょう? 息子の部屋にお茶菓子持って行くから、そこで休憩してね」
もちろん笑顔で返したが、鈴も慧も心の深い部分にある穴に蓋をして、その中で悲鳴を上げていた。
「すっ……鈴ちゃ……」
「1時間だっ……1時間耐えろ慧……」
「フヒッ……」
変な笑いが身体を震わせて漏れてしまうが、決して楽しいわけではない。
駐車場込みのちゃんこ料理藤原の敷地は広大で、ファミレス程ある面積の店から出ると、すぐ横の一戸建てに案内された。
「なんと……藤原大地がこんなお金持ちだったとは」
「お勉強もできて……お金も持っている」
「これで存在が二次元なら……」
「惜しいね……」
何が惜しいかはオタクにしか理解ができない。
家に案内されると、そのまま大地の部屋へ直行となる。該当するドアの前で藤原女将がノックをして、中にいるだろう息子に声をかけた。
「大地、吉田さんと田辺さんがいらっしゃったわよ」
しん……と静まりかえる空間。鈴と慧がお互い視線を合わせる。
「いない……?」
「大丈夫、ちょっと不機嫌になってるだけ」
そう藤原女将は笑ったが、ちょっと待て。不機嫌て何でやと問いたい。
「鈴ちゃ……これはもしかしてピンチなのでは……」
「もしかしなくてもピンチやで慧……」
大分経ってから、カチャリとドアが開いた。
30センチ程度の隙間から見えるその顔は、無表情の男子。眼鏡の奥から覗く切れ長の目は流し目ではない、じっとり睨み付けている時のアレだ。
2人の脳内に『やっべえ~……』という言葉が下りてくる。
それらを全て笑って蹴飛ばすのは、藤原女将。さすがオーナーとして店を切り盛りしているだけあり、クレーム対応もバッチリといった様子で息子に声をかけた。
「2人ともバイトが終わってクタクタだろうから、部屋で休ませてあげて。お母さんお店あるから、お茶とお菓子持ってきたらすぐ行くわ。あとはよろしくね」
それだけ言い残すと、鈴と慧に会釈をして通り過ぎた。
言葉と共に残された2人の少女は自然とお互い身を寄せ合い、酸っぱい口元をして部屋の中を覗き込んでいる。それを白い目で見てくる学年トップの彼。
「……入れ」
溜め息か言葉か、その境目があやふやな一言が吐き出され、恐る恐る2人は中に足を踏み入れる。
「お……おじゃ、ま、しま……」
「すぅ……」
しかし本日からバイト終了と同時に宿題がスタート。1時間で終わりたい。
終わった後のことを考えると、仕事が何も頭に入ってこなかった。バイトの先輩に色々教わったが、右の耳から左の耳直通で抜け出し、鈴も慧もお互いがいなければカバーできなかった有様。
「ひい……明日の任務はこれにプラスしてやることが追加されていくわけですよね……」
「今日も増えてるのに、全然覚えてないよお……」
そうこうしているうちに時は過ぎ、バイトは終了。2人ともすでに気疲れでクタクタになりながら控え室で私服に着替えていると、オーナーの藤原女将が声をかけてきた。
「疲れたでしょう? 息子の部屋にお茶菓子持って行くから、そこで休憩してね」
もちろん笑顔で返したが、鈴も慧も心の深い部分にある穴に蓋をして、その中で悲鳴を上げていた。
「すっ……鈴ちゃ……」
「1時間だっ……1時間耐えろ慧……」
「フヒッ……」
変な笑いが身体を震わせて漏れてしまうが、決して楽しいわけではない。
駐車場込みのちゃんこ料理藤原の敷地は広大で、ファミレス程ある面積の店から出ると、すぐ横の一戸建てに案内された。
「なんと……藤原大地がこんなお金持ちだったとは」
「お勉強もできて……お金も持っている」
「これで存在が二次元なら……」
「惜しいね……」
何が惜しいかはオタクにしか理解ができない。
家に案内されると、そのまま大地の部屋へ直行となる。該当するドアの前で藤原女将がノックをして、中にいるだろう息子に声をかけた。
「大地、吉田さんと田辺さんがいらっしゃったわよ」
しん……と静まりかえる空間。鈴と慧がお互い視線を合わせる。
「いない……?」
「大丈夫、ちょっと不機嫌になってるだけ」
そう藤原女将は笑ったが、ちょっと待て。不機嫌て何でやと問いたい。
「鈴ちゃ……これはもしかしてピンチなのでは……」
「もしかしなくてもピンチやで慧……」
大分経ってから、カチャリとドアが開いた。
30センチ程度の隙間から見えるその顔は、無表情の男子。眼鏡の奥から覗く切れ長の目は流し目ではない、じっとり睨み付けている時のアレだ。
2人の脳内に『やっべえ~……』という言葉が下りてくる。
それらを全て笑って蹴飛ばすのは、藤原女将。さすがオーナーとして店を切り盛りしているだけあり、クレーム対応もバッチリといった様子で息子に声をかけた。
「2人ともバイトが終わってクタクタだろうから、部屋で休ませてあげて。お母さんお店あるから、お茶とお菓子持ってきたらすぐ行くわ。あとはよろしくね」
それだけ言い残すと、鈴と慧に会釈をして通り過ぎた。
言葉と共に残された2人の少女は自然とお互い身を寄せ合い、酸っぱい口元をして部屋の中を覗き込んでいる。それを白い目で見てくる学年トップの彼。
「……入れ」
溜め息か言葉か、その境目があやふやな一言が吐き出され、恐る恐る2人は中に足を踏み入れる。
「お……おじゃ、ま、しま……」
「すぅ……」
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