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二章 天満月くんの秘密
9.ゆるせない
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強い声が出てしまった。
自分で叫んでおきながらびっくりしてしまう。
私以外の人はもっとそう。
天満月くんは、チョコレートをつまんだ変な体勢のまま停止していた。
…部屋が、静かになってしまった。
でもおかげで、じわじわと私自身の感情がわかってくる。
ああそうだ、嘘の告白をしてまで驚かせたかったのも、
嫌がるのを知ってて引っ張り出したいのも、
全部——
「私の、ためだから」
こぼれるように言うと、天満月くんはそっと身体を起こす。
「…どういう意味?」
「高校生活は、たった三年間しかないでしょ」
「……ああ」
「その貴重な時間のほんの一部でも——『偽物』がいるのが、ゆるせない」
これが、私の思いだ。
それをぶつけた時、赤茶色の目がハッとする。
届くかもしれない…、今なら。
「『偽物』を消すためなら、告白だっておせっかいだって、何だってする。悔しかったら…、私に破れない分身を作ってよっ」
気持ちを打ち明けて……また、静かになった。
なかなか言葉が返ってこない。
ダメ…、だったのかも。
「——ははっ」
…え。
今の、笑い声……?
「あんた…、ほんと……、変わってる……っ」
今日一番の衝撃。
天満月くんが、目尻を下げて、肩を揺らして、笑ってる。
美形な彼の、初めて見せた笑顔はもっと魅力的で。
次に話しかけられる時まで、見とれていた。
「奇術を使う俺を煽るなんて、いい度胸してるな」
「べつにっ、勝負を挑んだつもりじゃ……」
「あんたはそうでも、俺は負けた気分だ。久しぶりだよ…、勝てなかったのは」
気のせいかな、「負けた気分」というわりに、天満月くんはどこかすっきりした表情。
そんなところを見ると、「本当は教室に行きたいんじゃ」という予感は間違っていなかったんじゃないかって思う。
そもそも行かなくなった理由がわからないし、怒られそうだから口にしないけど。
とことこ、とテーブルの端っこに移動したのは狐さん。
『…光モ、美紀菜ト友人ニナッタノカ』
「いいや? 楽で平和なライフスタイルを奪った敵だ」
あ、そうなの…。そこの恨みは深いのね。
「まあ——だからって嫌ってはないけど」
「…えっ、あっ」
私が何か言う前に、ひゅーっとお菓子の箱が飛んできた。
投げられたのではなく、正面で浮いている。
念動力って言うんだっけ。こんなこともできるんだ…。
「食べていけば? 俺は妖精が持ってくるものは遠慮しないでいただく主義」
「そうなんだ。…私も遠慮しない」
「ん。けっこう美味かったぞ」
「へえ、それはよかった」
浮いてる箱から一つ、銀袋を取り出す。
それを開けようとした時。
『ソレハヨカッタ?』
「まるであんたが作ったみたいな言い方だな」
烏さんと天満月くんに質問される。
私は開けた中からチョコレートを取り出して、クスッと笑った。
「作ってはないけどこれ、私が買ったやつだから」
すると気まずそうに黙るみんな。
「遠慮しない」って言ってたのに、おかしくてまた笑った。
自分で叫んでおきながらびっくりしてしまう。
私以外の人はもっとそう。
天満月くんは、チョコレートをつまんだ変な体勢のまま停止していた。
…部屋が、静かになってしまった。
でもおかげで、じわじわと私自身の感情がわかってくる。
ああそうだ、嘘の告白をしてまで驚かせたかったのも、
嫌がるのを知ってて引っ張り出したいのも、
全部——
「私の、ためだから」
こぼれるように言うと、天満月くんはそっと身体を起こす。
「…どういう意味?」
「高校生活は、たった三年間しかないでしょ」
「……ああ」
「その貴重な時間のほんの一部でも——『偽物』がいるのが、ゆるせない」
これが、私の思いだ。
それをぶつけた時、赤茶色の目がハッとする。
届くかもしれない…、今なら。
「『偽物』を消すためなら、告白だっておせっかいだって、何だってする。悔しかったら…、私に破れない分身を作ってよっ」
気持ちを打ち明けて……また、静かになった。
なかなか言葉が返ってこない。
ダメ…、だったのかも。
「——ははっ」
…え。
今の、笑い声……?
「あんた…、ほんと……、変わってる……っ」
今日一番の衝撃。
天満月くんが、目尻を下げて、肩を揺らして、笑ってる。
美形な彼の、初めて見せた笑顔はもっと魅力的で。
次に話しかけられる時まで、見とれていた。
「奇術を使う俺を煽るなんて、いい度胸してるな」
「べつにっ、勝負を挑んだつもりじゃ……」
「あんたはそうでも、俺は負けた気分だ。久しぶりだよ…、勝てなかったのは」
気のせいかな、「負けた気分」というわりに、天満月くんはどこかすっきりした表情。
そんなところを見ると、「本当は教室に行きたいんじゃ」という予感は間違っていなかったんじゃないかって思う。
そもそも行かなくなった理由がわからないし、怒られそうだから口にしないけど。
とことこ、とテーブルの端っこに移動したのは狐さん。
『…光モ、美紀菜ト友人ニナッタノカ』
「いいや? 楽で平和なライフスタイルを奪った敵だ」
あ、そうなの…。そこの恨みは深いのね。
「まあ——だからって嫌ってはないけど」
「…えっ、あっ」
私が何か言う前に、ひゅーっとお菓子の箱が飛んできた。
投げられたのではなく、正面で浮いている。
念動力って言うんだっけ。こんなこともできるんだ…。
「食べていけば? 俺は妖精が持ってくるものは遠慮しないでいただく主義」
「そうなんだ。…私も遠慮しない」
「ん。けっこう美味かったぞ」
「へえ、それはよかった」
浮いてる箱から一つ、銀袋を取り出す。
それを開けようとした時。
『ソレハヨカッタ?』
「まるであんたが作ったみたいな言い方だな」
烏さんと天満月くんに質問される。
私は開けた中からチョコレートを取り出して、クスッと笑った。
「作ってはないけどこれ、私が買ったやつだから」
すると気まずそうに黙るみんな。
「遠慮しない」って言ってたのに、おかしくてまた笑った。
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