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第一章 第4話 就活と日々の中で
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仕事に出た僕は二階にて芹乃さんとレジ作業に勤しむ。
それにしても、対面のレジにて仕事をしている芹乃さんは久々に見てもやはりミス一つせずに確実に客をさばいていっている。逆に僕の方が一部仕事を忘れているところがあって時折フォローしてもらっていた。
やっと落ち着いたので、耳につけたインカムにて他の人達が何をしているのかだったり一階の様子を聞いていると
「今は一階も落ち着いているみたいね」
と芹乃さんが話しかけてきた。
その顔はさっきの喫煙スペースで見た様子とは異なり、完全に仕事モードの凛とした様子だった。
「そうですね。鈴谷さんもミスをしていないようですし、それこそ前にあったみたいに客の怒号が聞こえたりも無いですね」
「まぁ、あの人はもうミスをしなくなったからね。私らに迷惑をかける以外はちゃんとやるようになったから、もうほっといても平気よ」
それから少しして交代として真由が二階に上がってきた。
その交代は僕とであり、僕は一人一階に降りた。
真由が謝ったとはいえ、あの二人を組ませるのは少し心配だがレジシフトとして決まっているので僕はそれに従った。
しかしまぁ、各レジやその周囲にはカメラが付いているので真由も変な事は出来ないだろうし、もしも何かがあったら芹乃さんが教えてくれるに違いない。
それからまた時間が経ってそれぞれが順番で休憩に入る。
もちろん真由と芹乃さんが被ることは無く、そこはしっかりと配慮されているのを感じた。
そうして監視初日が終了し、僕の着替えが終わる頃には真由は先に帰ってしまっていた。
LINEには『明日朝から予定があるから先に帰るね』とあった。
「鈴谷さんは?」
「先に帰りましたよ」
そこに着替えを終えた芹乃さんがやってきた。
「そう。そういえばあれからは特に問題無かったわよ。接客以外で一言も喋らなかったし、私も私で話しかけなかったから」
「分かりました。ありがとうございます。それじゃ僕達も帰りますか」
「そうね。もしあれなら何か食べてく?」
「いえ、家にあるので大丈夫です」
ということで僕と芹乃さんも店を出た。
芹乃さんは車での通勤なので自転車で走る僕を後ろから追い抜いていった。
そういえばライターを貸したままだから帰りにコンビニに寄らないとなぁ。
ということで帰り道にあるコンビニでライターと煙草を購入すると外の灰皿の前で一服。
静かな夜空の下で聞こえるちりちりという音はやはりいつ聞いても落ち着くなぁ。
ふと芹乃さんが昔に吸っていたというセブンスターの箱が頭に浮かんだ。
重いのはキツイし、吸って駄目だったらもったいないから買うのは止そう。
短くなった煙草を水の張った灰皿に落とすと、その奥からジュゥという火が消える音が聞こえた。
***
次の日は先のLINEの通り真由は予定があってバイトには来なかった。なので今日は中村さんと芹乃さんと僕である。
「鈴谷さんの交友関係って分からないんですよね」
と休憩中の中村さんに向けて呟く。
「それは私も分からないわよ。そもそも友達いるのかしら?」
「流石にそれは…色々な意味でどうなんでしょう」
「いや冗談とかじゃなくてね、あの性格でそれに合う女の子はいるのかなってことよ。学生時代からの友人なら分からなくはないけど、そうじゃないならよく付き合えているなって思って」
その口ぶりからして、やはり自分とは相いれないと言っているようだ。それだけでなく、大多数の人達から見ても友達には厳しいだろうなという心情もうかがえた。
「というか、それならどういう友達がいるのかとか、今日どこかに行ってるならどんな感じかを聞いてみたらいいんじゃない? 私には出来ないけど、高橋くんなら一応は彼氏なんだから出来るでしょ?」
「まぁ出来ますけど、言っておいてなんですが、人のプライベートを詮索しすぎるのはどうかと思いますのでやめておきます。きっと合う友達がいるんですよ」
その時芹乃さんが休憩にと事務所にやってきた。
「芹乃さんみたいな?」
「え、何の話?」
「芹乃さんは鈴谷さんみたいな人が友達になろうなんて言ってきたら、友達になってあげる?」
「まさか。私の周りにはちゃんとした人しかいないですし、そういう人を近くに置くのは嫌ですね」
「だよね。そういう事だから、高橋くん。本当に分からないね」
「そうですね」
だからといって特に聞きたいなんて思ってもいないのでこの話はここで終わりとなった。
今日もバイトを終えて帰宅すると、真由から今日買ったものの写真が送られてきた。前回もだったがそれなりの量がその一枚には収められていた。
『そんなに買って大丈夫なの?』
『うん。プレゼントしてくれたのも入ってるよ。だから平気』
それにしてもかなりの額じゃないか?
そう思うも、金的には問題が無い様子なので返信をしてLINEを閉じた。
本当に真由の交友関係はよく分からないなぁ。
ベッドに入って目を閉じると唐突な眠気により眠りに落ちた。
それにしても、対面のレジにて仕事をしている芹乃さんは久々に見てもやはりミス一つせずに確実に客をさばいていっている。逆に僕の方が一部仕事を忘れているところがあって時折フォローしてもらっていた。
やっと落ち着いたので、耳につけたインカムにて他の人達が何をしているのかだったり一階の様子を聞いていると
「今は一階も落ち着いているみたいね」
と芹乃さんが話しかけてきた。
その顔はさっきの喫煙スペースで見た様子とは異なり、完全に仕事モードの凛とした様子だった。
「そうですね。鈴谷さんもミスをしていないようですし、それこそ前にあったみたいに客の怒号が聞こえたりも無いですね」
「まぁ、あの人はもうミスをしなくなったからね。私らに迷惑をかける以外はちゃんとやるようになったから、もうほっといても平気よ」
それから少しして交代として真由が二階に上がってきた。
その交代は僕とであり、僕は一人一階に降りた。
真由が謝ったとはいえ、あの二人を組ませるのは少し心配だがレジシフトとして決まっているので僕はそれに従った。
しかしまぁ、各レジやその周囲にはカメラが付いているので真由も変な事は出来ないだろうし、もしも何かがあったら芹乃さんが教えてくれるに違いない。
それからまた時間が経ってそれぞれが順番で休憩に入る。
もちろん真由と芹乃さんが被ることは無く、そこはしっかりと配慮されているのを感じた。
そうして監視初日が終了し、僕の着替えが終わる頃には真由は先に帰ってしまっていた。
LINEには『明日朝から予定があるから先に帰るね』とあった。
「鈴谷さんは?」
「先に帰りましたよ」
そこに着替えを終えた芹乃さんがやってきた。
「そう。そういえばあれからは特に問題無かったわよ。接客以外で一言も喋らなかったし、私も私で話しかけなかったから」
「分かりました。ありがとうございます。それじゃ僕達も帰りますか」
「そうね。もしあれなら何か食べてく?」
「いえ、家にあるので大丈夫です」
ということで僕と芹乃さんも店を出た。
芹乃さんは車での通勤なので自転車で走る僕を後ろから追い抜いていった。
そういえばライターを貸したままだから帰りにコンビニに寄らないとなぁ。
ということで帰り道にあるコンビニでライターと煙草を購入すると外の灰皿の前で一服。
静かな夜空の下で聞こえるちりちりという音はやはりいつ聞いても落ち着くなぁ。
ふと芹乃さんが昔に吸っていたというセブンスターの箱が頭に浮かんだ。
重いのはキツイし、吸って駄目だったらもったいないから買うのは止そう。
短くなった煙草を水の張った灰皿に落とすと、その奥からジュゥという火が消える音が聞こえた。
***
次の日は先のLINEの通り真由は予定があってバイトには来なかった。なので今日は中村さんと芹乃さんと僕である。
「鈴谷さんの交友関係って分からないんですよね」
と休憩中の中村さんに向けて呟く。
「それは私も分からないわよ。そもそも友達いるのかしら?」
「流石にそれは…色々な意味でどうなんでしょう」
「いや冗談とかじゃなくてね、あの性格でそれに合う女の子はいるのかなってことよ。学生時代からの友人なら分からなくはないけど、そうじゃないならよく付き合えているなって思って」
その口ぶりからして、やはり自分とは相いれないと言っているようだ。それだけでなく、大多数の人達から見ても友達には厳しいだろうなという心情もうかがえた。
「というか、それならどういう友達がいるのかとか、今日どこかに行ってるならどんな感じかを聞いてみたらいいんじゃない? 私には出来ないけど、高橋くんなら一応は彼氏なんだから出来るでしょ?」
「まぁ出来ますけど、言っておいてなんですが、人のプライベートを詮索しすぎるのはどうかと思いますのでやめておきます。きっと合う友達がいるんですよ」
その時芹乃さんが休憩にと事務所にやってきた。
「芹乃さんみたいな?」
「え、何の話?」
「芹乃さんは鈴谷さんみたいな人が友達になろうなんて言ってきたら、友達になってあげる?」
「まさか。私の周りにはちゃんとした人しかいないですし、そういう人を近くに置くのは嫌ですね」
「だよね。そういう事だから、高橋くん。本当に分からないね」
「そうですね」
だからといって特に聞きたいなんて思ってもいないのでこの話はここで終わりとなった。
今日もバイトを終えて帰宅すると、真由から今日買ったものの写真が送られてきた。前回もだったがそれなりの量がその一枚には収められていた。
『そんなに買って大丈夫なの?』
『うん。プレゼントしてくれたのも入ってるよ。だから平気』
それにしてもかなりの額じゃないか?
そう思うも、金的には問題が無い様子なので返信をしてLINEを閉じた。
本当に真由の交友関係はよく分からないなぁ。
ベッドに入って目を閉じると唐突な眠気により眠りに落ちた。
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