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第一章 第4話 就活と日々の中で
4-20
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「ごめんなさい」
次の日から僕が真由を監視する一週間が始まった。
まず第一日目として真由は出勤早々に中村さんのところに行って謝罪した。
件の僕と芹乃さんを監視し、変な事があれば報告するようにと強要していたことと中村さん本人を疑っていたことである。
ちなみにこの謝罪に関して僕はすぐに本人のところに行くようにだったり、もちろん同行なんてしていない。
真由はしっかりと頭を下げて謝って、もう二度と酷い事をしないと約束をしたようだ。
それに対して中村さんは、謝罪は受け入れていたものの本当はどう思っているのかは分からない。なにせ僕に対して神妙に相談を持ちかけてきたことと、最初の直接的な被害者なのだから。
でもここで許さないとなればそれもそれで棘があるというか、謝ったのにということで周囲やそれこそ真由本人から何かされてもおかしくはないのだ。
こういう、謝ったのにその人が許されないので今度は逆に批判される、もしくはその人に何かされるから仕方なく許すみたいなそういう風潮嫌だなぁ。
まぁ、表向きは許していたとしてもやっぱり心の中では分からないよな。
それから少しして芹乃さんが出勤してきた。
真由はまだ中村さんと話をしていてその存在に気付いていなかったが芹乃さんは真由に気が付いたようで、そそくさと更衣室へ行ってしまった。
一瞬だけ露わになった嫌悪とそれに立ち向かうという意思が宿った表情を僕は見逃さず、それを見られたと気付いた芹乃さん本人は僕にむけて僅かに微笑んで見せた。
そして心なしか更衣室から出てくるまでの時間が長かった気がする。
「芹乃さん」
背後からの真由の呼びかけにびくりとする芹乃さん。
振り向きたくない。でも呼ばれたからには振り返らないといけない。そんな雰囲気を出しつつもあくまでいつも通りの顔で振り向いた。
すると途端に真由が中村さんの時と同じように頭を下げて
「ごめんなさい」
と謝罪した。
芹乃さんには疑いの目を向け続けて会うたびに不快な思いをさせたことを詫びていた。
それを芹乃さんは黙って聞いており、その途中でも頭をあげるようになんて言わなかった。それにその謝罪に対して
「もう二度としないでよね。仕事に私情を挟む事も、環境に迷惑をかけることも」
と言っただけだった。
その顔は僅かに笑っていたものの、そのぎこちない笑顔の裏ではきっと真由を許していないに違いなかった。
なぜなら、その後も許すなんて言葉を一言も言っていなかったのだから。さらに、最終的に芹乃さんが自分から言う前に真由が頭を上げたことに対しても一瞬だけ怪訝な顔をしたのだ。
謝られたものの、今でも相当に怒っているもしくはかなりの嫌悪を抱いている様子に違いなかった。
僕はその様子を特に何も言わずに見ていて、芹乃さんも僕の視線に気付いていた。
「それじゃ、今日は―」
と中村さんがやってきてレジシフトのポジションの話をし始めた。
それによると、僕と芹乃さんが一階で真由が二階だった。それに対して真由は以前のように不機嫌な顔をすることも、疑いの目を芹乃さんに向ける事もなく支度を整えて事務所を出て行った。
「はぁ…………」
事務所の扉が閉まると、その直後には芹乃さんから長い溜息が聞こえた。
「煙草、吸います?」
「高橋くん、喫煙者だったのね。でもいいわ。昔に煙草は止めたの」
「そうですか」
「……でもそうね。また吸い始めてもいいかもね。一本貰える?」
「はい、どうぞ。僕のは軽いのでそこまでヤニクラしないと思います」
ということで一本を渡した。
「それを吸ったら仕事だからね?」
そう言った中村さんは奥の自分のデスクに戻っていった。
「高橋くんも付き合いなさいよ」
「いや僕は」
「久々の一本なんだから、そんな女性を寂しくさせるものじゃないわよ?」
ということで事務所内で完全に区分けされている喫煙スペースに半ば強引に連れこまれた。
扉付きの中には僕と芹乃さんしかおらず、ここの会話はもちろん外には聞こえないようになっている。
「火、ちょうだい」
「はいはい」
僕は既に火を点け終えていたのでライターを渡すと、芹乃さんは懐かしそうにというか少しだけぎこちない様子で火を点けて煙を上に吹き上げた。
「確かに軽いわ。メビウスメンソールの1ミリでしょ? よくこれで満足出来るわね」
「まぁ、そうですね。健康を害し過ぎない程度に抑えたいので」
「吸ってる時点で健康を害してるわよ」
「まぁそうですね。芹乃さんは昔何を吸ってたんですか?」
「セブンスターのボックス。7ミリのやつね」
「強くないですか?」
「慣れたらそうでもないよ」
芹乃さんは美味しそうに、それでいてなんだか色っぽく煙を吐きだす。
「世間の男達には賛否あるけど、煙草を吸う女性はどうなのよ?」
「別にいいんじゃないでしょうか。僕もこうですし」
「そう。やっぱり人の趣味や環境をとやかくされるよりも自由なのがいいわよね」
「ところで、あんな重い煙草を吸っていてよく止められましたね」
「まぁそうね。実はセブンスターは元彼が吸ってたやつで、別れた時にもう思い出したくないからってことで止めたのよ」
「なんか、すいません」
「いいわよ別に。もう昔のことだし」
芹乃さんは悪戯っぽく微笑んだ。でも人差し指と中指で挟んだ煙草という存在によってその微笑みはどこか小悪魔っぽくも見えた。
その時僕の煙草が完全に短くなって吸えなくなってしまった。それからほとんど無意識に二本目に火を点けた。
「それ吸ったら仕事って言われたでしょ?」
「もう点けちゃったので、これを吸ったらにします」
「ずるいな。なら私にももう一本ちょうだいよ。私だけ無くなってたら不自然でしょ?」
「まぁ確かに」
そう言って僕は煙草を咥えたまま箱とライターを取り出そうとポケットを探る。
そんな時だった。
「私、これがいいや」
芹乃さんはそう言って僕が今ちょうど咥えているそれを人差し指と中指で挟んで持っていってしまった。芹乃さんの指に付いた煙草の香りとほんのりとした上品な香りがふわりと鼻腔をくすぐった。そしてその煙草を咥えた芹乃さんは美味しそうに煙を吸って吐き出した。
「なにぼーっとしてるの? もしかして間接キスだなんて思ってる? 高橋くんは童貞かなにかなの?」
「いやその……まぁ、とりあえず童貞ではないですよ」
「知ってる。あんなふうに私をからかったり、女性の心の隙間に入る事が出来るのは童貞じゃ無理だよ」
「人生経験の差がものを言ってますね」
「これでも高橋くんよりは少しだけ年上だからね」
煙草を持ってかれたので新しい煙草を咥えて火を点けた。
「ライター貸して」
おもむろにそう言ってきたので手渡すと、芹乃さんはそれをまじまじと見始めた。
「高橋くんってさ、年上が好きなの?」
「急ですね。まぁ年上か年下かと聞かれれば年上の方が好きですね。どうしてです?」
「あの人が年上だからだよ。三つ上でしょ? そこまではいけるんだね」
「でも僕としては五歳以上離れると話が合わなくなりそうなので、やっぱりいっても三歳差までですね。というか酒でも飲んでます?」
「いつ飲む時間があったの? まぁそうだねぇ。少し酔っているのかもね」
僕と芹乃さんの煙草がもうじき終わる。
あと一回か二回吸ったら終わるくらいの長さになった時
「あの人と別れたらどうするの?」
と聞いてきた。
「特に予定はないですね。僕の女運の悪さはお墨付きのようなので、何も考えていないです」
「そう」
煙草がまた短くなった。
「……別れても別れてなくてもいい気がするんだよね」
「何か言いました?」
ぼそっと何かを言った気がするが、聞き取れなかったので問いかけると芹乃さんは少し迷っているような目を向けてきた。
「この状況ならきっとみんな私の味方だと思うのよ。それこそ、仕方ないよねって言ってね」
「何の話です?」
「……高橋くん。あの人と付き合っていて本当に幸せ?」
「今日の芹乃さんはどうしたんですか? まさかヤニクラでおかしくなったんですか?」
「いいから答えて。今、本当に幸せ?」
なんだか様子がおかしい芹乃さんはそれでも真剣な瞳で問いかけてきた。
しかしなんだろう。その質問はなんだか僕の心の奥底に刺さった気がした。
僕は今幸せなのだろうか。
真由は僕の事を考えてくれることが多い。今はそれが暴走してあらぬ方向にいってしまっているけど。遊びに行った時は確かに楽しかった。でもここ最近は僕自身が忙しくてそれも出来ていない。あったのは件の話し合いだけだ。
僕は今本当に幸せなのだろうか。
真由と付き合えていて本当に幸せなのだろうか。
「僕は……幸せじゃないと思います。でもその幸せって後になって気が付くものだと思いますし、今はまだ完全には分からないです」
「そっか。ならもしもこの先高橋くんをあの人以上に幸せにしてくれる人が現れたら、どうする?」
「その時によりますね。別れる寸前とか確定しているなら、その人の事は気になりますけど」
「分かった。そうなんだね。それじゃあさ―…」
芹乃さんがその続きを言おうとした丁度その時だった。
「二人とも、煙草終わった? ロングでも吸ってるの?」
と中村さんが喫煙スペースの扉を開けてきた。
どうやらけっこう長い時間話してしまっていたようだ。
「すいません。仕事行きます」
芹乃さんは水の張った灰皿に煙草を落とすと先に扉の方に向かって行った。それに続くように僕も煙草を水に落として扉を出た。
「そういえばライターって返してもらいましたっけ?」
「これ?」
「そうです」
そうして手を伸ばした時、そのライターは芹乃さんのポケットの中に入ってしまった。
「今はまだ返してあげないよ。一週間後に返してあげる。その時にまた一緒に煙草吸おうね」
「まぁいいですけど」
「それじゃ、一週間後ね」
そうして芹乃さんは最後に悪戯っぽく笑うと事務所から出ていった。
僕も臭いのケアをして仕事に出た。
次の日から僕が真由を監視する一週間が始まった。
まず第一日目として真由は出勤早々に中村さんのところに行って謝罪した。
件の僕と芹乃さんを監視し、変な事があれば報告するようにと強要していたことと中村さん本人を疑っていたことである。
ちなみにこの謝罪に関して僕はすぐに本人のところに行くようにだったり、もちろん同行なんてしていない。
真由はしっかりと頭を下げて謝って、もう二度と酷い事をしないと約束をしたようだ。
それに対して中村さんは、謝罪は受け入れていたものの本当はどう思っているのかは分からない。なにせ僕に対して神妙に相談を持ちかけてきたことと、最初の直接的な被害者なのだから。
でもここで許さないとなればそれもそれで棘があるというか、謝ったのにということで周囲やそれこそ真由本人から何かされてもおかしくはないのだ。
こういう、謝ったのにその人が許されないので今度は逆に批判される、もしくはその人に何かされるから仕方なく許すみたいなそういう風潮嫌だなぁ。
まぁ、表向きは許していたとしてもやっぱり心の中では分からないよな。
それから少しして芹乃さんが出勤してきた。
真由はまだ中村さんと話をしていてその存在に気付いていなかったが芹乃さんは真由に気が付いたようで、そそくさと更衣室へ行ってしまった。
一瞬だけ露わになった嫌悪とそれに立ち向かうという意思が宿った表情を僕は見逃さず、それを見られたと気付いた芹乃さん本人は僕にむけて僅かに微笑んで見せた。
そして心なしか更衣室から出てくるまでの時間が長かった気がする。
「芹乃さん」
背後からの真由の呼びかけにびくりとする芹乃さん。
振り向きたくない。でも呼ばれたからには振り返らないといけない。そんな雰囲気を出しつつもあくまでいつも通りの顔で振り向いた。
すると途端に真由が中村さんの時と同じように頭を下げて
「ごめんなさい」
と謝罪した。
芹乃さんには疑いの目を向け続けて会うたびに不快な思いをさせたことを詫びていた。
それを芹乃さんは黙って聞いており、その途中でも頭をあげるようになんて言わなかった。それにその謝罪に対して
「もう二度としないでよね。仕事に私情を挟む事も、環境に迷惑をかけることも」
と言っただけだった。
その顔は僅かに笑っていたものの、そのぎこちない笑顔の裏ではきっと真由を許していないに違いなかった。
なぜなら、その後も許すなんて言葉を一言も言っていなかったのだから。さらに、最終的に芹乃さんが自分から言う前に真由が頭を上げたことに対しても一瞬だけ怪訝な顔をしたのだ。
謝られたものの、今でも相当に怒っているもしくはかなりの嫌悪を抱いている様子に違いなかった。
僕はその様子を特に何も言わずに見ていて、芹乃さんも僕の視線に気付いていた。
「それじゃ、今日は―」
と中村さんがやってきてレジシフトのポジションの話をし始めた。
それによると、僕と芹乃さんが一階で真由が二階だった。それに対して真由は以前のように不機嫌な顔をすることも、疑いの目を芹乃さんに向ける事もなく支度を整えて事務所を出て行った。
「はぁ…………」
事務所の扉が閉まると、その直後には芹乃さんから長い溜息が聞こえた。
「煙草、吸います?」
「高橋くん、喫煙者だったのね。でもいいわ。昔に煙草は止めたの」
「そうですか」
「……でもそうね。また吸い始めてもいいかもね。一本貰える?」
「はい、どうぞ。僕のは軽いのでそこまでヤニクラしないと思います」
ということで一本を渡した。
「それを吸ったら仕事だからね?」
そう言った中村さんは奥の自分のデスクに戻っていった。
「高橋くんも付き合いなさいよ」
「いや僕は」
「久々の一本なんだから、そんな女性を寂しくさせるものじゃないわよ?」
ということで事務所内で完全に区分けされている喫煙スペースに半ば強引に連れこまれた。
扉付きの中には僕と芹乃さんしかおらず、ここの会話はもちろん外には聞こえないようになっている。
「火、ちょうだい」
「はいはい」
僕は既に火を点け終えていたのでライターを渡すと、芹乃さんは懐かしそうにというか少しだけぎこちない様子で火を点けて煙を上に吹き上げた。
「確かに軽いわ。メビウスメンソールの1ミリでしょ? よくこれで満足出来るわね」
「まぁ、そうですね。健康を害し過ぎない程度に抑えたいので」
「吸ってる時点で健康を害してるわよ」
「まぁそうですね。芹乃さんは昔何を吸ってたんですか?」
「セブンスターのボックス。7ミリのやつね」
「強くないですか?」
「慣れたらそうでもないよ」
芹乃さんは美味しそうに、それでいてなんだか色っぽく煙を吐きだす。
「世間の男達には賛否あるけど、煙草を吸う女性はどうなのよ?」
「別にいいんじゃないでしょうか。僕もこうですし」
「そう。やっぱり人の趣味や環境をとやかくされるよりも自由なのがいいわよね」
「ところで、あんな重い煙草を吸っていてよく止められましたね」
「まぁそうね。実はセブンスターは元彼が吸ってたやつで、別れた時にもう思い出したくないからってことで止めたのよ」
「なんか、すいません」
「いいわよ別に。もう昔のことだし」
芹乃さんは悪戯っぽく微笑んだ。でも人差し指と中指で挟んだ煙草という存在によってその微笑みはどこか小悪魔っぽくも見えた。
その時僕の煙草が完全に短くなって吸えなくなってしまった。それからほとんど無意識に二本目に火を点けた。
「それ吸ったら仕事って言われたでしょ?」
「もう点けちゃったので、これを吸ったらにします」
「ずるいな。なら私にももう一本ちょうだいよ。私だけ無くなってたら不自然でしょ?」
「まぁ確かに」
そう言って僕は煙草を咥えたまま箱とライターを取り出そうとポケットを探る。
そんな時だった。
「私、これがいいや」
芹乃さんはそう言って僕が今ちょうど咥えているそれを人差し指と中指で挟んで持っていってしまった。芹乃さんの指に付いた煙草の香りとほんのりとした上品な香りがふわりと鼻腔をくすぐった。そしてその煙草を咥えた芹乃さんは美味しそうに煙を吸って吐き出した。
「なにぼーっとしてるの? もしかして間接キスだなんて思ってる? 高橋くんは童貞かなにかなの?」
「いやその……まぁ、とりあえず童貞ではないですよ」
「知ってる。あんなふうに私をからかったり、女性の心の隙間に入る事が出来るのは童貞じゃ無理だよ」
「人生経験の差がものを言ってますね」
「これでも高橋くんよりは少しだけ年上だからね」
煙草を持ってかれたので新しい煙草を咥えて火を点けた。
「ライター貸して」
おもむろにそう言ってきたので手渡すと、芹乃さんはそれをまじまじと見始めた。
「高橋くんってさ、年上が好きなの?」
「急ですね。まぁ年上か年下かと聞かれれば年上の方が好きですね。どうしてです?」
「あの人が年上だからだよ。三つ上でしょ? そこまではいけるんだね」
「でも僕としては五歳以上離れると話が合わなくなりそうなので、やっぱりいっても三歳差までですね。というか酒でも飲んでます?」
「いつ飲む時間があったの? まぁそうだねぇ。少し酔っているのかもね」
僕と芹乃さんの煙草がもうじき終わる。
あと一回か二回吸ったら終わるくらいの長さになった時
「あの人と別れたらどうするの?」
と聞いてきた。
「特に予定はないですね。僕の女運の悪さはお墨付きのようなので、何も考えていないです」
「そう」
煙草がまた短くなった。
「……別れても別れてなくてもいい気がするんだよね」
「何か言いました?」
ぼそっと何かを言った気がするが、聞き取れなかったので問いかけると芹乃さんは少し迷っているような目を向けてきた。
「この状況ならきっとみんな私の味方だと思うのよ。それこそ、仕方ないよねって言ってね」
「何の話です?」
「……高橋くん。あの人と付き合っていて本当に幸せ?」
「今日の芹乃さんはどうしたんですか? まさかヤニクラでおかしくなったんですか?」
「いいから答えて。今、本当に幸せ?」
なんだか様子がおかしい芹乃さんはそれでも真剣な瞳で問いかけてきた。
しかしなんだろう。その質問はなんだか僕の心の奥底に刺さった気がした。
僕は今幸せなのだろうか。
真由は僕の事を考えてくれることが多い。今はそれが暴走してあらぬ方向にいってしまっているけど。遊びに行った時は確かに楽しかった。でもここ最近は僕自身が忙しくてそれも出来ていない。あったのは件の話し合いだけだ。
僕は今本当に幸せなのだろうか。
真由と付き合えていて本当に幸せなのだろうか。
「僕は……幸せじゃないと思います。でもその幸せって後になって気が付くものだと思いますし、今はまだ完全には分からないです」
「そっか。ならもしもこの先高橋くんをあの人以上に幸せにしてくれる人が現れたら、どうする?」
「その時によりますね。別れる寸前とか確定しているなら、その人の事は気になりますけど」
「分かった。そうなんだね。それじゃあさ―…」
芹乃さんがその続きを言おうとした丁度その時だった。
「二人とも、煙草終わった? ロングでも吸ってるの?」
と中村さんが喫煙スペースの扉を開けてきた。
どうやらけっこう長い時間話してしまっていたようだ。
「すいません。仕事行きます」
芹乃さんは水の張った灰皿に煙草を落とすと先に扉の方に向かって行った。それに続くように僕も煙草を水に落として扉を出た。
「そういえばライターって返してもらいましたっけ?」
「これ?」
「そうです」
そうして手を伸ばした時、そのライターは芹乃さんのポケットの中に入ってしまった。
「今はまだ返してあげないよ。一週間後に返してあげる。その時にまた一緒に煙草吸おうね」
「まぁいいですけど」
「それじゃ、一週間後ね」
そうして芹乃さんは最後に悪戯っぽく笑うと事務所から出ていった。
僕も臭いのケアをして仕事に出た。
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