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第一章 第4話 就活と日々の中で
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芹乃さんのシフト。そして真由がLINEで記したいくつかの日付。
それらが今目の前にある全体シフト表をもって繋がった。
「中村さん」
僕は、その日付においていずれも出勤していた中村さんに声をかけた。
デスクで事務作業をしていた彼女はその声に反応すると僕を見て、少し待ってと言った。
「なら、休憩時間にでも。いいですか?」
「いいわよ。高橋くんの休憩時間に私も合わせるから、その時にね。私も話しておかなきゃいけないことがあるし」
「分かりました。ではその時に」
僕が中村さんの所を去ると、芹乃さんが僕に問いかけた。
「何かあったの?」
「まぁ、その……そうですね」
僕が曖昧で複雑な顔をしていたのか、芹乃さんは深く言及してこなかった。
「私は…話に混ざらないほうが良さそうだね」
「今回はそうしてくれると助かります。ありがとうございます」
「お礼を言う事でもないよ。何かあるならしっかりと話しなね。私の事は気にしなくていいから」
芹乃さんは特に気にしていない様子を示した。
そして改めて身支度を整えると、そのまま売り場の方へ行ってしまった。
つくづく芹乃さんは空気が読めるというか、聞かないでほしいことを聞かないでいてくれるので助かる。
それに、今回だって嫌な顔や素振りを一切見せていなかったので、流石は大人の女性だなと思った。
それから僕も支度を整えて売り場に出た。
仕事をしている間にも少し考えていた。
中村さんに声をかけたのは、単にLINEで記されていた日付けのほとんどに出勤していたからだ。
さっき話しかけた時に中村さんは僕の言いたい事、というか思っている事を察したような様子だった。
つまり、僕が中村さんに声をかけたのはこの思いを確認するのには正解だったということだ。
対して芹乃さんには気づいている様子は無かった。
だからこそこのことが真実であれば、それは芹乃さんに対しても中村さんに対しても迷惑だ。
そして僕としては非常に悲しい。
それでも今のこの思いはまだ完全に確定されたことではなく、あくまでも予想である。
出来れば外れてほしい。そして中村さんが僕に言っていた、話しておかなきゃいけないことがしょうもないことであってほしい。
そう願った。
***
休憩時間になったので買ってきた弁当を持って事務所で待っていると、やってきた中村さんに別室に連れて行かれた。
そして完全に二人きりとなった個室でお互いに弁当を広げた。
「おまたせ。それじゃ始めようか」
そう言った中村さんの顔はいつになく真剣で、その中には心配と幾分かの申し訳なさを孕んでいた。
扉の向こうからはこの店特有の音楽が聞こえ、それがこの静かな部屋に僅かに響いてはどことなく立ち込める圧のようなものの存在感を増長させていた、
それらが今目の前にある全体シフト表をもって繋がった。
「中村さん」
僕は、その日付においていずれも出勤していた中村さんに声をかけた。
デスクで事務作業をしていた彼女はその声に反応すると僕を見て、少し待ってと言った。
「なら、休憩時間にでも。いいですか?」
「いいわよ。高橋くんの休憩時間に私も合わせるから、その時にね。私も話しておかなきゃいけないことがあるし」
「分かりました。ではその時に」
僕が中村さんの所を去ると、芹乃さんが僕に問いかけた。
「何かあったの?」
「まぁ、その……そうですね」
僕が曖昧で複雑な顔をしていたのか、芹乃さんは深く言及してこなかった。
「私は…話に混ざらないほうが良さそうだね」
「今回はそうしてくれると助かります。ありがとうございます」
「お礼を言う事でもないよ。何かあるならしっかりと話しなね。私の事は気にしなくていいから」
芹乃さんは特に気にしていない様子を示した。
そして改めて身支度を整えると、そのまま売り場の方へ行ってしまった。
つくづく芹乃さんは空気が読めるというか、聞かないでほしいことを聞かないでいてくれるので助かる。
それに、今回だって嫌な顔や素振りを一切見せていなかったので、流石は大人の女性だなと思った。
それから僕も支度を整えて売り場に出た。
仕事をしている間にも少し考えていた。
中村さんに声をかけたのは、単にLINEで記されていた日付けのほとんどに出勤していたからだ。
さっき話しかけた時に中村さんは僕の言いたい事、というか思っている事を察したような様子だった。
つまり、僕が中村さんに声をかけたのはこの思いを確認するのには正解だったということだ。
対して芹乃さんには気づいている様子は無かった。
だからこそこのことが真実であれば、それは芹乃さんに対しても中村さんに対しても迷惑だ。
そして僕としては非常に悲しい。
それでも今のこの思いはまだ完全に確定されたことではなく、あくまでも予想である。
出来れば外れてほしい。そして中村さんが僕に言っていた、話しておかなきゃいけないことがしょうもないことであってほしい。
そう願った。
***
休憩時間になったので買ってきた弁当を持って事務所で待っていると、やってきた中村さんに別室に連れて行かれた。
そして完全に二人きりとなった個室でお互いに弁当を広げた。
「おまたせ。それじゃ始めようか」
そう言った中村さんの顔はいつになく真剣で、その中には心配と幾分かの申し訳なさを孕んでいた。
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