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第一章 第2話 交際開始
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「どうもどうも。それじゃ今日もゲーム配信を始めていくよ」
僕は久しぶりにゲーム配信を始めた。
予めSNSで告知をうっておいたこともあってリスナーの数はいつもよりも多かった。
それに、そのSNSの文言に『緊急! リスナーへ逆質問』なんていう言葉も付けたのだ。
まぁ実際のところ、それのお陰かは知らないがやはりリスナーの数は多かった。
「よし。今日は調子がいいみたいだ。前回はごめんね。ゲーム配信系なのにつまらないところを見せちゃって」
FPSにおける次の一戦も余裕の勝利を飾った。
そしてオープンチャットで例の事について質問が飛んできた。
「SNSのあれはなんですか? うん。そうだね。そろそろみんなに聞いてみようかな」
という事で、自分の今の気持ちについての話をしつつも質問を投げかける。
内容は「とりあえず付き合ってみる」という感性についてだ。
それでも僕が誰かと付きあったなんて事は言わず、あくまでその感性にフォーカスさせた。
すると色んな答えが集まった。
中でも個人的に目をひいたのが
「付き合ってから好きになることもあるから大丈夫。そっか。そうだよね」
他には
「案外そういう人もいるから大丈夫。そうなんだね」
正直なところ、不純だとか不誠実だとかそういう答えが来る事は覚悟していた。
しかしなんだろう。世間の流れというのか風潮というのか、そういう事に寛容な人がままいた。
「みんな、ありがとう。え? 恋人でも出来たかって? さぁどうだろうね」
それからまた一戦を開始する。
手強い相手だったけれどやはり勝つことが出来た。
「逆にみんなはそういう恋愛をした事ある? なんかさ、やっぱり恋愛ってお互いに好きだから付き合うわけじゃん? それこそ片方がその気でももう片方が淡泊というか、好きか嫌いかはっきりしない感じだったらその元々好きだった人も冷めていっちゃうんじゃないかって思うんだよね」
チャットが流れ続ける。
それについては同意見の人が多かった。しかしそれでも健気に待ち続けるという意見の人もいた。
「好きになってからだと蛙化現象があるけど、好きになる前なら蛙も何も無い。なるほどね。蛙化現象って怖いよね。やっぱり期待しすぎて付き合っちゃっているわけだから、本性が見えた瞬間に冷めるんだろうね。ならさ、『とりあえず』の状態で先に本性を見せておけばそれから先もその人が好きでいてくれるか分かるじゃん? それから付き合えば蛙もオタマジャクシもないよね」
自分で言っておいてなんだが、確かにそうだ。
それに、もしかしたら僕は心のどこかで期待しているのかもしれない。
鈴谷さんが昔のあの人のようではないという事を。
期待。いや、『とりあえず』の時点で期待も何もあるのだろうか。
あるとしたら、それは僕が鈴谷さんをちゃんと好きになっているという事じゃないか。
期待しているのかもしれない。
その『かもしれない』というのがやはり今の状態だ。だからちゃんと期待をしてはいけないのかもしれない。
「あ、そろそろ時間だね。みんな質問に答えてくれてありがとう。それじゃ次回はまたSNSで告知するね。ではでは」
ということで今回の配信は終わりを迎えた。
それからベランダに出て煙草に火を点ける
夜の静けさにちりちりという先が燃えていく音と、ゆらりと昇っていく煙がある。
一息煙を吸うごとに先端には赤い火が灯り、吐いてはまたその灯り火が見たくて吸う。
「期待……ね」
でももしかしたら付き合ってみたら楽しいのかもしれない。
こうした気分でいたら、こんな状態の僕でもいいと言ってくれた彼女に失礼じゃないか。
「付き合ってみるか」
と心に決め、短くなった煙草の火を消した。
それから気が付く。
今日の煙草はやはり前に吸った時よりも美味く感じていたと。
僕は久しぶりにゲーム配信を始めた。
予めSNSで告知をうっておいたこともあってリスナーの数はいつもよりも多かった。
それに、そのSNSの文言に『緊急! リスナーへ逆質問』なんていう言葉も付けたのだ。
まぁ実際のところ、それのお陰かは知らないがやはりリスナーの数は多かった。
「よし。今日は調子がいいみたいだ。前回はごめんね。ゲーム配信系なのにつまらないところを見せちゃって」
FPSにおける次の一戦も余裕の勝利を飾った。
そしてオープンチャットで例の事について質問が飛んできた。
「SNSのあれはなんですか? うん。そうだね。そろそろみんなに聞いてみようかな」
という事で、自分の今の気持ちについての話をしつつも質問を投げかける。
内容は「とりあえず付き合ってみる」という感性についてだ。
それでも僕が誰かと付きあったなんて事は言わず、あくまでその感性にフォーカスさせた。
すると色んな答えが集まった。
中でも個人的に目をひいたのが
「付き合ってから好きになることもあるから大丈夫。そっか。そうだよね」
他には
「案外そういう人もいるから大丈夫。そうなんだね」
正直なところ、不純だとか不誠実だとかそういう答えが来る事は覚悟していた。
しかしなんだろう。世間の流れというのか風潮というのか、そういう事に寛容な人がままいた。
「みんな、ありがとう。え? 恋人でも出来たかって? さぁどうだろうね」
それからまた一戦を開始する。
手強い相手だったけれどやはり勝つことが出来た。
「逆にみんなはそういう恋愛をした事ある? なんかさ、やっぱり恋愛ってお互いに好きだから付き合うわけじゃん? それこそ片方がその気でももう片方が淡泊というか、好きか嫌いかはっきりしない感じだったらその元々好きだった人も冷めていっちゃうんじゃないかって思うんだよね」
チャットが流れ続ける。
それについては同意見の人が多かった。しかしそれでも健気に待ち続けるという意見の人もいた。
「好きになってからだと蛙化現象があるけど、好きになる前なら蛙も何も無い。なるほどね。蛙化現象って怖いよね。やっぱり期待しすぎて付き合っちゃっているわけだから、本性が見えた瞬間に冷めるんだろうね。ならさ、『とりあえず』の状態で先に本性を見せておけばそれから先もその人が好きでいてくれるか分かるじゃん? それから付き合えば蛙もオタマジャクシもないよね」
自分で言っておいてなんだが、確かにそうだ。
それに、もしかしたら僕は心のどこかで期待しているのかもしれない。
鈴谷さんが昔のあの人のようではないという事を。
期待。いや、『とりあえず』の時点で期待も何もあるのだろうか。
あるとしたら、それは僕が鈴谷さんをちゃんと好きになっているという事じゃないか。
期待しているのかもしれない。
その『かもしれない』というのがやはり今の状態だ。だからちゃんと期待をしてはいけないのかもしれない。
「あ、そろそろ時間だね。みんな質問に答えてくれてありがとう。それじゃ次回はまたSNSで告知するね。ではでは」
ということで今回の配信は終わりを迎えた。
それからベランダに出て煙草に火を点ける
夜の静けさにちりちりという先が燃えていく音と、ゆらりと昇っていく煙がある。
一息煙を吸うごとに先端には赤い火が灯り、吐いてはまたその灯り火が見たくて吸う。
「期待……ね」
でももしかしたら付き合ってみたら楽しいのかもしれない。
こうした気分でいたら、こんな状態の僕でもいいと言ってくれた彼女に失礼じゃないか。
「付き合ってみるか」
と心に決め、短くなった煙草の火を消した。
それから気が付く。
今日の煙草はやはり前に吸った時よりも美味く感じていたと。
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