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第一章 第1話 出会い
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ー好きです。
そう言われた僕の頭の中は驚きと共に完全に真っ白になってしまった。
先日のあの一言を考えるあまり、やっと寝つけたのは日が昇り始めてからだった。
雲一つ無い青空から降り注ぐ日光が僕の部屋に入る。
それはカーテンの隙間から室内を照らし、ベッドで眠っている僕の顔を照らした。
時計に目を向けると間もなく正午だった。
実家暮らしではあるけれど、大学に入ってからは大分放任というか自由にやらせてもらっているため良くも悪くも親が僕を起こしにくることなんてそうそう無い。
既に大学の講義を二つばかり飛ばしてしまったので、自主休講をしたということにしてスマホを開いた。
しかしすぐに閉じた。
もしも鈴谷さんから昨日の事でLINEが入っていたらどう返信をしようか考えてしまうからだ。
一瞬だけスマホの画面が見えたものの、見なかったことにしてベランダへ出た。
いい天気だ。
昼間ゆえに近くにスーパーや学校といったものが無いので近所はとても静かだ。
そんな中で僕は煙草に火を点けた。
煙を吸うたびにちりちりという音がよく聞こえた。
真夜中のしんと静まった時に聞く音と、青空の下で聞くそれでは風情というか感じるものが全くの別物だった。
口いっぱいに吸い込んだ煙をまるでため息のように上空へ吐き出す。
それは全く風の無い頭上で少しの間滞留してはようやく霧散していった。
そしてその先に見える青空が今の僕にはなぜか気に入らなかった。
なぜか。
いや、どうしてかは分かっている。昨日の事が原因だ。
どうしようか……
そう思いながらまた煙を吸っては吐き出す。
するとポケットにしまっていたスマホがバイブした。
見るつもりはなかったのだが、僕は無意識にそれを開いていた。だが幸いな事にその相手は鈴谷さんではなく部活の友人からだった。
どうやら午前中の講義に出なかった僕に今日の部活の出席について聞いているようだった。
そして間もなくして電話がかかってきた。
「どうしたの?」
「どうしたのじゃねぇよ。寝坊か?」
「まぁね。部活なら迷ってるところだよ」
「そうか。今日はみんな来るから賑やかになると思うんだけどな。来ないのか?」
「うーん……」
少し渋る。
今日はバイトも無いしこのまま家にいてもだらだら過ごすだけだ。
だとしても今更家から出るのは面倒臭い。それなら動画配信かその練習に時間を使った方がいい気がしてきた。
でも、みんな来るという言葉に心が揺らいでいた。
「飯菜も来るの?」
「来るんじゃね? 最近向こうは卒論の準備やらゼミやらバイトやらで忙しかったみたいだけど、久々にみんな来るって言ったから顔出すと思うよ。飯菜に何か用事でもあるのか?」
「用事っていう用事でもないんだけど、相談というかなんというか」
「なるほどな。まぁそうだな。なら部活が始まる1時間前くらいには部室に来てると思うからそれくらいに来なよ」
「そうするよ」
「それじゃお前も今日は来るってことで決まりだな」
話の流れで完全に行く事になってしまった。
まぁいいか。少しは気が紛れるだろう。
ふと考えた。
告白されてこうも悩むということは、少なからず僕は鈴谷さんに対して完全にナシという判断はしていないのだろう。
そう言われた僕の頭の中は驚きと共に完全に真っ白になってしまった。
先日のあの一言を考えるあまり、やっと寝つけたのは日が昇り始めてからだった。
雲一つ無い青空から降り注ぐ日光が僕の部屋に入る。
それはカーテンの隙間から室内を照らし、ベッドで眠っている僕の顔を照らした。
時計に目を向けると間もなく正午だった。
実家暮らしではあるけれど、大学に入ってからは大分放任というか自由にやらせてもらっているため良くも悪くも親が僕を起こしにくることなんてそうそう無い。
既に大学の講義を二つばかり飛ばしてしまったので、自主休講をしたということにしてスマホを開いた。
しかしすぐに閉じた。
もしも鈴谷さんから昨日の事でLINEが入っていたらどう返信をしようか考えてしまうからだ。
一瞬だけスマホの画面が見えたものの、見なかったことにしてベランダへ出た。
いい天気だ。
昼間ゆえに近くにスーパーや学校といったものが無いので近所はとても静かだ。
そんな中で僕は煙草に火を点けた。
煙を吸うたびにちりちりという音がよく聞こえた。
真夜中のしんと静まった時に聞く音と、青空の下で聞くそれでは風情というか感じるものが全くの別物だった。
口いっぱいに吸い込んだ煙をまるでため息のように上空へ吐き出す。
それは全く風の無い頭上で少しの間滞留してはようやく霧散していった。
そしてその先に見える青空が今の僕にはなぜか気に入らなかった。
なぜか。
いや、どうしてかは分かっている。昨日の事が原因だ。
どうしようか……
そう思いながらまた煙を吸っては吐き出す。
するとポケットにしまっていたスマホがバイブした。
見るつもりはなかったのだが、僕は無意識にそれを開いていた。だが幸いな事にその相手は鈴谷さんではなく部活の友人からだった。
どうやら午前中の講義に出なかった僕に今日の部活の出席について聞いているようだった。
そして間もなくして電話がかかってきた。
「どうしたの?」
「どうしたのじゃねぇよ。寝坊か?」
「まぁね。部活なら迷ってるところだよ」
「そうか。今日はみんな来るから賑やかになると思うんだけどな。来ないのか?」
「うーん……」
少し渋る。
今日はバイトも無いしこのまま家にいてもだらだら過ごすだけだ。
だとしても今更家から出るのは面倒臭い。それなら動画配信かその練習に時間を使った方がいい気がしてきた。
でも、みんな来るという言葉に心が揺らいでいた。
「飯菜も来るの?」
「来るんじゃね? 最近向こうは卒論の準備やらゼミやらバイトやらで忙しかったみたいだけど、久々にみんな来るって言ったから顔出すと思うよ。飯菜に何か用事でもあるのか?」
「用事っていう用事でもないんだけど、相談というかなんというか」
「なるほどな。まぁそうだな。なら部活が始まる1時間前くらいには部室に来てると思うからそれくらいに来なよ」
「そうするよ」
「それじゃお前も今日は来るってことで決まりだな」
話の流れで完全に行く事になってしまった。
まぁいいか。少しは気が紛れるだろう。
ふと考えた。
告白されてこうも悩むということは、少なからず僕は鈴谷さんに対して完全にナシという判断はしていないのだろう。
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