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第一章 第1話 出会い
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「どう思う?」
「どう思うって言われてもなぁ」
僕は高校からの友人の賢木と久々に飲みに来ていた。
そしてここ最近の事を話した。
「鷹谷が勝手に言った事だろ? それこそ信じるか信じないかは高橋次第だと思うけどな」
ちなみに賢木と鷹谷と僕は高校が同じだったのでそれぞれが共通の友人である。
「確かにそうだけど、鷹谷って昔から異様にモテてたし女子の気持ちとかそういうのを察するのが得意だっただろ? だからちょっと無視出来ないかなって思うんだよね」
「まぁ…そうだな」
賢木はハイボールを一口飲み、つまみに手を伸ばす。
「仮にそうだったとして、高橋自身はどうなんだ? 少なからずその鈴谷って人が気になってるようにも聞こえるけど?」
「まさか」
「ちなみに可愛いのか?」
「まぁ。童顔で僕よりも年上。見た目だけなら間違いなく年下にしか見えない」
ただ、僕はそう続ける。
「顔がいい女子は性格に難ありの子がざらにいるんだよなぁ」
「全国の女子を敵に回すような言い方だな」
「前回も前々回も顔が良かった。前回に至ってはスタイルも良かった。ただ、やっぱりどちらも性格に問題があった。なんでだろうな」
煙草に火を点け、心にあるもやを吐き出すかのように煙を頭上へ吹き上げる。
店内が無風のせいかそれはしばらくは天井のあたりに滞留していた。
「聞いた言葉なんだけど、面白いものがあるぞ」
賢木はおもむろにそう言うと、自分も煙草に火を点けた。
「気になるね。なんだそれは」
「美人とブスについてさ。話してやるから、まずは最高の美人を想像してほしい。彼女がもしも馬鹿だったら世間はどんな評価をすると思う?」
と言われて思い描く馬鹿で最高の美人を想像してみる。
しかし僕にはこんな答えしか浮かばなかった。
「馬鹿は馬鹿だろ?」
「残念。違うんだな。多くの人は、“天然”という評価をするらしい。どこか可愛げがあるだろ? 次にブスが馬鹿だったら、どういう評価になると思う?」
「美人は天然。なら、やっぱり馬鹿か?」
「近いね。”馬鹿なブス“というらしい。酷い話だろ。なら、性格の悪いブスは何だと思う?」
「まさか性悪か?」
「性悪のブスさ。これも酷いよな。ブスという言葉は何にでも付きまとうのさ。逆に性格の悪い美人は何だと思う?」
「僕から言わせれば性格が悪い時点で美人でも性悪なんだよなぁ。うーん。いまいち見当が付かないな」
それを聞いて賢木は僅かに口角を上げる。
「正解は、小悪魔系だ」
「あぁ確かに。最近よく聞くんだよな。妙に納得しちまったよ。賢木は流石だな」
「まぁ、有名な人が言ってた言葉を借りただけだけどな。つまりだ、何が言いたいかっていうと、高橋が今まで付き合ってきた顔のいい人達は小悪魔系やら天然といった都合のいい言葉により本来マイナスとなる性格の部分を巧みに隠してきたのさ。美人は3日で飽きるなんて言葉がある通り、近しい存在になってからその本性を知ってしまうと余計にその醜悪さが際立ってしまうんだ」
「なるほど。やっぱ賢木には敵わないな」
2人の煙草は大分短くなっており、話していた分だけ先端が灰になってしまっていた。
「それで、その鈴谷さんの顔はいいんだよな?」
「まぁそうだな」
「なら、もし高橋の気持ちが動くようなら慎重になった方がいいかもしれないな。そろそろ俺らは就活の準備やら、それこそ来年になれば本格的に動かなければならないんだ。変な負担は増やしたくないだろ?」
「それもそうだな。これでまた変なのを引いたなんて事になったら、僕はとことん見る目がないんだと思うだろうね」
そんな時、席に店員の1人がやってきた。
「あの、お客様。そろそろお時間となりますので……」
「もうそんな時間か。まだ飲み足りないが、仕方ない。それじゃそろそろ帰るか」
「そうだな。なんなら僕の職場に寄ってくか? この時間ならまだ鈴谷さんはいるはずだし」
何の気無しに提案すると、賢木がそれに乗り居酒屋を出た足でそのまま職場へと向かった。
そしてレジで仕事をしている最中の鈴谷さんと会った。
「あ、お疲れ様です。買い物ですか?」
「まぁそうだね。さっきまで飲んでてその帰りだよ」
すると鈴谷さんは賢木を一瞥し、軽く会釈をした。
邪魔しちゃ悪いと思い、特に長居もせずに店を出る。
「確かに可愛い系だったな。言われたとおり年上には見えない」
「だよな」
「ただ、なんとなくなんだが、少し不思議な雰囲気を感じたよ」
これにて高橋と賢木は解散した。
「どう思うって言われてもなぁ」
僕は高校からの友人の賢木と久々に飲みに来ていた。
そしてここ最近の事を話した。
「鷹谷が勝手に言った事だろ? それこそ信じるか信じないかは高橋次第だと思うけどな」
ちなみに賢木と鷹谷と僕は高校が同じだったのでそれぞれが共通の友人である。
「確かにそうだけど、鷹谷って昔から異様にモテてたし女子の気持ちとかそういうのを察するのが得意だっただろ? だからちょっと無視出来ないかなって思うんだよね」
「まぁ…そうだな」
賢木はハイボールを一口飲み、つまみに手を伸ばす。
「仮にそうだったとして、高橋自身はどうなんだ? 少なからずその鈴谷って人が気になってるようにも聞こえるけど?」
「まさか」
「ちなみに可愛いのか?」
「まぁ。童顔で僕よりも年上。見た目だけなら間違いなく年下にしか見えない」
ただ、僕はそう続ける。
「顔がいい女子は性格に難ありの子がざらにいるんだよなぁ」
「全国の女子を敵に回すような言い方だな」
「前回も前々回も顔が良かった。前回に至ってはスタイルも良かった。ただ、やっぱりどちらも性格に問題があった。なんでだろうな」
煙草に火を点け、心にあるもやを吐き出すかのように煙を頭上へ吹き上げる。
店内が無風のせいかそれはしばらくは天井のあたりに滞留していた。
「聞いた言葉なんだけど、面白いものがあるぞ」
賢木はおもむろにそう言うと、自分も煙草に火を点けた。
「気になるね。なんだそれは」
「美人とブスについてさ。話してやるから、まずは最高の美人を想像してほしい。彼女がもしも馬鹿だったら世間はどんな評価をすると思う?」
と言われて思い描く馬鹿で最高の美人を想像してみる。
しかし僕にはこんな答えしか浮かばなかった。
「馬鹿は馬鹿だろ?」
「残念。違うんだな。多くの人は、“天然”という評価をするらしい。どこか可愛げがあるだろ? 次にブスが馬鹿だったら、どういう評価になると思う?」
「美人は天然。なら、やっぱり馬鹿か?」
「近いね。”馬鹿なブス“というらしい。酷い話だろ。なら、性格の悪いブスは何だと思う?」
「まさか性悪か?」
「性悪のブスさ。これも酷いよな。ブスという言葉は何にでも付きまとうのさ。逆に性格の悪い美人は何だと思う?」
「僕から言わせれば性格が悪い時点で美人でも性悪なんだよなぁ。うーん。いまいち見当が付かないな」
それを聞いて賢木は僅かに口角を上げる。
「正解は、小悪魔系だ」
「あぁ確かに。最近よく聞くんだよな。妙に納得しちまったよ。賢木は流石だな」
「まぁ、有名な人が言ってた言葉を借りただけだけどな。つまりだ、何が言いたいかっていうと、高橋が今まで付き合ってきた顔のいい人達は小悪魔系やら天然といった都合のいい言葉により本来マイナスとなる性格の部分を巧みに隠してきたのさ。美人は3日で飽きるなんて言葉がある通り、近しい存在になってからその本性を知ってしまうと余計にその醜悪さが際立ってしまうんだ」
「なるほど。やっぱ賢木には敵わないな」
2人の煙草は大分短くなっており、話していた分だけ先端が灰になってしまっていた。
「それで、その鈴谷さんの顔はいいんだよな?」
「まぁそうだな」
「なら、もし高橋の気持ちが動くようなら慎重になった方がいいかもしれないな。そろそろ俺らは就活の準備やら、それこそ来年になれば本格的に動かなければならないんだ。変な負担は増やしたくないだろ?」
「それもそうだな。これでまた変なのを引いたなんて事になったら、僕はとことん見る目がないんだと思うだろうね」
そんな時、席に店員の1人がやってきた。
「あの、お客様。そろそろお時間となりますので……」
「もうそんな時間か。まだ飲み足りないが、仕方ない。それじゃそろそろ帰るか」
「そうだな。なんなら僕の職場に寄ってくか? この時間ならまだ鈴谷さんはいるはずだし」
何の気無しに提案すると、賢木がそれに乗り居酒屋を出た足でそのまま職場へと向かった。
そしてレジで仕事をしている最中の鈴谷さんと会った。
「あ、お疲れ様です。買い物ですか?」
「まぁそうだね。さっきまで飲んでてその帰りだよ」
すると鈴谷さんは賢木を一瞥し、軽く会釈をした。
邪魔しちゃ悪いと思い、特に長居もせずに店を出る。
「確かに可愛い系だったな。言われたとおり年上には見えない」
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これにて高橋と賢木は解散した。
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