46 / 58
第一章 第1話 出会い
1-8
しおりを挟む
「思ったんだけどさ、高橋くんに合う人ってそういなくない?」
「大分失礼ですね」
久々に芹乃さんとシフトが被った。
さらに鈴谷さんもいて、珍しく3人揃って休憩中である。
芹乃さんとはこの月日の間に人見知りやらぎこちなさは無くなり、今となっては普通に冗談も言える仲である。
とは言っても、ほば僕が一方的に言われているだけなんだが。
「だってさ、YouTubeやってて動画編集に時間がかかりそうだし、絶対女の子との時間を取らないタイプでしょ?」
「そんな事ないですよ。多分」
事実、僕は自分のやる事ややりたい事に重きを置くタイプだ。
だからこそ、かまってちゃんタイプの人とはなかなか合わない。
それに、そのやりたい事を邪魔されるのが尋常じゃなく嫌なのだ。
「それじゃもし、高橋くんが何かする予定の日に彼女からデートに誘われたら行く? 断る?」
「そりゃまぁ、行きますね。多分」
いや、断るな。
僕は元来からそういう性格だ。
そんな嘘を見抜いた芹乃さんが
「ふーん。ちなみに前の彼女は高橋くんの都合の悪さが原因で別れたの?」
と僕の過去を掘り返してくる。
「それは違いますよ。というか昔の彼女の事はもういいじゃないですか」
「いいや、気になるんだよねぇ。若い子のそういう事情って」
「2つしか変わらないでしょう」
それで?という視線を向けられ、これはきっと答えるまで続くやつだと観念せざるを得なかったので仕方なく話してやることにした。
「浮気ですよ浮気。向こうが4股してたんですよ」
「えっぐ。ビッチじゃん。大学生ってやっぱりそういう子もいるんだね。よしよし、辛かったね。ほら、お姉さんが慰めてあげるからおいで」
「いらないです。もう終わった事なのでどうでもいいんですよ。というか、芹乃さんは僕の事を何だと思ってるんですか?」
「なんだろうね。話し相手?」
「要は暇つぶしと。芹乃さんこそ僕にかまってないでそろそろ新しい人でも見つけたらどうです?」
「新しい人ねぇ。いたらいいんだけどね。なかなか出会いが無くて」
わざとらしくしょげた表情になった。
しかし、それを見たところで僕は特に何も思わないのでさっきのお返しと言わんばかりに
「芹乃さんにも合う人ってなかなかいなさそうですよね。すぐおちょくって大事な話の時でもふざけそうですし」
と言ってやった。
「そんな事ないよ? そういう時は真面目に聞くし話もするよ?」
と僕の予想に反して真面目な顔で答えてきた。
それに虚を突かれてしまって一瞬言葉が詰まる。
「まぁ今じゃ何でも自己完結出来る時代だし、それこそ恋人を作る=リスクだとか面倒事って考える人も多いからそっち方面の大事な話をしてくる人が少なくなっちゃったんだよね。あとは草食系男子ってのが増えてきてね。あ、もう死語かな?」
そうしてけらけらと笑いだす芹乃さん。
「何話してんの?」
そんな中で鷹谷が事務所に入って来て輪に入ろうとする。
だが彼が来た事により僕達の休憩時間が終わりである事に気が付いた。
「まぁ何でもない話だよ。悪いな、そろそろ休憩時間が終わるんだ。また今度な」
そう言い残すと1人で休憩に入る鷹谷を置いて僕達3人は事務所を出た。
***
「あ、私はお手洗い行ってから戻るから先に行ってて」
ということなので芹乃さんとも一旦別れる。
2人となった僕達はそのまま持ち場へ戻ろうとする。
そんな時今までずっと黙っていた鈴谷さんがここにきてやっと口を開いた。
「昔の彼女さん、本当に酷かったんですね」
「まぁ、もう昔の事だから」
「少なくとも私ならそんな事はしませんけどね。同じ女として彼氏のやる事を妨げたり、それこそ別の人に手を出すようなことなんてしないですよ」
心なしかその口調には真剣さがあった。
そして僕はあの日にした鷹谷との会話を思い出す。
「鈴谷さんはそういうタイプじゃなさそうだもんね」
と、返答に困りながらも出た言葉がそれだった。
「まだいたの? もしかして待っててくれた感じ?」
お手洗いを終えた芹乃さんが追いついたので、この会話に終止符が打たれた。
するとまた鈴谷さんが静かになった。
「待ってたわけじゃないですよ」
「そう。それじゃ行くわよ」
そう言って僕達の前を歩く芹乃さん。
ふと鈴谷さんの表情を見ると、どこか険しいというか強張った様子でその背中を見ていた。
「大分失礼ですね」
久々に芹乃さんとシフトが被った。
さらに鈴谷さんもいて、珍しく3人揃って休憩中である。
芹乃さんとはこの月日の間に人見知りやらぎこちなさは無くなり、今となっては普通に冗談も言える仲である。
とは言っても、ほば僕が一方的に言われているだけなんだが。
「だってさ、YouTubeやってて動画編集に時間がかかりそうだし、絶対女の子との時間を取らないタイプでしょ?」
「そんな事ないですよ。多分」
事実、僕は自分のやる事ややりたい事に重きを置くタイプだ。
だからこそ、かまってちゃんタイプの人とはなかなか合わない。
それに、そのやりたい事を邪魔されるのが尋常じゃなく嫌なのだ。
「それじゃもし、高橋くんが何かする予定の日に彼女からデートに誘われたら行く? 断る?」
「そりゃまぁ、行きますね。多分」
いや、断るな。
僕は元来からそういう性格だ。
そんな嘘を見抜いた芹乃さんが
「ふーん。ちなみに前の彼女は高橋くんの都合の悪さが原因で別れたの?」
と僕の過去を掘り返してくる。
「それは違いますよ。というか昔の彼女の事はもういいじゃないですか」
「いいや、気になるんだよねぇ。若い子のそういう事情って」
「2つしか変わらないでしょう」
それで?という視線を向けられ、これはきっと答えるまで続くやつだと観念せざるを得なかったので仕方なく話してやることにした。
「浮気ですよ浮気。向こうが4股してたんですよ」
「えっぐ。ビッチじゃん。大学生ってやっぱりそういう子もいるんだね。よしよし、辛かったね。ほら、お姉さんが慰めてあげるからおいで」
「いらないです。もう終わった事なのでどうでもいいんですよ。というか、芹乃さんは僕の事を何だと思ってるんですか?」
「なんだろうね。話し相手?」
「要は暇つぶしと。芹乃さんこそ僕にかまってないでそろそろ新しい人でも見つけたらどうです?」
「新しい人ねぇ。いたらいいんだけどね。なかなか出会いが無くて」
わざとらしくしょげた表情になった。
しかし、それを見たところで僕は特に何も思わないのでさっきのお返しと言わんばかりに
「芹乃さんにも合う人ってなかなかいなさそうですよね。すぐおちょくって大事な話の時でもふざけそうですし」
と言ってやった。
「そんな事ないよ? そういう時は真面目に聞くし話もするよ?」
と僕の予想に反して真面目な顔で答えてきた。
それに虚を突かれてしまって一瞬言葉が詰まる。
「まぁ今じゃ何でも自己完結出来る時代だし、それこそ恋人を作る=リスクだとか面倒事って考える人も多いからそっち方面の大事な話をしてくる人が少なくなっちゃったんだよね。あとは草食系男子ってのが増えてきてね。あ、もう死語かな?」
そうしてけらけらと笑いだす芹乃さん。
「何話してんの?」
そんな中で鷹谷が事務所に入って来て輪に入ろうとする。
だが彼が来た事により僕達の休憩時間が終わりである事に気が付いた。
「まぁ何でもない話だよ。悪いな、そろそろ休憩時間が終わるんだ。また今度な」
そう言い残すと1人で休憩に入る鷹谷を置いて僕達3人は事務所を出た。
***
「あ、私はお手洗い行ってから戻るから先に行ってて」
ということなので芹乃さんとも一旦別れる。
2人となった僕達はそのまま持ち場へ戻ろうとする。
そんな時今までずっと黙っていた鈴谷さんがここにきてやっと口を開いた。
「昔の彼女さん、本当に酷かったんですね」
「まぁ、もう昔の事だから」
「少なくとも私ならそんな事はしませんけどね。同じ女として彼氏のやる事を妨げたり、それこそ別の人に手を出すようなことなんてしないですよ」
心なしかその口調には真剣さがあった。
そして僕はあの日にした鷹谷との会話を思い出す。
「鈴谷さんはそういうタイプじゃなさそうだもんね」
と、返答に困りながらも出た言葉がそれだった。
「まだいたの? もしかして待っててくれた感じ?」
お手洗いを終えた芹乃さんが追いついたので、この会話に終止符が打たれた。
するとまた鈴谷さんが静かになった。
「待ってたわけじゃないですよ」
「そう。それじゃ行くわよ」
そう言って僕達の前を歩く芹乃さん。
ふと鈴谷さんの表情を見ると、どこか険しいというか強張った様子でその背中を見ていた。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
【R-18】クリしつけ
蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。
男友達を家に入れたら催眠術とおもちゃで責められ調教されちゃう話
mian
恋愛
気づいたら両手両足を固定されている。
クリトリスにはローター、膣には20センチ弱はある薄ピンクの鉤型が入っている。
友達だと思ってたのに、催眠術をかけられ体が敏感になって容赦なく何度もイかされる。気づけば彼なしではイけない体に作り変えられる。SM調教物語。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる