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第一章 第1話 出会い
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「またですか?」
「そうなの。芹乃さんも鈴谷さんも大分育ってきたし、またお願い出来ないかなって」
今日も出勤すると早々に中村さんに呼びだされた。
流石に今回は何かをやった覚えが無いので堂々として話を聞きに行くと、既に帰りたくなってしまった。
なぜかというと
「確かに人手は足りていませんが、新人を入れるのが早くないですか?」
「そうね。でも店長は大丈夫って判断したみたいよ。それに、今回の教育係も高橋くんが適任だって言ってるし、むしろ君しかいないってまで言ってるんだよ」
そう言われたら悪い気はしないけれど、流石に店長は僕を買い被りすぎな気がするのだが。
確かに芹乃さんは今では問題なく一人立ちしている。鈴谷さんも目を離しても問題ないところまできている。
にしても2人が来てからそう日が経っていないではないか。
「あ、ちなみに、今日から開始だよ」
「いやいや話が急すぎますって。僕にも心の準備というか身構えというかがありますし」
「大丈夫よ。高橋くんなら。だって―」
そんな時事務所に誰かが入って来た。
「高橋くん。話は聞いているね?」
店長だった。そしてその隣には件の新人がいた。
それを見た途端、僕は一瞬で理解した。
僕がまた教育係に抜擢された事、中村さんや店長が執拗に僕を推す事の意味が。
「よぉ。ここで働いてるって聞いて別の店舗から移籍して来たんだ」
爽やかな外見、すらっとした長身、そして何より僕は彼を知っていた。
「鷹谷」
彼は僕の中学生時代からの友人であり、今でも親交のある仲だ。
確か少し前にここで働いてるって話した事があったな。
そして彼もまた別の店舗で働いていてバイトを変えたいだとか何とか言ってた。
まさかこっちに移籍してくるとは思ってもみなかった。
「2人は友人。なら打ち解けるまでの時間が短縮出来るし、教えてから理解までの時間もかからない。鷹谷くんも経験者だから高橋くんが付いていれば一人立ちもすぐ。一石二鳥以上の成果が見込めると思ったんだよ」
店長が悠然と語る。
「確かにそうですが、買い被りすぎですって」
「真っ当な評価だよ。私は高橋くんには期待しているんだ。という事だから頼むよ」
店長からこう言われてしまうとやはり断る事は出来ない。
なので不承不承ながらも了承する事にした。
「それじゃとりあえず行くか」
準備が整った鷹谷を連れて持ち場へと向かう。
幸い今日は鈴谷さんも芹乃さんもいないので鷹谷のみに集中出来た。
それ故に、今日はマイペースに仕事が出来ると思っていたから若干の悲しさも覚える。
そんな気持ちとは裏腹にやはり鷹谷は経験者という事もあって研修の必要性を疑うくらいに問題なく業務を遂行していっていた。
「帰ろうぜ」
今日のバイトが終わると鷹谷と共に帰路に着く。
「なんでよりにもよって移籍して来たんだよ」
「家から近くなるし、こっちの方が時給もいいしな。また一から別の場所でやるよりも効率がいいし、友達がいてやりやすいと思ったんだよ」
「なるほど。まぁ確かにそうだな」
僕としてもいきなり見知らぬ新人が来るのなら気心知れた友人が来てくれた方がよほど良い。
「正直もう研修いらないだろ? 前の店舗からそう日は経ってないわけだし」
「まぁね。店長の話だと念の為3回はって話だから、それまでは頼むよ」
「まぁそういう事なら」
そうして別れ道になったのでそれぞれの帰路に着いた。
それから間も無くして鷹谷への研修期間が終わり、芹乃さんや鈴谷さんとも顔合わせが済んだ。
彼はとても器用故にすぐに打ち解ける事が出来た。
「そうなの。芹乃さんも鈴谷さんも大分育ってきたし、またお願い出来ないかなって」
今日も出勤すると早々に中村さんに呼びだされた。
流石に今回は何かをやった覚えが無いので堂々として話を聞きに行くと、既に帰りたくなってしまった。
なぜかというと
「確かに人手は足りていませんが、新人を入れるのが早くないですか?」
「そうね。でも店長は大丈夫って判断したみたいよ。それに、今回の教育係も高橋くんが適任だって言ってるし、むしろ君しかいないってまで言ってるんだよ」
そう言われたら悪い気はしないけれど、流石に店長は僕を買い被りすぎな気がするのだが。
確かに芹乃さんは今では問題なく一人立ちしている。鈴谷さんも目を離しても問題ないところまできている。
にしても2人が来てからそう日が経っていないではないか。
「あ、ちなみに、今日から開始だよ」
「いやいや話が急すぎますって。僕にも心の準備というか身構えというかがありますし」
「大丈夫よ。高橋くんなら。だって―」
そんな時事務所に誰かが入って来た。
「高橋くん。話は聞いているね?」
店長だった。そしてその隣には件の新人がいた。
それを見た途端、僕は一瞬で理解した。
僕がまた教育係に抜擢された事、中村さんや店長が執拗に僕を推す事の意味が。
「よぉ。ここで働いてるって聞いて別の店舗から移籍して来たんだ」
爽やかな外見、すらっとした長身、そして何より僕は彼を知っていた。
「鷹谷」
彼は僕の中学生時代からの友人であり、今でも親交のある仲だ。
確か少し前にここで働いてるって話した事があったな。
そして彼もまた別の店舗で働いていてバイトを変えたいだとか何とか言ってた。
まさかこっちに移籍してくるとは思ってもみなかった。
「2人は友人。なら打ち解けるまでの時間が短縮出来るし、教えてから理解までの時間もかからない。鷹谷くんも経験者だから高橋くんが付いていれば一人立ちもすぐ。一石二鳥以上の成果が見込めると思ったんだよ」
店長が悠然と語る。
「確かにそうですが、買い被りすぎですって」
「真っ当な評価だよ。私は高橋くんには期待しているんだ。という事だから頼むよ」
店長からこう言われてしまうとやはり断る事は出来ない。
なので不承不承ながらも了承する事にした。
「それじゃとりあえず行くか」
準備が整った鷹谷を連れて持ち場へと向かう。
幸い今日は鈴谷さんも芹乃さんもいないので鷹谷のみに集中出来た。
それ故に、今日はマイペースに仕事が出来ると思っていたから若干の悲しさも覚える。
そんな気持ちとは裏腹にやはり鷹谷は経験者という事もあって研修の必要性を疑うくらいに問題なく業務を遂行していっていた。
「帰ろうぜ」
今日のバイトが終わると鷹谷と共に帰路に着く。
「なんでよりにもよって移籍して来たんだよ」
「家から近くなるし、こっちの方が時給もいいしな。また一から別の場所でやるよりも効率がいいし、友達がいてやりやすいと思ったんだよ」
「なるほど。まぁ確かにそうだな」
僕としてもいきなり見知らぬ新人が来るのなら気心知れた友人が来てくれた方がよほど良い。
「正直もう研修いらないだろ? 前の店舗からそう日は経ってないわけだし」
「まぁね。店長の話だと念の為3回はって話だから、それまでは頼むよ」
「まぁそういう事なら」
そうして別れ道になったのでそれぞれの帰路に着いた。
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