11 / 71
迷宮離脱(第一層)⑤
しおりを挟む
迷宮一層。
その一角――正規ルート付近の場所に、十人ほどの冒険者が集まっている。
「一体何があったらこんなことになんだよ……」
「魔物の仕業?」
「ストーンナイトでもこんな大破壊は無理だろ」
彼らの目の前には通路を丸ごとふさぐ瓦礫の山があった。
少し前に謎の轟音があり、それが気になってやって来た彼らを出迎えたのがそれだった。おそらく天井が崩落したらしい。
「これ、誰か下敷きになったりしてねえだろうな」
「見たとこ大丈夫そうだが……」
と、鎧をまとった一人が確認しようと近づいた、その瞬間だった。
「――【<雲>雷撃】」
何かが聞こえた気がした次の瞬間、瓦礫が反対側から吹っ飛ばされてきた。
「「「ぎゃああああああああああああ!?」」」
近づいていた冒険者もろとも吹き飛ばされる。
衝撃のあと、瓦礫には大きな穴が空いていた。ちょうど人間が通れるくらいの。
そこを通って出てきたのは――
「……追放王子」
冒険者たちの間にわずかな緊張が走る。
誰かが呟いた通り、出てきたのはくすんだ銀髪の少年だった。
誰ともつるまず、目つきや言葉遣いがすさみきった様子は『一匹狼』という言葉がよく似合う。
だが、瓦礫の大穴から出てきた彼の後をついてもう一人が現れた。
「けふっ、うう、シグ。砂煙がすごいよ」
「仕方ねえだろ、瓦礫吹っ飛ばす以外にどう出ろってんだ」
あの追放王子が、誰かと連れ立っている。
しかも何だか仲良さげだ。
「……、」
追放王子はその場の冒険者たちを興味なさそうに見ると、正規ルートのほうに歩いて行った。コートに素足という恰好の少女もその後を追う。
残された冒険者は顔を見合わせた。
「……追放王子と一緒にいた女の子見たかよ」
「ああ。くっっっそ美人だった」
「なんであんな子がシグなんかと一緒に……?」
そんなやり取りの中、一人の冒険者が叫ぶ。
「おい、瓦礫の奥にまだ誰かいるぞ!?」
その言葉に、慌ててシグが開けた大穴から瓦礫の向こうに入っていく冒険者たち。
なぜ精霊術を使えないはずのシグがこんな大穴を開けられたのか、そんな疑問を抱えながらも人命優先。
冒険者一同が瓦礫の向こうに向かったところ。
――ボッコボコに顔を腫らし、髪を剃られて坊主頭になり、さらには全裸(近くに服を燃やしたような形跡アリ)の男三人が倒れ伏していた。
「「「何だこれ!?」」」
慌てて駆け寄り三人組を叩き起こす冒険者たち。あまりにひどいやられようだったので、とりあえず回復薬をかけまくって話せるくらいまで治療する。
誰かがぽつりと言った。
「これ、まさか……追放王子がやったのか?」
状況から考えて、そうとしか思えない。
確かにあの少年は口が悪く喧嘩っ早い。彼ならやりかねない、とその場の誰もが思ってしまう。
「俺、ちょっと追いかけてくる。さすがにこれは見過ごせな――」
冒険者の一人が言ったとき。
「待て、やめろ止まれ! 何もしなくていい!」
倒れていたはずの、普段なら羽根つきの旅行帽をかぶっているウェスターという男が鬼気迫る形相で止めにかかった。
「何で止めるんだよ。お前被害者じゃないのか?」
「いや、あ、あいつは悪くねえ。悪いのは俺たちなんだ。それでいいから、あいつの機嫌を損ねるようなことをしないでくれぇ! 頼むっ!」
何かに怯えるように、がたがた震えながら懇願するウェスター。
おそろしいトラウマを刻み込まれてしまったようにも見えた。
一体何があったんだ、と、その場の冒険者たちが訝しげに顔を見合わせた。
その一角――正規ルート付近の場所に、十人ほどの冒険者が集まっている。
「一体何があったらこんなことになんだよ……」
「魔物の仕業?」
「ストーンナイトでもこんな大破壊は無理だろ」
彼らの目の前には通路を丸ごとふさぐ瓦礫の山があった。
少し前に謎の轟音があり、それが気になってやって来た彼らを出迎えたのがそれだった。おそらく天井が崩落したらしい。
「これ、誰か下敷きになったりしてねえだろうな」
「見たとこ大丈夫そうだが……」
と、鎧をまとった一人が確認しようと近づいた、その瞬間だった。
「――【<雲>雷撃】」
何かが聞こえた気がした次の瞬間、瓦礫が反対側から吹っ飛ばされてきた。
「「「ぎゃああああああああああああ!?」」」
近づいていた冒険者もろとも吹き飛ばされる。
衝撃のあと、瓦礫には大きな穴が空いていた。ちょうど人間が通れるくらいの。
そこを通って出てきたのは――
「……追放王子」
冒険者たちの間にわずかな緊張が走る。
誰かが呟いた通り、出てきたのはくすんだ銀髪の少年だった。
誰ともつるまず、目つきや言葉遣いがすさみきった様子は『一匹狼』という言葉がよく似合う。
だが、瓦礫の大穴から出てきた彼の後をついてもう一人が現れた。
「けふっ、うう、シグ。砂煙がすごいよ」
「仕方ねえだろ、瓦礫吹っ飛ばす以外にどう出ろってんだ」
あの追放王子が、誰かと連れ立っている。
しかも何だか仲良さげだ。
「……、」
追放王子はその場の冒険者たちを興味なさそうに見ると、正規ルートのほうに歩いて行った。コートに素足という恰好の少女もその後を追う。
残された冒険者は顔を見合わせた。
「……追放王子と一緒にいた女の子見たかよ」
「ああ。くっっっそ美人だった」
「なんであんな子がシグなんかと一緒に……?」
そんなやり取りの中、一人の冒険者が叫ぶ。
「おい、瓦礫の奥にまだ誰かいるぞ!?」
その言葉に、慌ててシグが開けた大穴から瓦礫の向こうに入っていく冒険者たち。
なぜ精霊術を使えないはずのシグがこんな大穴を開けられたのか、そんな疑問を抱えながらも人命優先。
冒険者一同が瓦礫の向こうに向かったところ。
――ボッコボコに顔を腫らし、髪を剃られて坊主頭になり、さらには全裸(近くに服を燃やしたような形跡アリ)の男三人が倒れ伏していた。
「「「何だこれ!?」」」
慌てて駆け寄り三人組を叩き起こす冒険者たち。あまりにひどいやられようだったので、とりあえず回復薬をかけまくって話せるくらいまで治療する。
誰かがぽつりと言った。
「これ、まさか……追放王子がやったのか?」
状況から考えて、そうとしか思えない。
確かにあの少年は口が悪く喧嘩っ早い。彼ならやりかねない、とその場の誰もが思ってしまう。
「俺、ちょっと追いかけてくる。さすがにこれは見過ごせな――」
冒険者の一人が言ったとき。
「待て、やめろ止まれ! 何もしなくていい!」
倒れていたはずの、普段なら羽根つきの旅行帽をかぶっているウェスターという男が鬼気迫る形相で止めにかかった。
「何で止めるんだよ。お前被害者じゃないのか?」
「いや、あ、あいつは悪くねえ。悪いのは俺たちなんだ。それでいいから、あいつの機嫌を損ねるようなことをしないでくれぇ! 頼むっ!」
何かに怯えるように、がたがた震えながら懇願するウェスター。
おそろしいトラウマを刻み込まれてしまったようにも見えた。
一体何があったんだ、と、その場の冒険者たちが訝しげに顔を見合わせた。
33
お気に入りに追加
2,679
あなたにおすすめの小説
『おっさんの元勇者』~Sランクの冒険者はギルドから戦力外通告を言い渡される~
川嶋マサヒロ
ファンタジー
ダンジョン攻略のために作られた冒険者の街、サン・サヴァン。
かつて勇者とも呼ばれたベテラン冒険者のベルナールは、ある日ギルドマスターから戦力外通告を言い渡される。
それはギルド上層部による改革――、方針転換であった。
現役のまま一生を終えようとしていた一人の男は途方にくれる。
引退後の予定は無し。備えて金を貯めていた訳でも無し。
あげく冒険者のヘルプとして、弟子を手伝いスライム退治や、食肉業者の狩りの手伝いなどに精をだしていた。
そして、昔の仲間との再会――。それは新たな戦いへの幕開けだった。
イラストは
ジュエルセイバーFREE 様です。
URL:http://www.jewel-s.jp/
勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!
石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。
応援本当に有難うございました。
イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。
書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」
から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。
書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。
WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。
この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。
本当にありがとうございました。
【以下あらすじ】
パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった...
ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから...
第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。
何と!『現在3巻まで書籍化されています』
そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。
応援、本当にありがとうございました!

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

無能扱いされた実は万能な武器職人、Sランクパーティーに招かれる~理不尽な理由でパーティーから追い出されましたが、恵まれた新天地で頑張ります~
詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)
ファンタジー
鍛冶職人が武器を作り、提供する……なんてことはもう古い時代。
現代のパーティーには武具生成を役目とするクリエイターという存在があった。
アレンはそんなクリエイターの一人であり、彼もまたとある零細パーティーに属していた。
しかしアレンはパーティーリーダーのテリーに理不尽なまでの要望を突きつけられる日常を送っていた。
本当は彼の適性に合った武器を提供していたというのに……
そんな中、アレンの元に二人の少女が歩み寄ってくる。アレンは少女たちにパーティーへのスカウトを受けることになるが、後にその二人がとんでもない存在だったということを知る。
後日、アレンはテリーの裁量でパーティーから追い出されてしまう。
だが彼はクビを宣告されても何とも思わなかった。
むしろ、彼にとってはこの上なく嬉しいことだった。
これは万能クリエイター(本人は自覚無し)が最高の仲間たちと紡ぐ冒険の物語である。

金貨増殖バグが止まらないので、そのまま快適なスローライフを送ります
桜井正宗
ファンタジー
無能の落ちこぼれと認定された『ギルド職員』兼『ぷちドラゴン』使いの『ぷちテイマー』のヘンリーは、職員をクビとなり、国さえも追放されてしまう。
突然、空から女の子が降ってくると、キャッチしきれず女の子を地面へ激突させてしまう。それが聖女との出会いだった。
銀髪の自称聖女から『ギフト』を貰い、ヘンリーは、両手に持てない程の金貨を大量に手に入れた。これで一生遊んで暮らせると思いきや、金貨はどんどん増えていく。増殖が止まらない金貨。どんどん増えていってしまった。
聖女によれば“金貨増殖バグ”だという。幸い、元ギルド職員の権限でアイテムボックス量は無駄に多く持っていたので、そこへ保管しまくった。
大金持ちになったヘンリーは、とりあえず念願だった屋敷を買い……スローライフを始めていく!?

職業・遊び人となったら追放されたけれど、追放先で覚醒し無双しちゃいました!
よっしぃ
ファンタジー
この物語は、通常1つの職業を選定する所を、一つ目で遊び人を選定してしまい何とか別の職業を、と思い3つとも遊び人を選定してしまったデルクが、成長して無双する話。
10歳を過ぎると皆教会へ赴き、自身の職業を選定してもらうが、デルク・コーネインはここでまさかの遊び人になってしまう。最高3つの職業を選べるが、その分成長速度が遅くなるも、2つ目を選定。
ここでも前代未聞の遊び人。止められるも3度目の正直で挑むも結果は遊び人。
同年代の連中は皆良い職業を選定してもらい、どんどん成長していく。
皆に馬鹿にされ、蔑まれ、馬鹿にされ、それでも何とかレベル上げを行うデルク。
こんな中2年ほど経って、12歳になった頃、1歳年下の11歳の1人の少女セシル・ヴァウテルスと出会う。凄い職業を得たが、成長が遅すぎると見捨てられた彼女。そんな2人がダンジョンで出会い、脱出不可能といわれているダンジョン下層からの脱出を、2人で成長していく事で不可能を可能にしていく。
そんな中2人を馬鹿にし、死地に追い込んだ同年代の連中や年上の冒険者は、中層への攻略を急ぐあまり、成長速度の遅い上位職を得たデルクの幼馴染の2人をダンジョンの大穴に突き落とし排除してしまう。
しかし奇跡的にもデルクはこの2人の命を救う事ができ、セシルを含めた4人で辛うじてダンジョンを脱出。
その後自分達をこんな所に追い込んだ連中と対峙する事になるが、ダンジョン下層で成長した4人にかなう冒険者はおらず、自らの愚かな行為に自滅してしまう。
そして、成長した遊び人の職業、実は成長すればどんな職業へもジョブチェンジできる最高の職業でした!
更に未だかつて同じ職業を3つ引いた人物がいなかったために、その結果がどうなるかわかっていなかった事もあり、その結果がとんでもない事になる。
これはのちに伝説となる4人を中心とする成長物語。
ダンジョン脱出までは辛抱の連続ですが、その後はざまぁな展開が待っています。

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります
しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。
納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。
ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。
そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。
竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる