さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。

ヒツキノドカ

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迷宮離脱(第一層)②

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「今の声……」
「シグを襲って剣を奪った連中だ。間違いない」

 頷き合い、二人は声のするほうに近付いていく。

 正規ルートを少し外れたあたりだ。物陰に隠れて様子をうかがうと、案の定、そこには先刻シグを襲った三人組の男冒険者たちがいた。


『おい、次は俺に貸せよ! それ使ってみてえ!』
『慌てんなよ、ちゃんと貸してやるから』
『ほっ、と――こりゃすげえ! 魔物が粘土みてえに斬れちまう!』


 ぎゃははは、と騒ぎながら寄ってきた魔物を両断する猿顔の男。その手にあるのはシグの持ち物である片手剣に間違いなかった。すぐ近くには旅行帽の男と犬顔の男もいる。

 その様子を除き見ながら、クゥがぎりっと歯を食いしばった。

「シグを殺しかけておいて、あんな楽しそうにしてるなんて……」
「魔物の試し斬りってとこか。探す手間が省けたな」
「――ぼッッこぼこにしてやる!」
「はい止まれ馬鹿野郎」

 飛び出そうとするクゥのフードを掴んで引き戻す。

 一番の被害者はシグのはずなのに、なぜクゥがそれ以上に怒っているのか。おかげでシグは微妙に冷静になってしまっている。

 物陰に引き戻されたクゥは、怒りに燃える目でシグを見返した。

「離してくれないかなシグ。ぼくは本当に、本っっっ当に、きみを傷つけたあの連中が許せないんだ」

「落ち着けよ。だいたいあいつら殺したら今度は俺らが悪者だ。ここは正規ルートに近いから、騒ぎを起こせば誰か来るかもしれねえ」

 仮にあの超威力の精霊術などを食らわせれば、相手が生存できるか怪しい。人間よりはるかに頑丈な魔物でさえ一撃で倒せてしまったのだから。

「じゃあどうするのさ! 見逃せなんて言うつもりじゃないよね!?」
「いや、俺に考えがある」
「……?」

 シグが耳打ちすると、クゥは「うん」と頷いた。

「……可能だよ。さっきも言ったかもしれないけど、マナを扱う仕組み自体はシグの中に残ってるからね」

「ならいい」

 そう言ってシグは物騒な笑みを浮かべた。
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