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祭壇の調査
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大量の鎖と鍵が取り付けられたそれをエリザ様が外していき、やがて扉が開く。
「……ここが王城の封印の祭壇ですか」
広さは教会の祭壇ほどではないけれど、雰囲気はよく似ている。
舞台のようにも見える祭壇の奥に石碑があり、そこからは封印の奥から魔神の妖気が漂ってくる。
「うお、寒気が……」
「相変わらず不気味な場所だね」
レベッカとハルクさんがそれぞれ感想を口にする。
「……っ」
その横で、オズワルドさんがふらついた。
そのまま近くにいたレベッカのほうによろめく。
「うおっ!? おい、なんだよいきなり!」
とっさに反応したレベッカに肩を支えられ、オズワルドさんはなんとか転ぶのを免れる。
「……離せ赤髪。誰が勝手に俺に触れていいと言った」
「てめーが倒れてきたんだろうが!」
レベッカとそんな掛け合いをしながら、オズワルドさんは祭壇中央の石碑を見る。
「……聞いてはいたが、なかなかのものだな。ここまで不愉快な魔力を感じたのは初めてだ」
そういえば、オズワルドさんのようなエルフは魔力を感じ取る能力が高いと言っていた。
もしかしたら、オズワルドさんは魔神の妖気に耐性がないんじゃあ……!?
「オズワルド、一度ここを出るかい?」
「……問題ない。じきに慣れる」
オズワルドさんはハルクさんの言葉に首を横に振りつつ、自分の足で立つ。
「……本当に大丈夫かよ」
「心配無用だ。作業を始める」
オズワルドさんが首飾りを手に持ち石碑の前まで行く。
石碑が絶えず発する赤い妖気に首飾りをかざすと、首飾りの石が輝き内部に妖気を取り込んでいく。
「ちっ……」
オズワルドさんが舌打ちをした、次の瞬間。
ゴォッ! と石碑から放出される妖気が勢いを増した。
「なんだぁ!?」
レベッカが目を見開く。
「オズワルド、早くこっちに! ……聖女様、これは!?」
「わ、わかりません! 祈祷をしている時にこのようなことは起こったことは……!」
ハルクさんの言葉に聖女様が困惑したように叫ぶ。
それに答えたのはオズワルドさんだった。
「いや、おそらくこの魔道具のせいだろう。この『吸魔の首飾り』は対象の魔力の流れを刺激し、活性化させたその魔力の波長を読み取るものだ」
「……そういうことは早く言っておいてほしかったな、オズワルド」
「確かに俺の落ち度だが……普通はここまで大きな反応は起こらない。やはり魔神の妖気というのは普通の魔力とは大きく異なるようだな」
学者心を刺激されたのか、ちょっと興味深そうにしているオズワルドさん。
「のんきに話してる場合かよ! 石碑の妖気が全然収まらねえぞ!」
レベッカの言う通り、石碑から放出される妖気はまったく衰える気配がない。祭壇の内部のプレッシャーも増し続けている。
これはすぐに対処したほうがよさそうだ。
「何をしているのですか、セルビア! 早く祈祷をして妖気を鎮めなさい!」
いつの間にか部屋の隅っこにいる聖女様がそんなことを言っている。
「……あの、一応聞きますがエリザ様はこの祭壇を管理する聖女様ですよね?」
「……私は知恵と美貌で聖女の座を射止めたので、祈祷はそこまで得意分野ではないのです」
目をそらしながら言うエリザ様。
この人は……
仕方ない。
こうなったのは魔神討伐を望んだ私の責任でもあるし、私がなんとかしよう。
「離れていてください」
私は石碑の元に歩いていく。
石碑の前で両手を組み、ひざまずいて目を閉じる。
――次の瞬間、私は石碑の作り出す精神のみの世界へとやってきていた。
重たい水の中にいるような感覚だ。
懐かしい。
祈祷を行うのはずいぶん久しぶりだ。それ以前に王城地下の祭壇での祈祷は初めてでもある。教会の地下と何か違いはあるんだろうか?
沼の底のような場所に、鎖でがんじがらめにされた石碑がある。
私はそこまで行き、手を触れる。
祈祷によって封印を補強するのだ。
私が祈祷を始めると、抵抗するように妖気が私にまとわりつき始めた。
魔神による妨害だ。
この妖気が祈祷を行う聖女候補を排除しようと精神汚染を仕掛けてくる。
大抵は呪詛のような、怒りを表現するような内容だ。
慣れてはいるけど、その暴力的な内容は聖女候補によってはトラウマになるほどで――
『――こんなはずではなかった』
……あれ?
脳に響いたのは私が予想した、怒りにまみれた魔神の思念ではなかった。
『こんなはずではなかった。こんなはずではなかった。こんなはずではなかった。苦しい。苦しい。苦しい。私が間違っていた私が間違っていた私が間違っていた許されない許されない許されない間違えた間違えた間違えた間違えた間違えた間違えた間違えた間違えた愚かな私が愚かな愚かおろ愚かおろか――』
頭が痛くなるような呪いの言葉だ。
聞いているだけで吐きそうなほど不快な気持ちにさせられるのは教会の祭壇で行う祈祷と変わらない。
けれど伝わってくる内容は聖女候補に対する殺意ではないように感じる。
『――殺して罰して許さないで八つ裂きにして頭を潰して目を刺して指をすべて切り落として誰よりも誰よりも誰よりも苦しめて私を殺して罰して許さないで八つ裂きにして頭を潰して目を刺して指をすべて切り落として誰よりも誰よりも誰よりも苦しめて私を殺して罰して許さないで八つ裂きにして頭を潰して目を刺して指をすべて切り落として誰よりも誰よりも誰よりも苦しめて私を殺して罰して許さないで八つ裂きにして頭を潰して目を刺して指をすべて切り落として誰よりも誰よりも誰よりも苦しめて私を』
……うう、頭が痛くなってきた。
そろそろ終わらせよう。
(全能神ラスティアよ、どうかお力をお貸しください)
私がそう念じてより強く祈祷を行うと、妖気は薄れて消えていった。
封印の補強はこれで終わりだ。
私は意識を体に戻した。
「――ぷはっ」
「セルビア! 大丈夫!?」
「なんかうなされてたぞ……まさか魔神の妖気にやられたのか!?」
ハルクさんとレベッカが心配そうな顔で覗き込んでくる。オズワルドさんも私の顔色を読み取るように視線を送ってきてくれている。
「大丈夫です。少し魔神の言葉を聞きすぎただけなので」
「体は平気なのかい?」
「はい。問題ありません」
私はエリザ様に視線を向けた。
「エリザ様、一つ聞きたいことが」
「な、なんですか?」
「ここでの祈祷の時に受けた精神汚染が、教会の祭壇でのものと少し違ったように感じたんですが……」
エリザ様は怪訝そうな顔になりつつも頷く。
「そうですね。多少は異なるかもしれませんが……どちらも不愉快極まりない精神汚染には変わりないでしょう」
「……それもそうですね」
何を言っているんだ、という顔で見られて確かにと思う。
どちらも魔神による悪影響であることには変わりない。
けれどやっぱり少し気になる。
教会の祭壇では私への敵意を感じたけど、ここの祭壇での祈祷では私への敵意は感じなかった。……気のせいだろうか?
「今ので魔神の妖気を必要量集めることに成功した。ついでにセルビアの聖女候補としての魔力もな」
私がそんなことを考えていると、オズワルドさんがそんなことを言った。
ということは、当初の目的は達成できたようだ。
「それじゃあさっさとここから出ようぜ。あんまり長居したい場所じゃねえよ、ここ」
レベッカの言葉に私たち全員は賛成し、祭壇を後にするのだった。
「……ここが王城の封印の祭壇ですか」
広さは教会の祭壇ほどではないけれど、雰囲気はよく似ている。
舞台のようにも見える祭壇の奥に石碑があり、そこからは封印の奥から魔神の妖気が漂ってくる。
「うお、寒気が……」
「相変わらず不気味な場所だね」
レベッカとハルクさんがそれぞれ感想を口にする。
「……っ」
その横で、オズワルドさんがふらついた。
そのまま近くにいたレベッカのほうによろめく。
「うおっ!? おい、なんだよいきなり!」
とっさに反応したレベッカに肩を支えられ、オズワルドさんはなんとか転ぶのを免れる。
「……離せ赤髪。誰が勝手に俺に触れていいと言った」
「てめーが倒れてきたんだろうが!」
レベッカとそんな掛け合いをしながら、オズワルドさんは祭壇中央の石碑を見る。
「……聞いてはいたが、なかなかのものだな。ここまで不愉快な魔力を感じたのは初めてだ」
そういえば、オズワルドさんのようなエルフは魔力を感じ取る能力が高いと言っていた。
もしかしたら、オズワルドさんは魔神の妖気に耐性がないんじゃあ……!?
「オズワルド、一度ここを出るかい?」
「……問題ない。じきに慣れる」
オズワルドさんはハルクさんの言葉に首を横に振りつつ、自分の足で立つ。
「……本当に大丈夫かよ」
「心配無用だ。作業を始める」
オズワルドさんが首飾りを手に持ち石碑の前まで行く。
石碑が絶えず発する赤い妖気に首飾りをかざすと、首飾りの石が輝き内部に妖気を取り込んでいく。
「ちっ……」
オズワルドさんが舌打ちをした、次の瞬間。
ゴォッ! と石碑から放出される妖気が勢いを増した。
「なんだぁ!?」
レベッカが目を見開く。
「オズワルド、早くこっちに! ……聖女様、これは!?」
「わ、わかりません! 祈祷をしている時にこのようなことは起こったことは……!」
ハルクさんの言葉に聖女様が困惑したように叫ぶ。
それに答えたのはオズワルドさんだった。
「いや、おそらくこの魔道具のせいだろう。この『吸魔の首飾り』は対象の魔力の流れを刺激し、活性化させたその魔力の波長を読み取るものだ」
「……そういうことは早く言っておいてほしかったな、オズワルド」
「確かに俺の落ち度だが……普通はここまで大きな反応は起こらない。やはり魔神の妖気というのは普通の魔力とは大きく異なるようだな」
学者心を刺激されたのか、ちょっと興味深そうにしているオズワルドさん。
「のんきに話してる場合かよ! 石碑の妖気が全然収まらねえぞ!」
レベッカの言う通り、石碑から放出される妖気はまったく衰える気配がない。祭壇の内部のプレッシャーも増し続けている。
これはすぐに対処したほうがよさそうだ。
「何をしているのですか、セルビア! 早く祈祷をして妖気を鎮めなさい!」
いつの間にか部屋の隅っこにいる聖女様がそんなことを言っている。
「……あの、一応聞きますがエリザ様はこの祭壇を管理する聖女様ですよね?」
「……私は知恵と美貌で聖女の座を射止めたので、祈祷はそこまで得意分野ではないのです」
目をそらしながら言うエリザ様。
この人は……
仕方ない。
こうなったのは魔神討伐を望んだ私の責任でもあるし、私がなんとかしよう。
「離れていてください」
私は石碑の元に歩いていく。
石碑の前で両手を組み、ひざまずいて目を閉じる。
――次の瞬間、私は石碑の作り出す精神のみの世界へとやってきていた。
重たい水の中にいるような感覚だ。
懐かしい。
祈祷を行うのはずいぶん久しぶりだ。それ以前に王城地下の祭壇での祈祷は初めてでもある。教会の地下と何か違いはあるんだろうか?
沼の底のような場所に、鎖でがんじがらめにされた石碑がある。
私はそこまで行き、手を触れる。
祈祷によって封印を補強するのだ。
私が祈祷を始めると、抵抗するように妖気が私にまとわりつき始めた。
魔神による妨害だ。
この妖気が祈祷を行う聖女候補を排除しようと精神汚染を仕掛けてくる。
大抵は呪詛のような、怒りを表現するような内容だ。
慣れてはいるけど、その暴力的な内容は聖女候補によってはトラウマになるほどで――
『――こんなはずではなかった』
……あれ?
脳に響いたのは私が予想した、怒りにまみれた魔神の思念ではなかった。
『こんなはずではなかった。こんなはずではなかった。こんなはずではなかった。苦しい。苦しい。苦しい。私が間違っていた私が間違っていた私が間違っていた許されない許されない許されない間違えた間違えた間違えた間違えた間違えた間違えた間違えた間違えた愚かな私が愚かな愚かおろ愚かおろか――』
頭が痛くなるような呪いの言葉だ。
聞いているだけで吐きそうなほど不快な気持ちにさせられるのは教会の祭壇で行う祈祷と変わらない。
けれど伝わってくる内容は聖女候補に対する殺意ではないように感じる。
『――殺して罰して許さないで八つ裂きにして頭を潰して目を刺して指をすべて切り落として誰よりも誰よりも誰よりも苦しめて私を殺して罰して許さないで八つ裂きにして頭を潰して目を刺して指をすべて切り落として誰よりも誰よりも誰よりも苦しめて私を殺して罰して許さないで八つ裂きにして頭を潰して目を刺して指をすべて切り落として誰よりも誰よりも誰よりも苦しめて私を殺して罰して許さないで八つ裂きにして頭を潰して目を刺して指をすべて切り落として誰よりも誰よりも誰よりも苦しめて私を』
……うう、頭が痛くなってきた。
そろそろ終わらせよう。
(全能神ラスティアよ、どうかお力をお貸しください)
私がそう念じてより強く祈祷を行うと、妖気は薄れて消えていった。
封印の補強はこれで終わりだ。
私は意識を体に戻した。
「――ぷはっ」
「セルビア! 大丈夫!?」
「なんかうなされてたぞ……まさか魔神の妖気にやられたのか!?」
ハルクさんとレベッカが心配そうな顔で覗き込んでくる。オズワルドさんも私の顔色を読み取るように視線を送ってきてくれている。
「大丈夫です。少し魔神の言葉を聞きすぎただけなので」
「体は平気なのかい?」
「はい。問題ありません」
私はエリザ様に視線を向けた。
「エリザ様、一つ聞きたいことが」
「な、なんですか?」
「ここでの祈祷の時に受けた精神汚染が、教会の祭壇でのものと少し違ったように感じたんですが……」
エリザ様は怪訝そうな顔になりつつも頷く。
「そうですね。多少は異なるかもしれませんが……どちらも不愉快極まりない精神汚染には変わりないでしょう」
「……それもそうですね」
何を言っているんだ、という顔で見られて確かにと思う。
どちらも魔神による悪影響であることには変わりない。
けれどやっぱり少し気になる。
教会の祭壇では私への敵意を感じたけど、ここの祭壇での祈祷では私への敵意は感じなかった。……気のせいだろうか?
「今ので魔神の妖気を必要量集めることに成功した。ついでにセルビアの聖女候補としての魔力もな」
私がそんなことを考えていると、オズワルドさんがそんなことを言った。
ということは、当初の目的は達成できたようだ。
「それじゃあさっさとここから出ようぜ。あんまり長居したい場所じゃねえよ、ここ」
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