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竜と話し合い
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「――というわけなんですが、火竜の長、ここで風竜たちも一緒に暮らすというのは……」
『却下に決まってるだろこの馬鹿娘! 何で私たちがあんな連中と仲良く一緒に暮らさなきゃならないんだい!』
ストレートに火竜の長に風竜たちとの共生を申し出てみたところ、あっさり断られた。
……ですよね、やっぱり。
私たちがいるのは窪地の外周付近の岩山だ。
数体の仲間を従えた火竜の長と風竜の長は、私の張った障壁を間に挟んで向かい合っている。その中間に仲裁役である私、ハルクさん、レベッカ、オズワルドさんという配置。
こうでもしないと火竜と風竜たちがまた争い始めてしまうからだ。
火竜の長は怒りを滲ませて言う。
『セルビア、とか言ったね。あんたは何がしたいんだい? 私たちの味方じゃなかったのか、あんたは』
「……もちろんそうです。ですが、ドラゴンゾンビになった風竜の長と私は少しだけ話すことができました」
『! あの腐った風竜とかい!?』
「はい。その時、彼は風竜のことをひどく心配しているのがわかりました。その様子は、毒に苦しむあなたとよく似ていてるように感じました」
『……』
「彼は自分が成仏する条件として、風竜たちの今後を保証してくれるよう望みました。私はそれを叶えたいと考えています」
『……手打ちにしろってのかい、セルビア。風竜どもとこれ以上争うなと』
低い声で尋ねてくる火竜の長に、私は首を横に振った。
「私の立場からそんなことはとても言えません。風竜との戦いで仲間を失ったあなたの気持ちが、簡単にわかるとは思えませんから。ですが、少しだけ猶予をいただけませんか?」
「火竜の長。どんな形であれ、ドラゴンゾンビを倒したのはセルビアだ。彼女がいなければきみの仲間はさらに死んでいたと思うよ」
私に続いてハルクさんがそう口にすると、火竜の長は溜め息を吐いた。
『……そうだね。その点だけは感謝してるよ。仕方ないねえ、あんたのワガママに付き合ってやるよ』
「! ありがとうございます」
火竜の長にとって風竜は憎き侵略者だ。なのに同胞でない私のために、その怒りを鎮めてくれたのだ。
『けど、あんたが何も思いつかずに風竜がこのままこの山に居座るっていうなら、話は別だ。必ず叩き出すよ』
「……わかりました」
きっちり釘を刺された。
火竜の長にとってそこが境目なんだろう。
風竜たちが出ていくなら見逃してやる。けれど、そうでないなら叩き潰す。
火竜の長の言葉は言い換えればそういうことだ。
『あんたたちもそれでいいね?』
『……異存はない。もとより俺たちは敗残の身だ』
火竜の長が言うと、風竜の長は同意した。
それにしても、喋る竜が二匹もいる(ドラゴンゾンビも含めて三匹?)というのはすごい状況だ。魔物同士の会話なんて見た人類はそうそういない気がする。
「で、セルビア。どうすんだ?」
レベッカが率直に尋ねてくる。
「そうですね……まずは事情を聞かせてください。風竜がどうしてこの山に来たのか」
私が聞くと、風竜の長は頷いた。
『俺たちが以前棲んでいた場所には豊富な魔力があった。しかしそれは徐々に枯渇していき……やがて俺たちはそこで暮らすことができなくなった』
「魔力がなくなると暮らせなくなるんですか?」
『風竜は他の竜と比べて、大気の魔力に体調を左右されやすいのだ』
ちらりとオズワルドさんのほうを見ると、頷きを返された。
「元々竜は魔力の濃い場所を好むが、風竜は生きていくうえで必要な魔力の量が多い。“風を起こす”能力を維持するため、というのが通説だ。実際に魔力の低い場所で暮らす風竜は繁殖力が落ちるという報告もある」
「……おめーは本当にどこでそんな知識を身に着けてくるんだよ」
「この程度は一般常識だろう」
こともなげに言うオズワルドさんだけど、絶対にそんなことはないと思う。
『却下に決まってるだろこの馬鹿娘! 何で私たちがあんな連中と仲良く一緒に暮らさなきゃならないんだい!』
ストレートに火竜の長に風竜たちとの共生を申し出てみたところ、あっさり断られた。
……ですよね、やっぱり。
私たちがいるのは窪地の外周付近の岩山だ。
数体の仲間を従えた火竜の長と風竜の長は、私の張った障壁を間に挟んで向かい合っている。その中間に仲裁役である私、ハルクさん、レベッカ、オズワルドさんという配置。
こうでもしないと火竜と風竜たちがまた争い始めてしまうからだ。
火竜の長は怒りを滲ませて言う。
『セルビア、とか言ったね。あんたは何がしたいんだい? 私たちの味方じゃなかったのか、あんたは』
「……もちろんそうです。ですが、ドラゴンゾンビになった風竜の長と私は少しだけ話すことができました」
『! あの腐った風竜とかい!?』
「はい。その時、彼は風竜のことをひどく心配しているのがわかりました。その様子は、毒に苦しむあなたとよく似ていてるように感じました」
『……』
「彼は自分が成仏する条件として、風竜たちの今後を保証してくれるよう望みました。私はそれを叶えたいと考えています」
『……手打ちにしろってのかい、セルビア。風竜どもとこれ以上争うなと』
低い声で尋ねてくる火竜の長に、私は首を横に振った。
「私の立場からそんなことはとても言えません。風竜との戦いで仲間を失ったあなたの気持ちが、簡単にわかるとは思えませんから。ですが、少しだけ猶予をいただけませんか?」
「火竜の長。どんな形であれ、ドラゴンゾンビを倒したのはセルビアだ。彼女がいなければきみの仲間はさらに死んでいたと思うよ」
私に続いてハルクさんがそう口にすると、火竜の長は溜め息を吐いた。
『……そうだね。その点だけは感謝してるよ。仕方ないねえ、あんたのワガママに付き合ってやるよ』
「! ありがとうございます」
火竜の長にとって風竜は憎き侵略者だ。なのに同胞でない私のために、その怒りを鎮めてくれたのだ。
『けど、あんたが何も思いつかずに風竜がこのままこの山に居座るっていうなら、話は別だ。必ず叩き出すよ』
「……わかりました」
きっちり釘を刺された。
火竜の長にとってそこが境目なんだろう。
風竜たちが出ていくなら見逃してやる。けれど、そうでないなら叩き潰す。
火竜の長の言葉は言い換えればそういうことだ。
『あんたたちもそれでいいね?』
『……異存はない。もとより俺たちは敗残の身だ』
火竜の長が言うと、風竜の長は同意した。
それにしても、喋る竜が二匹もいる(ドラゴンゾンビも含めて三匹?)というのはすごい状況だ。魔物同士の会話なんて見た人類はそうそういない気がする。
「で、セルビア。どうすんだ?」
レベッカが率直に尋ねてくる。
「そうですね……まずは事情を聞かせてください。風竜がどうしてこの山に来たのか」
私が聞くと、風竜の長は頷いた。
『俺たちが以前棲んでいた場所には豊富な魔力があった。しかしそれは徐々に枯渇していき……やがて俺たちはそこで暮らすことができなくなった』
「魔力がなくなると暮らせなくなるんですか?」
『風竜は他の竜と比べて、大気の魔力に体調を左右されやすいのだ』
ちらりとオズワルドさんのほうを見ると、頷きを返された。
「元々竜は魔力の濃い場所を好むが、風竜は生きていくうえで必要な魔力の量が多い。“風を起こす”能力を維持するため、というのが通説だ。実際に魔力の低い場所で暮らす風竜は繁殖力が落ちるという報告もある」
「……おめーは本当にどこでそんな知識を身に着けてくるんだよ」
「この程度は一般常識だろう」
こともなげに言うオズワルドさんだけど、絶対にそんなことはないと思う。
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