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2巻

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 プロローグ


『ガルアアアア!』

 魔物の吠え声が響く。元は普通の犬型の魔物なのだろうけど、全身の肉がくさり落ちたその姿はおぞましいとしか言いようがない。

「はあああああっ!」

 ザンッ!
 そんな怪物の胴体が両断される。

『ガア――?』

 真っ二つにされ、その場に転がる犬型魔物。
 斬ったのは銀髪の剣士、ハルクさんだ。『剣神』の異名をとるSランク冒険者で、いろいろあって今は私と一緒に行動している。

「セルビア、もう一体そっちに行った!」
「見えてます! 【聖位障壁セイクリッドバリア】」
『ギャン!』

 障壁魔術を張って、もう一体いた同種の魔物を止める。

「【聖位祓魔セイクリッドエクソシズム】!」
『ギャアアアアアアアア!』

 動きの止まった魔物にアンデッド系の魔物を浄化する魔術を放ち、消滅させる。
聖位祓魔セイクリッドエクソシズム】は退魔の魔術だ。これを使える人間は限られていて、魔神を封じる役目を持つ『聖女』や『聖女候補』のみ。私、セルビアは聖女候補だったんだけど……元婚約者であるクリス殿下や他の聖女候補によって教会から追放され、今はハルクさんとともに冒険者として活動している。

「悪かったねセルビア、一体取り逃しちゃって」

 申し訳なさそうな顔をしながら、ハルクさんがこちらに歩み寄ってくる。

「いえいえ、このくらいなら私でもなんとかできます。それに私たち、パーティじゃないですか」
「……うん、そうだね。ありがとう」

 ですから協力するのは当たり前です、と言う私に、ハルクさんはどこか照れくさそうに微笑むのだった。



「ただいま戻りました、ギルマス」
「おお、ハルク殿にセルビア殿! お早いお戻りですな」

 冒険者ギルドに戻ると、短髪と顔の大きな傷が特徴的な男性――エドマークさんがこちらに歩いてきた。

「突然変異の魔物はきちんと討伐してきましたよ。ギルドの前に運んでありますから、あとで確認をお願いします」
「ありがとうございます! ハルク殿たちがいてくださると本当に仕事が早く片付きますな」

 勢いよく頭を下げるエドマークさん。
 エドマークさんはこの国における冒険者ギルドのトップであり、ついでにハルクさんの熱烈ねつれつな支持者でもある。過去にハルクさんに助けられたことがきっかけだそうだ。

「それにしても、最近の王都周辺は大変なことになってますね」

 私の言葉にエドマークさんは深く頷いた。

「まったくです。迷宮はお二人のおかげで消滅しましたが、その影響がこんな形で残るとは思いませんでした。まさか周辺の魔物が変異するとは……」

 エドマークさんの言う通り、王都周辺では近頃魔物が変異する現象が起こっている。
 この地に封じられた魔神が復活するための生贄いけにえ収集装置――迷宮。
 迷宮自体は私とハルクさんが対処したけど、漏れ出た妖気ようきのせいでこのあたりの魔物が軒並み強くなってしまったのだ。
 中には動く死体アンデッド系の性質を帯びたものもいるので、私たちはそういった魔物たちが街の近くに現れるたびに狩りに行っている。
 まあ、今は復興やらなんやらで兵士たちが忙しいから仕方ない。
 それに報酬ほうしゅうもきちんともらっていることだし。

「変異した魔物だけでも大変だというのに、最近は妙な連中まで王都に来る始末で……」
「妙な連中?」
「迷宮について研究したい学者やら、金持ちの令嬢の依頼で、変異した魔物を捕獲しようとするよそ者の冒険者やら……後者は魔物をペットにしたいとかなんとか」
「ペットって……」

 まあ、魔神由来の妖気ようきを浴びて変質した魔物は珍しくはあるけど。
 それにしてもペットって、お金持ちの人はすごいことを考えるなあ。

「とにかく、お二人には感謝しております」
「「いえいえ」」

 そんなやり取りをして、私たちは冒険者ギルドを出るのだった。



 さて、そんな感じで一日の行動を終えた私たちは宿に戻ったわけだけど……

「宿の前に誰かいるね」
「……いますね、修道服を着た人が」

 うわー、どうしよう。どう見ても教会の関係者が宿の前で待ち構えている。
 今さら言いたくもないけど、私と教会の関係はものすごく険悪だ。
 行きたくない。
 すっごく行きたくない。
 そんなことを考えていると、修道士のほうから近付いてきた。

「『剣神』ハルク様と元聖女候補のセルビア様でよろしいでしょうか?」
「僕たちになにかご用ですか?」

 私をかばうようにハルクさんが前に出る。
 私はハルクさんの後ろから修道士の顔立ちを見て、おや、と思った。
 この街の教会の人間はだいたい顔を知っているはずだけど、この人物に見覚えがない。どこか他の街から来たのだろうか?
 ハルクさんの質問に対し、なぞの修道士はこう告げた。

「私は教皇様の使いでございます。迷宮を滅ぼしてくださったお二人に、教皇様からお話があるとのことです」

 ……んん?
 ちょっと今聞き逃せない言葉が混ざったような。

「あの、教皇様というのはラスティア教の……?」
「その通りです、セルビア様。ラスティア教皇ヨハン様は現在この街にいらっしゃいます」
「教皇様がこの街に来てるんですか⁉」

 あっさり頷く修道士に、私は目を見開くのだった。



 第一章 初代聖女の記憶


 ラスティア教皇。
 世界中に信徒を持つラスティア教の頂点に立つその人物には、一国の王をもしのぐ権力があるとされている。一般の信徒には言葉を交わす機会すらない。普段はこの王都とは別にある『聖都』の教会本部で、教会の代表としての職務を行っている。
 そんな大物の使いだという修道士の後ろを歩きつつ、ハルクさんと言葉を交わす。

「良かったのかい、セルビア。教会にまた関わったりして」
「まあ、私もできることなら避けたかったですけど……」
「けど?」
「『魔神の話をする』なんて言われたら、聞かざるを得ません」

 修道士によれば、教皇様の話は魔神討伐に関連するものらしい。
 魔神の知識をもっとも持っているのはラスティア教だ。
 そのトップがじきじきに魔神のことを教えてくれるというなら、多少リスクがあっても行くしかない。私の目的は魔神を討伐して、真の自由を得ることなんだから。
 ハルクさんは頷く。

「セルビアがそう言うなら僕も異論はないよ。大丈夫、仮にわなだったとしても僕がなんとかする」
「……ハルクさんが言うと説得力がすごいですね」

 さすがは世界唯一の個人でのSランク冒険者。たぶんハルクさんがいれば、武装した修道士が五百人くらい待ち構えていても余裕で生還できるだろう。

「こちらです」

 修道士が立ち止まったのは、教会の奥にある管理者の部屋。
 少し前までルドン司教が使っていた場所だ。
 修道士が扉を開ける。
 そこにいたのは白髪に長いひげ、丸眼鏡が特徴的な老年の男性だった。

「急な呼び出しに応じてくれてありがとうございます、『剣神』ハルク殿に元聖女候補のセルビア。私がラスティア教皇のヨハン・ベルノルトです」

 この人が教皇様……実際にお会いするのは初めてだ。
 印象としては、優しげで穏やかそう。ずっと険しい顔をしていた国王様とは対照的だ。

「初めまして。冒険者のハルクです」
「……セルビアです」

 私たちをここまで案内してくれた修道士の男性はすでにいなくなっている。
 今この部屋にいるのは私たちと教皇様だけだ。王城に連れてこられた時のように、数十人の騎士が待機しているようなこともなかった。
 私たちの挨拶あいさつを聞くと、教皇様は静かに立ち上がり……

「話は聞いています。たった二人で迷宮に飛び込み、迷宮の主を打ち倒してくれたそうですね。我々の不手際の後始末をさせてしまって申し訳ありません」

 そう言って、私たちに深々と頭を下げた。
 大組織ラスティア教のトップ――世界有数の権力を持つ人物が。

「『祭壇さいだんに余人を近付かせてはならず』。迷宮出現の責任は、掟を徹底させられなかった私にあります。あなた方が望むならどんな罰でも受けましょう」

 そう告げる教皇様は、あまりにも潔かった。
 演技で言っているようにはまったく見えない。以前会った国王様とは大違いだ。

「気になさらないでください、教皇様。それより魔神のことを教えていただけますか」

 終わった話はもうどうでもいい。
 私たちがここに来たのは魔神の情報を得るためなのだ。

「私たちは魔神を倒すつもりです。今はまだ、有効な方法は見つかっていませんが……魔神に関することならどんな小さな情報でも欲しい」

 魔神はもはや災害の一種と変わらない。大組織であるラスティア教が世界中から聖女候補を集め、多額の資金や人員を用意してもなお、封印し続けるのがやっとの怪物だ。討伐方法なんて当然聞いたことがない。
 まずは情報。
 魔神を倒すヒントになるようなら、どんな小さなことでも聞き出したい。

「ああ、魔神を倒す方法なら知っていますよ」
「えっ?」

 教皇様があっさりと言うので、さすがに愕然がくぜんとした。

「……セルビア。魔神の倒し方なんて誰も知らないんじゃなかったの?」
「そ、そのはずだったんですけど」

 ハルクさんと小声で言い合っていると、教皇様が微笑んでこう言った。

「今日はそれを話すためにお二人に来ていただいたのです。魔神討伐はラスティア教全体の悲願でもありますから」

 嘘ではないだろう。
 魔神が討伐されたら、ラスティア教は長きに渡り背負い続けてきた重荷から解放されるのだから。

「そ、その方法というのは」
「すぐにお伝えします。……が、実際に見てもらったほうが早いでしょうね」
「見る? なにをですか?」
「セルビア、まずはこれを持ってください」

 教皇様はなにやら石板のようなものを渡してきた。
 ……なんですかこれ。

「セルビア、その石板に魔力を流してください」
「はあ……」
「あなたならできるはずです」

 私ならできる? 一体どういう意味だろう?
 なんだかわからないまま石板に魔力を流してみる。
 すると。
 パアアッ、と石板が勢いよく光を放ち部屋を満たした。
 光は周囲を埋めつくし、私はあまりのまぶしさに目を閉じる。
 そして次に目を開けた時には――あたり一面が緑色の草原に変わっていた。

「ど、どうなってるんですかこれ⁉ さっきまで教会にいたのに!」
「幻覚か……?」

 ハルクさんが油断なく周囲を見渡している。
 すると教皇様はこう説明した。

「幻覚に近いですが、少し違いますね。これは初代聖女が残した『記録』です」
「記録?」
「はい。魔神に関する資料は諸事情により、多くが失われています。そんな中、魔神討伐に関する貴重な情報を与えてくれるのがこの石板なのです。これには、魔神を封印した初代聖女の記憶が込められているのですよ」

 つまり、この光景は初代聖女様の記憶を元にした映像ということだろうか?
 それが本当ならすごいことだ。
 なにしろ教皇様の言った通り、初代聖女様は魔神を封印した張本人なのだから。その人物の記憶以上に魔神討伐に役立つ情報なんてないだろう。

「もっとも、これは一定以上の聖なる魔力を込めなくては反応しませんがね。やはりセルビアには聖女としての並外れた素質そしつがあるようです」
「……」
「セルビア、顔がものすごく嫌そうな表情になってるよ」

 教会のただれた内情を知っている私からすると、聖女の素質そしつがあるなんて言われてもあんまり嬉しくない。

「おしゃべりはここまでです。……そろそろ始まりますよ」

 教皇様の言葉を聞いて、私は映像に意識を集中させた。


 初代聖女様がいたのは丘の上。
 日頃からよく一緒に遊んでいるのか、鹿やリスといった動物たちがまわりに集まっている。初代聖女様は動物たちと一緒に果物を食べたり、追いかけっこをして遊んだりしている。
 周囲には草や花が満ち、見ているだけでいやされる光景だ。
 ――それが、一瞬で塗りつぶされた。
 それは一言で表せば『真っ黒な泥』だった。
 津波のように押し寄せた泥が美しい草原をおおっていく。木々はくさり、土は溶け、愛らしい動物たちが次々と死んでいく。あとに残るのはすべてが死に絶えた黒い大地だけ。
 それだけでは終わらない。
 泥に呑み込まれた生物たちが次々と起き上がる。
 ぼたぼたと泥をしたたらせるその生物は、体のあちこちがくさち骨や内臓が露出している。
 まるで死後何日も放置された死骸しがいのようなものが、よたよたと歩いてくる。
 泥や、それによって生まれ変わったなにかがこちらに迫る。
 このままでは死ぬ。
 殺される。

『――ッ!』

 初代聖女様は咄嗟とっさに手を前にかざす。
 すると、視界いっぱいに白い光が広がった。
 泥や怪物たちはその光によって浄化され消えていき、あとにはごっそりとえぐれた大地と、息絶えた生き物たちの死骸しがいだけが残った。


 石板から光が失われ、風景が元の教会の一室に戻る。

「今のが……初代聖女様の記憶?」

 私が呟くと、「その通りです」と教皇様が頷いた。
 さらに教皇様が映像の解説をしてくれる。

「あの泥のようなものは魔神の影響によって生まれたものです。初代聖女はそれに呑み込まれる寸前、聖女としての力に目覚め、魔神の眷属けんぞくとなった動物たちを浄化したのです」
「初代聖女様が神ラスティアに力をさずかった瞬間の記憶ということですか?」
「我々はそう考えています」

 そう首肯する教皇様。
 それにしても……なんて生々しい映像だろう。
 現実ではないとわかっていても身の危険を感じるほどだ。
 一方、ハルクさんは別のことが気になっているようだ。

「教皇猊下げいか。泥が触れたものが変質していましたが、あれは魔神の能力ですか?」
「ええ、『剣神』殿。魔神の能力は大きく分けて二つ。一つが『触れた生物を即死させること』。もう一つが『殺した生物を自らの配下としてよみがえらせること』です」
「……!」

 信じられないとばかりに絶句するハルクさん。
 無理もない。触っただけであらゆる生き物を殺した挙句、それを眷属にする能力なんて普通じゃ想像もできないだろう。

「お二人には心当たりがあるかと思いますよ。最近、王都周辺には変異した魔物が現れているはず。あれも迷宮から漏れた魔神の妖気ようきによって変異しているのです」
「! そういえば……」

 はっとしたようにハルクさんは目を見開いた。
 心当たりもなにも、ついさっきその変異した魔物を討伐したばかりだ。

「魔神の能力は、『世界を造り変える』ものと考えられます。生をつかさどる全能神ラスティアの世界を冥界へと――冥神エルシュの世界へと変貌させるのです」

 世界の造り変え。
 つまり、この世界を死者の暮らす『冥界』に変換する能力。
 それが魔神の持つ力の全容だ。

「冥神エルシュ?」
「全能神ラスティアと対立する、もう一柱の神です」

 なんの背景もなしに、魔神のような特別な能力を持った存在が生まれるとは考えにくい。全能神ラスティアが聖女候補に力を与えるように、魔神も冥神エルシュによって力を受け取っている、というのが教会の見解だ。
 ハルクさんは溜め息をいた。

「魔神は神の加護を受けた怪物ということですか。……にわかには信じられないですね」
「今はそれで構いません。折を見てセルビアに確認していただければ」
「そうさせてもらいます」

 魔神についてハルクさんとの最低限の情報共有は済んだ。
 ……というか、魔神については事前に説明しておけば良かった。これは私のミスだ。

「では、続きを見ましょう。セルビア、もう一度石板に魔力を流してください」
「わかりました」

 さっきと同じように、石板から放たれた光が部屋を満たしていく。


 視界に映るのは先ほどとは違い、真っ白な空間だった。
 そこにいるのは初代聖女様と、もう一人。
 真っ白な人影がたたずんでいる。
 白い人影は次々と宙に映像を浮かび上がらせる。
 ――きらびやかな甲冑かっちゅうをまとった騎士と、にぎやかで人の多い都会の街並み。
 ――古い小屋で剣を打つ鍛冶師かじしと、山奥の風景。
 なにかを示唆しさするような光景だ。
 いわゆる『お告げ』というものだろう。
 初代聖女様はお告げに従って動き出す。
 大都市に行き、聖騎士の青年と知り合う。その傷を治して友人になる。
 山奥の小屋に行き、鍛冶師かじしの大男と出会う。彼の作品を買い叩こうとする悪徳商人を成敗し、鍛冶師かじしから信頼を得る。
 気付けば三人は旧知のように打ち解けていた。
 こうして初代聖女様はお告げの通りに仲間を得ることができた。


 と、ここで再び映像が途切れる。
 どうやらこの石板、映像が進むごとに魔力を補充しないといけない代物のようだ。

「セルビア。今の白い人影って……」
「たぶん神ラスティアですね」

 直感的にわかった。初代聖女様は魔神の影響をねのけるだけじゃなく、神ラスティアと交信する力まで得ていたようだ。
 白い人影以外にも気になるところはある。

「……なんだかあの聖騎士、ハルクさんに似てませんでしたか?」

 初代聖女様の仲間になった二人のうち、聖騎士の青年はハルクさんに雰囲気が似ていたような気がする。

「そう? 僕はそれより、初代聖女様と知り合った経緯が僕とセルビアそっくりなのが気になったけど」
「すごい偶然ですよね」
「偶然で片付けていいのかどうか……」

 ハルクさんが難しそうな顔をしている。

「それに、さっきの鍛冶師かじしも気になるね」
「そうですね。お告げで示されたからには、なにか意味があるんでしょうし」

 ちらりと教皇様を見ると、「すぐにわかりますよ」と先を促された。
 それじゃあ続きだ。
 私はさらに石板に魔力を流す。


 鍛冶師かじしの大男は素晴らしい技術の持ち主だった。
 彼は魔神を倒すための剣を打った。
 赤い炎のようなものがまとわりついたその剣には、特別な力が宿っていた。
 初代聖女様と同じく、鍛冶師かじしは神ラスティアの力を与えられていたのだ。
 初代聖女様と、聖騎士の青年と、鍛冶師かじしの大男はやがて魔神と対決する。
 三人が挑む頃には、黒い泥は荒れ狂う海のように世界を呑み込もうとしていた。
 その中心には山のような巨体の怪物がいる。
 怪物には二つの頭部があった。
 まるで別々の怪物を無理やりつなぎ合わせたかのように。
 双頭そうとうの怪物――魔神は泥を再現なく生み出し、世界をおおわんとする。
 そこに聖騎士が立ち向かう。
 手には鍛冶師かじしが打った特別な剣。さらに全身は初代聖女様が与えた神聖な光で守られている。
 聖騎士は魔神の巨体を足場にして駆け上がり、片方の頭部を斬り飛ばした。
 魔神の体は炎に包まれ燃えていき、黒い泥は干上がっていく。
 しかし魔神は死なない。
 弱ってはいてもその場でもがき続けている。
 驚くべきことに、聖騎士によって落とされたほうの頭すらも死んでいなかった。
 そんな魔神にとどめをさしたのは初代聖女様だった。
 神聖なる祈りにより、落とされた頭と、片方の頭を失った本体を別々の場所に封じる。
 それによって、魔神が生み出し続けていた泥や妖気ようきは完全に消え去った。
 空は晴れ、世界の危機は終わりを迎えたのだ。


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