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ダンジョン演習②

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「それにしても、どうやって岩ゴブリンを探しましょうか」

 場所はダンジョン三階層。

 学院地下に広がるダンジョンは全七層あり、地下に行くほど面積は広く、魔物は強くなっていくそうだ。

 私たちの標的である岩ゴブリンは三階層にいる。

 七階層と比べれば全然マシだそうだけど、三階層も十分広い。
 岩と土で作られた周囲はまるで迷路のようだ。

 ……なんだか昔潜った『迷宮』を思い出すなあ。

「わたしの魔術で探そうか? 岩ゴブリン」

 私がそんなことを考えていると、ロゼがそんな提案をしてきた。

「そんなことができるんですか?」
「うん。【土妖精サンドピクシー】」

 ロゼが魔術を発動させると、地面が盛り上がって人型の土人形が数体現れた。

 サイズはかなり小さい。
 道端に落ちていたらどんぐりや小石と間違えそうなレベルだ。

「……えっと、ロゼ。これをどうするんですか?」
「探索に出すの。土妖精、この階層にいる岩ゴブリンを探してきて!」
『『『ピィーッ!』』』

 ロゼが指示をすると、一体だけをその場に残し、残りの土人形――ではなく土妖精たちはあちこちに駆け出していった。

 残された土妖精を拾い上げてロゼが解説してくれる。

「散っていった子のだれかが岩ゴブリンを見つければ、こっちの子に反応があるはずだよ」
「はー……便利ですね。そんな魔術があるなんて」
「既存のものじゃないけどね。わたしは魔力が少ないから、色んな魔術を自分に合わせて調整してるの。
 これも元は大きな岩のゴーレムを作り出す魔術だし」

 何てことのないようにそう告げるロゼ。

 けれど、既存の魔術をここまでアレンジするのがどれだけ凄いことかは私でもわかる。

 たとえば私は障壁魔術を使う時、障壁の色を変えたり、形を変えたりすることはできない。
 魔術のアレンジというのは、魔力のコントロールがよっぽどうまくないとできない芸当なのだ。

「やっぱりロゼは凄いです」
「そ、そうかな」
「はい」

 魔力が低いと本人は言うけれど、こんなことができるならそのハンデもあってないようなものだと思う。

『ピイッ!』
「あ、見つけたみたい」
「随分早かったですね」

 そんなことを話していると、ロゼの手に乗る土妖精が反応した。

 ぴょんと地面に飛び降り、どこかに向かっていこうとする。どうやらその先に岩ゴブリンがいるようだ。

 私たちが土妖精を追っていくと――

『ギャッギャッ』
『ギィイッ!』

 そこにはずんぐりした体形の、角を生やした魔物が二体。
 間違いない、岩ゴブリンだ。

「見つけたはいいけど……セルビア、これからどうしよう? わたしは戦闘はあんまり得意じゃなくて……」

 引け腰な様子でそう言ってくるロゼ。

「わかってます。任せてください、ここからは私がやります」

 私はロゼの前に出た。
 ルーカスのような相手ならともかく、遠距離攻撃の手段もなさそうな相手なら!

「【最上位障壁《イクスバリア》】、【最上位障壁《イクスバリア》】、【最上位障壁《イクスバリア》】、【最上位障壁《イクスバリア》】、【最上位障壁《イクスバリア》】!」
『『ギイッ!?』』

 閉じ込め完了!

 頑丈な障壁に前後左右と上方を囲まれた岩ゴブリンたちは慌てふためくけど、もちろん脱出なんてできない。

「えっと、セルビア。閉じ込めたのはいいけどここからどうするの?」
「岩ゴブリンが酸欠になるまで待ちます」
「えっ」
「そんなに時間もかからないと思いますよ。適当に雑談でもしていましょう」

 以前初対面のシャンにやったとき同じだ。

 隙間がなくなるよう障壁が張ったので、障壁の中の酸素はいずれなくなる。
 運がいいことに相手は二体。
 つまり障壁の中の酸素が減る速度も倍だ。

 これならすぐに岩ゴブリンたちも力尽きてくれるだろう。

「さあロゼ、何を話しますか?」
「……さ、さあ。どうしましょうねセルビアさん」
「あれ? な、なんで敬語に戻るんですか!?」

 明らかに引かれている。

 た、ただ演習のためにやっただけなのに……!

 その後しばらくロゼが私に距離を取りたがるようになったのだった。
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