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連載
失踪事件と今後のこと
しおりを挟むオズワルドさんは言葉を続ける。
「現在この街では警備が厳重になっている。たとえば警備用ゴーレムの反応が過激になっていたりな。お前たちは違和感を覚えなかったか?」
「違和感も何も、さっき追い回された直後だよ……。けど、そういう理由だったのか。ようやく腑に落ちたよ」
納得したように言うハルクさん。
さっき警備用ゴーレムに追い回されている途中、確かにハルクさんもそんなことを言っていた気がする。
警備用ゴーレムの様子が過敏すぎるとかなんとか。
あれはこの街で起きている事件が背景になっていたようだ。
「つまりその行方不明事件の調査をオズワルドが賢者様に依頼されたと?」
「その通りだ」
「……よく引き受けたね? きみ、普段は自分の研究が第一じゃないか」
『それについては交換条件じゃな』
ハルクさんの疑問には映像の向こうから賢者様が答える。
「交換条件?」
『オズワルド君の研究する【空間】魔術には、希少な魔術素材が必要になる。儂の持つそれを譲る代わりに事件の解決を依頼しとったんじゃよ』
「なるほど。そういうことでしたか」
「『古龍の眼球』を二つ譲渡すると言われたのだぞ。依頼を受けないわけにもいかん」
何となく事情が見えてきた。
オズワルドさんの研究分野はかなり特殊だと事前に聞いていた。
その研究のために必要な素材を取引材料に、賢者様はオズワルドさんに事件解決を頼んでいたと。
オズワルドさんはさらに言う。
「それにこの事件が解決できない限り、お前たちの頼みもどのみち叶わん」
「どういう意味だい、オズワルド」
「簡単な話だ。『隔離結界』を作るためには強力な魔術素材が必要になる。それこそ事件の解決報酬である『古龍の眼球』クラスでなくてはな。
つまりこの事件を解決しないことには、隔離結界は作れない」
「……なるほどね」
行方不明事件を解決すれば『古龍の眼球』が手に入る。
それを使わなければ、魔神討伐用の隔離結界を作ることはできない。
つまり私たちがこの街に来た目的を果たすためには、事件の解決が必須というわけだ。
『結界? 何のことじゃオズワルド君』
「こっちの話だ。黙っていろメイド狂い」
『ふっ、メイドさんに狂うなら本望じゃと思わんか?』
「わかったからもう本当に黙っていろ」
賢者様とのやり取りに疲れたように溜め息を吐くオズワルドさん。
これは普段から色々と苦労していそうだ。
と、ここで映像の向こうで賢者様を呼ぶ声がする。
『――む、もうこんな時間か。すまんがオズワルド君、あと頼むぞい』
「ああ、もう十分だ。とりあえずこの三人が調査に協力するということだけ伝えたかった」
『ハルク君が協力してくれるなら百人力じゃな。期待しとるよ』
プツッ。
ここで映像が切れて賢者様の姿は見えなくなった。
オズワルドさんが向き直ってくる。
「ともかく、そういう理由だ。お前たちにも行方不明事件の調査を手伝ってもらう」
「うん、構わないよ」
「わかりました。お役に立てるよう頑張ります」
「じゃーねえ、いっちょやるか!」
ハルクさん、私、レベッカの順にそう応じる。
せっかくここまで来たんだから、当初の目的を果たしてみせる!
(……まあ、オズワルドさんが本当に欲しているのはハルクさんの力でしょうけど)
ハルクさんは戦闘力だけでなく【生体感知】による探査能力にも秀でている。
鑑定能力持ちのレベッカはともかく、今回の件で私がそこまで役に立てるとは――
「ちなみにお前たち三人でもっとも魔力が高いのは誰だ?」
「セルビアだね」
「間違いなくセルビア一択だな」
「よし、では金髪。お前がもっとも重要な役割だ。絶対に失敗するなよ」
「えっ」
何だか流れるように予想外の展開になった気がする。
「ま、待ってください! 私が重要な役割ってどういうことですか!?」
この場にはハルクさんもいるというのに私が重要なポジションにつく理由がわからない。
私の疑問にオズワルドさんはこう言った。
「結論から言うぞ。セルビア、お前にはこの街にある魔術学院の一つ――『国立シャレア第一魔術学院』に潜入してもらう。事件の調査をするためにな」
魔術学院に潜入。……私が?
「本気で言っていらっしゃいますか?」
「当然だ」
頷くオズワルドさん。
……えっと。
行方不明事件の調査のはずなのになぜそんな話になるんだろう?
というか私、学校に通ったことも、魔術について学んだこともないんですが。
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