12 / 29
カリナ・ブライン
しおりを挟む
ハッハッハッハッ……
「……まさかこうなるとは」
「かわいいです」
洗礼の儀を終えた私たちは、教会の出口に向かって移動している。
アイリスは一匹の赤い犬を抱えている。
正確には小さな狼らしいけど、子犬にしか見えない。
これはアルフェンリードの分身である。洗礼の儀にやってきて、半ば無理やりアイリスと契約したアルフェンリードだったけど、他の精霊と同じ形での契約はできないと言ってきた。
精霊は神聖魔力の塊。
聖女候補が精霊と契約するのは、自身の神聖魔力を扱える状態に加工することだけど――オマケとして、自身のものに加えて精霊の神聖魔力も使えるようになる。精霊は神聖魔力の外付けタンク的な役割もこなすのだ。
で、アルフェンリードいわく……
『我と素で契約しようものなら幼きものは弾け飛ぶぞ。ゆえに我の力の一部を切り離し、幼きものと契約させるのが最善だ』
とのことだった。
どうやら才能豊かなアイリスをもってしても、精霊王の神聖魔力の受け皿としては不足らしい。まあ、そもそも精霊と人間では体の作りが違うので当然である。
というわけで、アルフェンリードは自分の一部を切り離してミニアルフェンリードを作り、それをアイリスと契約させたのだった。
もっともアルフェンリードとミニアルフェンリードの間にもつながりはあるらしいから、ミニアルフェンリードを介して本体のアルフェンリードと意思疎通をすることも可能だ。
「あるちゃん、くすぐったいです」
『わふ』
アイリスが抱えたミニアルフェンリード――通称“アル”とじゃれている。
っは~~~~ここは天国? 子犬サイズのアルは本体と違っていかつくないし、アイリスとの組み合わせによって癒しパワーがとんでもないことになっている。
アルフェンリードいわく、アイリスの成長に合わせてアルも性能をアップさせるとか。そうなるとアルは大きくなっていくらしい。
『わふう』
アルはぱあっと光ると、その姿を消した。
消滅したわけじゃなく、他の契約精霊と同じようにアイリスの中に宿ったのだ。
手で触れられるとはいえ、本質的には他の精霊と変わらないということだろう。
「ああ、きえてしまいました」
「悲しそうな顔をしなくてもいいわよ、アイリス。呼べばまた出てきてくれるんでしょ?」
「それは、そうですけど」
アルフェンリードは私と取引をする際、アイリスとの契約の他に、アイリスの保護を申し出てきた。アルにはその力があり、アイリスがピンチの時は出てきて助けてくれるらしい。
見た目的にはあんまり強そうじゃないけど、まあ、精霊王の言葉を信じよう。
「せんせい。これでわたし、せいじょのとっくんができるんですよね」
「嬉しそうね、アイリス。……聖女の特訓ってそんなに楽しいものじゃないわよ?」
「でも、うれしいです。わたし、せんせいみたいな、りっぱなせいじょになりたいです」
私みたいになりたいですって? くっ、こんなところで娘に言われたい言葉ランキング第二位が飛んでくるなんて……! まあ私とアイリスに血縁はないんだけども。
「わかったわ、アイリス。でも無理は禁物よ。明日から――」
「あらぁ? そこにいるのはミリーリア・ノクトール様ではありませんこと?」
鼻にかかる甘ったるい声。
私たちのほうに向かって歩いてくるのは、付き人を従えた桜色の髪の女性だった。年は私と同じくらいで、背は低め。服は聖女候補が着る修道服だ。
あの女性は――
「――カリナ・ブラインさん」
「ええ。お久しぶりですわ」
「せんせい、おしりあいですか?」
「ええ、まあね……」
カリナ・ブライン。
私と同い年の聖女候補だ。
以前通っていた貴族学院では同級生でもある。
それはいいんだけど……この人、ミリーリアのことを嫌っているっぽいのよねえ……
どうしてこんなところで遭遇してしまうのか。
「……まさかこうなるとは」
「かわいいです」
洗礼の儀を終えた私たちは、教会の出口に向かって移動している。
アイリスは一匹の赤い犬を抱えている。
正確には小さな狼らしいけど、子犬にしか見えない。
これはアルフェンリードの分身である。洗礼の儀にやってきて、半ば無理やりアイリスと契約したアルフェンリードだったけど、他の精霊と同じ形での契約はできないと言ってきた。
精霊は神聖魔力の塊。
聖女候補が精霊と契約するのは、自身の神聖魔力を扱える状態に加工することだけど――オマケとして、自身のものに加えて精霊の神聖魔力も使えるようになる。精霊は神聖魔力の外付けタンク的な役割もこなすのだ。
で、アルフェンリードいわく……
『我と素で契約しようものなら幼きものは弾け飛ぶぞ。ゆえに我の力の一部を切り離し、幼きものと契約させるのが最善だ』
とのことだった。
どうやら才能豊かなアイリスをもってしても、精霊王の神聖魔力の受け皿としては不足らしい。まあ、そもそも精霊と人間では体の作りが違うので当然である。
というわけで、アルフェンリードは自分の一部を切り離してミニアルフェンリードを作り、それをアイリスと契約させたのだった。
もっともアルフェンリードとミニアルフェンリードの間にもつながりはあるらしいから、ミニアルフェンリードを介して本体のアルフェンリードと意思疎通をすることも可能だ。
「あるちゃん、くすぐったいです」
『わふ』
アイリスが抱えたミニアルフェンリード――通称“アル”とじゃれている。
っは~~~~ここは天国? 子犬サイズのアルは本体と違っていかつくないし、アイリスとの組み合わせによって癒しパワーがとんでもないことになっている。
アルフェンリードいわく、アイリスの成長に合わせてアルも性能をアップさせるとか。そうなるとアルは大きくなっていくらしい。
『わふう』
アルはぱあっと光ると、その姿を消した。
消滅したわけじゃなく、他の契約精霊と同じようにアイリスの中に宿ったのだ。
手で触れられるとはいえ、本質的には他の精霊と変わらないということだろう。
「ああ、きえてしまいました」
「悲しそうな顔をしなくてもいいわよ、アイリス。呼べばまた出てきてくれるんでしょ?」
「それは、そうですけど」
アルフェンリードは私と取引をする際、アイリスとの契約の他に、アイリスの保護を申し出てきた。アルにはその力があり、アイリスがピンチの時は出てきて助けてくれるらしい。
見た目的にはあんまり強そうじゃないけど、まあ、精霊王の言葉を信じよう。
「せんせい。これでわたし、せいじょのとっくんができるんですよね」
「嬉しそうね、アイリス。……聖女の特訓ってそんなに楽しいものじゃないわよ?」
「でも、うれしいです。わたし、せんせいみたいな、りっぱなせいじょになりたいです」
私みたいになりたいですって? くっ、こんなところで娘に言われたい言葉ランキング第二位が飛んでくるなんて……! まあ私とアイリスに血縁はないんだけども。
「わかったわ、アイリス。でも無理は禁物よ。明日から――」
「あらぁ? そこにいるのはミリーリア・ノクトール様ではありませんこと?」
鼻にかかる甘ったるい声。
私たちのほうに向かって歩いてくるのは、付き人を従えた桜色の髪の女性だった。年は私と同じくらいで、背は低め。服は聖女候補が着る修道服だ。
あの女性は――
「――カリナ・ブラインさん」
「ええ。お久しぶりですわ」
「せんせい、おしりあいですか?」
「ええ、まあね……」
カリナ・ブライン。
私と同い年の聖女候補だ。
以前通っていた貴族学院では同級生でもある。
それはいいんだけど……この人、ミリーリアのことを嫌っているっぽいのよねえ……
どうしてこんなところで遭遇してしまうのか。
応援ありがとうございます!
3
お気に入りに追加
2,040
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる