3 / 29
アイリスの呪いを何とかしましょう
しおりを挟む
「私はミリーリア・ノクトール。今日からあなたの教育係を務めることになったの。よろしくね」
アイリスの部屋に入り、改めて自己紹介をする。
いやー、推しキャラの幼い頃が天使すぎて我を忘れてしまったわ。
メイドがびっくりしていたものね。今後は理性を失わないように気を付けましょう。
私が言うと、アイリスはぺこりと頭を下げた。
「よろしくおねがいします、せんせい。このたびは、ごけっこん、おめでとうございます」
「あら、ありがとう」
ちゃんと練習しました、という感じの挨拶で可愛い。
「アイリス、年はいくつ?」
「ごさいです」
「五歳なのに、しっかりしててすごいわ」
「……えへへ」
照れたようにはにかむアイリス。初対面だというのに、すでに私の心が鷲掴みにされているわ!
それにしても、原作を知っているとギャップがすごいわね。
原作世界――つまり十年後の世界では、アイリスは十五歳とは思えないほど大人びた女性だった。教会の幹部に命令を下し、教皇すら彼女には頭が上がらない。まさに若き教会の支配者という感じだった。
しかし今はどうだろう。素直で可愛い天使でしかない。
原作の私は、こんないい子をどうやって悪役聖女にしたのか……謎ね……
「けほ、けほっ!」
不意にアイリスが咳き込み始めた。
「アイリス、大丈夫!?」
「だいじょうぶ、です……いつものこと、ですから。すう、はあー……」
アイリスは何度も深呼吸して乱れた息を整える。
「アイリスお嬢様、お水です」
「ありがとう、ございます」
メイドが水を差しだすと、アイリスはゆっくりとそれを飲んでいく。
さて、ここでアイリスについてもう少し掘り下げをしておこう。
アイリスには聖女としての素質がある。
聖女は様々な力を使い、このウェインライト王国だけでなく近隣諸国からも崇められるほどの存在だ。
当然ウェインライト教――この国の国教であり、すべての聖女を管理する組織でもある――は、国中から聖女の素質を持つ人間を探している。
アイリスに聖女の素質があることは教会も知っている。
本来なら聖女候補として教会で修行しなくてはならない。
しかしアイリスは生まれつき謎の“呪い”に侵されている。そのためこの屋敷に張られた浄化の結界の外に出ることはできない。
ゆえに元聖女であり、レオニス家に嫁いだ私が教育係を任されたのだ。
ちなみにこっちの命令は教皇様から来たものである。
「ごめんなさい、おどろかせてしまって」
つらいのは自分だろうに、アイリスは私に申し訳なさそうに言ってくる。
「いいのよ、そのくらい。……もう平気?」
「はい。もうすっかり、だいじょうぶです」
そう言ってニコッと笑うアイリスだけど……顔色は悪いままだ。
どう見ても無理しているのに、それを悟らせないようにしているのだ。
け、健気すぎないこの子!?
原作のアイリスは修行によって自力で呪いを押さえられるようになり、それ以降は屋敷の結界の外でも自由に動けている。
でも、それは数年にわたる厳しい修行に耐えた後の話だ。
それまでアイリスをこのまま放置するなんて私には耐えられない……!
よし、まずはアイリスの呪いを何とかしよう。
「アイリス、聖女教育はちょっと待ってね。私、行くところができたわ!」
「え?」
私はアイリスの部屋を飛び出した。
アイリスの部屋に入り、改めて自己紹介をする。
いやー、推しキャラの幼い頃が天使すぎて我を忘れてしまったわ。
メイドがびっくりしていたものね。今後は理性を失わないように気を付けましょう。
私が言うと、アイリスはぺこりと頭を下げた。
「よろしくおねがいします、せんせい。このたびは、ごけっこん、おめでとうございます」
「あら、ありがとう」
ちゃんと練習しました、という感じの挨拶で可愛い。
「アイリス、年はいくつ?」
「ごさいです」
「五歳なのに、しっかりしててすごいわ」
「……えへへ」
照れたようにはにかむアイリス。初対面だというのに、すでに私の心が鷲掴みにされているわ!
それにしても、原作を知っているとギャップがすごいわね。
原作世界――つまり十年後の世界では、アイリスは十五歳とは思えないほど大人びた女性だった。教会の幹部に命令を下し、教皇すら彼女には頭が上がらない。まさに若き教会の支配者という感じだった。
しかし今はどうだろう。素直で可愛い天使でしかない。
原作の私は、こんないい子をどうやって悪役聖女にしたのか……謎ね……
「けほ、けほっ!」
不意にアイリスが咳き込み始めた。
「アイリス、大丈夫!?」
「だいじょうぶ、です……いつものこと、ですから。すう、はあー……」
アイリスは何度も深呼吸して乱れた息を整える。
「アイリスお嬢様、お水です」
「ありがとう、ございます」
メイドが水を差しだすと、アイリスはゆっくりとそれを飲んでいく。
さて、ここでアイリスについてもう少し掘り下げをしておこう。
アイリスには聖女としての素質がある。
聖女は様々な力を使い、このウェインライト王国だけでなく近隣諸国からも崇められるほどの存在だ。
当然ウェインライト教――この国の国教であり、すべての聖女を管理する組織でもある――は、国中から聖女の素質を持つ人間を探している。
アイリスに聖女の素質があることは教会も知っている。
本来なら聖女候補として教会で修行しなくてはならない。
しかしアイリスは生まれつき謎の“呪い”に侵されている。そのためこの屋敷に張られた浄化の結界の外に出ることはできない。
ゆえに元聖女であり、レオニス家に嫁いだ私が教育係を任されたのだ。
ちなみにこっちの命令は教皇様から来たものである。
「ごめんなさい、おどろかせてしまって」
つらいのは自分だろうに、アイリスは私に申し訳なさそうに言ってくる。
「いいのよ、そのくらい。……もう平気?」
「はい。もうすっかり、だいじょうぶです」
そう言ってニコッと笑うアイリスだけど……顔色は悪いままだ。
どう見ても無理しているのに、それを悟らせないようにしているのだ。
け、健気すぎないこの子!?
原作のアイリスは修行によって自力で呪いを押さえられるようになり、それ以降は屋敷の結界の外でも自由に動けている。
でも、それは数年にわたる厳しい修行に耐えた後の話だ。
それまでアイリスをこのまま放置するなんて私には耐えられない……!
よし、まずはアイリスの呪いを何とかしよう。
「アイリス、聖女教育はちょっと待ってね。私、行くところができたわ!」
「え?」
私はアイリスの部屋を飛び出した。
33
お気に入りに追加
2,018
あなたにおすすめの小説
【完結】私、四女なんですけど…?〜四女ってもう少しお気楽だと思ったのに〜
まりぃべる
恋愛
ルジェナ=カフリークは、上に三人の姉と、弟がいる十六歳の女の子。
ルジェナが小さな頃は、三人の姉に囲まれて好きな事を好きな時に好きなだけ学んでいた。
父ヘルベルト伯爵も母アレンカ伯爵夫人も、そんな好奇心旺盛なルジェナに甘く好きな事を好きなようにさせ、良く言えば自主性を尊重させていた。
それが、成長し、上の姉達が思わぬ結婚などで家から出て行くと、ルジェナはだんだんとこの家の行く末が心配となってくる。
両親は、貴族ではあるが貴族らしくなく領地で育てているブドウの事しか考えていないように見える為、ルジェナはこのカフリーク家の未来をどうにかしなければ、と思い立ち年頃の男女の交流会に出席する事を決める。
そして、そこで皆のルジェナを想う気持ちも相まって、無事に幸せを見つける。
そんなお話。
☆まりぃべるの世界観です。現実とは似ていても違う世界です。
☆現実世界と似たような名前、土地などありますが現実世界とは関係ありません。
☆現実世界でも使うような単語や言葉を使っていますが、現実世界とは違う場合もあります。
楽しんでいただけると幸いです。
1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。
尾道小町
恋愛
登場人物紹介
ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢
17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。
ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。
シェーン・ロングベルク公爵 25歳
結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。
ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳
優秀でシェーンに、こき使われている。
コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳
ヴィヴィアンの幼馴染み。
アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳
シェーンの元婚約者。
ルーク・ダルシュール侯爵25歳
嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。
ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。
ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。
この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。
ジュリアン・スチール公爵令嬢18歳デビット王太子殿下の婚約者。
ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳
私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。
一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。
正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?
私が死んだあとの世界で
もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。
初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。
だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。
もう彼女でいいじゃないですか
キムラましゅろう
恋愛
ある日わたしは婚約者に婚約解消を申し出た。
常にわたし以外の女を腕に絡ませている事に耐えられなくなったからだ。
幼い頃からわたしを溺愛する婚約者は婚約解消を絶対に認めないが、わたしの心は限界だった。
だからわたしは行動する。
わたしから婚約者を自由にするために。
わたしが自由を手にするために。
残酷な表現はありませんが、
性的なワードが幾つが出てきます。
苦手な方は回れ右をお願いします。
小説家になろうさんの方では
ifストーリーを投稿しております。
貴方の愛人を屋敷に連れて来られても困ります。それより大事なお話がありますわ。
もふっとしたクリームパン
恋愛
「早速だけど、カレンに子供が出来たんだ」
隣に居る座ったままの栗色の髪と青い眼の女性を示し、ジャンは笑顔で勝手に話しだす。
「離れには子供部屋がないから、こっちの屋敷に移りたいんだ。部屋はたくさん空いてるんだろ? どうせだから、僕もカレンもこれからこの屋敷で暮らすよ」
三年間通った学園を無事に卒業して、辺境に帰ってきたディアナ・モンド。モンド辺境伯の娘である彼女の元に辺境伯の敷地内にある離れに住んでいたジャン・ボクスがやって来る。
ドレスは淑女の鎧、扇子は盾、言葉を剣にして。正々堂々と迎え入れて差し上げましょう。
妊娠した愛人を連れて私に会いに来た、無法者をね。
本編九話+オマケで完結します。*2021/06/30一部内容変更あり。カクヨム様でも投稿しています。
随時、誤字修正と読みやすさを求めて試行錯誤してますので行間など変更する場合があります。
拙い作品ですが、どうぞよろしくお願いします。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
初耳なのですが…、本当ですか?
あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た!
でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる