どうも、賢者の後継者です~チートな魔導書×5で自由気ままな異世界生活~

ヒツキノドカ

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いきなり襲われました

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 気付けば俺は木々が生い茂る森の中にいた。

「うお……生きてる」

 手を握ったり開いたりして、体が動くことを確認。交通事故の怪我もない。
 本当に異世界にやってきたのか……全然実感がないな。
 さっきまで俺の周囲には魔導書五冊が浮いていたはずだが、転生のせいかなくなっている。念じたら出てきたりするんだろうか。
 魔導書のことは一旦いいとして……俺は周囲を見回して首を傾げた。

「賢者が言ってた“友人”っていうのはどこにいるんだ?」

 辺りに人の気配はない。民家のようなものもなさそうだ。
 ……一応このまま待ってみるか? そうすれば、賢者の友人がやってくるかもしれない。
 このまま俺が適当に動き回ると危険かもしれないし、色々教えてくれる人がいてくれると助かるんだがなあ。

 なんて思っていたら――

『グルルルル……』

「く、熊!?」

 超巨大な熊が木々をへし折ってやってきた。でっか! 立ち上がったら五メートル近くあるんじゃないか!? しかも額には大きな角が生えている。

『ガルァアアアアアアアア!』

 バゴンッ!

「ひえっ」

 巨大熊が俺目がけて腕を振り下ろした。途轍もない腕力を誇るようで、地面に亀裂が入る。おい、なんだよこいつ! ネット小説でお約束の魔物ってやつか!?

 このままだと殺される。
 どうする?
 そうだ、俺にはあれがあった! 魔導書!

「魔導書、どれでもいいから出てこい!」

 俺が叫ぶと、本当に虚空から一冊の魔導書が現れた。白い表紙のやつだ。俺は巨大熊に注意を払いつつも魔導書を急いでめくる。
 最初はどのページも白紙だったが、白い魔導書はぼんやりとした光を放ち、少しずつ文字が浮き上がり始めた。
 ……さすが魔導書。ファンタジーらしい意味不明な機能だ。

『フゥーッ、フゥーッ……!』

 興奮気味の巨大熊はすぐそこまで迫っている。
 魔導書の端のページの一番上に、ある文字が浮かんだ。日本語ではないのに、なぜか俺は読み取ることができる。

『【フィジカルブースト】:身体能力の強化』

 巨大熊が腕を振り上げる。くっ……もうこれに賭けるしかない!

『ガォオオオオオオオオオ!』

「ふ、【フィジカルブースト】!」

 ズガッ!

『ガァッ……!?』

 頭上で巨大熊の驚いたようなうめき声が聞こえる。
 【フィジカルブースト】と唱えた途端、俺の体は白い光に包まれた。そして直後に振り下ろされた巨大熊の腕を、本を持っていないほうの手で防ぐことができたのだ。地面を砕くほどの一撃を、あっさりと。

 身体能力の強化って限度があるだろ……
 けど、これなら巨大熊も怖くない!

「どっせいっ!」

『アガァ――――!?』

 ガードした相手の前脚を放して相手に近付き、アッパー気味に思い切り殴り飛ばす。すると巨大熊は勢いよく飛んで行った。……空のかなたに。

「まさか勝てるとは思わなかった」

 魔導書すげー。意味わからんけどすげー。
 俺が呆然としていると……


「汝が賢者デオドロの後継者か?」


 後ろから声をかけられた。

 振り向くと、そこにはモフモフの丸い何かがいる。
 サイズはバスケットボールくらいだ。色は赤。正面のやや上あたりに小さなくちばしがついていたり、体の横に小さな翼が生えていることから、鳥だろうと思われる。

 ……鳥、でいいんだよな?
 というかこいつ喋ってなかったか?

「えーと、どうも……」

「たわけ、質問に答えんか。汝が賢者デオドロの後継者か? と聞いておるんじゃ」

 跳ねて怒りを表現しながら鳥が言う。
 やっぱり喋ってる! 鳥が!

「あ、ああ。一応そういうことらしい。正直よくわかってないんだ。賢者には、ここに来れば彼の友人が色々教えてくれるって言われてる。君がその友人?」

「いかにも。我はフェニックス。世界最古の神獣にして、再生を司る空の王じゃ。本来なら人間ごときが偉そうな口を利くなど許さんが、唯一の友人デオドロに免じて見逃そう」

 ふんぞり返って言う鳥。

 フェニックス……? 
 確かフェニックスって不死鳥のことだよな。美しく荘厳な見た目で、死んでも生き返るっていう……このぬいぐるみみたいな鳥が?

 全然イメージと違うぞ。

 本人に言ったら怒りそうな雰囲気だけど。
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