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「わん!」
「……おや?」
ある日の営業終了後、地下畑で魔力植物の採取をしていると、妙な鳴き声が聞こえた。
声のした方を向くと、そこには見覚えのある茶色の動物が。
この犬っぽい生き物は……以前アーロン工房の隠し部屋で捕まっていたあの子では?
「どうやって入ってきたんですか」
「わんわん」
軽く地面を掘るような仕草を見せてくる。
そういえば以前去るときも地面に潜って消えていったような……
どうやらこの子はもぐらのように地面の中を移動することができるようだ。もっとも前回の水の中に潜るようないなくなり方を思い出すと、普通に地中を掘り進んでいるのとは違う気もするけれど。
「遊びに来たんですか? うーん、私はこれから商品補充をしなくてはなりませんし……ブリジットあたりに頼んでみましょうか……せっかく来てくれたのに放置するのも気の毒ですし」
『いえ、遊びに来たのではありません』
「あれ?」
脳内に響く声。
これは……念話!? この間はランドしか聞き取れなかったのに!
声は落ち着いた雰囲気の女性のものに聞こえる。もっとも、相手が本当に人間の女性というわけではないんだろうけれど。
頭に響く声は続けた。
『薬師の少女、あなたはアリシアというのでしたね。以前は私の眷属を助けてくれてありがとうございました』
「は、はあ」
私の眷属、という言い方からしてこの子犬が喋っているわけではないようだ。
何者かが、この子犬を通して私に話しかけている。
『お礼をしたいのですが、なにぶん私は今いる場所から動けません。よってあなたには私の元まで来てほしいのです』
「……お礼、ですか」
お礼というのに正直興味はある。賢者のミントを一気に成長させたことから、この犬型精霊には魔力植物の育成に有用な能力があるとわかっている。
その主からのお礼となれば、前回同様何かしら特別な魔力植物が手に入るかもしれない。
「一体どこに行けばいいんですか?」
『あなたの住む町の近くにある大きな森、その中心に私はいます。人間がフォレス大森林と呼ぶ森のことです』
「フォレス大森林の中心……」
『私のそばまで来れば安全ですが、道中は魔物も多い。森歩きに慣れた護衛をつれてくるとよいでしょう』
それだけ言うと、念話は途切れた。
「あの、すみません。もう少しヒントをいただけると。フォレス大森林の中心付近と言われても大雑把すぎるというか」
「わん!」
「あ、もう戻ってるんですね」
その後も何度か呼びかけてみたけれど、再びあの落ち着いた女性の声が聞こえることはなかった。
「……おや?」
ある日の営業終了後、地下畑で魔力植物の採取をしていると、妙な鳴き声が聞こえた。
声のした方を向くと、そこには見覚えのある茶色の動物が。
この犬っぽい生き物は……以前アーロン工房の隠し部屋で捕まっていたあの子では?
「どうやって入ってきたんですか」
「わんわん」
軽く地面を掘るような仕草を見せてくる。
そういえば以前去るときも地面に潜って消えていったような……
どうやらこの子はもぐらのように地面の中を移動することができるようだ。もっとも前回の水の中に潜るようないなくなり方を思い出すと、普通に地中を掘り進んでいるのとは違う気もするけれど。
「遊びに来たんですか? うーん、私はこれから商品補充をしなくてはなりませんし……ブリジットあたりに頼んでみましょうか……せっかく来てくれたのに放置するのも気の毒ですし」
『いえ、遊びに来たのではありません』
「あれ?」
脳内に響く声。
これは……念話!? この間はランドしか聞き取れなかったのに!
声は落ち着いた雰囲気の女性のものに聞こえる。もっとも、相手が本当に人間の女性というわけではないんだろうけれど。
頭に響く声は続けた。
『薬師の少女、あなたはアリシアというのでしたね。以前は私の眷属を助けてくれてありがとうございました』
「は、はあ」
私の眷属、という言い方からしてこの子犬が喋っているわけではないようだ。
何者かが、この子犬を通して私に話しかけている。
『お礼をしたいのですが、なにぶん私は今いる場所から動けません。よってあなたには私の元まで来てほしいのです』
「……お礼、ですか」
お礼というのに正直興味はある。賢者のミントを一気に成長させたことから、この犬型精霊には魔力植物の育成に有用な能力があるとわかっている。
その主からのお礼となれば、前回同様何かしら特別な魔力植物が手に入るかもしれない。
「一体どこに行けばいいんですか?」
『あなたの住む町の近くにある大きな森、その中心に私はいます。人間がフォレス大森林と呼ぶ森のことです』
「フォレス大森林の中心……」
『私のそばまで来れば安全ですが、道中は魔物も多い。森歩きに慣れた護衛をつれてくるとよいでしょう』
それだけ言うと、念話は途切れた。
「あの、すみません。もう少しヒントをいただけると。フォレス大森林の中心付近と言われても大雑把すぎるというか」
「わん!」
「あ、もう戻ってるんですね」
その後も何度か呼びかけてみたけれど、再びあの落ち着いた女性の声が聞こえることはなかった。
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