【リメイク版連載開始しました】悪役聖女の教育係に転生しました。このままだと十年後に死ぬようです……

ヒツキノドカ

文字の大きさ
上 下
21 / 43

続いては……

しおりを挟む
「というわけでお願いね」


「お任せください! とびっきり可愛らしくさせていただきます!」

 グッと親指を立てる私に、店主がいい笑顔で応じる。アイリスは終始当惑しっぱなしである。
 さて、そんなわけでアイリスのファッションショーが開幕したわけだけど……

 た、楽しい! 楽しすぎるわ! 色んなパターンの服を着て見せてくれるアイリスの姿に興奮しっぱなしだ。

 定番のドレス姿に、乗馬なんかをするためのボーイッシュな服装、さらには髪をツインテールにしてゴスロリっぽい瀟洒な衣装。やっぱり元が美少女だと何を着ても似合う。

 元の世界でアイリスみたいな子がいたら、某伝説の美少女アイドルのように毎月芸能事務所へのスカウトがあったことだろう。ああ、どうしてこの世界にはカメラがないのかしら!

「試着したものはすべて買うわ。後日屋敷に届けて頂戴」

「畏まりました、ミリーリア様!」

 高級店だけあって値段もかなりのものだけど、聖女時代の貯金が山ほどあるので問題ない。教会がきっちり聖女にも給金を払ってくれる企業(?)でよかった。

「……」

 二時間に及ぶファッションショーで疲れ切ってしまったのか、アイリスは言葉数が少なくなっている。

「ご、ごめんなさいアイリス。私だけはしゃいじゃって。疲れたわよね」

「い、いえ、そんなことは。……」

 ぶんぶんと首を横に振りつつも、ちらちらとある場所に視線を向けているアイリス。
 そこにあったのは……あら、可愛らしいドレスね。色は淡いピンク色で、いかにもお姫様って感じの雰囲気だ。

「……」

 アイリスの視線はそのドレスに吸い寄せられている。

「……着てみたいの?」

「そ、そんなことは……」

「ないの?」

「な、ないです」

 口ではそう言いつつもやっぱり視線はドレスから離れない。
 あ……アイリスが服に興味を持っている! 目を離すとすぐに何かのトレーニングに走るあのアイリスが!

「店主! 最後にこっちのピンクのドレスをアイリスに着せてあげて! 髪のセットも!」

「かしこまりました」

「!?」

 今日の趣旨はアイリスの趣味を探すことだ。アイリスが少しでも興味を持ったものがあれば見逃すわけにはいかない。アイリスと店主が試着室に消えていき、数分後現れたのは――途轍もなく可憐な女の子だった。

「……か」

 可愛いいいいいいいいいいいいいいいい!?

 うわ、すごっ! すっご! もともと可愛いとは思ってたけど、さらに上があるの!?
 この店に入って以降、色んな服を着たアイリスはどれも愛らしかった。けれどこのドレスが間違いなく別格だ。輝くような銀髪と、品のいい薄桃色がお互いの色をよく引き立てている。ハーフアップにした髪にはティアラのような飾りも着けられ、隙がない。

「ハァ……ハァ……アイリス、かわ、可愛いわよ……ハァハァ」

「…………せんせい……?」

 はっ、いけない! あまりに素敵すぎて正気を失ってた!

「す、すごくよく似合ってるわ、アイリス!」

「ほんとうですか?」

「ええ! ほら、こっちの姿見で確認してみたらいいわ!」

 アイリスの手を引いて壁際の姿見の前に連れていく。そこに映った自分の姿を見て、アイリスは恥ずかしそうに……けれど確かに嬉しそうに笑った。

「せんせい」

「何かしら?」

「わたし、こんなにきれいなどれす、きたことがなくて……でも、ずっと、きてみたいとおもってて」

 アイリスは半年前まで普通の村娘で、教会に来てからは修道服をずっと着ていた。華やかなドレスなんて袖を通す機会はなかっただろう。けれどこの王都で暮らせば、鮮やかできらびやかなドレスを着た貴族の女性はどうしても目に入る。

 きっとアイリスはそんな女性を見るたびに、憧れを募らせていたんだろう。

「だから、すごく、うれしいです」

 照れ笑いを浮かべたまま、アイリスがそんなことを言う。

「あ、アイリス……!」

 この子はなんていじらしいの! 言うことがいちいち可愛くて困る! あと、アイリスが普通にドレスに興味がある、という女の子っぽい部分が見られて安心したわ!

 言うまでもなく最後に試着したドレスも装飾品ごと購入。
 私たちはほくほく顔で店を後にしたのだった。

 ……ちなみに、アイリスが最後に着ていたものを大人用にアレンジしたドレスがあったので、自分用に買った。

 そのうち礼儀作法の練習とかの言い訳をつけて、アイリスとおそろいのドレスで一緒にパーティーに参加できたらいいなあ。
しおりを挟む
感想 44

あなたにおすすめの小説

稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています

水谷繭
ファンタジー
グレースは皆に悪女と罵られながら処刑された。しかし、確かに死んだはずが目を覚ますと森の中だった。その上、なぜか元の姿とは似ても似つかない幼女の姿になっている。 森を彷徨っていたグレースは、公爵様に見つかりお屋敷に引き取られることに。初めは戸惑っていたグレースだが、都合がいいので、かわい子ぶって公爵家の力を利用することに決める。 公爵様にシャーリーと名付けられ、溺愛されながら過ごすグレース。そんなある日、前世で自分を陥れたシスターと出くわす。公爵様に好意を持っているそのシスターは、シャーリーを世話するという口実で公爵に近づこうとする。シスターの目的を察したグレースは、彼女に復讐することを思いつき……。 ◇画像はGirly Drop様からお借りしました ◆エール送ってくれた方ありがとうございます!

失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~

紅月シン
ファンタジー
 聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。  いや嘘だ。  本当は不満でいっぱいだった。  食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。  だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。  しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。  そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。  二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。  だが彼女は知らなかった。  三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。  知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。 ※完結しました。 ※小説家になろう様にも投稿しています

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?

氷雨そら
恋愛
 結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。  そしておそらく旦那様は理解した。  私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。  ――――でも、それだって理由はある。  前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。  しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。 「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。  そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。  お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!  かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。  小説家になろうにも掲載しています。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

ヒロインと結婚したメインヒーローの側妃にされてしまいましたが、そんなことより好きに生きます。

下菊みこと
恋愛
主人公も割といい性格してます。 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!

暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい! 政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

処理中です...