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続いては……
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「というわけでお願いね」
「お任せください! とびっきり可愛らしくさせていただきます!」
グッと親指を立てる私に、店主がいい笑顔で応じる。アイリスは終始当惑しっぱなしである。
さて、そんなわけでアイリスのファッションショーが開幕したわけだけど……
た、楽しい! 楽しすぎるわ! 色んなパターンの服を着て見せてくれるアイリスの姿に興奮しっぱなしだ。
定番のドレス姿に、乗馬なんかをするためのボーイッシュな服装、さらには髪をツインテールにしてゴスロリっぽい瀟洒な衣装。やっぱり元が美少女だと何を着ても似合う。
元の世界でアイリスみたいな子がいたら、某伝説の美少女アイドルのように毎月芸能事務所へのスカウトがあったことだろう。ああ、どうしてこの世界にはカメラがないのかしら!
「試着したものはすべて買うわ。後日屋敷に届けて頂戴」
「畏まりました、ミリーリア様!」
高級店だけあって値段もかなりのものだけど、聖女時代の貯金が山ほどあるので問題ない。教会がきっちり聖女にも給金を払ってくれる企業(?)でよかった。
「……」
二時間に及ぶファッションショーで疲れ切ってしまったのか、アイリスは言葉数が少なくなっている。
「ご、ごめんなさいアイリス。私だけはしゃいじゃって。疲れたわよね」
「い、いえ、そんなことは。……」
ぶんぶんと首を横に振りつつも、ちらちらとある場所に視線を向けているアイリス。
そこにあったのは……あら、可愛らしいドレスね。色は淡いピンク色で、いかにもお姫様って感じの雰囲気だ。
「……」
アイリスの視線はそのドレスに吸い寄せられている。
「……着てみたいの?」
「そ、そんなことは……」
「ないの?」
「な、ないです」
口ではそう言いつつもやっぱり視線はドレスから離れない。
あ……アイリスが服に興味を持っている! 目を離すとすぐに何かのトレーニングに走るあのアイリスが!
「店主! 最後にこっちのピンクのドレスをアイリスに着せてあげて! 髪のセットも!」
「かしこまりました」
「!?」
今日の趣旨はアイリスの趣味を探すことだ。アイリスが少しでも興味を持ったものがあれば見逃すわけにはいかない。アイリスと店主が試着室に消えていき、数分後現れたのは――途轍もなく可憐な女の子だった。
「……か」
可愛いいいいいいいいいいいいいいいい!?
うわ、すごっ! すっご! もともと可愛いとは思ってたけど、さらに上があるの!?
この店に入って以降、色んな服を着たアイリスはどれも愛らしかった。けれどこのドレスが間違いなく別格だ。輝くような銀髪と、品のいい薄桃色がお互いの色をよく引き立てている。ハーフアップにした髪にはティアラのような飾りも着けられ、隙がない。
「ハァ……ハァ……アイリス、かわ、可愛いわよ……ハァハァ」
「…………せんせい……?」
はっ、いけない! あまりに素敵すぎて正気を失ってた!
「す、すごくよく似合ってるわ、アイリス!」
「ほんとうですか?」
「ええ! ほら、こっちの姿見で確認してみたらいいわ!」
アイリスの手を引いて壁際の姿見の前に連れていく。そこに映った自分の姿を見て、アイリスは恥ずかしそうに……けれど確かに嬉しそうに笑った。
「せんせい」
「何かしら?」
「わたし、こんなにきれいなどれす、きたことがなくて……でも、ずっと、きてみたいとおもってて」
アイリスは半年前まで普通の村娘で、教会に来てからは修道服をずっと着ていた。華やかなドレスなんて袖を通す機会はなかっただろう。けれどこの王都で暮らせば、鮮やかできらびやかなドレスを着た貴族の女性はどうしても目に入る。
きっとアイリスはそんな女性を見るたびに、憧れを募らせていたんだろう。
「だから、すごく、うれしいです」
照れ笑いを浮かべたまま、アイリスがそんなことを言う。
「あ、アイリス……!」
この子はなんていじらしいの! 言うことがいちいち可愛くて困る! あと、アイリスが普通にドレスに興味がある、という女の子っぽい部分が見られて安心したわ!
言うまでもなく最後に試着したドレスも装飾品ごと購入。
私たちはほくほく顔で店を後にしたのだった。
……ちなみに、アイリスが最後に着ていたものを大人用にアレンジしたドレスがあったので、自分用に買った。
そのうち礼儀作法の練習とかの言い訳をつけて、アイリスとおそろいのドレスで一緒にパーティーに参加できたらいいなあ。
「お任せください! とびっきり可愛らしくさせていただきます!」
グッと親指を立てる私に、店主がいい笑顔で応じる。アイリスは終始当惑しっぱなしである。
さて、そんなわけでアイリスのファッションショーが開幕したわけだけど……
た、楽しい! 楽しすぎるわ! 色んなパターンの服を着て見せてくれるアイリスの姿に興奮しっぱなしだ。
定番のドレス姿に、乗馬なんかをするためのボーイッシュな服装、さらには髪をツインテールにしてゴスロリっぽい瀟洒な衣装。やっぱり元が美少女だと何を着ても似合う。
元の世界でアイリスみたいな子がいたら、某伝説の美少女アイドルのように毎月芸能事務所へのスカウトがあったことだろう。ああ、どうしてこの世界にはカメラがないのかしら!
「試着したものはすべて買うわ。後日屋敷に届けて頂戴」
「畏まりました、ミリーリア様!」
高級店だけあって値段もかなりのものだけど、聖女時代の貯金が山ほどあるので問題ない。教会がきっちり聖女にも給金を払ってくれる企業(?)でよかった。
「……」
二時間に及ぶファッションショーで疲れ切ってしまったのか、アイリスは言葉数が少なくなっている。
「ご、ごめんなさいアイリス。私だけはしゃいじゃって。疲れたわよね」
「い、いえ、そんなことは。……」
ぶんぶんと首を横に振りつつも、ちらちらとある場所に視線を向けているアイリス。
そこにあったのは……あら、可愛らしいドレスね。色は淡いピンク色で、いかにもお姫様って感じの雰囲気だ。
「……」
アイリスの視線はそのドレスに吸い寄せられている。
「……着てみたいの?」
「そ、そんなことは……」
「ないの?」
「な、ないです」
口ではそう言いつつもやっぱり視線はドレスから離れない。
あ……アイリスが服に興味を持っている! 目を離すとすぐに何かのトレーニングに走るあのアイリスが!
「店主! 最後にこっちのピンクのドレスをアイリスに着せてあげて! 髪のセットも!」
「かしこまりました」
「!?」
今日の趣旨はアイリスの趣味を探すことだ。アイリスが少しでも興味を持ったものがあれば見逃すわけにはいかない。アイリスと店主が試着室に消えていき、数分後現れたのは――途轍もなく可憐な女の子だった。
「……か」
可愛いいいいいいいいいいいいいいいい!?
うわ、すごっ! すっご! もともと可愛いとは思ってたけど、さらに上があるの!?
この店に入って以降、色んな服を着たアイリスはどれも愛らしかった。けれどこのドレスが間違いなく別格だ。輝くような銀髪と、品のいい薄桃色がお互いの色をよく引き立てている。ハーフアップにした髪にはティアラのような飾りも着けられ、隙がない。
「ハァ……ハァ……アイリス、かわ、可愛いわよ……ハァハァ」
「…………せんせい……?」
はっ、いけない! あまりに素敵すぎて正気を失ってた!
「す、すごくよく似合ってるわ、アイリス!」
「ほんとうですか?」
「ええ! ほら、こっちの姿見で確認してみたらいいわ!」
アイリスの手を引いて壁際の姿見の前に連れていく。そこに映った自分の姿を見て、アイリスは恥ずかしそうに……けれど確かに嬉しそうに笑った。
「せんせい」
「何かしら?」
「わたし、こんなにきれいなどれす、きたことがなくて……でも、ずっと、きてみたいとおもってて」
アイリスは半年前まで普通の村娘で、教会に来てからは修道服をずっと着ていた。華やかなドレスなんて袖を通す機会はなかっただろう。けれどこの王都で暮らせば、鮮やかできらびやかなドレスを着た貴族の女性はどうしても目に入る。
きっとアイリスはそんな女性を見るたびに、憧れを募らせていたんだろう。
「だから、すごく、うれしいです」
照れ笑いを浮かべたまま、アイリスがそんなことを言う。
「あ、アイリス……!」
この子はなんていじらしいの! 言うことがいちいち可愛くて困る! あと、アイリスが普通にドレスに興味がある、という女の子っぽい部分が見られて安心したわ!
言うまでもなく最後に試着したドレスも装飾品ごと購入。
私たちはほくほく顔で店を後にしたのだった。
……ちなみに、アイリスが最後に着ていたものを大人用にアレンジしたドレスがあったので、自分用に買った。
そのうち礼儀作法の練習とかの言い訳をつけて、アイリスとおそろいのドレスで一緒にパーティーに参加できたらいいなあ。
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