ブラック宮廷から解放されたので、のんびりスローライフを始めます! ~最強ゴーレム使いの気ままな森暮らし~

ヒツキノドカ

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ゴーレム漁

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「ふぁぁ~~っ、よく寝たぁああああ……」

 ふかふかの土を布で覆った即席ベッドから起き上がる。

 いやーよく寝た。
 気持ちすっきりだ。
 まあ昨日は色々やったし、疲れていたんだろう。

 顔を洗いに家を出て川に行く。

「相変わらず濁った目だなー俺」

 川に映る自分の顔を見て呟く。

 目つき悪すぎだろ。昨日一日ぐっすり寝たくらいでは、ブラック宮廷で酷使されていたことによる目のクマは取りきれないらしい。

 顔を洗い、ろ過装置を経由させて水を飲む。

 相変わらず水が美味い。

 それじゃあ今日も張り切っていこう。




 今日の目標は食料確保だ。

 保存のきくものを今のうちに手に入れたい。

「干し肉やら干し果物やらも、いつまでもあるわけじゃないからなあ」

 というわけで俺は小川の流れる方向へと向かった。

 川の下流に行くにつれてだんだん川幅が広くなってくる。
 綺麗な水の奥には、何匹もの魚が見えた。
 魚なら長期間保存しておく方法もあるし、願ってもない。

 というわけで、いざ漁だ。

「【ランドフォーム・ポット】」

 まずは地属性魔術で壺を作る。

 入口は大きいが底に向かうにつれ狭まっていく形で、これに一度入った魚は逃げ出せなくなる。
 壺の形をした設置罠というわけだ。

 それを複数川に並べる。
 壺同士の間には隙間もあるが、それほど問題はないだろう。

 続いてこれだ。

「【クリエイト・ゴーレム】!」
『『『――』』』

 そのへんの砂利を使ってゴーレムを五体作成し、壺を沈めてある場所からやや上流に入らせる。
 これで準備完了。
 漁を始める。

『『『――』』』


 ザブンッ……ザブンッ……


 ゴーレムたちが一斉に壺を沈めてある方向に歩き始める。

 一列になっているゴーレム五体が歩くことで、川に波が発生していた。
 時折ゴーレムに水面を叩かせながらそれを続ける。
 こうやって水中の魚たちを驚かせ、ゴーレムたちとは反対側――つまり設置した壺のほうへと動かすのだ。
 追い込み漁というやつだな。

 ゴーレムが壺の目の前まで到着する。

「よーし、それ持ってきてくれ」
『『『――』』』


 ザバァッ!


 ゴーレムたちが壺を抱えてのっしのっしと川から上がってくる。

 俺?
 もちろんそのへんの石に座ってぼけっと待ってた。
 ゴーレム魔術、ほんと便利だわ。

 ゴーレムたちが俺の前にやってきて、壺を置いていく。

 ……おお、ぴちぴちと音がしてるぞ。

 中身はどうだ?

「うおっ、大漁じゃないか!」

 壺の中にはマスやイワナといった食用向きの川魚がどっさり入っていた。

 壺の中身を全部合わせたら三十匹以上いるだろう。

 こんなに獲れるとは……

 このあたりがどれほど恵まれた土地かということを改めて実感した気分だ。
 漁獲量が少なかったら何度か繰り返そうと思っていたが、その必要はなさそうだ。

 そのまま壺をゴーレムに抱えさせて拠点に戻る。

 ぐう、と腹が鳴る。

 ……そういえば朝食がまだだ。

 何匹か調理してしまおう。

「【ランドフォーム・ナイフ】」

 そのへんの石を切れ味抜群のナイフに変化させる。

 壺の中に手を突っ込んで適当な魚を取って……お、マスだ。しかも五十センチ以上ある大物。
 ナイフで腹を捌いて内臓を取り、川から汲んできた水でよく洗う。
 それを三回繰り返す。
 次は串打ち。

「別に石で作ってもいいけど……せっかくだから木の串でやるべきだよな、うん」

 無駄な手間とか言ってはいけない。
 美味しく食べるためには雰囲気も大事だ。

 適当な木の枝を拾ってきて、石のナイフで削って串を作る。

 魚の口に串を突っ込み、エラから出す。三センチくらいの短い間隔で串を再度魚の横から刺し、貫通させたあともう一度縫い返すように通す。

 それを三匹分やってから、たき火の近くに串を立てて焼いていく。

 あとは待つだけだ。
 しばらくすると香ばしい匂いが漂ってきた。

「あー、いい匂い……」

 まだか。まだ焼けないのか。

 俺はもう腹が減ったぞ……!

 じりじりしなから待つことしばらく。
 やがて魚にしっかり火が通り、焼き魚が出来上がる。

 ようやく食べられる!

 串を抜き、持ち手の熱さを左右の手でお手玉するようにして口元まで持ってくる。

「いただきます。はふ、ほふっ……」

 魚の腹にかぶりつくと、じゅわっと魚のうまみが口の中に広がった。

「~~~~っ」

 うおお、何だこれ美味い!

 何の味付けもしてないのに!

「臭みも全然ないな……」

 川が綺麗だったせいだろうか?

 臭みがないだけでなく、身がたっぷり詰まっていて食べ応えがある。一口かぶりつくごとに魚特有の深みのある汁が溢れてくる。

 空腹だったこともあり、俺はしばらく焼き魚を夢中で食べ続けるのだった。
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