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VS魔神将

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「ここでいいか」

 俺が選んだのは、『魔喰いの森』の上空。

『では行くぞ。俺様を楽しませろ、神獣使い』

 黒い怪物は雷撃を連続で放ってくる。俺は宙を旋回してこれを回避。

 サファイアワイバーンと戦っていてよかったな……
 あれがなかったら今ので死んでるぞ。

「はああああああああああああっ!」

 接近し、シルを振るって黒い怪物を斬りつける。

『ぐっ……!』

 斬れた。
 黒い怪物は血の代わりに煙のようなものを傷口から溢れさせ、忌々しそうに下がる。

「……カナタの剣じゃ斬れなかったのに、シルだと斬れるのか」

 何か違いがあるんだろうか?

『あいつ、妖気を纏ってるからねー』
「妖気?」
『神気の逆の、邪悪な力。だから、ロイみたいな神気をたくさん持ってる人間じゃないとダメージを与えられないんだよ』

 神気の次は妖気ときたか。
 シルたちいわく俺は神気が多いらしいので、俺の攻撃が聞いたのはそれが原因らしい。
 黒い怪物はにやりと笑う。

『そういうことだ。よく見抜いたな、剣。褒美に俺様の名を教えてやる』
「名前?」
『魔神将が一人、『黒雷のゼルギアス』。それが俺様の名だ』

 意外とそのままのネーミングだな。
 それにしても、魔神将? なんだか仰々しい肩書だ。しかも他にもいるらしい。

『名乗りも済んだ。ここからは本気でいくぞ』

 黒い怪物――ゼルギアスは手に魔力を集め、それを自らの口に含んだ。
 瞬間、ゼルギアスの体から爆発的に力の高まりを感じた。
 おいおい、まだ力を隠してたのかよ……

『ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!』

 ゼルギアスは咆哮し、全身に雷のエネルギーを纏って突撃してきた。

「ぐあっ!」

 速い!
 しかもシルでガードしたのに全身がしびれている。帯電しているせいで普通に防ぐだけじゃ駄目らしい。

『そらそら、どうした! 神獣使い! そんなものか!』

 高速で飛び回るゼルギアスに狙いが定まらず、反撃できない。衝撃で内臓が揺れ、電流で肉が焦げて灼熱のような痛みを発する。意識がぐらつく。

「~~~~~~ッ!」

 俺は何もできないまま、死の淵へと追い詰められていく。
 ……仕方ない。

『死ねえ!』
「ぐっ……」

 ゼルギアスの攻撃をわざと受ける。
 そして相手が離脱する寸前に仕掛ける。

「【蔓操術】!」
『む?』

 ゼルギアスの腕に俺が放ったツルが巻き付く。
 よし、捕まえた。
 肉を切らせて骨を断つというやつだ。

 このまま手繰り寄せて叩き切ってやる。

『ははっ、こんなもので俺様を捕まえたつもりか? 馬鹿め』

 嫌な予感がした。
 そして次の瞬間、蔓を通して俺のもとに凄まじい電撃が逆流してきた。

「があああああああああああああああ!?」
『俺様の雷の味はどうだ? どんな気分だ? ほら、早く離さないと焼け死ぬぞ?』

 いたぶるように言うゼルギアス。
 そんな怪物に、俺は。

「痛いって――言ってんだろうがぁああああああああああああああああああああ!」

 流れ込んでくる電撃を無視して、俺は思いっきり蔓を振り回し、ゼルギアスを地面に叩きつけた。

『ごはっ……馬鹿な!? 俺様の雷を浴びながら反撃してくるだと!?』

 俺は蔓を収縮させ、ゼルギアスのもとまで一瞬で辿り着く。
 馬乗りになって動きを封じる。

「……俺が今まで召喚スポットの試練で何度死んできたと思ってる? それに比べたらあんな電撃、ぬるいにもほどがある!」

 シルの試練で柄に手をかけた時はもっと苦しかった。
 イオナの試練で浴びたブレスはもっと熱かった。

『どけ! どけえええええええええ!』
「俺の勝ちだ」

 俺はシルを振り下ろし、ゼルギアスの胸の中央を貫いた。
 ゼルギアスはびくりと震え、口の端を吊り上げた。

『く、くく、ふはははは』
「……何笑ってるんだ?」
『これで終わりと思うな……俺様がいなくとも、いずれ魔神王は復活する……』

 魔神王?
 一体何のことだ?

『そのときまで、せいぜい平穏に日々を過ごすがいい……! はは、ははは……!』

 ゼルギアスはそう言ったのを最期に、息絶えた。
 ……終わったか。

「ロイ、大丈夫!?」

 シルが人間の姿になり俺の顔を覗き込む。

「ああ、何とかな」
「よかったあ……」
「それよりシル、探してほしいものがある」
「探してほしいもの?」

 首を傾げるシルに、俺は言った。

「支部長の――ネイルの居場所を探してくれ」
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