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解呪➁

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 シルの案内に従いヒラギ草の群生地へと向かう。

『『『ギシャアアアアアアアアアッ!』』』

 情報通り、そこには大量に蜂型の魔物がいた。

『ギイイイイイイイイイイッ!』

 奥にはひときわ大きい個体がいて、周囲の蜂たちに指示を出しているように見える。
 あれが群れのリーダーか……?

「シル、剣の姿になってくれ! イオナは刺されないように気をつけながら、できるだけ群れを引き付けてくれ」
「わかった!」「了解よ!」

 シルを構えて蜂たちの中に突っ込んでいく。
 数は多いが――

「「【火炎付与】!」」
『『『ギィイイイイイイイイイイイ!?』』』

 昨日治療院の老女に聞いたとおり火に弱いようだ。視界の端では、俺と同じスキルを使ってイオナは拳に炎を宿して戦っている。

「うおっ……」

 びりっ、という感覚が腕に走る。
 パラライズビーの麻痺針が俺の腕をかすめたのだ。

 本来なら動けなくなるはずだが、問題なく俺は動けた。新しく手に入れた【状態異常耐性】のおかげだろう。

 イオナが敵の大部分を引き付けてくれている間に俺は奥へと突っ込み、群れのボス――おそらく女王へと斬りかかる。

『ギイッ……』
「逃がすか! 【飛行】!」

 上空に向かおうとする女王蜂を【飛行】スキルで追う。

「【幻惑粉】」

 新たに得たもう一つのスキルを使い、女王蜂の動きを止める。
 そして、叩き斬る。

『ギャアアアアアアアアアアアアア!』

 女王蜂は真っ二つになって落下した。

 すると途端に他の蜂たちが混乱し始める。
 どうやら女王蜂から指示を受けていたらしい。
 蜂たちはそのまま逃げ去っていった。

 戦闘終了だ。
 俺は召喚獣たちを大量に呼び出し、ヒラギ草を採集した。

「よし、帰るか」
「「はーい」」

 そんなわけで目的を果たした俺たちは『彩色の樹林』を撤収した。

 ちなみにパラライズビーの女王は一応近くの冒険者ギルドに持ち込んだら、そこそこの値段で売れた。
 どちらかというと、ヒラギ草の群生地を安全にしたことを感謝されたが。

 少し期待したが、冒険者ランクは上がらなかった。
 さすがにそこまで甘くないか。




「これが採集してきたヒラギ草です」
「ぎゃあああああ!? 何じゃこの数!?」

 治療院にヒラギ草を持ち込んだら悲鳴を上げられた。
 多めに持ってこいって言ったのはそっちだろうに。

「それより、解呪ポーションの調合をお願いします」
「わ、わかったわい。いやはや、とんでもない冒険者がおったもんじゃのう……」

 老女はそんなことを言いながらも手早く調合を行ってくれた。
 そのやり取りを聞いていたセフィラがぽつりと言う。

「ロイ様は……すごい方なのですね」
「うんうん、そうなんだよ!」
「何よあんた、話がわかるじゃない」

 なぜか俺以上にシルとイオナが嬉しそうにしている。恥ずかしいからやめてほしい。

「できたぞい」
「いくらですか?」
「タダでええわい、タダで。あれだけヒラギ草を採ってきてくれたんじゃからのう。もちろん、ヒラギ草のぶんの代金も払うぞい」

 そう言いながら、解呪ポーションと中級ポーションを渡してくる。

 別に今は金には困ってないんだが……まあ、ヒラギ草の代金は少しまけさせてもらおう。
 また世話になるかもしれないし、治療院とは良好な関係を保ちたい。

 ポーションをセフィラの足に使う。
 まず解呪ポーションで、セフィラの怪我の具合を固定している呪いを解く。
 そして中級ポーションを使い、怪我も治す。

「……! た、立てます。普通に歩けます」

 セフィラが感動したように目を見開く。
 よかった。これで移動に支障はなさそうだ。

 セフィラは俺の前までやってきて、深く頭を下げる。

「……申し訳ございません、ロイ様。私なんかのために、お手間をかけさせてしまって」
「……どっちかって言うと、俺は謝罪より感謝のほうが嬉しいんだけど」

 俺の言葉にセフィラは驚いたように顔を上げ、それからこう言った。

「ありがとう、ございます」
「どういたしまして」

 こうしてセフィラは健康な足を手に入れたのだった。
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