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夢の国
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「それじゃあ、行ってきます!」
「うん、楽しんでね」
今日は珍しく、俺の出社と同時にひなたは家から出て、駅の前で別れた。
今日はあかりさんと夢の国に遊びに行く日だ。俺はまだまだ長期休みは先なのに、ひなた達の夏休みより早く終わってしまう。
俺も学生の頃は楽しかったなぁ……って思うあたり、歳を感じる。
会社に到着し、自分のデスクに向かい、いつものように剛と挨拶を交わし、話していると、今度の休みに何をするかの話になった。
「えー、じゃあ大輔はずっと家で大学生といちゃいちゃしてるのか?」
「いや、しねーよ。遊びに行く」
「お、いいね。どこ行くの?」
「関西の方に行くよ、大阪とか」
「なんか微妙だな」
「微妙じゃねーよ!いいだろ、大阪」
剛と話していると、出社してきた榊原が会話に参加してくる。
「先輩方おはようございまーす!」
「おはよう」
「おはよう、あいちゃん」
「なんの話ししてたんですかー?」
「そうそう、こいつが大学生と……」
「夏休み何して遊ぶか話してたんだよー!な?」
ひなたの話題を榊原に聞かせてはいけないような気がして、無理に話を遮った。
榊原は不満げな顔をして、その話を掘り下げないで提案してくる
「じゃあ、私思いついたんですけど、みんなで今度の長期休み遊びに行きましょうよ!ね!先輩!」
「えぇ……」
とんでもない提案に、否定的な反応を俺がとる反面、剛は満更でもない調子で返す
「お、いいね。どこがいいの?」
「私は海がいいです!海!」
「おー!じゃあ今度行くか!」
「おい剛、お前嫁さんはいいのかよ」
「1日くらい許してくれるよ、いつも頑張って家族サービスしてるからね」
「ほら!先輩も行きましょうよ!海!」
ぐいぐいと俺に寄ってきて、海に行くことを勧めてくる榊原
「えー、じゃあひなたに聞くよ……」
「なんでひなたちゃんの許可が必要なんですか!いらないですよ!なんなら一緒に連れてきたらどうです?」
「え!俺もひなたちゃんみたい!」
剛はひなたの話になると、さっきよりも熱心に誘うようになった。
「じゃあそれ込で聞くよ……」
「いえーい!」
きゃっきゃと二人で騒いでいるのを横目に、俺はスマホを開いて、夢の国にいるであろうひなたにメッセージを送った。
『今度の休みに、海に行かないか?って榊原が言ってるんだけど、行きたいか?』
まだ開演時間より前だからか、すぐに返事は帰ってきて
『二人で旅行行ってすぐとかは疲れてるかもですけど、ほかの日なら行きたいです!あいさんとほかは誰が来ます?』
『予定だと俺の同期の剛って人がくるよ』
『会ってみたいです!大輔さんが構わなければ私もご一緒したいです。』
今の会話の画面を見せて、榊原に行く旨を伝えた。
「よーっし!じゃあ遊び尽くすぞー!」
「おー!でも最初からすごい人だね……」
大輔さんの同僚の皆さんと海に行く話をメッセージで話した数分後に夢の国が開園して、私たちは早速一番人気のアトラクションに並んでいた。
「やっぱり他のアトラクションのファストパス取っとくべきだったかな……」
「まぁ、ちっちゃいことは気にしないの!乗り終わったら取りに行こ!」
「うん、そうだね」
いつもよりテンションの高いあかりをみて、こちらまで楽しくなってしまう。
今日の予定は詳しくは決まっていなかったが、帰るのが夜遅くになることだけは確かで、大輔さんには悪いが、今日は楽しませてもらおう。
こんな時まで、大輔さんの事を考える
「ところで、最近大輔さんとはどーなのよ」
考えが読めているのか、私が大輔さんのことを考えていたら、あかりが不意に聞いてきた。
「え?んー、普通、かな」
「えー!うっそだね、変わったこと無かった?」
「えー?あー、確かにちょっと積極的になってくれたかな……」
この前とか、いつもより激しかったし……
顔が熱くなるのを意識しながら言い切ると、なぜかあかりが嬉しそうな満足した顔でうんうんと頷いていた。
「ねー、なに?何かあったの?」
「べっつにー?なにもー?」
満足気に頷く顔は、私が見た事のない、弟を思うお姉さんのような表情だった。
「でも、私と会う前は問題あったでしょ?特に大輔さんの方に」
私はあかりに悩んでいる話はしていないはずだから、自分で感じ取ったのだろう。
「うん……私、大輔さんの部屋に入る機会があってさ、その時日記を見つけたんだよね」
「へー、何が書いてあったの?」
私がいきなり話し始めたのにも関わらず、あかりは冷静に相槌を打ってくれる。
「私のことをどうしたらいいか分からなかったのかな、付き合ってる現状を悩んでるみたいだったんだ」
「うん」
「だから、やっぱり社会人と大学生が付き合うのは間違ってるのかなって、思っちゃった。」
「そっか」
上を向きながら何かを考え込むように、難しそうな顔をする。
その状態のまま、あかりは話し始める
「確かに、私も初めて大輔さんと会った時はびっくりしたよ。援交かと思っちゃった」
「うん……」
「でもね、一瞬にご飯食べてわかったよ。大輔さんもちゃんと周りの目を考えてて、しっかりとひなたのことも考えてて、ちゃんと両思いだったし。普通に恋人を見てる感じだったよ。やっぱ恋に年齢なんて関係ないのかも、って思ったよね」
私たちの間で起こった出来事を思い返しながら、あかりは優しく語りかけてくれる
「大輔さんはこれからちゃんとひなたに向き合ってくれるはずだよ。彼氏として。だか、これからも頑張ってね!」
「あかり……」
「あと今度はほんとに泊まりに行くから!3人でお泊まり会するよ」
「ええ!大輔さんも?」
やはり持つべきものは、向き合ってくれる友人だ。
「ただいまー……」
俺はひなたが帰って来るより先に自分の部屋に帰りつき、電気をつけ、買ってきたビールを片手にテレビの電気をつける。
ひなたと知り合うまでは、こんな生活が日常だった。酒とつまみだけ飲んで一人で寝る。ただそれだけだった。
最初は違和感でしかなかったが、だんだんとそれに慣れてきて、何も思わなくなったしまっていた。
ひなたが来てから本当に生活が変わった、家に帰れば夕ごはんが用意されていて、酒なんて飲まなくても楽しい話し相手もいる。ここまで色々あり過ぎて忘れていたが、かなりありがたいことだった。
だから、久々にこんな生活を送る自分を振り返り、自然と言葉に出てしまう
「寂しいなぁ……」
呟いて、スマホを見てみると一件のメッセージと写真が届いている。ひなたからだ
『もう帰りましたか?
しばらくしたら急いで帰るので、待っていてくださいね!』
写真を開くと、夢の国独特なカチューシャを付けてあかりさんと自撮りをしている写真だった。
『こっちは大丈夫だか、楽しんできなよ!お土産話待ってるね』
打って送信ボタンを押そうとして、あかりさんに言われたことを思い出す。
そう……歳なんて関係ないから、遠慮などする必要ない。
『うん、待ってます』
結局どっちつかずの返信になってしまったが、こちらの方がマシだと思った。
しばらくすると、メッセージが返ってきた。
『お土産いっぱい買ってきます!』
既読をつけて、スマホを閉じる。ふと思えば、大阪旅行も、海に遊びに行くのもすぐそこになっていた。
「今年は用事が多いなぁ」
去年の休みなんて漫画喫茶で漫画を読みふけっていた思い出しかない。
この歳になって海に行くのは抵抗があるが、同時に楽しみでもあった。
「水着買わなきゃな……」
気がつけば、子どものようなわくわく感が湧き上がっていた。
「うん、楽しんでね」
今日は珍しく、俺の出社と同時にひなたは家から出て、駅の前で別れた。
今日はあかりさんと夢の国に遊びに行く日だ。俺はまだまだ長期休みは先なのに、ひなた達の夏休みより早く終わってしまう。
俺も学生の頃は楽しかったなぁ……って思うあたり、歳を感じる。
会社に到着し、自分のデスクに向かい、いつものように剛と挨拶を交わし、話していると、今度の休みに何をするかの話になった。
「えー、じゃあ大輔はずっと家で大学生といちゃいちゃしてるのか?」
「いや、しねーよ。遊びに行く」
「お、いいね。どこ行くの?」
「関西の方に行くよ、大阪とか」
「なんか微妙だな」
「微妙じゃねーよ!いいだろ、大阪」
剛と話していると、出社してきた榊原が会話に参加してくる。
「先輩方おはようございまーす!」
「おはよう」
「おはよう、あいちゃん」
「なんの話ししてたんですかー?」
「そうそう、こいつが大学生と……」
「夏休み何して遊ぶか話してたんだよー!な?」
ひなたの話題を榊原に聞かせてはいけないような気がして、無理に話を遮った。
榊原は不満げな顔をして、その話を掘り下げないで提案してくる
「じゃあ、私思いついたんですけど、みんなで今度の長期休み遊びに行きましょうよ!ね!先輩!」
「えぇ……」
とんでもない提案に、否定的な反応を俺がとる反面、剛は満更でもない調子で返す
「お、いいね。どこがいいの?」
「私は海がいいです!海!」
「おー!じゃあ今度行くか!」
「おい剛、お前嫁さんはいいのかよ」
「1日くらい許してくれるよ、いつも頑張って家族サービスしてるからね」
「ほら!先輩も行きましょうよ!海!」
ぐいぐいと俺に寄ってきて、海に行くことを勧めてくる榊原
「えー、じゃあひなたに聞くよ……」
「なんでひなたちゃんの許可が必要なんですか!いらないですよ!なんなら一緒に連れてきたらどうです?」
「え!俺もひなたちゃんみたい!」
剛はひなたの話になると、さっきよりも熱心に誘うようになった。
「じゃあそれ込で聞くよ……」
「いえーい!」
きゃっきゃと二人で騒いでいるのを横目に、俺はスマホを開いて、夢の国にいるであろうひなたにメッセージを送った。
『今度の休みに、海に行かないか?って榊原が言ってるんだけど、行きたいか?』
まだ開演時間より前だからか、すぐに返事は帰ってきて
『二人で旅行行ってすぐとかは疲れてるかもですけど、ほかの日なら行きたいです!あいさんとほかは誰が来ます?』
『予定だと俺の同期の剛って人がくるよ』
『会ってみたいです!大輔さんが構わなければ私もご一緒したいです。』
今の会話の画面を見せて、榊原に行く旨を伝えた。
「よーっし!じゃあ遊び尽くすぞー!」
「おー!でも最初からすごい人だね……」
大輔さんの同僚の皆さんと海に行く話をメッセージで話した数分後に夢の国が開園して、私たちは早速一番人気のアトラクションに並んでいた。
「やっぱり他のアトラクションのファストパス取っとくべきだったかな……」
「まぁ、ちっちゃいことは気にしないの!乗り終わったら取りに行こ!」
「うん、そうだね」
いつもよりテンションの高いあかりをみて、こちらまで楽しくなってしまう。
今日の予定は詳しくは決まっていなかったが、帰るのが夜遅くになることだけは確かで、大輔さんには悪いが、今日は楽しませてもらおう。
こんな時まで、大輔さんの事を考える
「ところで、最近大輔さんとはどーなのよ」
考えが読めているのか、私が大輔さんのことを考えていたら、あかりが不意に聞いてきた。
「え?んー、普通、かな」
「えー!うっそだね、変わったこと無かった?」
「えー?あー、確かにちょっと積極的になってくれたかな……」
この前とか、いつもより激しかったし……
顔が熱くなるのを意識しながら言い切ると、なぜかあかりが嬉しそうな満足した顔でうんうんと頷いていた。
「ねー、なに?何かあったの?」
「べっつにー?なにもー?」
満足気に頷く顔は、私が見た事のない、弟を思うお姉さんのような表情だった。
「でも、私と会う前は問題あったでしょ?特に大輔さんの方に」
私はあかりに悩んでいる話はしていないはずだから、自分で感じ取ったのだろう。
「うん……私、大輔さんの部屋に入る機会があってさ、その時日記を見つけたんだよね」
「へー、何が書いてあったの?」
私がいきなり話し始めたのにも関わらず、あかりは冷静に相槌を打ってくれる。
「私のことをどうしたらいいか分からなかったのかな、付き合ってる現状を悩んでるみたいだったんだ」
「うん」
「だから、やっぱり社会人と大学生が付き合うのは間違ってるのかなって、思っちゃった。」
「そっか」
上を向きながら何かを考え込むように、難しそうな顔をする。
その状態のまま、あかりは話し始める
「確かに、私も初めて大輔さんと会った時はびっくりしたよ。援交かと思っちゃった」
「うん……」
「でもね、一瞬にご飯食べてわかったよ。大輔さんもちゃんと周りの目を考えてて、しっかりとひなたのことも考えてて、ちゃんと両思いだったし。普通に恋人を見てる感じだったよ。やっぱ恋に年齢なんて関係ないのかも、って思ったよね」
私たちの間で起こった出来事を思い返しながら、あかりは優しく語りかけてくれる
「大輔さんはこれからちゃんとひなたに向き合ってくれるはずだよ。彼氏として。だか、これからも頑張ってね!」
「あかり……」
「あと今度はほんとに泊まりに行くから!3人でお泊まり会するよ」
「ええ!大輔さんも?」
やはり持つべきものは、向き合ってくれる友人だ。
「ただいまー……」
俺はひなたが帰って来るより先に自分の部屋に帰りつき、電気をつけ、買ってきたビールを片手にテレビの電気をつける。
ひなたと知り合うまでは、こんな生活が日常だった。酒とつまみだけ飲んで一人で寝る。ただそれだけだった。
最初は違和感でしかなかったが、だんだんとそれに慣れてきて、何も思わなくなったしまっていた。
ひなたが来てから本当に生活が変わった、家に帰れば夕ごはんが用意されていて、酒なんて飲まなくても楽しい話し相手もいる。ここまで色々あり過ぎて忘れていたが、かなりありがたいことだった。
だから、久々にこんな生活を送る自分を振り返り、自然と言葉に出てしまう
「寂しいなぁ……」
呟いて、スマホを見てみると一件のメッセージと写真が届いている。ひなたからだ
『もう帰りましたか?
しばらくしたら急いで帰るので、待っていてくださいね!』
写真を開くと、夢の国独特なカチューシャを付けてあかりさんと自撮りをしている写真だった。
『こっちは大丈夫だか、楽しんできなよ!お土産話待ってるね』
打って送信ボタンを押そうとして、あかりさんに言われたことを思い出す。
そう……歳なんて関係ないから、遠慮などする必要ない。
『うん、待ってます』
結局どっちつかずの返信になってしまったが、こちらの方がマシだと思った。
しばらくすると、メッセージが返ってきた。
『お土産いっぱい買ってきます!』
既読をつけて、スマホを閉じる。ふと思えば、大阪旅行も、海に遊びに行くのもすぐそこになっていた。
「今年は用事が多いなぁ」
去年の休みなんて漫画喫茶で漫画を読みふけっていた思い出しかない。
この歳になって海に行くのは抵抗があるが、同時に楽しみでもあった。
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